【連載】iOSからWorkFlowyを快適に使う(4) iOSからの利用を、システム全体の中に位置づける。
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WorkFlowy
WorkFlowyは、パソコンからならすごく使いやすいのですが、iPhoneなどのスマートフォンからは、率直にいっていまいちです。
これを解消すべく、いま、数名の方々と、次の2つのアプリを開発するプロジェクトに取り組んでいます。
- テキストメモをWorkFlowyに投稿することだけに特化した軽量アプリ
- ぱっと立ち上げ、さっとメモし、ぽんとWorkFlowyにテキストを放り込むためだけに存在する。
- イメージとしては、Evernoteに数多く存在する投稿専用アプリ。
- WorkFlowyのスマートフォン用クライアントアプリ
- WorkFlowyの巨大な「アウトライン」を動き回るための機能や、WorkFlowyを「自分の道具」に育てるためのカスタマイズ機能を備える。
- イメージは、スマートフォン版「WorkFlowy専用Firefox」。
ただ、新しいアプリをお届けするまでには、もう少し時間がかかりそうです。そこで、それまでのつなぎに、現時点でできるいくつかのことに、順次取り組みます。それがこの連載です。
連載第1回では、課題を概観して、課題解消の道筋をラフに描きました。
連載第2回では、iOS版WorkFlowy公式アプリの細かい挙動をちまちまと整理して、公式アプリの力をできる限り引き出すことを目指しました。
連載第3回では、ブラウザアプリからWorkFlowyを使う意義と、「WorkFlowy専用Ohajiki」を紹介しました。
次は、第4回です。今回のメッセージは、「iOSから全部できなくてもよいのではないか?」ということです。WorkFlowyはクラウドサービスなのですから、iOSだけで完結させる必要はありません。WorkFlowyの使い方をトータルなシステムとして自分なりにデザインし、その中に適切な形でiOSからの利用を位置づければ、現状でもそれほど不足はありません。
いってみれば身も蓋もない話です。また、スマートフォンからWorkFlowyを使うことの重要度を下げる提案ですので、アプリ開発とは逆行する面もあります。でも、この観点はとても大切です。なので、正直に書きます。
1.基本的な考え方と検討の手順
(1) 基本的な考え方
この連載が取り組んでいる課題は、スマートフォン、特にiPhoneから、WorkFlowyを快適に使う方法です。ですが、そもそも、なぜ、この課題に取り組んでいるのでしょうか。
ひとついえることは、iPhoneからのWorkFlowy使いこなし術コンテストに参加しているわけではない、ということです。iPhoneからWorkFlowyをどれほど使い尽くしているか自体には、ぜんぜん意味がありません。
それでは、iPhoneからWorkFlowyを使うことには、どんな意味があるのでしょうか。それは、他の目的を達成するための手段としての意味です。
「全体と一部分(それより上の階層がない・それより上の階層がある)」の言葉でいえば、iPhoneからWorkFlowyを使うことは、それより上の階層を持ちます。iPhoneからWorkFlowyを使うことの意味は、それより上の階層との関係の中でしか、見えません。
また、iPhoneからWorkFlowyを使うことは、全体における一部分に過ぎません。それだけで完結した全体ではなく、他のいろんなもと一緒に全体のシステムを構成している、たったひとつの要素に過ぎないわけです。ですから、iPhoneからWorkFlowyを使うことの意味は、それを含む全体との関係でしか、見えません。
ここから、ふたつのことがわかります。
第1に、iPhoneですべてを行う必要はありません。iPhoneは、システムを構成する一部分です。iPhoneに求められているのは、全体における一部分の役割をはたすことです。
第2に、iPhoneで行うことの意味は、全体との関係で評価する必要があります。いくらiPhoneをすばらしく活用しても、それを全体の中で活かすことができなければ、意味がありません。
●
いくぶん抽象的になりました。でも、抽象的な理念を離れて、実際的なところだけに注目しても、この2つは大切です。
というのも、WorkFlowyはクラウドサービスです。iPhoneから操作した結果は、すぐさまWorkFlowyのサーバーに反映されますので、その後、WindowsやMacからWorkFlowyを使えば、iPhoneからの操作の結果を引き継ぐことができます。だから、iPhoneだけですべてを行う必要はありません。そして、iPhoneで何かをするなら、その何かが、WindowsやMacへと、どう引き継がれるのかを考える必要があります。
●
そこで、基本的な考え方は、以下のとおりです。
- iPhoneだけですべてを行う必要はない。また、iPhoneからの操作だけを切り離して考えても仕方がない。
- WorkFlowyをとりまくトータルなシステムを構想して、その中に、iPhoneからのWorkFlowy利用を位置づける。
(2) なぜ、WorkFlowyなのか?
