「文章群を書き続ける」によって考えることの具体例
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書き方・考え方
「文章群を書き続ける」とは、ここ数年間、私の中で、とてもうまく機能している知的生産のあり方です。
私が「文章を書き続ける」というあり方に求めているものは、2つあります。
ひとつは、「文章群を書き続ける」ことによって、社会に新しい情報を追加すること。たとえば、自分のブログに記事を公開することがこれに当たります。積極的な社会参加の仕方としての知的生産です。
もうひとつは、「文章群を書き続ける」ことによって、ものを考えること。たとえば、「知的生産におけるアウトライナーとEvernoteが果たす役割のちがい」のように、興味を持った、少し大きめのテーマについて、ある程度長い時間を費やして、少しずつ考えを積み重ねていきたいと思っています。
ただ、ブログ記事を公開するという具体的な物事が見える前者とちがい、ものを考えるという後者は、多少わかりにくいところがあるような気もします。そこで、この記事では、後者、「文章群を書き続ける」ことによってものを考える、ということについて、具体例を紹介します。
目次
- 1.【題材】考えたテーマ・暫定的な作品に結実した文章群
- 2.「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」についての文章群を書き続けることで、「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」について考えてきた経緯
- (1) 『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』のAmazonランキング
- (2) 「WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?」を書く
- (3) WorkFlowyで文書を作成することによって、文章作成主体に生じる、副次的だけど、より本質的で根本的な革命について、書く
- (4) 「WorkFlowyによる文書作成は、実に楽しい。」という主観的な経験を観察することを通じて、文書作成ツールとしてのWorkFlowyの可能性を考察するために、一連の文章群を書き続ける
- (5) それぞれのポイントについて、過剰な部分やはみ出した部分を、別の文章で受け止める
- (6) テーマの外への波及効果のこと
- 3.まとめ
1.【題材】考えたテーマ・暫定的な作品に結実した文章群
具体例としてとりあげるのは、「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」というテーマです。
2016年2月ころから、私は、このテーマについての文章群を書き続けることで、「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」ということを考えてきました(今も考え続けているところです)。この過程から2016年4月現在、次の8つの文章が、暫定的な作品に結実しました。
- WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?
- WorkFlowyで文書を作成することによって、文章作成主体に生じる、副次的だけど、より本質的で根本的な革命について(その1)
- WorkFlowyによる文書作成が、文章作成をする主体に与える、副次的かもしれないけれど実はより本質的かもしれない革命について(その2)文書作成に関する経験の見える化
- 「WorkFlowyによる文書作成は、実に楽しい。」という主観的な経験を観察することを通じて、文書作成ツールとしてのWorkFlowyの可能性を考察する(概観)
- 与件の範囲内での窮屈な文書作成が、ちょっと自由になる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(1)
- そのときどきの「やりたい」のつまみ食いを、文書の完成へと統合できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(2)
- 様々な環境からひとつの文書を作成することで、行き詰まりを打開できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(3)
- なぜ、WorkFlowyという道具は、「やりたい」のつまみ食いの集積を完成文書へ統合することを可能にするのか?
