なぜ、文章書きとしての私は、アウトライナーよりもEvernoteを贔屓しているのか?
目次
1.はじめに
この記事を読みました。
Evernoteとアウトライナーの融合に対する試案(2014)[Thought] | るうマニアSIDE-B
膝を打ったのは、冒頭のこのくだり。
文章書きは,たいていアウトライナーかEvernote,かその両方,を愛している.
そして,おもしろいことに,どちらかを贔屓していることが多い.(卵焼きに醤油とソースとどちらをかけるかのように).
そして,どちらも,「いつか相手が歩み寄ってくれないかな...」と夢想している.
おっしゃるとおりです。
文章書きとしての私は、Evernoteとアウトライナーの両方を愛しています。文章書きとしての私は、Evernoteを贔屓しています。そして、文章書きとしての私は、Evernoteの中にアウトライナーが融合されることを夢想しています。
この記事では、このあと様々な考察を重ね、「"お互いが歩み寄って機能統合する"ではなく,"お互いに特化した役割分担" ができないだろうか?」
という発想を基本にして、現段階での試案として、次の機能分担を提案します。
ここからが今回の提案なのだが,こうしたらどうだろうか.
つまり,
・ 「共通のプラットフォームを持ち,検索と情報の移動はスムースに行う.」という前提のもと,
・ アウトライナー部門は,「テキストからなる文書」に絞り,「未完成な文章」を「操作する場所」
・ Evernote部門は,「複合情報を含んだ」「ほぼ完成した文書」を「保存する場所」
と機能分担するのだ.
この考察自体、すごく思考を刺激される内容で、私も、自分なりに、Evernoteとアウトライナーの融合に対する試案をまとめたくなりました。
ただ、この試案をまとめるには、文章書きとしての私が、Evernoteとアウトライナーに何を求めているのか、などをふり返る必要があるように感じます。そこで、今回は、この試案をまとめるための準備作業として、「なぜ、文章書きとしての私は、Evernoteとアウトライナーの両方を愛しているのか? また、なぜ、アウトライナーよりもEvernoteを贔屓しているのか?」について、つらつらと書きます。
2.文章書きとしての私は、なぜ、Evernoteとアウトライナーの両方を愛しているのか?
文章書きとしての私は、Evernoteとアウトライナーの両方を愛しています。何ででしょうか。ここには、文章を書くときに私が大切にしている2つのことが、深く絡んでいます。
(1) 文章のポケット一つ原則と、文章に構造を与えること
文章書きとしての私は、文章を書くときに、2つのことを大切にしています。ひとつは文章のポケット一つ原則で、もうひとつは文章に構造を与えることです。
a.文章のポケット一つ原則
ポケット一つ原則とは、『「超」整理法』の中で提唱されている原則です。あるカテゴリに属するもの全部をひとつの場所に放り込めば、そのカテゴリに属するものを見つけるために探すべき場所がひとつに絞られるので、全体としての探索時間が短くなる、といったことです。
このように、置き場所を一箇所に限定するというのは、きわめて重要なことだ。これを「ポケット一つ原則」と呼ぼう。
もし見つからなければ、それは、誤った判断にもとづいて、あるいは過失によって、捨ててしまったのである。その書類は、もはやどこにも存在しないことが証明されたのである。したがって、別途の処置を考えるしかない。
『「超」整理法』より
これを文章に適用したのが、文章のポケット一つ原則です。文章のポケット一つ原則は、書きかけの文章も書き上げた文章も含めて、自分が書いた文章を全部ひとつの場所に置いておくことで、その場所にいきさえすれば、自分の書いた文章のすべてが手元にある、という状態を実現することを目指します。
参考:なぜ、文章を書く道具として、Evernoteを使うのか
b.文章に構造を与えること
文章の構造とは、文章を構成するいろんな要素が、どんな関係を持っているか、です。文章を構成する要素の組み立て方、とも言えます。
ひとつの文章は、文、段落、節といったいろんな要素によって組み立てられています。文章に構造を与えるとは、これらの要素の関係を、明らかにすることです。
要素の関係とは、たとえば、順接関係や逆接関係なのか、因果関係なのか、抽象理論と具体例という関係なのか、といったことです。節と節の関係、段落と段落の関係、文と文の関係が、どんな関係なのかをひとつひとつ考えて、接続詞などを活用して、丁寧につなぐこと。これが、文章に構造を与えることです。
参考:『論理トレーニング』のエッセンス 論証・論証図・結合論証と合流論証 → 論証の構造を捉える
(2) 文章書きとしての私が、Evernoteとアウトライナーを愛している理由
私が大切にしている2つのことを実現するためには、それぞれ、ベストなツールがあります。
文章のポケット一つ原則を実現するために、私が知り得る最強のツールは、Evernoteです。Evernoteによって、私は、生まれて初めて、満足できる文章のポケット一つ原則の環境を手に入れました。私が文章を書くツールとしてEvernoteを使っている理由のほとんどは、この文章のポケット一つ原則から説明できます。
文章を書くツールとしてEvernoteを使うことのメリット テキストデータのポケットひとつ原則
なぜ、「書く」ワークスペースとして、Evernoteを使うのか?
