WorkFlowyで文書を作成することによって、文章作成主体に生じる、副次的だけど、より本質的で根本的な革命について(その1)
目次
1.WorkFlowyによる文書作成が革命的であるもうひとつの側面は、文書作成主体への影響
先日、これを書きました。
「これまでWordを文書作成ツールとして使ってきた人が、WorkFlowyを文書作成ツールとして使うと、文書作成に革命がもたらされる。」こんな考えのもと、私が考えるところのWorkFlowyによって文書作成にもたらされる革命について、書きました。
この記事で書いたポイントは、次の2つです。
- 文書作成の上の階層に属する、文書作成そのものではないタスクの全体を、文書作成ツールであるWorkFlowyによって、文書作成と同時に、一体的に、扱うことができる
- これによって、文書作成のために行ういろんなことの全体を、文書作成のためにうまく活用できるようになる
- 文書作成のために必要な「全体から一部分を切り出す」というプロセスを、文書作成ツールであるWorkFlowy自体で担うことができる
- これによって、「全体から一部分を切り出す」という過程を、文書完成に近いところまで遅らせることができる
ここで書いた2つの点は、文書作成そのものの側の問題です。WorkFlowyを文書作成ツールとして使うことで、文書作成という行為そのものが、どのように変わるのか、ということに光を当てています。
他方で、少し別の視点にはなるのですが、別の影響もあるように実感しています。それは、文書作成主体の側の問題です。つまり、文書を作成する私やあなたに生じる影響。WorkFlowyを文書作成ツールとして使うか、Wordを文書作成ツールとして使うかによって、文書作成をする主体が、文書作成という行為から受け取る影響が、本質的なところでちがってくるのではないか、と考えています。
これは、文書作成そのものに生じる影響ではありません。この意味で、副次的かもしれません。しかし、文書作成の主体に生じる影響であるため、ひょっとすると、文書作成そのものに生じる影響よりも、波及効果が大きく、より根本的でより本質的なちがいかもしれません。
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そこで、何回かに分けて、このことを検討します。この記事で考えるのは、「フローのストック化」です。
2.WorkFlowyは、文書作成のフローをからめ取り、仮の体系としてのストックに変換する
(0) 『アウトライン・プロセッシング入門』の「アウトライナーという道具は、どんな道具なのか?」
『アウトライン・プロセッシング入門』という本があります。汎用的な技法としての「アウトライン・プロセッシング」を、本質的なところからわかりやすく説明する本です。WorkFlowyを使って文章を書くことを考えるなら、読んで損はありません。
『アウトライン・プロセッシング入門: アウトライナーで文章を書き、考える技術』
さて、この本に、こんな記載があります。「アウトライナーという道具は、どんな道具なのか?」をめぐるTak.さんによる考察です。
「流れていくもの(フロー)をキャッチして仮に体系化するための道具」というのが、私の理解に最も近いものです。
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ここでのポイントは2つあります。
- アウトライナーは、流れていくもの(フロー)をキャッチする道具である
- アウトライナーは、キャッチしたフローを仮に体系化する道具である
前者の、流れていくもの(フロー)をキャッチするとは、フローを体系化してアウトプットすることを意味します。
からめ取った発想は、アウトライナーの中で必要に応じて、あるいは目的に応じて自由に組み立て、体系化し、形にすることができます。形にするとはアウトプットすることです。
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後者の「仮の」体系化とは、そうして作った体系は固定された体系ではなく、「シェイク」によって組み替える体系である、ということを意味します。
でも、それで終わりではありません。アウトライナーで組み立てた形は、仮のものです。なぜなら思考は流れ続けているからです。
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アウトラインは常に「仮のもの」です。アウトプットとは、仮のアウトラインのある瞬間のスナップショットです。だからこそ、自由で柔軟で速いのです。
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アウトライナーという道具の本質が、ここに表現されています。WorkFlowyも同じです。
- WorkFlowyは、流れていく思考(フロー)を、からめとりキャッチし体系化する道具です。
- と同時に、WorkFlowyは、そうして作った体系を、流動的に組み替えていくことを可能にしてくれる道具です。
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さて、今、私が、この記事で考えているテーマは、WorkFlowyを文書作成ツールとして使うことで、(文書作成そのものに対してではなく、)文書作成の主体に、どのような影響が生じるだろうか、ということです。このテーマとの関係で、Tak.さんによる2つの指摘は、大きな示唆を与えてくれます。
順に考えてみます。
(1) 文書作成のフローを、作成される文書の範囲を超えて、ストック化する
