タスク管理は、未来だけでなく、今と過去を扱う
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仕事の方法論
目次
1.はじめに:「タスク管理は、未来のタスクだけでなく、今のタスクと過去のタスクも対象とする」という考え方
タスク管理に取り組み始めたとき、私は、タスク管理の対象は、未来のタスクだと思っていました。未来のタスクが対象であって、今のタスク(今、実行しているタスク)や過去のタスク(過去、実行したタスク)は対象ではない、という理解です。
でも、タスク管理を始めてしばらくしたら、そうじゃないことを知りました。タスク管理が扱うタスクとは、これからの自分がやるべき未来のタスクだけではありません。今の自分が実行している今のタスクも、過去の自分が実行した過去のタスクも、タスク管理の対象です。
今のタスクと過去のタスクもタスク管理の対象だということを知って、私は、自覚的に、今のタスクと過去のタスクを対象にして、タスク管理の仕組みを組み立てました。すると、私がタスク管理から受ける恩恵は、かなり、拡大しました。
この経験から、私は、「タスク管理は、未来のタスクだけでなく、今のタスクと過去のタスクも、対象にする」という考え方に立つと、タスク管理から受ける恩恵が大きくなると、信じています。
そこで、以下、この「タスク管理は、未来のタスクだけでなく、今のタスクと過去のタスクも、対象にする」という考え方を掘り下げてみます。
2.タスク管理は、未来のタスクを保管し、組み立てる
タスク管理の主な役割が、未来のタスクの管理であることは、まちがいありません。未来のタスクを管理するとは、どのようなことでしょうか。
2つあります。
ひとつは、未来のタスクを保管することです。自分の頭のかわりに、自分の手持ちタスクのすべてを保管することが、タスク管理の役割です。
もうひとつは、未来のタスクを組み立てることです。すでに明らかになっているタスクを保管することだけがタスク管理の役割ではありません。必要なタスクを明らかにしたり、タスクに取り組む順序を計画したりすることも、タスク管理の役割です。
(1) 未来のタスクを保管する
未来のタスクを保管することは、タスク管理の主要な役割です。タスク管理は、自分の頭の外にタスクを預けることにより、自分の頭でタスクを記憶する必要をなくすことを目指します。
未来のタスクを忘れることで、未来のタスクから生まれる余計なストレスを消し、目の前のタスクに集中する。これが、タスク管理の根本的な思想です。
とはいえ、未来のタスクを忘れるといっても、忘れ続けていていいわけではありません。タスクは、適切なタイミングで実行されなければいけません。適切なタイミングを逸してしまっては、タスクを保管する意味が激減します。そこで、タスク管理は、タスクを保管するとともに、保管しているタスクを適切なタイミングで思い出せるような仕組みを持っています。
要するに、
- 自分のすべての手持ちタスクを、自分の頭の外に保管する
- 保管しているタスクそれぞれについて、適切なタイミングで思い出せる仕組みを整える
- そうすると、適切なタイミングが来るまでは、未来のタスクを忘れていても大丈夫になる
- そのため、未来のタスクから余計なストレスを感じずに済むし、目の前のタスクに集中できる
ということです。
たとえて言えば、タスク管理で未来のタスクを保管するのは、個人的な秘書を持つようなものです。未来に何をするべきかは、全部秘書が覚えておいてくれて、全部秘書が教えてくれる、だから、未来のタスクを自分の頭で保管する必要はない、ということです。
Toodledoを、「何も手伝ってくれないけれど、タスクを完璧に教えてくれる秘書」に育てる
このように、タスク管理は、未来のタスクを保管するという役割を果たします。
(2) 未来のタスクを組み立てる
タスク管理が未来のタスクに関して果たす役割は、すでに明らかになっているタスクを保管することだけではありません。未来のタスクを組み立てる役割も果たしてくれます。
未来のタスクは、必ずしも明らかでありません。目指すべき方向性や達成すべき状態が決まっているとしても、具体的な行動のすべてが明確になっていることは、むしろまれです。
そこで、「自分が目指している方向性に進むためには、どんな具体的なタスクに取り組むべきか」「この達成すべき状態に至るには、どんな具体的なタスクを、どんなスケジュールで実行していくとよいのか」といったことを検討する必要があります。
タスク管理は、この問いを検討することを助けてくれます。
