[条件づくり]と[手順組み]、そして「待つ」こと。(『[超メモ学入門]マンダラートの技法』より)
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Mandal-art, 単純作業に心を込める
1.はじめに
こんな文章を書きました。
「「失敗のマンダラ」を創ると、失敗の構造をみることができて、失敗のダメージから回復することもできるし、失敗から学ぶこともできるので、よい」ということを伝えたくて、心を込めて、書きました。
この中で、[条件づくり]と[手順組み]という考え方を紹介しました。『[超メモ学入門]マンダラートの技法』の第6章で解説されていたものです。
[条件づくり]と[手順組み]は、すごいです。私は、『[超メモ学入門]マンダラートの技法』からいろんな収穫を得ましたが、[条件づくり]と[手順組み]は、その中でも3本の指に入ります。この考え方は、すでに、私の毎日の暮らしの中のいろんな場面で、現にうまく機能しています。
「「失敗のマンダラ」で失敗の構造をみる。」の中で書いたのは、[条件づくり]と[手順組み]のうち、結論としてのノウハウの部分だけです。文章全体の主題からして、[条件づくり]と[手順組み]を大展開するのはバランスが悪かったためです。
そこで、周辺マンダラの展開のようなイメージで、[条件づくり]と[手順組み]を中心に置いて、今から、この文章を書きます。
2.「育てる」ための[条件づくり]と[手順組み]
(1) 生活を創るキーワードとしての「育てる」
『[超メモ学入門]マンダラートの技法』は、言葉をとても大切にしています。
マンダラートが、マンダラの桝目に載せるのは、主に言葉です。ぱっと考えると、言葉は、絵や図と比べて、彩りが乏しいような気がします。でも、言葉の持つイメージをきちんと理解するなら、言葉は、絵や図と比べてもぜんぜん遜色ないほどの彩りを発揮します。
言葉は、思考の道具です。言葉の持つイメージを本当に理解すれば、その言葉を使った思考の質が、グンと高まります。
このために『[超メモ学入門]マンダラートの技法』が推奨するワークが、[生活を創るキーワード辞書を創る]ということです。
先日から、私はこの[生活を創るキーワード辞書]創りに取り組んでいます。
[生活を創るキーワード辞書]で、言葉を「思考の道具」として鍛える(マンダラートが言葉を大切にする理由)
「育てる」と「開く」のマンダラ展開([生活を創るキーワード辞書]創りの途中経過報告)
『[超メモ学入門]マンダラートの技法』の「第6章 構造をミル」は、「育てる」という言葉を題材に、[生活を創るキーワード辞書]を創るプロセスを解説してくれています。本章を読むことで、読者は、[生活を創るキーワード辞書]を創る作業を追体験できると同時に、「育てる」という言葉をほんとうの意味で理解することができます。
ここでは、「育てる」という意味をほんとうの意味で理解する、ということに焦点を当てて、「第6章 構造をミル」の内容を整理します。
(2) 「育てる」というやさしい言葉を、ほんとうに理解するには、どうしたらいいか?
まず、本章で著者の今泉氏が指摘することは、「育てる」という言葉がやさしい言葉であること、やさしい言葉ほど分かったつもりになりやすいので、ほんとうに理解することが大事だということ、そして、やさしい言葉をほんとうに理解すれば、具体的な行動につながることです。
できるだけやさしい言葉を選ぶようにアドバイスしておいたのですが、やさしい言葉をリストアップしたでしょうか? 私たちは、やさしい言葉ほど〈分かったつもり〉になりやすいので、このやさしい言葉を、本当に、理解することが大事なのです。そして、もう一つ、これらのやさしい言葉は、私たちを具体的な行動へ導いてくれるものだからです。
「育てる」というやさしい言葉をほんとうに理解することができれば、日々、いろんなことを「育てる」ためにやるべきことが、具体的に分かるはずです。
もし、〈育てる〉という言葉の意味や内容が、本当に分かれば、日々やるべきことも具体的に分かってくるはずではないでしょうか?
では、「育てる」を理解するには、どうしたらいいでしょうか。
今泉氏の提案は、「育てる」をしている〈場〉をイメージすることです。
まず、このような、あまりにもやさしそうな言葉にぶつかったときに、その理解の糸口をどこに求めるかです。”やさしい!” “知ってる!”という言葉は、必ず身近に、そのようなことをしている〈場〉があるはずですから、それをイメージしてみることです。
「育てる」をしている〈場〉を思い浮かべます。家庭で子どもを育てる。農場で家畜を育てる。畑で農作物を育てる。
これらの〈場〉では、どんなことが行われているでしょうか。これをイメージします。
〈育てる〉ことをやってるトコロをイメージするのです。どこでやってる? 子どもを育てている、家畜も育てる、農作物も育てる。そこでは、何をやっているのかを考えてミル。
(3) [条件づくり]しかやっていない!