これまでの過程を具体的な題材として、「文章群を書き続ける」ことによってものを考える、というあり方を、紹介します。
2.「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」についての文章群を書き続けることで、「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」について考えてきた経緯
(1) 『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』のAmazonランキング
「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」というテーマを考えたいと思ったきっかけは、『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』でした。
●
2016年1月末、私は、WorkFlowyと知的生産をテーマにした本、『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』を出版しました。
皆様のおかげで、『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』は、一時期、Amazonランキングの「文書作成ソフト」の上位にいました。Wordの本が並ぶ中に、ぽつんと1冊、WorkFlowyを扱う本書が並んでいるのです。
作者としてはもちろん、WorkFlowyを偏愛する者として、こんなAmazonランキングを目にするのは、すごくうれしくてありがたかったのですが、そのとき、ふと、「WorkFlowyは、文書作成ソフトというジャンルに分類されるのか。ジャンルとしては、Wordと同じなんだな。」という考えが浮かんできました。そして、それと同時に、「WorkFlowyによる文書作成は、Wordによる文書作成とは、根本的なところで、何かがちがう。ここには、革命的なものがある気がする。」と直感しました。
(2) 「WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?」を書く
こんな直感を起点にして、私は、ひとつめの文章を書き始めました。
このひとつめの文章で、私が表現しようとしたひとつのメッセージは、「WorkFlowyは、文書作成に、革命をもたらす。」です。当たり前のようにWordによって文書を作成している人が、WorkFlwoyによって文書を作成するようになると、その人の文書作成のあり方に、革命のような変化が起きるのではないか、ということを伝えたいと思いました。
WorkFlowyによる文書作成は、Wordとはちがいます。それは、WordとWorkFlowyの具体的な機能の差や操作方法のちがいだけからくるものではなく、WordとWorkFlowyの、文書や文書作成に対する基本的な発想のちがいからもくるものです。私が表現したいと思ったのは、WordとWorkFlowyには、どのような発想のちがいがあって、この発想のちがいが文書作成作業のプロセス自体にどのように及ぶのか、ということでした。
この結果、書き上げたひとつの文章が、これです。
この文章のポイントは、次の2つになります。
- 文書作成の上の階層に属する、文書作成そのものではないタスクの全体を、文書作成ツールであるWorkFlowyによって、文書作成と同時に、一体的に、扱うことができる
- これによって、文書作成のために行ういろんなことの全体を、文書作成のためにうまく活用できるようになる
- 文書作成のために必要な「全体から一部分を切り出す」というプロセスを、文書作成ツールであるWorkFlowy自体で担うことができる
- これによって、「全体から一部分を切り出す」という過程を、文書完成に近いところまで遅らせることができる
(3) WorkFlowyで文書を作成することによって、文章作成主体に生じる、副次的だけど、より本質的で根本的な革命について、書く
ひとつめの文章を書き上げようとする過程で、いろんなことを考えました。しかし、考えたことの全部をひとつめの文章に盛り込んだわけではありません。文書作成ツールとしてのWorkFlowyは、多くの点で革命的だったので、すべてをひとつの文章に盛り込むことは、私にはできませんでした。だから、たくさんのことを取り除きました。
ひとつめの文章から取り除いたたくさんのことのうち、自分では特に重要だと考えたところは、次の2つです。
- WorkFlowyによる文書作成の革命性は、作成される文書自体だけでなく、文書作成主体に生じる影響にもあるのではないか?
- WorkFlowyによる文書作成は、すごく楽しい。この楽しさを掘り下げてみると、文書作成ツールとしてのWorkFlowyの可能性が見えてくるのではないか?
そこで、この2つをテーマとして、別の文章を書くことにしました。
まず、前者、「WorkFlowyによる文書作成の革命性は、作成される文書自体だけでなく、文書作成主体に生じる影響にもあるのではないか?」ということについて、ひとつの文章を書き始めました。
この過程で、このテーマもひとつの文章にまとめることが難しいことに気づき、2つに分けました。