もちろん、WorkFlowyを使うこと自体も、最上位階層ではなく、また、一部分に過ぎません。でも、ここで私が検討しているのは、WorkFlowyのトータルなシステムです。
では、なぜ、WorkFlowyを使うのでしょうか。
EvernoteやGoogleDriveなど、他のツールではなく、WorkFlowyを使うのは、なぜでしょうか。
WorkFlowyを使う理由のひとつめは、すべてをひとつのアウトラインに同居させることができるからです。これによって、自分の生活全体から一部分を切り出す、という知的生産のあり方が、自然と実現されます。
- WorkFlowy基本5原則【第2原則】「アウトライン」という全体から、目的に応じた一部分を切り出す
- 「個人の継続的な知的生産」と、「全体・一部分」&「それより上の階層がない・それより上の階層がある」
WorkFlowyを使う理由のふたつめは、WorkFlowyが知的生産のフロー全体をカバーしてくれるツールだからです。WorkFlowyを使うと、知的生産のフロー全体が、スムーズに流れます。
そこで、WorkFlowyのトータルなシステムは、これら2つのWorkFlowyの特長をうまく生かし、けっして阻害しないものでなければいけません。
(3) 検討の手順
この基本的な考え方を具体的に実現するために、次のような検討の手順を踏むことにします。
a.トータルなシステムを描く
まず、WorkFlowyをとりまくトータルなシステムを考えます。システム全体で、なぜ、どんなことを、どんな状況でやりたいのかを見定めなければ、始まりません。
- 何のためにWorkFlowyを使うのか。
- どんな用途にWorkFlowyを使うのか。
- どんな状況でWorkFlowyを使うのか。
b.道具の特徴を整理する
次に、このトータルなシステムを担うための道具をリストアップして、それぞれの特徴を考えます。道具とは要するにパソコンとiPhoneなので、パソコンでできること・できないこと・得意なこと・苦手なこと、iPhoneでできること・できないこと・得意なこと・苦手なことを整理すればよいわけです。
- パソコン
- できること
- できないこと
- 得意なこと
- 苦手なこと
- iPhone
- できること
- できないこと
- 得意なこと
- 苦手なこと
c.ふりわけと見直し
これらを踏まえ、WorkFlowyでやりたいことを、iPhoneとパソコンにふりわければ、トータルなシステムの組み立ては、おおむね、終わりです。
あとは、そのふりわけた内容が、「全体から一部分を切り出す」と「知的生産のフローを流す」という2つのポイントに沿っているかを、見直します。
2.彩郎の具体例
さっそく検討に入ります。
しかし、一般的なかたちで書くのは、なかなか難しい仕事です。WorkFlowyの使い方が千差万別なので、WorkFlowyのトータルなシステムのあり方も、様々だからです。
そのため、以下では、私の具体例を書きます。ただ、結論だけでなく、手順や考え方をできるだけ丁寧に書きます。その分、くどいとは思いますが、手順や考え方の部分から、iPhoneでのWorkFlowy利用を構想するヒントを汲みとっていただければ、幸いです。
(1) WorkFlowyのトータルなシステムを描く
まず、いくつかの観点から、自分がWorkFlowyをどのように使っているのか、そのトータルなシステムを描いてみます。
a.WorkFlowyを、どんな用途に使うのか?
