「欲望のマンダラ」を創る
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Mandal-art
1.問題の状況
(1) ブログのおかげで、やりたいこととたくさん出会えて、ありがたい
ここ2,3年、心から「やりたい」と思える対象と、たくさん出会うことができています。最近だと、WorkFlowyやマンダラート、Bookmarkletの勉強やラクガキの『ジョジョの奇妙な冒険』を読み返すことなどなど。
大きな理由は、この「単純作業に心を込めて」です。ブログで公開するために文章を完成させようとする過程で、いろんな収穫があり、その多くが、「やりたい」と感じられる対象につながっています。
「やりたい」と心から感じられる対象と出会えるのは、とても幸せなことです。やりたいこととのたくさんの出会いを、ありがたく感じています。
(2) 手持ち時間よりも、やりたいことが多くて、追いついてない
でも、よいことばかりでもありません。
今の自分に与えられた手持ち時間は、やりたいこと全部をやるためには、全然足りません。おまけに、やりたいことは日々増えていきます。どんなに上手にタイムマネジメントしても、今のペースでやりたいこととの出会いに恵まれ続けていたら、どうにもなりません。
やりたいことは、やりたいことであって、やらなくちゃいけないことではないので、できなくても問題はありません。でも、せっかく「やりたい」と心から感じられる対象と出会っているのに、それをやる時間が足りなくて、中途半端で終わるのは、なんとももったいない気がします。
何かよい対策はないでしょうか。
2.対策としての欲望のマンダラ
(1) 優先順位は、悪くないけれど、ベストでもない
タイムマネジメントの教科書的な対策は、「優先順位をつける」です。
まず、やりたいことを全部書き出す。次に、自分の価値観や役割、使える資源や特性・能力も書き出す。そして、自分の価値観や能力なども考慮に入れて、やりたいことに優先順位をつける。あとは、優先順位に従って、ひとつひとつ順番にやっていくだけです。
優先順位をつけるのは、悪くなさそうです。その日の気分でやりたいことをやり、全部が中途半端で終わるよりは、優先順位の上位いくつかをきちんと形にするほうが、ずっとよいような気がします。
ですが、優先順位をつけるのは、悪くはないけれど、ベストでもありません。
今の私の状況は、やりたいことと自分の手持ち時間が、まったく釣り合っていません。手持ち時間が、圧倒的に足りません。この状況で優先順位をつけるということは、優先順位がとても高いいくつかを除いた大多数を捨てる、ということを意味します。
このアプローチで捨てざるをえない大多数も、心から「やりたい」と感じられる対象です。せっかく出会えたこれら大多数を、何らかの形で活かすようなアプローチはないものでしょうか。
(2) 考え方は、「どうせやるなら二毛作」
そこで思いついたのは、「どうせやるなら二毛作」です。
最終的に研究か教育に回収できるならば自己満足だけにならないので、どうにかそういうサイクルというかシステムを構築しておきたいところです。私の座右の銘は、「どうせやるなら二毛作」です。
— ぱうぜ (@kfpause) 2013, 9月 29
「どうせやるなら二毛作」時間とレイヤーの複数掛けを目指すために – カフェパウゼをあなたと
ぱうぜ (@kfpause)さんの座右の銘である「どうせやるなら二毛作」は、最初に読んだときからいい言葉だと思い、それ以来、大きな影響を受け続けています。
最終成果物をWordで作るときも、WorkFlowyで原稿を書いて、WorkFlowyを育てる、というフローは、私なりの二毛作のひとつの具体例です。
彩郎流二毛作。知的生産の治具マクロ「WFtoMSWD.dot」で、Word文書作成プロセスから得る収穫を倍にする。
また、日々の仕事を通じて『私の教科書』を育てるという考え方も、広い意味では、「どうせやるなら二毛作」です。
今回も、この「どうせやるなら二毛作」の考え方を使って、やりたいことが多くて手持ち時間が圧倒的に足りない問題に取り組んでみます。
(3) 具体策としての「欲望のマンダラ」
では、「どうせやるなら二毛作」の考え方でアプローチするためには、どんな方法を取るとよいでしょうか。
私は、具体的には、何をしたら良いのでしょうか。いつ、どこで、何を用意して、何を、どのように、したらよいでしょうか。