- WorkFlowyで文書を作成することによって、文章作成主体に生じる、副次的だけど、より本質的で根本的な革命について(その1)フローのストック化
- WorkFlowyによる文書作成が、文章作成をする主体に与える、副次的かもしれないけれど実はより本質的かもしれない革命について(その2)文書作成に関する経験の見える化
(4) 「WorkFlowyによる文書作成は、実に楽しい。」という主観的な経験を観察することを通じて、文書作成ツールとしてのWorkFlowyの可能性を考察するために、一連の文章群を書き続ける
次に、取り除いたもののうちの後者、「WorkFlowyによる文書作成は、すごく楽しい。この楽しさを掘り下げてみると、文書作成ツールとしてのWorkFlowyの可能性が見えてくるのではないか?」というテーマについても、同じように、ひとつの文章を書き始めました。
でも、自分がWorkFlowyによって文書を作成しているプロセスをふり返ってみると、私が「楽しい」と感じるポイントが、なんと6個も出てきました。それも、これら6個すべてが、「これも書きたい。あれも書きたい」と思うほど、大切で面白いものだったのです。
- (1) 与件の範囲内での窮屈な文書作成が、ちょっと自由になる
- (2) そのときどきの「やりたい」のつまみ食いを、文書の完成へと統合できる
- (3) 様々な環境からひとつの文書を作成することで、行き詰まりを打開できる
- (4) 現に文書を作成し続ける過程に、上達のための試行錯誤を組み込める
- (5) 完成文書という1点に向けて収斂する過程で、副産物としての思考が全方向に拡散する
- (6) 産みの苦しみに出口を感じるとともに、意義を感じられる
とてもひとつの文章で書き切ることはできません。
だから、ひとつの文章で全部を書き切ることは諦めて、そのかわり、その文章を、全体を予告するための概要的な文章として、とりあえず完成させました。
これが、次の文章です。
その上で、この概要を書いた後、6個それぞれについて、ひとつずつ、文章を書くことにしました。
これまでに書いたのは、次の3つの文章です。
- 与件の範囲内での窮屈な文書作成が、ちょっと自由になる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(1)
- そのときどきの「やりたい」のつまみ食いを、文書の完成へと統合できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(2)
- 様々な環境からひとつの文書を作成することで、行き詰まりを打開できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(3)
この作業は、まだ終わっていません。
(5) それぞれのポイントについて、過剰な部分やはみ出した部分を、別の文章で受け止める
さて、最初に浮かんだ6個のポイントのひとつひとつにつき、ひとつの文章を書き上げようとすることは、いろんな思考を導いてくれています。
この過程で生まれた思考は、次の2つに分けることができます。
- 概要を書いた段階で考えていた範囲内のこと
- 概要を書いた段階で考えていた範囲を超えること
前者は、概要を書いた段階で考えていたことを詳しく説明したり、具体例をあげたり、といったことです。このような思考は、まさにこの点を書くためにひとつひとつの文章を書いているのですから、それぞれの文章の中に盛り込まれるべきです。現に、これまでの3つの文章は、それらを盛り込むことで、書き上げました。
これに対して、後者は、概要を描いた段階で考えていたわけではなく、個々の文章を書き上げようとする過程で、新たに考えたことです。範囲内だけれど過剰に詳しすぎることや、関連するけれど範囲を超えること、あるいは、あまり関係のないことなど、いろいろなことが含まれます。
それぞれのポイントを掘り下げるための文章は、それぞれのポイントに向けて焦点を合わせるべきです。だから、新しく導かれた思考がいくら魅力的だとしても、それらをそれぞれのポイントを掘り下げるための文章に盛り込むことは避けなければいけません。
そこで、後者の思考については、新しい文章を別途用意して、その別の文書で受け止めることになります。
たとえば、2つめのポイントについて、「そのときどきの「やりたい」のつまみ食いを、文書の完成へと統合できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(2)」を書き上げようとする過程で、私は、「なぜ、WorkFlowyをつかうと、「やりたい」のつまみ食いの集積をひとつの文書へと結実することができるのだろうか?」という疑問をいだきました。
しかし、この「なぜ?」は、きちんと掘り下げると、それだけでかなり大きな思考になります。そのため、「WorkFlowyによる文書作成は「やりたい」のつまみ食いを文書の完成へと統合できる」というメッセージを伝えるという観点からは、若干過剰です。
そのため、この「なぜ?」は、当初の文章の外に出して、別の文章で受け止めることにしました。
これが、次の文章です。
なぜ、WorkFlowyという道具は、「やりたい」のつまみ食いの集積を完成文書へ統合することを可能にするのか?