私は、WorkFlowyを、主に文章を書く道具として、使っています。WorkFlowyの役割は、私の毎日の中に存在する「文章を書いて、考える」ことに関する行為のための道具です。
[参考]
- 「WorkFlowyによって、私が新しく始めた行動は、何もない。」でも「WorkFlowyによって、私の生活は変わった。」
- 「WorkFlowyによって、私が新しく始めた行動は、何もない。」でも「WorkFlowyによって、私の生活は変わった。」
具体的には、主に次の3つになります。
- 着想をメモする(フリーライティングや日記も含む)
- 読書ノートを作る
- ブログ原稿を書く
(a) 着想のメモ
着想のメモとは、頭に着想が浮かんできたとき、その着想を文字でメモすることです。私は、WorkFlowyにメモをしています。WorkFlowyにメモする理由は、WorkFlowyに記録したメモは、後からの活用がうまくいくためです。
[参考]WorkFlowyで「発見の手帳」(『知的生産の技術』とWorkFlowy)
着想をメモするために大切なことは、着想が頭に浮かんできたらすぐに、その着想をぱっと捕まえることです。
私の場合、着想がもっともよく浮かんでくるのは、何かの文章を書いたり講義をしたり話したりしているとき、つまり、アウトプットの最中です。そこで、アウトプットの最中に浮かんだ着想を確実に捕まえる仕組みが求められます。
(b) 読書ノート
私が作る読書ノートは、「抜き書き読書ノート」です。
私は、WorkFlowyで「抜き書き読書ノート」を作っています。
WorkFlowyで「抜き書き読書ノート」を作ると、抜き書きや書き込みが次のアウトプットにつながりやすいので、気に入っています。
[参考]
「抜き書き読書ノート」を作るには、まずは本の一部分を抜き書きする必要があります。紙の本は手で書き写し、Kindle本はkindle.amazon.co.jpから取り込みます。
「抜き書き読書ノート」は、書き込み、読み返すものです。三色ボールペンWorkFlowyを使えば、三色ボールペン方式を活用して抜き書き読書ノートを読み返すことができます。
Kindle本を、三色ボールペン方式で読む(kindle.amazon.co.jp × 「三色ボールペンWorkFlowy」)
(c) ブログ原稿
ブログ原稿を書くためには、
- テーマとメッセージを思いつく
- 骨子を組み立てる
- 文章を書き進める
- 読書ノートから引用する
- 文章を推敲する
- 原稿を完成させる
- HTMLに変換する
といった一連のプロセスを経る必要があります。
これらのプロセスは、通常、長い時間がかかります。所要時間は、のべ時間で数時間以上かかりますし、また、書き始めてから完成するまでの期間も、短くて数日、長くて数ヶ月から半年程度です。
そのため、大量の書きかけの文章が埋没しない仕組みが求められます。
b.WorkFlowyを、どんな状況で、使うのか?