今回は、マンダラートを使うことにしました。自分のやりたいことを言葉にして、3×3のマンダラの形に載せてみることにしました。
昼休みに、スターバックスで、MacBook Airを開いて、MWEというソフトウェアを使って、マンダラの上に自分のやりたいことを言葉で表現することにしました。
自分のやりたいこととは、自分の欲望です。私は、「欲望のマンダラ」を創って、自分の欲望と向き合うことにしました。
3.欲望のマンダラを創る
(1) 彩郎の「欲望のマンダラ」(2015年5月)
やってみました。
今の私の「欲望のマンダラ」は、これです。
中心に、生活を創るキーワード辞書のマンダラを置き、そこから周辺マンダラ展開で8つのマンダラを創りました。
「育てる」と「開く」のマンダラ展開([生活を創るキーワード辞書]創りの途中経過報告)
以下、このマンダラを創る過程で考えたことなどを説明します。
(2) 「欲望のマンダラ」の創り方
a.生活を創るキーワード辞書からスタートする
「欲望のマンダラ」の出発点は、「生活を創るキーワード辞書」のマンダラにしました。
「生活を創るキーワード辞書」とは、『[超メモ学入門]マンダラートの技法』で紹介されていたアイデアです。思考の道具としての言葉の精度を高めるため、自分がよく使うキーワードに対する理解を高めるための手法です。
[生活を創るキーワード辞書]で、言葉を「思考の道具」として鍛える(マンダラートが言葉を大切にする理由)
やってみたところ、私の「生活を創るキーワード辞書」の中心マンダラは、こんな形になりました。
キーワードは次の8つです。
- 育てる
- 整える
- 暮らす
- 心を込める
- 開く
- 試行錯誤する
- くり返す
- 練習する
この作業をして感じたことは、「生活を創るキーワード辞書」を創る作業は、自分が人生で大切にしたい事柄を明らかにすることに、まっすぐつながっている、ということです。
そのため、今回、「欲望のマンダラ」を創るときも、この「生活を創るキーワード辞書」のマンダラを出発点に置きました。
b.4つの領域
次に考えたのは、周辺マンダラ展開をするときの方針です。
候補として考えたのは、次の3つです。
- 自由連想で、やりたいことを8つピックアップする
- 5Wマンダラで、「なぜ」「どこで」「なにを」「いつ」の4つの視点で、やりたいことを絞り込む
- 自分の活動領域ごとにひとつ、やりたいことをピックアップする
今回は、3つめの自分の活動領域ごとにしました。
マンダラの周辺セルは8つあります。でも、空白のセルを残しておくほうが、思考の余地が残り、新しい思考が生まれるような気がします。
そこで、今回は、4スミの4セルを使い、次の4つの領域にしました。
- 自分
- 家庭
- 仕事
- 彩郎&単純作業に心を込めて
「生活を創るキーワード辞書」の8つのキーワードそれぞれにつき、この4つの領域でのやりたいことをピックアップすれば、とりあえず「欲望のマンダラ」を創ることができます。
この作業をした結果が、上でも紹介した、このマンダラです。
(3) 「欲望のマンダラ」の説明
今のところ、「欲望のマンダラ」は、こんな形をしています。今後変わるかもしれませんが、とりあえず、これが私の今の欲望の出発点です。
周辺マンダラをひとつひとつ見ていきます。
a.育てる
「育てる」という最重要キーワードの欲望は、こうなりました。
- 知的生産の方法を育てる
- 子どもを育てる・家庭を育てる
- 仕事の仕組みを育てる・組織を育てる
- 彩郎というキャラクターを育てる・「単純作業に心を込めて」を育てる
b.整える
私は、エントロピーが低くて秩序のある状態が好きなので、「整える」の欲望も大切です。こうなりました。
こうしてみると、「整える」は、ついつい後回しにしてしまう領域です。
- 生活リズムを整える
- 家庭の収納を整える
- 仕事の書類を整える・仕事の道具を整える
- 「単純作業に心を込めて」に書いた文章のカテゴリやタグを整える
c.暮らす
「暮らす」はこんなかんじです。
以前は「書斎のある暮らし」にあこがれていたのですが、今は、WorkFlowyやブログ、MacBook Airのおかげで、「スターバックスのある暮らし」の方がいいような気がしています。この辺りをもう少し考えてみたい。
- 書斎よりもスターバックスの暮らしスタイル
- 毎日を味わう
- 仕事と暮らしを対立的に捉えない
- 彩郎に暮らしの要素を加える
d.心を込める