たとえば、「個人的なセルフマネジメントシステムを作りたい」と思い、これを実行すると決意したとします。でも、「個人的なセルフマネジメントシステムを作る」は、具体的な行動ではないので、このままではタスクにはなりません。
そこで、この「個人的なセルフマネジメントシステムを作る」から出発して、未来のタスクを具体的に組み立てる必要があります。これが、「個人的なセルフマネジメントシステムを作るには、どんな具体的なタスクを、どんなスケジュールで実行していくとよいのか」という問いを検討する作業です。
タスク管理は、この作業を進めるために、大きな力を発揮します。
たとえば、「分解する」という方法があります。「個人的なセルフマネジメントシステムを作る」を、「セルフマネジメントについて調べる」「個人的なシステムに使えるツールをピックアップする」というように、分解します。最終的に、自分が簡単にできる具体的な行動のレベルまで分解すると、ずいぶんと具体的なタスクになります。
あるいは、「期限をつける」という方法もあります。最終的なゴールを達成する期限を決めてから逆算してもよいですし、具体的な行動にまで分解したタスクひとつひとつに期限を付けて、その積み重ねでゴールの期限を決めるのでも問題ありません。
特に、長期プロジェクトに取り組むときは、未来のタスクを組み立てるというタスク管理の役割は、大きな力を発揮します。長期プロジェクトをタスク管理すれば、粛々と進めるだけで、長期プロジェクトをそれなりにうまく進めることができるからです。
Toodledoを使って、長期プロジェクトを計画的に着実に粛々と遂行する
このように、タスク管理は、未来のタスクを組み立てるという役割を果たすことができます。
3.タスク管理は、今のタスクを片付けることを助ける
「タスク管理が、今のタスクを対象にする」とは、どういうことでしょうか。
今のタスクとは、「今、自分が実行しているタスク」です。「タスク管理が、今のタスクを対象とする」とは、「タスク管理が、「今、自分が実行しているタスク」を実行することを助ける」ということです。日本語としてややこしいので、以下、「タスクの実行を助ける」と書きます。
タスクは、実行されることで、価値を生み出します。未来のタスクをきちんと保管し、ばっちり計画を立てても、タスクが実行されなければ、何の意味もありません。そのため、「タスクの実行を助ける」ことは、とても大切です。
「タスクの実行を助ける」ため、タスク管理にできることは、
- タスクの実行を、後押しする
- タスクの実行を邪魔するものを、排除する
という2つです。
(1) タスクの実行を、後押しする
タスク管理は、どのように、タスクの実行を後押しするのでしょうか。
a.実行中のタスクを自覚できる
まず、タスク管理をすると、今、自分が実行しているタスクが何なのか、自分できちんと自覚できます。今、自分が実行しているタスクが何なのかをきちんと自覚することは、タスクを確実に実行するために、基本的ですが効果が大きいことです。
自分が実行しているタスクが何なのかを自覚するなんてことは、当たり前のことのようにも思えます。自覚しないでタスクを実行するなんてことは不可能のような気もします。でも、そうではありません。なんとなく行動していると、この自覚はけっこう曖昧になります。曖昧になったまま行動していると、タスクの実行はあまりはかどりません。
これに対して、タスク管理をすれば、今、自分が実行しているタスクが何なのかを、きちんと自覚することができます。目の前に、タスクが書かれたタスクリストが置いてあるのですから、今、自分が実行しているのは、そのタスクです。
タスク管理をすると、実行中のタスクを自覚できるので、タスクの実行を後押しできます。
b.やる気が高まる
次に、タスク管理をすると、タスクの実行へのやる気が高まります。
多くの場合、タスクの実行へのやる気は、なかなか湧いてきません。とりかかるのが面倒なタスクや、うまくいくか不安なタスクを実行するのは、気が重いです。自分がやるべきタスクが膨大だと感じると、うんざりしてやる気がなくなり、自分がやるべきタスクがほんの少しだと感じると、これなら楽勝だから必死にならなくてもいいやとやる気がなくなります。
これに対して、タスク管理は、タスクの実行のやる気を高めてくれます。
ややこしくて面倒に感じるタスクや、失敗しそうで不安に感じるタスクは、タスクを分解して、ひとつひとつのタスクをすごく単純で簡単なものにすることで、面倒さや不安を取り除きます。
自分の手持ちタスクの一覧を正確に把握することで、ちゃんとやればいつかは終わることを納得したり、実は大変なタスクが潜んでいることを明らかにして、サボっている時間がないことを「見える化」したりできます。