また、3つめのポイントについて、「様々な環境からひとつの文書を作成することで、行き詰まりを打開できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(3)」を書き上げようとする過程で、次の2つのことを考えました。
- 文書作成の行き詰まりには、いろいろな種類がある。行き詰まりの種類を分析すると、それぞれの行き詰まりを解消するためにふさわしい手段が浮かんでくるのではないか?
- 文書作成のための環境には、いくつかのものがある。これに対応して、文書作成の環境を切り替えるための選択肢にも、いくつかのものがある。これらを整理すると、より効果的に、環境切り替えによって行き詰まりを打開することができるのではないか?
しかし、これらは、それ自体がかなり壮大なテーマです。そのうえ、WorkFlowyによる文書作成に限定されることではありません。そこで、これらの思考は、書いていた文章の外に出して、新しく書き始めた別の文章で受け止めることにしました。
これら2つを受け止めた文章は、まだ形になっていません。でも、そのうち形になるかもしれません。
(6) テーマの外への波及効果のこと
「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」というテーマについての「文章群を書き続ける」は、以下のとおりです。
とはいえ、「文章群を書き続ける」は、特定のテーマだけに区切られているわけではありません。しばしば、テーマの枠を超えて、テーマの外に波及効果を及ぼします。
ブログ記事として結実したものを、いくつか紹介します。
a.「2016年2月段階でWorkFlowyに期待している3つの機能追加」
「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」というテーマを考えているときに、「すべての文書をWorkFlowyで作成できたら、なんと素晴らしいことだろうか!」と感じ、そのために足りないものを考えるところから、この記事が生まれました。
b.「「WorkFlowy」と「自分のブログ」と「ハサミスクリプト」(物事を考え続けるための、奇跡のような組み合わせについて)」
WorkFlowyによる文書作成プロセスの特徴は、「全体から一部分を切り出す」というあり方にあります。
この「切り出す」に焦点を当てて、ブログ記事という文書を「切り出す」ためのツールとしての「ハサミスクリプト」を紹介したものです。
c.「WorkFlowyで本を書いた人からの手紙」
WorkFlowyで文書を作成することの主観的な楽しさについて、いつものように理屈っぽくまとめたいと思ったのですが、なかなか筆が進みませんでした。そこで、普段とは少しちがう、「手紙」というフォーマットを借りて、全体をざっくりと書いてみることから生まれたのが、この記事です。
d.現にうまく機能しているWorkFlowyを使った文章の書き方
これも、WorkFlowyによる文書作成の主観的な楽しさを伝えるために、いろんなフォーマットで書いてみる、という取り組みの中から生まれました。
「すごく書きたいテーマなんだけれど、なかなかうまく書けない」というときには、そのひとつのテーマを、いろんなフォーマットで書こうとしてみることで、あがくことにしています。そんなあがきから、自分として納得できる作品が生まれることも、少なくありません。
3.まとめ
「文章群を書き続ける」というあり方は、ものを考えることを促してくれます。
「文章群を書き続ける」というあり方が、図式的に整理すれば、次の6つの類型で、ものを考えることを促してくれます。
- (1) ひとつの明確なメッセージを持つひとつの文章を書き上げようとすることが、思考を促す
- a.不足する要素を、その文章の中に追加する
- b.過剰な要素を、外に出し、別の文章で受け止める
- c.関係のない要素を、外に出し、別の文章で受け止める
- (2) メッセージとメッセージとの関係を意識して、文章群を書き続けることが、思考を促す
- a.もともとの文章が持つメッセージを構成するひとつの要素をメッセージとして持つ文章を書く
- b.もともとの文章が持つメッセージをひとつの構成要素として包含するメッセージを持つ文章を書く
- c.もともとの文章が持つメッセージをひとつの構成要素として包含するメッセージを構成するひとつの要素をメッセージとする文章を書く
私は、2016年2月から現在まで、「文書作成ツールとしてのWorkFlowy」というテーマについての文章を書き続けることによって、このテーマを考えてきました。
この記事では、この具体的なプロセスをまとめました。この具体的なプロセスの中には、上にならべた6つの類型がたくさん含まれているはずです。
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