ブログタイトルでもある「心を込める」は、こんなかんじ。
「欲望のマンダラ」を作ってみて、「推敲する」が何度も出てきました。『数学文章作法 推敲編』をもう一度読み、ブログエントリとしてアウトプットしたいです。
- 欲望のマンダラを作って、自分の欲望とじっくり向き合う
- 心を込めて、家事をする
- 仕事の文章の推敲に、心を込める
- これまでに「単純作業に心を込めて」に書いた文章を読み返して、ブラッシュアップする。
e.開く
「開く」は、もうひとつの最重要キーワードです。
私の中では、「開く」と「論理」がかなり近い関係にあります。また、WorkFlowyのいろんな機能を「開く」の観点から整理することもやってみたいと思っていたのでした。
- 言葉を鍛える
- 家庭を開く。家具の配置や部屋の使い方を、もっと開放的に。
- 仕事の外で身につけたことを、仕事に取り込む
- JavaScriptを学んで、Bookmarkletで、WorkFlowyを他のツールに開く
f.試行錯誤する
「試行錯誤する」は、このブログのテーマでもあります。
この「欲望のマンダラ」も、「試行錯誤する」のひとつでもあります。
- いろんな方法を試してみる。欲望のマンダラとか。
- 子どもの「なんで?」に対する応答を試行錯誤する。記録する。
- アウトライナーとマンダラートを仕事に活用する。大学の講義にも。
- 「単純作業に心を込めて」に書く文章の文体をいろいろと試してみる。
g.くり返す
最近、『ジョジョの奇妙な冒険』を読み返しています。これまでに読んだ物語のうち、まちがいなく面白いとわかっているものを読み返すのは、すごく楽しくて収穫の大きい営みな気がしています。これも「くり返す」の一環です。
そんなわけで、「くり返す」はこんなかんじ。
- これまでに読んだ物語のうち、大切なものを、読み返す。(村上春樹、上橋菜穂子、ジョジョ。)
- 子どもと遊ぶとき、同じことを何度もくり返すことを、自分から止めない。
- 気合を入れて作るべき文書は、くり返し推敲する。
- これまでに書いたテーマのうち、大切なテーマを、くり返し書く。
h.練習する
「練習する」は、時間もかかるので、なかなか進んでいません。でも、やりたいことがたくさんあります。
ラクガキは、とても練習したいことのうちのひとつです。子どもをお絵かきに誘って、一緒にたくさん落書きしたいです。
もうひとつは、Bookmarkletづくり。知的生産の治具の威力を実感しているので、自分で作れる力を身につけると、波及効果が高いはずと確信しています。
- 物語のある論理的な文章を書くことを練習する
- ラクガキの練習。子どもと一緒に表情や丸三角四角の使い方を練習する。
- WorkFlowyを使ったセミナーのやり方を練習する
- プログラミング。特にJavaScript(Bookmarklet)。
4.次に、どうするか
このように、私は、こんな「欲望のマンダラ」を創りました。今、私がやりたいことの大部分が、この「欲望のマンダラ」の中にあります。
次に私がやることは、ふたつです。
(1) 「欲望のマンダラ」を読み、創り上げる
ひとつは、「欲望のマンダラ」を読んで、創り上げること。
今の「欲望のマンダラ」は、空白も残っていますし、同じようなことが複数の場所にバラバラに存在しています(たとえば、推敲とかプログラミングとか)。空白を埋めたり、複数の場所に存在する似たようなことを関連づければ、もっといいマンダラに育つはずです。
そのためには、マンダラを読み、書き換えて創り上げることが必要です。マンダラは、一度創って終わりのものではなく、読み返し、書き換えて、創り上げるものです。
(2) 欲望をひとつひとつ実行し続けること
もうひとつは、もちろん、欲望を実行することです。
ワーキングパパである私には、そんなにたくさんの自由時間は残されていません。でも、子どもと一緒に遊んでいるときでも、仕事でWord文書を作っているときでも、昼ごはんを食べているときでも、「どうせやるなら二毛作」と考えることができれば、何らかの欲望を実行に移すことはできそうです。
「欲望のマンダラ」で自分の欲望の全体を俯瞰すれば、そのときどきの与えられた条件の中で実行できる欲望に気づけるはずです。
優先順位や実行順序は決めずに、その場その場の状況の中で、ひとつひとつ実行し続けていくつもりです。
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