自分の典型的な一日を思い浮かべ、WorkFlowyを使う状況を、時系列で整理すると、こんな感じです。
- 朝
- 朝一番の自動書記をします。
- WorkFlowyで、「朝一番の自動書記」(by結城浩先生)をする
- 通勤電車
- その日一日を思い浮かべ、フリーライティングをします。
- WorkFlowyに日付トピックを作り、一日ごとのinboxにする
- 職場
- WindowsデスクトップでWorkFlowyを立ち上げ、仕事中のいろいろなメモをします。
- また、クラウドを使っても差し支えない文章の原稿を書きます。
- 昼休み
- スターバックスなどで、読書ノートを作ったり、ブログ原稿を書いたりします。
- 第3の場所スターバックスで昼ご飯を食べて、自分ひとりの時間を確保する
- 外出先
- 外で仕事がある場合は、移動中の電車の中で、ブログ原稿を書いたりフリーライティングをしたりします。
- 外出先での会合などは、クラウドを使っても差し支えない場面では、WorkFlowyにメモします。
- 帰宅電車
- 家に帰宅するまでの電車の中でも、WorkFlowyを開き、フリーライティングをしたり、ブログ原稿を書いたりします。
- 夜、子どもが寝た後
- 夜、子どもが寝たあと、30分程度、ブログ原稿を書いたり読書ノートを読み返したりします。
場所・道具で整理すると、こんな感じです。
- 場所
- 自宅
- 日記・フリーライティング
- 読書ノート
- ブログ原稿
- 職場
- デイリータスクリストのようなメモ
- 瞬時レビューのようなもの
- フリーライティング
- クラウドにあげても問題ない種類の文章の原稿
- スターバックスなどの机と椅子があるところ
- フリーライティング
- 読書ノート
- ブログ原稿
- 電車の中
- 新幹線など、座れる電車
- 読書ノート
- ブログ原稿
- 地下鉄など、立つ電車
- ブログ原稿
- フリーライティング
- 新幹線など、座れる電車
- 自宅
- 使える道具
- MacBook Air
- 読書ノート
- ブログ原稿
- Windowsデスクトップ
- フリーライティング
- iPhone
- 日記
- フリーライティング
- ブログ原稿
- MacBook Air
c.WorkFlowyは、どんな情報を扱っているのか?
私がWorkFlowyで扱いたい情報は、(内容にかかわらず、)次の3つに分類できます。
- フロー
- 進行中の情報
- ストック
- 「進行中じゃない」かつ「後で見返すことを想定している」
- アーカイブ
- 「進行中じゃない」かつ「後で見返すことを想定していない」
フロー、ストック、アーカイブ。Evernote情報処理システムに収納する情報の分類。
それぞれの具体例は、こんなところです。
- フロー
- 書きかけのブログ原稿
- 今日の日付トピック
- プロジェクトの共有トピック
- ストック
- 投稿済みのブログ原稿
- ブログマネジメントに関するいろんな情報
- 以前に読んだ本の抜き書き読書ノート
- アーカイブ
- 過去の日付トピック
- それ以外の雑多なメモ
WorkFlowyのトータルなシステムは、これら3種類の情報をうまく扱う必要があります。
d.WorkFlowyのトータルなシステムは、どんな条件を備える必要があるか?
いくつかの観点から、自分がWorkFlowyをどのように使っているのかをふり返りました。これらをまとめると、私がWorkFlowyのトータルなシステムに求める条件は、おおむね、以下のとおりです。
- 【用途】「文章を書くためのシステム」であること
- 文章を書いている途中に生まれた着想を捕まえる
- 読書ノートを3色ボールペン方式で読み返す
- 大量の書きかけの文章群全体を管理する
- 【状況】朝起きて、仕事に行き、外出し、帰宅し、寝るまでの、生活全体をカバーするシステムであること
- 【情報】フロー・ストック・アーカイブという3種類の情報を、それぞれの特性に応じて、適切に管理するシステムであること
- 【特長】WorkFlowyの特長をうまく生かし、阻害しないシステムであること
- 全体から一部分を切り出す
- 知的生産のフローの中に情報を流す
(2) 使える道具の特徴を整理する
次に、WorkFlowyのトータルなシステムのために使える道具を整理してみます。
