抜き書き読書ノートで、自分にとって大切で特別な本を育てる(作った後の抜き書き読書ノート活用法)
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本
目次
1.作った後も価値を生み出し続ける抜き書き読書ノート
(1) 抜き書き読書ノートとは何か
ここ数年、私は、本を読んだ後で、読書ノートを作っています。もちろん、すべての本について作るわけではありません。でも、「これはいい本だ」とか「この本を読みながら頭に浮かんだことをもう少し考えてみたい」などと感じたときは、ゆっくり時間を費やして、読書ノートを作ります。
私の読書ノートは、本からの抜き書きをベースに、そこに読書に関するいろんなことを書き込んでいくものです。私は、「抜き書き読書ノート」と呼んでいます。
なぜ、抜き書き読書ノートを作るのか、その目的や理由は、次の記事にまとめました。
どのように、抜き書き読書ノートを作るのか、その方法や手順は、次の記事にまとめました。
さらに、抜き書き読書ノートのためのツールとして、私はWorkFlowyを使っているのですが、WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作る意義と手順を、次の記事にまとめました。
(2) 抜き書き読書ノートは、作った後も、価値を生み出す
抜き書き読書ノートは、作るだけで、その本への理解を深めたり、その本を起点に考えたり行動したりすることができます。でも、抜き書き読書ノートは、作って終わり、ではありません。むしろ、作った後、継続的に価値を生み出し続けることが、抜き書き読書ノートの真骨頂です。
そこで、この記事では、抜き書き読書ノートを作った後、抜き書き読書ノートをどのように活用し、そこからどのような価値を引き出すのか、その使い方や活用法を考えてみます。
2.作った後の、抜き書き読書ノートの使い方
抜き書き読書ノートを作った後、抜き書き読書ノートをどのように使うとよいか、いくつかの場面を考えてみます。
- 抜き書き読書ノートを、読む
- メタ・抜き書き読書ノートを作る
- 抜き書き読書ノートに蓄えた素材を、活用する
- 抜き書き読書ノートを、書く=考えるための作業場にする
- 抜き書き読書ノートを、タスクリストやログにする
(ただし、すべての抜き書き読書ノートでこれらすべてをやらなくちゃいけないわけではありません。)
(1) 抜き書き読書ノートを、読む
抜き書き読書ノートは、それ自体が読んで楽しい読み物です。なにせ、抜き書き読書ノートは、
- 自分にとって何かしら価値のある本を対象として、
- その本の中の、客観的に重要なところと主観的に面白いところの抜き書きが記載され、
- ポイントや感想や関連情報がまとまっている
テキストです。
読んで楽しくないはずがありません。
抜き書き読書ノートを読むことは、楽しいだけでなく、役に立ちます。その本の復習にもなりますし、読みながら線を引いたり書き込んだりすることで、その本を起点にする思考を進めることができます。
抜き書き読書ノートそれ自体を読むことは、作った後で抜き書き読書ノートから価値を引き出すための基本です。
(2) メタ・抜き書き読書ノートを作る
せっかく抜き書き読書ノートを読むなら、抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作るのも悪くありません。つまり、抜き書き読書ノートを本のように捉えて、その抜き書き読書ノートに対して、抜き書き読書ノートを作る作業を行うわけです。
『思考の整理学』に、「メタ・ノート」という手法が紹介されています。着想メモを定期的に読み返し、脈のありそうな着想を、次の3段階で順次選別するという手法です。
- 手帖
- 思いついた着想をどんどんメモする
- 1冊めのノート
- 手帖の中から、時間をおいても輝きを失わない着想メモだけを抜き出して、転記する
- 2冊めのノート(メタ・ノート)
- 1冊めのノートの中から、時間をおいても脈がありそうに感じられる着想メモだけを、ひとつの着想につき見開き2ページを割り当てて、転記する
見返して、やはり、これはおもしろいというものは脈がある。そのままにしておかないで、別のところでもうすこし寝心地をよくしてやる。
別のノートを準備する。手帖の中でひと眠りしたアイディアで、まだ脈のあるものをこのノートへ移してやる。
『思考の整理学』 location 988
ノートにもとづいて、その上にさらにノートをつくる。あとの方をメタ・ノートと呼ぶことにする。
『思考の整理学』 location 1041
(なお、ウェブ上で確認できる最もわかりやすい「メタ・ノート」の説明は、シゴタノ!の次の記事ではないかと思います。デジタルツールに応用する方法の提案も、興味深いです。
思考を整理する「メタ・ノート」習慣を始めよう! | シゴタノ!)
抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作る、という手法は、この「メタ・ノート」とほとんど同じです。対応関係は、次のような感じなので、抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノート「メタ・抜き書き読書ノート」と呼ぶことにします。
- 手帖=本そのもの
- 1冊めのノート=抜き書き読書ノート
- メタ・ノート=抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノート(メタ・抜き書き読書ノート)
「メタ・ノート」は、「時間をおいても輝きを失わないアイデアを、別の場所に移動して育てることを、くり返す」という手法です。
つまり、「メタ・ノート」のポイントは、
- 時間をおいて見返して、アイデアを選別する
- 脈のありそうなアイデアを、別の場所に移動して育てる
- このプロセスを何度かくり返す
という3点にあります。
これを「メタ・抜き書き読書ノート」にあてはめると、
- 抜き書き読書ノートを、時間をおいて読み返す
- 時間をおいても輝きを失わなかった抜き書きや書き込みを、別の場所に移動し、そこで育てる
- このプロセスを、何度かくり返す
となります。
(3) 抜き書き読書ノートに蓄えた素材を、活用する
a.素材を活用する
抜き書き読書ノートには、本からの抜き書きが蓄えられています。自分にとって大切な本の、客観的に重要な箇所の抜き書きと、主観的に面白い箇所の抜き書きです。
これらの抜き書きは、自分が行うアウトプットのための、よい素材になります。せっかくなので、抜き書き読書ノートに蓄えた素材を、いろんな場面で活用するとよいです。
たとえば、先ほどの「(2) メタ・抜き書き読書ノートを作る」で、私は、『思考の整理学』の一節を引用しました。この引用は、同書の抜き書き読書ノートから引っ張ってきたものです。この記事を書くために『思考の整理学』を読み返したりその一節を書き写したりしたわけではなく、以前に作ってあった『思考の整理学』の抜き書き読書ノートに蓄えられていた素材を活用したわけです。
このように、抜き書き読書ノートの中には、宝物のような素材がたくさん眠っています。折にふれて、活用するとよいです。
b.素材とするための必要条件
ただし、抜き書き読書ノートの抜き書きを素材として活用するためには、絶対に満たすべき必要条件があります。次の2点です。
- 出典を明記しておく。紙の本ならページ数。Kindle本ならlocation番号。
- 本からの抜き書きと自分の書き込みを、厳密に区別する。
(4) 抜き書き読書ノートを、書く=考えるための作業場にする
抜き書き読書ノートに蓄えた素材を活用する、という使い方は、抜き書き読書ノートを倉庫のようにイメージしています。これに対して、抜き書き読書ノートを作業場のようにイメージするのもおすすめです。
具体的には、抜き書き読書ノートの中に文章を書きます。本からの抜き書きを目にすれば、そこから自然といろいろな考えが生まれるはずです。この考えを、抜き書き読書ノートのその場に、文章という形で、書き進めます。
このとき、抜き書き読書ノートは、書く=考えるための作業場として機能しています。書く=考えるための材料(抜き書き)を提供するだけでなく、書く=考えるためのスペースや道具を提供しているからです。
ただし、この使い方は、ツールを選びます。たとえば、紙の情報カードやノートで抜き書き読書ノートを作っている場合、紙面の広さという物理的な制約があるため、抜き書き読書ノートのその場所で書く=考えることは難しく、書く=考えるためには別の作業場(別のノートなど)を用意する方がよいでしょう。これに対して、EvernoteやWorkFlowyなどのデジタルツールなら、スペースの制約はありませんので、作業場としての使い方が可能になります。
(5) 抜き書き読書ノートを、タスクリストやログにする
抜き書き読書ノートを書く=考えるための作業場にする、という使い方は、「現在」に抜き書き読書ノートを活用する、という発想です。
