*

[『サピエンス全史』を起点に考える]貨幣による人類の統一とは、全人類を協力相手候補として認識するようになること

公開日: :

1.「人類の統一」を「厖大な数の見知らぬ人どうしの協力」から整理する

『サピエンス全史』を読んでいます。

昨日は、「第3部 人類の統一」を読みました。

[『サピエンス全史』を読む]人類の統一って、なんだ?(第3部 人類の統一)

ここで私が考えたのは、「人類の統一とは何なのか?」という問いです。そして、この問いにに対し、「彼ら」と「私たち」という枠組みから整理してみました。つまり、サピエンス全体を「彼ら」vs「私たち」という枠組みで認識していたことから、サピエンス全体を「私たち」という単一の集団として認識するようになったという変化が、人類の統一です。

しかし、もっとよさそうな整理がある気がしてきました。それは、「膨大な数の見知らぬ人どうしの協力」です。

『サピエンス全史』は、サピエンス成功の鍵を、厖大な数の見知らぬ人どうしの協力に求めます。そして、これを可能にしたのは、虚構を扱える言語です。サピエンスは、虚構を扱える言語を用いて、共通の神話を信じることによって、厖大な数の見知らぬ人どうしの協力という空前の能力を手にしました。

では、ホモ・サピエンスはどうやってこの重大な限界を乗り越え、何万もの住民から成る都市や、何億もの民を支配する帝国を最終的に築いたのだろう?

その秘密はおそらく、虚構の登場にある。厖大な数の見知らぬ人どうしも、共通の神話を信じることによって、首尾良く協力できるのだ。

location 583

[『サピエンス全史』を読む]サピエンスの強みはどこにあるのか?(第1部 認知革命)

「人類の統一」も、この「厖大な数の見知らぬ人どうしの協力」から整理すると、もっとしっくり来るのではないか、というのが、今回考えたいことです。

2.「人類の統一」とは、全人類を、協力相手候補として認識するようになること

「厖大な数の見知らぬ人どうしの協力」から整理すると、「人類の統一」とは、どのように理解できるのでしょうか?

至ってシンプルです。全人類を、協力しうる相手として認識すること、です。

つまり、

  • サピエンス全体を、「協力相手になり得る人」vs「協力相手になり得ない人」として認識していたことから、
  • サピエンス全体を、誰もが「協力相手になり得る人」として認識するようになった

という変化が、人類の統一です。

なお、もともとの「彼ら」「私たち」という枠組みとは、

  • 「彼ら」=「協力相手になり得ない人」
  • 「私たち」=「協力相手になり得る人」

というかたちで重ね合わせることができます。

3.貨幣による人類の統一を、全人類を協力相手候補として認識することから、整理する

さて、この「全人類を協力相手候補として認識する」ことが「人類の統一」である、という整理で、貨幣のことを考えてみます。

単純に当てはめると、こうなります。

貨幣による人類の統一とは、「貨幣を用いることによって、サピエンスは、全人類を、協力相手候補として認識するようになった」ことである。

私としては、この説明は、かなり腑に落ちました。

貨幣が果たしている役割は、全人類を協力相手候補として認識することです。

貨幣があるからこそ、大勢の柔軟な協力の範囲は、全人類に広がります。

全世界で厖大な見知らぬ人どうしの協力が実現されているのは、貨幣があるからです。

貨幣には、ネガティブな側面もあるでしょう。過去から現在まで、貨幣の役割を小さくしようとする試みは、繰り返し構想されてきたのではないかと思います。

でも、貨幣は、全人類レベルの柔軟な協力という機能を果たしています。この機能は、サピエンスに大きな力を与えています。貨幣の役割を小さくしようとする試みは、この機能を代替する何らかの手当がなければ、うまくいかないんだろうなと思います。

[関連]

第1部 認知革命 サピエンスの強みはどこにあるのか?

第2部 農業革命 サピエンスの協力ネットワークが機能する背後には、どんな仕組みがあるのか?

第3部 人類の統一 人類の統一って、なんだ?

『サピエンス全史』からブロックチェーンへ

スポンサードリンク

関連記事

no image

Evernoteは「大きな引き出し」。「しまう」と「響く」

1.「しまう」と「響く」 恩田陸さんの『光の帝国』に、「大きな引き出し」という短編が収録されていま

記事を読む

no image

ブックマークレット「KindleHighlight」で、「kindle.amazon.co.jp」から、Kindle本のハイライト箇所を、シンプルなデータで、クリップボードに取り込む

その後の展開です。(2015-04-07追記) WorkFlowyにKindleのURLを書いて

記事を読む

no image

Kindleが紙の本から異次元の進化を遂げた3つのポイント

1.Kindleの読書は、紙の本の読書とは、異次元の営み Kindleの読書は、紙の本にも負けていま

記事を読む

no image

読書・文章・手帳システム・ブログ・物語/2014年に収穫した10冊+αの本 #mybooks2014

0.はじめに (1) 師走になったので、2014年をふり返る 寝て安静にしてるうちに終わってしまっ

記事を読む

no image

「何度も読み返す本たち」の育て方

1.「何度も読み返す本」は、見つけるものではなくて、育てるもの 少し前に、「何度も読んできた本たち

記事を読む

no image

『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』を手引書に、ウェブを活かした個人レベルの総合的読書システムを組み立てる

この文章は、『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』(倉下忠憲著)をご紹介するものです。書きたい内容が

記事を読む

no image

ブログによって読書からの収穫を増やす

1.ブログをすることで、読書からの収穫が増えた 私は、このブログ「単純作業に心を込めて」から、たく

記事を読む

no image

いちばんうれしいことは、「自由なアウトライン・プロセッシング」が、たくさんの人に開かれること(『アウトライン・プロセッシング入門』を読んだ感想)

1.楽しみに待ってた『アウトライン・プロセッシング入門』を読みました 先日、Kindleストアで、『

記事を読む

no image

すべてのワクワクを同時に実行する生き方。『ソース〜あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。』

1.はじめに 今から2ヶ月ほどまえ、Kindleストアで『ソース~あなたの人生の源は、ワクワクするこ

記事を読む

no image

読者のことを考えるって、こういうことだったのか!結城浩著『数学文章作法 基礎編』(ちくま学芸文庫)

1.『数学文章作法 基礎編』は、考えを読者に伝えることを目的とする文章を書くための、新定番 (1)

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

PAGE TOP ↑