私がWorkFlowyのために使っている道具は、MacBook Air、Windowsデスクトップ、iPhoneの3つです。それぞれ、どのような特徴があるでしょうか。
a.MacBook Air
11インチのMacBook Airです。キーボードのタッチがとても気に入っています。
(a) できること・できないこと
Macからなら、WorkFlowyの全機能を利用できます。
MacBook Air自体には、インターネット接続環境がありません。ただし、iPhoneのインターネット共有や、au Wi-Fiが利用できるので、たいていどこでもインターネット接続を利用できます。
MacBook Airは、持ち運べます。椅子さえあれば、まあ、使えます。でも、椅子がない場所では使えません。もちろん、歩きながらも無理です。
(b) 得意なこと・苦手なこと
MacBook Airのいいところは、なんといっても、キーボードです。キーボードの大きさも、キーを押した感覚も、気持ちよくて、しっくり来ます。
MacBook Airからなら、WorkFlowyのショートカットキーも快適です。WorkFlowyのショートカットキーはMacのシステムショートカットキーと多少かぶります。でも、私はMacのシステムのショートカットキーを使っていないので、Macの方を変更しました。
MacのキーボードショートカットでWorkFlowyのトピックを自由に操り、WorkFlowyをテキスト管理システムとしてうまく機能させるための、MacOS基本設定
ShortcutKey2URLなどのアドオンなどを利用すれば、ショートカットキーに特定の操作を割り当て、キーボードからできることの幅をさらに広げることだってできます。
画面も広いです。MacBook Airの11インチディスプレイはわりと横長なので、TileTabsで2画面に分割しても不自由ありません。ひとつのアウトラインを2画面で同時に表示して、離れた場所を同時に操って文章を書くことができます。
すぐに使い始めることができるのも、MacBook Airの強みです。ディスプレイを開いてパスワードを入力すれば、そこに前回使ったままのWorkFlowyが現れ、そこから使い続けることができます。
(c) 私の条件
自宅で子どもと一緒にいるときは、基本的に、MacBook Airは触りません。自宅でMacBook Airを触ることができるのは、子どもが起きる前の早朝と、子どもが寝た後くらいです。
仕事中の外出の際は、常にMacBook Airを持ち歩いています。私の仕事は新幹線で移動することがわりと多いので、新幹線の中を移動書斎として活用しています。
私の昼休みは、2日に1回くらい、スターバックスです。Kindleで本を読むこともありますが、MacBook AirでWorkFlowyを触っていることの方が多いです。
b.Windowsデスクトップ
職場のWindowデスクトップは、デュアルモニタです。サブモニタは、縦置きにしています。
キーボードは、自費でRealforceを購入しました。奮発したので悪くはないのですが、MacBook Airのキーボードの方が好きです。MacBook Airと同じようなWindows用の外付けキーボードがあればいいのになあ、と渇望しています。
(a) できること・できないこと
Windowsからも、WorkFlowyのすべての機能を使えます。
ただ、当たり前ですが、Windowsデスクトップは持ち運べません。
(b) 得意なこと・不得意なこと
Windowsデスクトップのキーボードは、テンキーもついていて、まあ、使いやすいです。
Windowsには、キーボードユーティリティ用のアプリケーションもたくさんあります。
たとえば、enthumbleというものの評判がよいようです。
Windowsデスクトップの強みは、なんといっても、画面の広さです。デュアルモニタなので、視界がばーっと広がります。横置きのメインディスプレイを横に2分割し、縦置きのサブディスプレイに縦に長く表示すれば、ひとつのアウトラインの中の3つの場所を同時に表示することも快適です。
他方で、Windowsパソコンの苦手なことは、使い始めるまでのタイムラグです。一旦シャットダウンしてしまうと、パソコンの電源を入れてからWorkFlowyを使えるようになるまで、数十秒の時間が必要です。
(c) 私の条件
職場では、クラウドサービスに対する制約はありません。WorkFlowyを使うのは自由です。