まず、前者については、WorkFlowyは、流れる思考(フロー)をキャッチし、体系化します。つまり、フローのストック化を担う道具が、WorkFlowyです。
a.文書作成のプロセス一般についての考察
一般に、文書作成のプロセスは、フローをストックに変換するプロセスである、とも言えます。
たとえば、フリーライティング、タスク管理、資料の収集と整理、骨子の組み立て、下書き、暫定的な完成原稿、推敲(読み返しと書き直し)などの一連の作業が、文書作成というゴールに向かって流れるフローです。ここから必要な部分を絡めとり、ゴールである完成文書に向けて、体系化し、ストックへと変換することが、文書作成のあり方だと言えます。
ここで大切なことは、流れるフローの流量と最終成果物に体系化されたストックの量の比です。一般に、ひとつの文書を作成するために生じるフローの流量は、最終成果物である文書に体系化されたストックの量と比較して、うんと膨大です。たくさん流れるフローのうち、ごく一部を体系化して、ストックとしての最終成果物が完成する、という関係が、ここにはあります。
この流量比は、ある意味、当たり前です。大部分のフローは流れ去り、その中で残った一部分がストックとなるからこそ、完成成果物としての文書には何らかの価値がある、とも言えるかもしれません。
しかし、ちょっともったいないことでもあります。どんなささやかな文書であっても、その背後には、たくさんのフローが流れています。でも、これらのフローは、最終成果物にはストックされません。何も手当しなければ、どこにもストックされず、流れ去り、消え去ってしまいます。なんとかならないでしょうか。
b.文書作成ツールとしてのWorkFlowyが実現するフローのストック化は、完成文書の範囲を超える
文書作成ツールとしてWorkFlowyを使うことは、これに対するひとつの答えを提示しています。
まず、WorkFlowyによる文書作成は、まさしく、フローのストック化そのものです。WorkFlowyで文書を作ると、フリーライティング、タスク管理、資料の収集と整理、骨子の組み立て、下書き、暫定的な完成原稿、推敲(読み返しと書き直し)といった、文書作成に関係のあるいろいろな物事が、WorkFlowyの上を流れていきます。このフローをWorkFlowyでからめ取り、体系化し、ストックにすることこそが、WorkFlowyで文書を作成する、ということだからです。
他方で、WorkFlowyによるフローのストック化は、作成する文書の範囲に限られません。なぜなら、文書作成に向けたフローが、WorkFlowyの「ただひとつのアウトライン」の中を流れているからです。
たとえば、ある文書を作成するために、参考文献を読み、その内容を整理したとします。そのすべてを文書に盛り込むわけではないため、大半は完成文書にはストックされないわけですが、そうだとしても、その参考文献に関する情報のすべては、WorkFlowyの「ただひとつのアウトライン」の中に記録されます。ひょっとしたら、別の機会に、この参考文献からの引用を活用できるかもしれません。
たとえば、文書を作成する過程で、いくつかのパターンの骨子を組み立ててみたとします。最終的にはひとつの骨子を採用して、他の骨子候補を切り捨てる必要がありますので、完成文書にストックされる骨子はひとつだけです。でも、いろんなパターンの骨子を検討したことや、いろんなパターンの骨子自体は、WorkFlowyの「ただひとつのアウトライン」の中に残ります。ひょっとしたら、別の機会に、この骨子のパターンを流用できるかもしれません。
このように、WorkFlowyの上を流れるフローは、作成される文書の範囲に区切られているのではなく、「ただひとつのアウトライン」の上を流れているがゆえに、完成文書そのものに体系化されストックされるのとは別に、「ただひとつのアウトライン」の中に、体系化され、ストックされていきます。つまり、文書作成ツールとしてのWorkFlowyが実現するフローのストック化は、作成される完成文書の範囲を超えて、文書作成主体の範囲で実現されます。
これが、WorkFlowyならではの、文書作成におけるフローのストック化です。
(2) ストックを、流動的に変化する仮の体系として扱う
a.WorkFlowyによる体系は、仮のものである
Tak.さんがアウトライナーという道具について指摘することのもうひとつのポイントは、アウトライナーによる体系が「仮」のものだ、ということです。
WorkFlowy(アウトライナー)は、流れる思考に階層構造を与えることで、思考を体系化します。しかし、ここでWorkFlowyが試行に与えた階層構造による体系は、固定されたものではありません。トピックを動かしたり、トピックにテキストを書き加えたりすることで、アウトラインが流動的に変化するためです。
では、アウトライナーによる体系が、流動的に変化しうる仮のものである、という指摘は、文書作成の場面では、どのような意味を持つのでしょうか。
b.仮の体系だから、柔軟な素材になる
ひとつは、「仮の体系だからこそ、柔軟な素材になる」という側面があります。
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WorkFlowyである文書を作成をすれば、WorkFlowyの「ただひとつのアウトライン」の中には、その文書を完成させるために取り組んだフロー全体が、ストックとして蓄積されます。どんな文書であれ、完成までに流れる流量は相当なものなので、こうしてストックされた蓄積は、情報量としては、それなりのもんだろうと思います。