これに対して、抜き書き読書ノートを「未来」や「過去」に活用する使い方もあります。
a.「未来」=タスクリスト
まず、「未来」は、タスクリストです。
本を読むと、何らかの新しい行動をしたくなることがあります。というよりも、本を読むことの意義は、ある意味、何らかの新しい行動を開くことにあるようにも思います。
しかし、多くの場合、本を読んでいるときにやろうと思った行動の多くは、実行に移されることなく、終わります。本を読み終わり現実に戻ると、読書中のやる気はどこかに行ってしまい、やろうと思ったことすら忘れてしまうためです。
抜き書き読書ノートをタスクリストとして使うことは、この対策になります。
やりかたは簡単です。抜き書きに関連してやろうと思った新しい行動を、その場にタスクとして書いておくだけです。デジタルツールを使っているなら、あとからタスクだけを検索できるようにしておきます(EvernoteのチェックマークやWorkFlowyのタグなど)。本全体の抜き書きを読み返したら、タスクを抽出して、タスクリストを作ります。
こうしておけば、本を読んでいるときにやる気になった行動が実行される割合は、なにもしないときよりはずっと高まるはずです。
b.「過去」=ログ
次に、「過去」とは、ログです。
一冊の本を読むと、そこからいろんなことが生まれます。考えたり、文章を書いたり、行動したり、誰かと話をしたり。そんなことが生まれれば生まれるほど、その本は、自分にとって、特別な存在になります。
ある本が自分にとって特別な存在であるのは、必ずしも、その本が客観的に妥当する特別な価値を持っているから、ではありません。場合によっては、その本の中身とは関係のない、その本を読んだ状況、たとえば、家族旅行で行った奥入瀬のホテルで、子供を妻が寝かしつけてる間に、ひとりふらりと入ったラウンジで、薪ストーブにあたりながらのんびりとその本を読んだ、とか、そんなことが、その本を特別な存在たらしめることだってあります。
どうせなら、その本を特別な存在にしたすべてのことを、どこかにまとめて記録しておきましょう。そうすれば、その本が自分にとっていかに特別な存在なのかを自覚して、その本を大切に扱うことができるはずです。
抜き書き読書ノートは、その本から生まれたいろんなことを記録するための、よい場所です。その本から生まれたいろんな体験や思考のログを集めることで、その本の特別さが一目瞭然になります。
3.抜き書き読書ノートは、縁あった本を、自分にとって大切で特別な本へと育てるための技法
以上、抜き書き読書ノートを作った後、抜き書き読書ノートをどんなふうに使うことができるのか、私が実際にやってる例を書きました。
まとめると、次の5つです。
- 抜き書き読書ノートを、読む
- メタ・抜き書き読書ノートを作る
- 抜き書き読書ノートに蓄えた素材を、活用する
- 抜き書き読書ノートを、書く=考えるための作業場にする
- 抜き書き読書ノートを、タスクリストやログにする
●
抜き書き読書ノートについて、強調したいことがひとつあります。それは、抜き書き読書ノートは、本を何かのために役立たせるための読書技法ではない、ということです。
もちろん、抜き書き読書ノートを作れば、本に対する理解が深まったり、その本を自家薬籠中のものにすることができたりと、役に立ちます。本当に、実際に、とても役に立ちます。でも、抜き書き読書ノートを作ることや、作った後に抜き書き読書ノートを使うことは、膨大な時間と手間を要求します。コストパフォーマンスは、決してよくありません。ある本を何らかの目的のために役立たせるためだけなら、きっと、もっとコストパフォーマンスのよい合理的な読書技法が、他にたくさん存在します。
でも、私は、せっせと抜き書き読書ノートを作り、また、作った後もコツコツと抜き書き読書ノートを使っています。それは、その本を役立たせたいからではなく、その本と丁寧に向き合うことで、その本を自分にとって大切で特別な存在へと育てたいからです。
抜き書き読書ノートは、縁あって出会った本を、自分にとって大切で特別な本へと育ててくれる、そんな読書技法です。
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