c.iPhone
私のスマートフォンは、2015年11月現在、まだiPhone5cです。そろそろ機種変更したほうがいいかなあ、とも思っており、キャリアメールを使っていないためMNPの縛りもないのでハードルは低いのですが、iPhone5cに不満をほとんど感じていないため、機種変更の機会を逃しています。あと1年くらいこのままかもしれません。
(a) できること・できないこと
スマートフォンでできることは、いろいろな状況での利用です。
私が今使っているiPhone5cは、片手操作がらくらく可能な大きさなので、片手さえ使えれば、基本的な操作の大半を実行できます。片手に荷物を持って立っているときや歩いているときでも、WorkFlowyを使えるわけです。
他方で、スマートフォンからでは、WorkFlowyの全機能を利用することができません。たとえば、普通にアプリから使っているだけでは、共有やExportは使えません。
(b) 得意なこと・苦手なこと
スマートフォンが得意なことは、幅広い状況での利用です。特に、スマートフォンは、基本的に、常にインターネットにつながっていますので、インターネット環境がないことによる制約をうけるリスクも高くありません。
また、一般に、スマートフォンには、いろいろなアプリがインストールされています。アプリ間でデータを受け渡して組み合わせることも、スマートフォンが得意とする使い方です。
入力インターフェースがタッチパネルであることも、スマートフォンの特徴です。WorkFlowyなら、Zoomや折りたたみを直観的に操作することができます。
他方で、テキスト入力はそれほど得意ではありません。特に、WorkFlowyはトピックという単位を持っているため、普通のアプリと比較して、直観的なわかりやすさも劣ります。
(c) 私の条件
自宅で子どもが起きているときにiPhoneを触ることはできます。たとえば、子どもと一緒にDVDで映画を見ているときなどは、iPhoneからWorkFlowyを触っています。
通勤電車は、座れませんが、満員電車では全然ありません。なので、立ったままiPhoneを触ることは十分可能です。片道20分くらいなので、やろうと思えば、1日40分くらいはiPhoneからWorkFlowyを触る時間を確保できます。もっとも、Kindleで本を読むことも多いので、40分すべてをiPhoneからのWorkFlowyに利用するわけではありません。
職場にいるときに私物のiPhoneを出すことは、差し支えありません。もっとも、職場にいるときにWorkFlowyを見たいなら、職場のWindowsデスクトップからアクセスすればよいので、必要性は低いです。
(3) ふりわけと見直し
以上を前提に、iPhoneからのWorkFlowy利用を組み立ててみます。最初に(1)のaで書いた用途を、パソコンとiPhoneにざっと振り分けて、次に、iPhoneがそれらの役割を担うことについて、WorkFlowyの特徴から見直してみます。
a.用途のざっとした振り分け
(a) 着想メモ
着想メモのうち、パソコンを開いていないときは、iPhoneの出番です。iPhoneを取り出し、WorkFlowyアプリを立ち上げ、適当な場所にメモを放り込みます。
着想メモの中で、私にとってとても大切な場面は、文章を書いている途中で浮かんできた着想を捕らえることです。私は、文章を書くためには、基本的にWorkFlowyを使います。そのため、文章を書きながらの着想が浮かんできたときは、たいてい、WorkFlowyを使っています。そのときは、そこでそのまま、着想をメモします。多くはパソコンだと思いますが、iPhoneのこともあるかもしれません。
いずれにせよ、WorkFlowyに着想をメモするために大切なことは、
- とにかくどこでもいいのでメモして、
- あとでしかるべき場所にメモを移動する
という2段階です。
(b) 抜き書き読書ノート
「抜き書き読書ノート」は、その全プロセスにおいて、パソコンがふさわしく、iPhoneには向いていません。
まず、抜き書きをWorkFlowyに取り込むプロセスは、iPhoneのタッチパネルで紙の本を書き写すのは億劫ですし、Kindle本のハイライト箇所を取り込むには、パソコンからkindle.amazon.co.jpにアクセスする必要があります。
