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[具体例]本からの引用を格納した「トピック」は、WorkFlowyの中を、どのように流れていくのか?

公開日: : 最終更新日:2016/05/05 WorkFlowy, 知的生産

1.テキスト情報を格納した「トピック」が、WorkFlowyの中を流れる

(1) 「トピック」という入れ物に光を当てた一連の記事

次の3つの記事を書きました。「WorkFlowyがシームレスな知的生産システムである」という結論とその理由を考察した一連の記事です。

知的生産のフローとWorkFlowy

『コンテナ物語』の「コンテナ」から、「入れ物」による規格化・単位化が価値を実現するための条件を考える

「コンテナ」と「トピック」〜WorkFlowyの中に知的生産のフローを流すシステム〜

WorkFlowyは、シームレスな知的生産システムです。WorkFlowyは、情報の取り込み、情報の操作、情報の発信という知的生産のフローを、シームレスに支えてくれるからです。

WorkFlowyがシームレスな知的生産システムである理由は、「トピック」にあります。「トピック」は、WorkFlowyがテキスト情報を管理するために用意している唯一の単位であり、いわば「入れ物」です。WorkFlowyは、情報の取り込み→情報の操作→情報の発信という知的生産のフロー全体で、一貫して、テキスト情報を「トピック」という1種類の入れ物に格納したままにしています。「トピック」によってテキスト情報を規格化・単位化したまま、スムーズに知的生産のフローを流すことが、WorkFlowyという知的生産システムが持つ大きな特徴です。

(2) 具体例を示す

これら3つの記事で書いた内容は、かなり抽象的です。「トピック」や「知的生産」の本質から抽象的に考察しようとおもって書いたので、抽象的であることは別に悪いことではないと思うのですが、具体例がないと、よくわからないかもしれません。また、ここで書いた「トピック」の特徴などは、抽象的な思想や理論に意義があるのではなく、具体的な場面で現に何らかの価値を生み出してこそ、意義があります。

そこで、具体的に紹介します。私が実際に経験したたくさんの事例の中から、「訓練としての「発見の手帳」から、積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」というブログ記事に『ドーン』という小説からの抜き書きを引用したことを取り上げます。

視点を主に抜き書きの側において、『ドーン』からの抜き書きが、どのように私のWorkFlowyの中に取り込まれ、私のWorkFlowyの中をどのように移動し、そしてどのようにそのブログ原稿の中に溶けこんだのか、そのフローを説明します。

2.『ドーン』からの抜き書きが、あるひとつのブログ原稿に溶け込むまでのフロー

(1) WorkFlowy抜き書き読書ノート術で『ドーン』を読む

あるとき、私は、Kindleで『ドーン』という小説を読みました。物語に引きこまれ、夢中で読み進め、あっという間に読み終えました。

『ドーン』の中には、自分にとって大切な価値を持つことが、たくさん書いてあったような気がしました。そのまま読みっぱなしにしたくない、と思いました。

そこで、少し立ち止まり、「WorkFlowy抜き書き読書ノート術」で『ドーン』を読み込むことにしました。

WorkFlowy抜き書き読書ノート

まず、もう一度『ドーン』を読み返しながら、客観的に重要だと考えた箇所や主観的に面白く感じた箇所に、ハイライトをつけました。

次に、kindle.amazon.co.jpにアクセスし、自分がハイライトをつけた箇所の一覧を表示しました。そして、ブックマークレット「KindleHighlight」を使って、ハイライトのテキストデータをコピーしました。

そして、WorkFlowyの「本」というトピックの下に、『ドーン』というトピックを立て、このトピックの下に、今コピーしたばかりのハイライト一覧のテキストデータをペーストしました。

さらに私は、三色ボールペンWorkFlowyを使って、今取り込んだばかりの『ドーン』の抜き書きを、三色ボールペン方式で読みました。Kindleのハイライトでは、客観的に重要な箇所と主観的に面白い箇所を区別するのは面倒でしたが、三色ボールペンWorkFlowyなら朝飯前です。客観的にとても重要な赤線、客観的にまあまあ重要な青線、主観的に面白い緑ハイライトで色分けすると同時に、客観系統と主観系統を区別しながら自分のコメントを書き込んでいくことによって、『ドーン』の抜き書きの中には、多様で豊かな意味の構造がどんどん生まれててきました。

こうして、『ドーン』からの抜き書きは、私のWorkFlowyへと取り込まれました。

(2) 「訓練としての「発見の手帳」から積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」への引用

『ドーン』をWorkFlowy抜き書き読書ノート術で読んでから、しばらく経ったころのことです。『知的生産の技術』の「発見の手帳」について考えていた私は、「訓練としての「発見の手帳」」と「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」という見方を思いつき、文章を書きました。

私が書きたいと思った筋は、概要、

  • 以前、私は、「発見の手帳」を、訓練として捉えていたんだろうと思う。
  • でも、最近の私は、積極的な社会参加としての知的生産を強く求めている。
  • であれば、「発見の手帳」を、積極的な社会参加のためのものに変えていく必要があるのではないか。

というものです。

ここには、「訓練としての「発見の手帳」」と「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」を対比させ、前者から後者への変遷を書く、という図式があります。そして、この図式は、「訓練としての「発見の手帳」」よりも「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」の方が好ましい、という価値判断を含んでいます。