これに対して、文章に構造を与えるためのベストなツールが、アウトライナーです。アウトライナーは、まさに文章に構造を与えるために存在するようなツールです。アウトライナーを使えば、文章を構成する要素を、文よりも細かい単位で、自由に階層化したり、移動させたり、といった作業をすることができます。これによって、手を動かす作業によって、文や段落や項目を少しずつ作り上げて、構造を持った文章を完成させることができます。
Evernoteとアウトライナーは、私が大切にしている2つのことそれぞれを実現するための、それぞれベストなツールです。だから文章書きとしての私は、Evernoteとアウトライナーの両方を愛しています。
3.文章書きとしての私は、なぜ、アウトライナーよりもEvernoteを贔屓しているのか?(今、私が、Evernoteで文章を書き、アウトライナーで文章を書いていない理由)
このように、私はEvernoteとアウトライナーの両方を愛しているのですが、実際に文章を書くときに私が使っているのは、アウトライナーではなく、Evernoteです。併用したり使い分けたりしているのではなく、Evernoteでばかり書いています。
なぜ、文章書きとしての私は、アウトライナーよりもEvernoteを贔屓しているのでしょうか?
(1) 超重要な文章のポケット一つ原則を実現するには、Evernote以外の解法が見当たらないから
いちばんの理由は、ポケット一つ原則が重要だからです。文章のポケット一つ原則は、私に、ものすごく大きなプラスの影響を与えてくれました。文章のポケット一つ原則を取り入れる前と後とでは、文章のアウトプットの質と量が、劇的に変わりました。そのため、文章のポケット一つ原則は、今後もしっかり実現し続けたいと考えています。
となると、問題は文章のポケット一つ原則を実現するための手段なのですが、少なくとも現時点で私が知る限りは、Evernoteを使うよりも優れた解法が見あたりません。
そのため、アウトライナーを使えば、文章に構造を与える点でメリットがあるとしても、文章のポケット一つ原則にほころびが出るデメリットと比較した結果、アウトライナーの使用を諦めEvernoteに統一することを決めて、今に至ります。
(2) 文章に構造を与えることは、Evernoteで文章を書くとしても、ひととおりできるから
もうひとつの理由は、文章に構造を与えることは、Evernoteで文章を書くことによっても、ひととおりは実現可能だからです。文章に構造を与えるためには、アウトライナーを使うことは、必須ではありません。
いくつか手段があるとは思うのですが、私の場合は、項目番号をアウトライナーとして使うことで、Evernoteで文章を書きながら、文章に構造を与えることを実現しています。
項目番号はアウトライナーになる(項目番号によって文章の構造を組み立てる)
(3) 文章書きとしての私が、アウトライナーではなく、Evernoteで文章を書く理由
まとめます。
今、私が、Evernoteで文章を書き、アウトライナーで文章を書いていない理由は、
- Evernoteなしに理想的な文章のポケット一つ原則を実現することは難しいのに対して、
- アウトライナーを使わずにEvernoteを使っても、文章に構造を与えることは実現可能だから、
です。
4.試案の概要
これを踏まえて、現段階で私の試案の概要は、こんな感じです。別途詳しくまとめます。
(1) Evernoteとアウトライナーの融合に求めるもの
文章のポケット一つ原則と、文章に構造を与えることを、両取りする。
文章に構造を与えるために求めるのは、個々の文章の内部に構造を与えること。文章を超えた構造は、とりあえず不要。
それだけ。それ以上は、とりあえず、求めない。
(2) 解決の方針
現在のEvernoteによって理想的な文章のポケット一つ原則が実現できているので、Evernoteをベースにする。
Evernoteに何らかの機能を追加して、Evernoteを、個々の文章の内部に構造を与えることを助けるツールにする。
(3) 具体的な解法
- Evernoteのエディタエリア内で、アウトライナーのような操作ができるようになる。(Tak.さんの言う「真のアウトライナー」の条件を満たす操作が望ましい。)
- 情報の単位やデータ管理の方式は、今のEvernoteそのままでよい。(文章を管理する単位は、ノート単位でよい。)
(4) 課題
文章をまたいだ構造、Evernoteのノートをまたいだ構造を扱うことが、弱い。このEvernoteで構造を与えることができるのは、ひとつひとつの文章の内部のみ。
ここをクリアして、文章をまたいだ構造、ノートをまたいだ構造を与えるためには、ノート単位というEvernoteの根幹となるデータ管理方式をいじる必要がある気がする。(だから、しばらくは実現されないんじゃないかという気がする。)
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