次に、三色ボールペンWorkFlowyで線を引いたり書き込んだりするには、パソコンのキーボードからの操作が必須です。
また、抜き書き読書ノートは、スキマ時間にさくっと参照するためのものであるよりもむしろ、じっくり落ち着いて文章を整えたりする場面で力を発揮する情報です。iPhoneから参照する要請は高くありません。
そこで、「抜き書き読書ノート」は、基本的にパソコンから使うものとします。
(c) ブログ原稿
ブログ原稿は、テキスト入力がメインなので、キーボード必須であり、パソコンの独壇場、と思われるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。むしろ、iPhoneが一番活躍するのは、ブログ原稿かもしれません。どういうことでしょうか。
●
たくさんの文字を入力するなら、iPhoneのタッチパネルよりも、パソコンのキーボードの方が便利です。
でも、ブログ原稿を書くプロセスで大切なことは、たくさんの文字を入力することだけではありません。特に大切なのは、適切なテーマとメッセージをつかむこと、わかりやすい構成を組み立てること、また、文章の完成度を高めるための推敲(読み返し、書き直す)です。これらのプロセスにおいては、キーボードがないことはそれほど問題にならず、むしろ、iPhoneだからこそのメリットがあります。
たとえば、テーマとメッセージについて、なんとなく言いたいことがあるんだけれど、どうもうまくまとまらない、という状態に陥っているとします。こんな状況を解消してくれるのは、えてして、全然関係のないことをやっていて、突然、見える光です。そんな光が見えたときに、ぱっとiPhoneからWorkFlowyを開き、書きかけのトピックを操作できると、一気に状況が改善して、テーマとメッセージが明確になることがあります。
また、たとえば、だいたい書き上げた原稿を推敲するとき、iPhoneから読み返すと、パソコンからは気づかなかった誤字を見つけたり、パソコンでは感じなかった読みにくさを感じることがあります。iPhoneの小さな画面であることや、電車の中で立ちながらというiPhoneを使う状況など、一般的にはネガティブな条件が、推敲にとっては、かえってプラスに作用するのです。
さらに、最後の仕上げがなかなか進まず、だいたいできあがっているのに、書き上げることができずに苦労していた原稿が、iPhoneから書き進めたとたん、すっと前に進み、一気に完成することが、わりとたくさんあります。iPhoneのWorkFlowyから原稿を操作することで、産みの苦しみを解消できるわけです。
もちろん、iPhoneからでは、トピックの並び替えはやりにくいですし、テキスト入力も不十分です(たとえば、1文字目大文字、2文字目以降小文字の英単語を入力するなどは、iPhoneからだと、わりと面倒です)。そのため、
- iPhoneでは、新規トピック作成で構成を組み立てて、後でパソコンから、iPhoneで組み立てた構成に従って、実際のトピックを移動する
- iPhoneでは、略語を使ったり、誤字を気にせず書き進めたりして、後でパソコンから、きちんとした言葉に直す
などの工夫は必要です。
でも、ブログ原稿を書き上げるプロセスの中に、iPhoneからの操作を活用すると、ブログ原稿を書くフローを、うまく流してくれます。
●
もちろん、iPhoneだけでできるからiPhoneだけでやればよい、という話ではありません。たとえば、ハサミスクリプトを動かすのは、iPhoneよりもパソコンのほうがわかりやすいですし、最終的にWordPressへ投稿するのも、iPhoneよりもMacのMarsEditの方が簡単です。
しかし、パソコンをメインとしたプロセスに、iPhoneからの操作を付け加えると、WorkFlowyによるブログ原稿作成は、もっとスムーズに流れます。
b.「全体から一部分を切り出す」と「知的生産のフローを流す」という2つのポイントからの見直し
さて、このふりわけた内容は、「全体から一部分を切り出す」と「知的生産のフローを流す」という2つのポイントに沿っているでしょうか。
(a) 全体から一部分を切り出す
「全体から一部分を切り出す」とは、WorkFlowyが得意とする知的生産のあり方です。
全体と一部分(それより上の階層がない・それより上の階層がある)