ここで私は、少し危惧しました。「「積極的な社会参加のため」というのは私にとっては魅力的なんだけれど、この考え方は、下手をすると「知的な活動をするからには、積極的な社会参加としての知的生産につなげて、価値を生まなくちゃ意味がない」ということに結びついてしまうかもしれない。それは嫌だな。」という危惧です。

この危惧は、文章全体の筋からすれば、あまり気にし過ぎないほうがよい危惧です。こんなことは気にせず、「訓練としての「発見の手帳」」よりも「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」の方が好ましい、という価値判断を図式的に貫くほうが、メッセージとしては明確で、わかりやすくなるでしょう。でも、この危惧をまったく無視するのも嫌でした。私の考えは、「訓練としての「発見の手帳」」よりも「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」の方が価値が高い、ではないからです。

ここをフォローするためになにかいい解決策はないだろうか、と考えた私は、『ドーン』の中のひとつの場面を思い出しました。主人公明日人(アストー)と上司ハリスの会話です。その中で、ハリスは、明日人にこんなセリフを語りかけていました。

いいかね、アストー。人間は、社会に有益だから生きていて良いんじゃない。生きているから、何か社会に有益なことをするんだ。

location 6550

国のために何かをしたから生きていていいなどと、誰が言える? 戦争に行って、命を賭けたからアメリカ国民だなどと誰が言える!

location 6552

宇宙空間で、バクテリア一匹見つけただけで大騒ぎする我々が、人間というこの複雑にして精妙な生き物が、ただ生きているという事実を、なぜもっと尊べない?

location 6553

まさにこれです。社会に有益だから存在を許されるのではなく、存在しているから社会に有益なことをする。これが、私の考えにぴたりとあう関係です。

「積極的な社会参加として社会に有益なものをもたらすから、知的生産を許される」ではなく、「知的生産をしているから、結果として、何かの意味で積極的な社会参加になり、場合によっては社会に有益なものをもたらすこともある」です。

私が「積極的な社会参加のための「発見の手帳」」に感じていた危惧は、これで解消されます。

そこで私は、『ドーン』からの抜き書きを引用することにしました。

WorkFlowyの「本」トピックにZoomし、『ドーン』トピックにZoomし、「社会に有益」といったキーワードでリストを検索したら、すぐにハリスのセリフにたどり着きました。

そして、ハリスのセリフと出典を記したトピックの親トピックをコピーし、「訓練としての「発見の手帳」から、積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」の原稿トピックに戻り、適当な場所に『ドーン』からの抜き書きトピックをペーストしました。

このような流れによって、『ドーン』からの抜き書きは、「訓練としての「発見の手帳」から、積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」の中に溶けこんだのです。

3.おわりに

以上が、『ドーン』から取り込まれたテキスト情報が、「トピック」という入れ物に格納されたままWorkFlowyの中にある知的生産のフローを移動し、最終的に「訓練としての「発見の手帳」から、積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」というアウトプットの中へ溶け込んだ、という具体例です。

私のWorkFlowyの中では、こんなことが、毎日のように起こっています。WorkFlowyを使う前は、とても考えられなかったことです。とてもうれしく思っています。

ちなみに、この「訓練としての「発見の手帳」から、積極的な社会参加のための「発見の手帳」へ」には、『ウェブ進化論』からの引用もあります。この箇所です。

「何かを表現したって誰にも届かない」という諦観は、「何かを表現すれば、それを必要とする誰かにきっと届くはず」という希望に変わろうとしている。

『ウェブ進化論』 location 101

『ウェブ進化論』からの引用も、同じような手順で行いました。

ただ、『ウェブ進化論』と「発見の手帳」にはもともと太いつながりがありますので、『ウェブ進化論』からの引用がこの記事に出てくることは、かなり自然なことだといえます。

これに対して、『ドーン』からの引用は、WorkFlowyに『ドーン』からの抜き書きを取り込んでいなかったら、生じなかったのではないか、という気もします。

WorkFlowyに取り込んだ情報は、一見関係のない分野のアウトプットにも活用できます。

齋藤孝氏は、『三色ボールペン情報活用術』で、こう述べます。

私は、深いくぐらせ方をして自分のものにしたと思える素材を、「テキスト」と呼んでそのほかの資料や情報とは一線を画したものと位置付けている。このテキストという言葉に、私個人は非常に多くの思いをこめている。

『三色ボールペン情報活用術』location 828

WorkFlowyの中に取り込んだ情報は、いろいろな形で活用できる「テキスト」になります。

一度自分の手持ちのテキストになったら、あらゆる形でとことん活用することを考える。すると、あれをこんなふうに使ってみよう、というアイディアが、次々と自然に湧いてくる。

テキストというのは、一粒で何度でもおいしい、というように活用するのがコツだ。

『三色ボールペン情報活用術』location 837

いったんWorkFlowyの中に取り込んだ情報は、「トピック」という入れ物に乗って、自分の知的生産の全フローを縦横無尽に移動します。WorkFlowyに取り込んだ情報は、あらゆる分野の知的生産に、一粒で何度もおいしい、というように活用するのがコツです。

お知らせ

このエントリは、その後、加筆修正などを経て、書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の一部分となりました。

書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元エントリは、次のとおりです。

『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元記事の紹介

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