しかし、全然別の場面で取り組んだ文書作成のフローから蓄積された情報を、そのままの形で別の文書に活用できるケースは、多分、めったにありません。スケジュールや依頼の趣旨などの与件も千差万別、考慮しなければいけない要素も大きく異なり、基礎となる事実関係も別です。ひとつの文書を完成させるためのフローと、別の文書を完成させるためのフローは、ぜんぜん違うのです。
他方で、まったく役に立たないかといえば、そうではありません。ピンポイントの情報、文書を締めくくるちょっとしたフレーズ、推敲のコツなど、限られた一部分だけなら、それなりに役立ちます。
ここで、ストックが「仮」の体系であることが意味を持ちます。WorkFlowyに蓄積されたストックは、階層構造の体系的な形に見えますが、あくまでも「仮」の体系です。そのため、その場で使えるように体系を組み替えることもできますし、体系の一部分だけを抜き出して利用することもできます。
このように、WorkFlowyに蓄積されたストックは、仮の体系だからこそ、柔軟な素材になるのです。
c.仮の体系だから、気楽にストックできる
もうひとつは、「仮の体系だから、気楽にストックできる」という側面です。
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フローをストックとして蓄積する、という考え方は、抽象的な理念としては、合理的だし、うまく機能しそうに思えます。
でも、これをしようとしても、実際には、なかなかうまくいかないことも多いような気がします。面倒だからです。
実際、フローをストックとして蓄積するのは、面倒です。ひとつの具体的な文書作成タスクが生じた場合に、一生懸命〆切を守り、その文書を作成した段階で、「さて、もう一頑張りして、この文書作成に至るフローをきちんと体系化し、ストックしておこう」と考えることができる人は、よほどできた人なんじゃなかろうかと思います。
これに対して、「波及効果が大きい第2領域だから、しっかり取り組め!」と言い聞かせても、問題の解決にはなりません。そんなことは百も承知だけれども、でも、面倒でやりたくない、というのが、ここでの問題だからです。
問題を解消するのは、むしろ、「仮の体系化でよいから、とりあえず簡単に体系化しておく」です。WorkFlowyの中に存在する文書作成に至るフローに、ごく簡単でよいので、階層構造を与えてまとめておきます。どうしても面倒であれば、「企画書作成 2016-02-09」のようなトピックを立てて、そのトピックの下に文書作成に至るトピックをすべて格納するだけでもかまいません。
WorkFlowyに体系化するストックは、仮の体系です。自分の仕事の集大成を編纂する必要はなく、とりあえず階層構造を使ってまとめておくだけで十分なので、とりあえず仮にストック化しておくことができます。これが、「仮」の体系であることの、もうひとつの意義です。
3.今後、考えたい2つのこと
この記事では、WorkFlowyを文書作成ツールとして使うことがどのように革命的なのか、を考えてきました。
文書作成そのものにもたらされる革命的な要素のほかに、文書作成主体に生じる影響があるのではないか、そして文書作成主体に生じる影響のほうが、より本質的で根本的なのではないか、というのが、ここでの問題意識です。
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WorkFlowyで文書を作成するときに、文書作成主体に生じる影響として、この記事では、「フローのストック化」ということを考えました。
でも、文書作成主体に生じる影響は、これだけではありません。
今後、次のテーマを考えてみたいと思っています。
- 経験の見える化
- WorkFlowyを文章作成ツールとして使うと、文書作成から得る経験値を、目で見えるかたちで扱うことができるようになる。
- 文書作成の意義に新しい次元が追加される
- WorkFlowyを文書作成ツールとして使うと、文書作成という行為が持つ意義を評価する際に、これまでにはない新しい次元が追加される。
関連情報と注記
関連情報
WorkFlowyで文章を書いたり文書を作成したりすることについては、こんなことを考えてきました。
- WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?
- 【2015年の文章】WorkFlowyで文章を書き続けていたら、文章を書くことが、もっと好きになった
- 『WorkFlowy文章作法』の「はじめに」
- なぜ、WorkFlowyで文章を書くのか(WorkFlowyで文章を育てる)
- 彩郎流二毛作。知的生産の治具マクロ「WFtoMSWD.dot」で、Word文書作成プロセスから得る収穫を倍にする。
注:「Word」vs「WorkFlowy」の図式について
この記事には、概して、「Word」vs「WorkFlowy」という図式があります。
しかし、実際には、対立するのは、「Word」と「WorkFlowy」ではなく、文書作成とファイルの個数についての方法です。ひとつの文書を作るためにひとつのファイルを用意する文書作成方法と、ひとつの母体からたくさんの文書を生み出すという文書作成方法が対立しています。
この記事では、ひとつの文書を作るためにひとつのファイルを作るという文書作成方法を「Word」に代表させ、ひとつの母体からたくさんの文書を生み出すという文書作成方法を「WorkFlowy」に代表させています。しかし、「Word」にとって前者の方法は必然ではありません。また、後者の方法のために「WorkFlowy」を使う必要はなく、たとえば、OmniOutlinerやEvernoteを用いることもできます。
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