「育てる」をしている〈場〉をイメージすると、「育てる」とは、「大きくなるための〈環境〉」や「育つための〈条件〉」を整えることだ、ということに気づきます。
農場で家畜を育てるためにするのは、餌をやったり運動させたりすること。切ったり貼ったり伸ばしたり膨らましたりして育てているのではなく、家畜が育つための環境や条件を整えているだけです。
畑で作物を育てるためにするのは、畑を耕したり水をやったりすること。色を付けたり引っ張ったりして育てているのではなく、作物が育つための環境や条件を整えているだけです。
種には、本来、育つ、大きくなるという〈潜在機能〉があるのです。それを〈生命〉というのです。その〈潜在機能〉を、あますところなく発揮させてやるための〈条件〉を作ってやること、それを〈育てる〉というのではなかったか。
「育てる」人がしているのは、「大きくなるための〈環境〉」や「育つための〈条件〉」を整えること、ただそれだけです。あとは、育てられている対象そのものが、それ自体の潜在能力を発揮して、勝手に「育つ」のです。
考えてミレば、これらは、その植物が、大きくなるための〈環境〉を整備してやっているんだ、と気づきます。育つための〈条件〉を整えてやっているのです。それ以外のことは、やっていない! と気づくのです。
「育てる」とは、[条件づくり]です。
私たちが、やること、やっていることは、[条件づくり]なのだということです。
(4) 条件を整えるための[手順組み]
「育てる」とは[条件づくり]です。
「育てる」ためにやるべきことは、[条件づくり]だけです。何かをうまく「育てる」ことを望むなら、私たちが注力するべきは、うまく[条件づくり]をすることです。それしかできません。条件が整えば、その対象は、自然とうまく「育つ」のです。
となると、大切なのは、どのように[条件づくり]を進めるか、です。
さて、育てるとは[条件づくり]だ、とミエてくれば、具体的な行動は、それではどんな条件が必要かを考え、その条件をつくるための作業を、一つひとつ、やっていけばいいということが分かってくる。その条件を見つめ、発見し、その条件がどうすれば作れるかを考え、実行すればいい、と分かる。
ここには、次の3つのステップが書かれています。
- 「育つ」ために必要な条件を洗い出す
- ひとつひとつの条件を作るために必要な作業を洗い出す
- 必要な作業をひとつひとつやっていく
この3ステップのことを、今泉氏は、[手順組み]といいます。
対象が「育つ」ために、複数の条件を整える必要があったとしても、一度にすべての条件を整えることはできません。そのため、条件を整えるための具体的な作業をやっていくには、何からどのように創っていくかの手順を組み立てることが必要になります。
それがはっきりしてきたら、何から創っていくか、という手順組みです。ボクらは、いっぺんに、すべての条件を整えることなどできやしない。変化とは、目的、目標に近づいていくプロセスの上に起きるものなのです。
[手順組み]をして、具体的な行動を続けていくにつれて、「育つ」ための条件がひとつずつ条件が整います。条件が整えば、潜在能力が発揮されて、「育つ」わけです。
(5) まとめ:「育てる」とは、[条件づくり]と[手順組み]
何かを「育てる」ことを考えたときに、私たちにできること、また私たちがやるべきことは、[条件づくり]と[手順組み]です。
これが、[条件づくり]と[手順組み]の考え方です。
3.[条件づくり]と[手順組み]、そして「待つ」こと
(1) 「育てる」から「何かを達成する」へ
さて、[条件づくり]と[手順組み]は、「育てる」だけにとどまりません。
私たちは、日々、いろんな行動をします。多くの行動は、目的を持っています。何らかの目的のために、何らかの行動をします。今泉氏は、「目的のために行動する」ということも、「育てる」と同じで、[条件づくり]である、といいます。
行動とは〈条件づくり〉のための行動なのですね。条件をみたすための行動をとればいい! それだけです。
私たちは一から十まで、自分で創り出していると思っている。そんなことはないんですね。条件さえ揃えば、ものごとは、自然にうまくいく。その条件とは何か。どうすれば、その条件が揃うか。考えることはそれだけです。
[条件づくり]という考え方から眺めると、「何かの目的を達成する」というのは、目的が実現するための条件を整えて、ものごとが自然にうまくいくのを待つ、ということです。
とすれば、[条件づくり]と[手順組み]の考え方は、「何かを達成すること」一般へと広がります。
何かを達成しようと思ったら、そのものが成立するための、条件を明確にし、その条件を創っていくステップを明確にし、あとは一つずつ行動し、条件の整った環境を創り出していくこと。そのためには、何を考え、何を観ていけばいいのか、たえず、環境を眺め、変化を眺める ことによって、あるいは広く情報をキャッチすることによって啓発され、新しい行動を身に付けるための訓練をし、その行動が、自然にできるようになればいい!