このように、タスク管理は、タスク実行へのやる気を高めてくれます。
(2) 今のタスクの実行を邪魔するものを、排除する
タスク管理は、タスクの実行を後押しするだけでなく、タスクの実行を邪魔するものを排除してもくれます。タスクの実行を邪魔するものとは、感情と脱線です。
a.感情への対処
タスク実行中に、私たちは、様々な感情を抱きます。ワクワク感や使命感ややりがいのような、タスク実行を後押ししてくれる感情もあります。でも、不安感やウツウツ感や面倒くささのような、タスク実行を邪魔する感情もあります。
これら、タスクの実行を邪魔する感情が湧いてきたときは、その感情を否定したり無視したりするのではなく、その感情を受け止めることが大切です。
私は、その感情をごく簡単な文章で表現することで、その感情を受け止めることにしています。具体的には、タスクリストの、感情を沸き起こしたタスクのメモ欄に、その感情を簡単にメモします。もっと具体的には、Toodledoのタスクのノート欄に、思いつくまま、メモします。
こうすることで、タスク実行中に湧いてきた感情にうまく対処できる上に、ときには、その感情を次のタスク改善のきっかけにするなど、マイナスの感情から価値を生み出すこともできます。
b.脱線への対処
脱線は、タスクの実行を邪魔します。でも、脱線をゼロにすることはできません。そこで、脱線がどのようにタスクの実行を邪魔するかを踏まえて、対策を考える必要があります。
脱線がタスクの実行を邪魔するメカニズムは、次の2つです。
- 脱線している間、本線のタスクが止まる
- 脱線から本線に復帰しても、すぐに本線のタスクを進めることができない(集中力や準備など)
そこで、対策は3つです。
- 脱線する回数を減らす
- 脱線の時間を減らす(できる限りすみやかに本線に戻るようにする)
- 脱線から本線に復帰してから、本線のタスクを再開するまでのロスを減らす
このすべてに、タスク管理を活用できます。
脱線の回数を減らすためには、「今、自分が何を実行しているかを、きちんと自覚できる」というタスク管理の機能が役立ちます。「自分は、今から、脱線しようとしている」と自覚できれば、それだけで、「やっぱり脱線するのはやめよう」と思い直すことも出てくるはずです。
同じ機能が、脱線の時間を減らすことにも役立ちます。「自分は、今、脱線している」と意識し続けることで、脱線時間は短くなります。
さらに、タスク管理は、本線のタスクを管理することで、脱線から本線に復帰したときに、本線がどんなタスクであって、どこまでやって脱線したかのヒントを与えてくれます。そのため、本線タスク再開までのロスを減らすこともできます。
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このように、タスク管理は、感情と脱線という、タスクの実行を邪魔する2つの要因を排除してくれます。
瞬時レビューと実行中メモで、タスク実行中の感情&脱線を処理する。感情と脱線からも価値を汲み取るタスクマネジメントシステム
4.タスク管理は、過去のタスクをしまう
「タスク管理が、過去のタスクを対象とする」とは、どういうことでしょうか。
過去のタスクとは、自分が過去に実行したタスクです。過去のタスクはすでに完了してますので、過去のタスクについて、今後、何かをする必要はありません。
でも、「過去のタスクは過ぎ去ったものだから、今や未来のためには、もう何も価値を生み出さない」というわけではありません。むしろ、過去のタスクは、宝の山でもあります。うまく使えば、今や未来のために、確実な価値を生み出します。
私が強調したいのは、過去のタスクに潜んでいる3つの価値です。
- タスクのログとしての価値
- タスクのレシピとしての価値
- 自分の実行をしまうものとしての価値
(1) 1日単位でのタスクを実行した記録が、ログとしての価値を生み出す
タスク管理は、主に、未来のタスクをリストにして管理するものです。そして、このタスクリストは、基本的には、そのとおりに実行されます。ということは、タスクが実行された後のタスクリストは、どんなタスクを行ったのか、の記録になります。
この、どんなタスクを実行したかを記録したリストは、どんな単位でリストをつくるかによって、いくつかの機能を果たします。
まず、1日単位のタスクリストは、ログとしての価値を生み出します。使い終わった1日単位のタスクリストは、その日の自分が実行したタスクの一覧を示します。これは、自分の行動記録そのものです。
ここから、ログとしての価値を生み出すことができます。