ここで考えたふりわけは、いわば、WorkFlowyのトータルなシステムという全体から、一部分を切り出して、iPhoneに割り当てている、といえます。iPhoneで全体を担えるのか、担えないのか、という二項対立を超えて、iPhoneだけでやれる部分、iPhoneの強みが生きる部分を切り出して、iPhoneに担当させているわけです。
こうしてiPhoneのために切り出された一部分は、全体の中に位置づけられています。その一部分をiPhoneで操作すると、その操作は、WorkFlowy全体に反映されます。
iPhoneだけで全体をカバーしようとせず、iPhoneが担当するにふさわしい一部分をiPhoneのために切り出す、というあり方は、「全体から一部分を切り出す」というWorkFlowyの特長に沿っています。
(b) 知的生産のフロー
知的生産とは、情報をインプットし、インプットした情報を操作し、新しい情報をアウトプットする、という、一連のフローです。WorkFlowyは、この「知的生産のフロー」と、とても相性のよい道具なのでした。
この記事では、iPhoneからWorkFlowyを快適に使う方法を考えてきました。そして、たとえば以下のようなことにiPhoneを使うとよいのではないか、という結論に至りました。
- パソコンを使えない状況で浮かんできた着想をメモするために、iPhoneからWorkFlowyを使う
- 文章のテーマやメッセージを明確にしたり、構成を組み立てたりするために、iPhoneからWorkFlowyを使う
- パソコンで行き詰まった部分を解消するためや、文章を書き上げるための最後の産みの苦しみを超えるために、iPhoneからWorkFlowyを使う
これらは、iPhoneがなかったなら、そこで流れが止まってしまっていた部分です。着想を捕まえなければフローが始まりませんし、テーマやメッセージや構成を組み立てることがうまく行かなければフローの方向が決まりません。行き詰まりや最後の産みの苦しみを解消できなければ、フローは貫通しません。これらのつまりを解消し、知的生産のフローを流すことにこそ、iPhoneの役割があります。
iPhoneは、知的生産のフローの全体をカバーする道具ではありません。そうではなく、フローの中で流れが滞っているところをスムーズに流すための道具が、iPhoneです。
3.まとめ
iPhoneからWorkFlowyをどのように使うかを考えるときは、iPhoneのことを考えるだけでは不十分です。ここでの目的は、iPhoneからのWorkFlowy使いこなしコンテストで優勝することではなく、WorkFlowyのトータルなシステムをうまく機能させることなのですから、iPhoneをシステム全体の中に適切に位置づけなければなりません。
iPhoneでできることは、限られています。WorkFlowyアプリのできは今ひとつですし、ブラウザから使っても課題が残ります。だから、iPhoneだけで、WorkFlowyのすべてを担うことはできません。
でも、そんなiPhoneが何らかの一部分を担うことで、システム全体がスムーズに流れるかもしれません。
そんなiPhoneが担える一部分としては、
- 着想のメモ
- 歩いているときや立っているときに浮かんた着想をWorkFlowyに捕まえること
- ブログ原稿執筆
- 頭に浮かんだテーマとメッセージをメモすること
- 全体の構成をラフに描くこと
- 執筆が行き詰まっている箇所を読み返し、書き直すこと
- 文章を書き上げるための産みの苦しみに取り組むこと
などがあります。
iPhoneは、WorkFlowyシステムの中心を担うメインの道具としては、力不足です。それでも、iPhoneがあるからこそ、WorkFlowyのシステム全体がうまくいく、という状態にすることはできます。
●
とはいえ、では、iPhoneをWorkFlowyのトータルなシステムの中に位置づけるには、具体的に、何をどうしたらよいのでしょうか。
ひとつのヒントを与えてくれるのは、サブアカウント運用です。WorkFlowyの共有機能やトピック移動機能を最大限活用するこのTipsは、iPhoneをWorkFlowyのトータルなシステムの中に位置づけることを、力強く後押ししてくれます。
次回は、このサブアカウント運用をお話します。
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