- 最初に、その何かが成立するための条件を明確にする
- 次に、その条件を創っていくステップを明確にする。
- 最後に、一つずつ行動して、条件の整った環境を創り出す。
「育てる」にかぎらず、どんなことでも、この3ステップを使うことができます。
(2) 条件の整った環境を創り出して、あとはものごとが自然にうまくいくのを待つ
感覚的な話なのですが、この考え方がうまく機能するのは、ものごとの原理原則を捉えているからです。ここでの原理原則は、「一から十まで自分で創り出しているのではない。条件さえ揃えば、ものごとは、自然にうまくいく。」です。
私たちは一から十まで、自分で創り出していると思っている。そんなことはないんですね。条件さえ揃えば、ものごとは、自然にうまくいく。その条件とは何か。どうすれば、その条件が揃うか。考えることはそれだけです。
目的に向かって努力する人は、ふつう、「私が、目的を達成するために行動している。目的を達成するには、目的を達成するために必要なことをぜんぶやらなくちゃいけない。」と考えます。私も、ちょっと前まで、こんなふうに考えていました。
でも、ものごとの原理原則を踏まえれば、別の表現の方がもっとよいです。たとえば、「私は、条件が整った環境を創り出すために行動をする。条件が整えば、ものごとは、いつか自然にうまくいくはず。あとは、私がすべきことは、ものごとが自然とうまくいくのを待つこと。」という感じです。
目的を達成するために必要な自分の行動は、[条件づくり]と[手順組み」だけで、あとは、ものごとが自然とうまくいくことを信じて、ゆっくりと待つ。この方針は、「私が、目的を達成するために必要なことのぜんぶをやりとげる!」と意気込んで行動するよりも、結果として、ずっとうまくいくような気がしています。
[条件づくり]と[手順組み]、そして「待つ」こと。これが、今のところ、私がもっとも好きな、何かを達成するための戦略です。
4.[おまけ] なんとなく共通点を感じる2つの考え方
[条件づくり]と[手順組み]、そして「待つ」こと。この戦略と、なんとなく似ているなと感じる考え方が、2つあります。簡単にメモしておきます。
(1) 『いつまでもデブと思うなよ』
ひとつめは、『いつまでもデブと思うなよ』のレコーディング・ダイエットです。
レコーディング・ダイエットの本質は、記録による現状把握と要因分析です。記録を続けて、現状を正確に把握し、要因を深く分析すれば、自ずと解決方法が浮上してくる、という考え方をとっています。
「レコーディング・ダイエット」が説く「自分を記録する」方法論は、問題を解決するために役に立ちます。でも、この方法論のアプローチは、正面から問題を解決するというよりも、むしろ、問題が自然と解消されるようにプロセスを改良することで、問題を消してしまう、解消してしまう、というものです。
参考
(2) 『「超」整理法』シリーズのアプローチ
ふたつめは、野口悠紀雄氏の『「超」整理法』シリーズのアプローチです。
『「超」整理法』は、4分冊すべてにおいて、最初に問題の状況を詳しく分析し、なぜその問題が生じるのかをとことん掘り下げ、その後、解決策を提示する、という流れです。
ごく簡単な要約
『「超」整理法1 押出しファイリング』
なぜ、分類できないのか? → 分類しようとすることがまちがい。
解決策:分類しない(ポケット一つ原則)で検索する。検索キーは、時間軸。
『「超」整理法2 捨てる技術』
なぜ、捨てるのがむずかしいのか? → 捨ててよいかの判断がむずかしいから。
解決策:廃棄バッファを作って、とりあえず捨てる仕組みを整える。
『「超」整理法3 タイムマネジメント』
なぜ、タイムマネジメントに失敗するのか? → 時間が目に見えないから。
解決策:一覧スケジュール帳で、時間を見る。
『「超」整理法4 コミュニケーション』
なぜ、電話によるコミュニケーションは問題なのか? → 相手の都合を無視するし、記録が残らないから証拠にもならないし活用もできないから。
解決策:FAXやEmailや紙によるコミュニケーション(相手の都合のいいときに読んでもらえる・記録が残るから証拠も残るしそのまま活用できる)
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