Toodledoの完了タスクの情報から、価値を掘り出す・ログとしての価値とマニュアルとしての価値
具体的には、IFTTTを使って、ToodledoとEvernote(またはGoogleドライブ)を接続すれば、Toodledoを使うだけで、自動的に、電子業務日誌が生成されます。
【Toodledo×IFTTT×Evernote】電子業務日誌を自動的に作成する
(2) 案件単位でのタスクを実行した記録が、レシピとしての価値を生み出す
次に、案件単位のタスクリストは、レシピとしての価値を生み出します。
使い終わった案件単位のタスクリストには、その案件を進めるために、自分が、いつ、どんなタスクを実行したのか、が記載されています。この情報は、似たような案件を行うときに、役に立ちます。
仮に、特殊な案件だったり、突発的な事態が発生したりしたために、そのままでは他の案件に使えないとしても、特殊事情を一般化したり、突発的な事態をオプションとしたりすることで、他の案件にも通じるリストに育てることができます。
この実行タスクリストは、いわば、案件を調理するためのレシピのようなものです。
完了タスク情報を蓄積し続ければ、そこから、レシピを生み出すことができます。
(3) タスクを実行した記録のすべてが、自分の実行をしまってくれている
3つめの価値は、最初の2つとは、ちょっと違います。あんまり実用的な価値ではなく、情緒的なものなのですが、「タスクを実行した記録のすべてが、自分の実行をしまってくれている」という価値です。
使い終わったタスクリストには、自分が実行したタスクが並んでいます。
ここには、苦労して実行したものもあれば、気楽に実行したものもあります。実行した結果、うまくいったものもあれば、失敗したものもあります。実行した結果、価値を生み出したものもあれば、なんにも生み出さなかったものもあります。気持よく実行したものもあれば、いやいや実行したものもあります。
でも、「自分が実行した」ということは、共通しています。使い終わったタスクリストに並んでいるのは、全部、自分が実行した何かです。
私が何度も読み返している本に、『それでも人生にイエスと言う』というヴィクトール・E・フランクルの講演録があります。そこに、こんな記載があります。
その瞬間の機会を生かして実現されたことは、またとない仕方で拾われて現実になったのです。それが過去のことになると「おしまいになった」ように思われますが、それは、ただそう思われるだけにすぎません。つまり、ほんとうは、ちょうど「しまってある」という意味でおしまいになったのです。この意味では、過去のことになったというありかたは、もしかすると、存在一般のうちでもっとも確かな形式でさえあるのかもしれません。そのように拾われて「過去のこと」になった存在に、それこそ「うつろいやすさ」はもうなんの手出しもできないからです。
(『それでも人生にイエスと言う』p.50)
私はこの考え方がすごく好きです。瞬間の機会を活かして自分が実行することで、その機会を現実にすることができる。それが「過去になる」ということであって、「過去になる」のは「しまってある」こと。
この考え方との関係で言えば、使い終わったタスクリストに並んでいるのは、自分が実行することで拾って過去のことにした現実たちです。
タスク管理は、自分の実行をしまってくれます。これも、タスク管理が過去のタスクについて生み出してくれる価値です。
関連:「やれば残る」から、やる気になる。(ToodledoとEvernoteによる「タスクの実行」のやる気を出すシステム)
5.未来、今、過去の流れを意識する
最近何度も紹介している、倉下忠憲さんの『クラウド時代のハイブリッド手帳術』に、次のような記載があります。
眺めてみると手帳というのは非常に面白いツールです。
今日という日付を境にして、それよりも先のページは「予定」に、後ろのページは「記録」になっています。つまり、1冊の中に未来と過去が共存しているわけです。未来の情報を保存し、それを「今」利用し、最後にそれが記録として残る。そういった情報の流れが1冊の中に存在しています。
(『クラウド時代のハイブリッド手帳術』 p.228)
確かにそうです。手帳は、今日という日付を境にして、それよりも先は「予定」、それよりも後ろは「記録」です。
自分自身の過去の蓄積から、未来を描くこと。手帳はそれを助けるためのツールと言えるかもしれません。
(『クラウド時代のハイブリッド手帳術』 p.229)
同じように、タスク管理にも、未来、今、過去という情報の流れがあります。
この情報の流れを意識して、活用することが、「タスク管理は、未来のタスクだけでなく、今のタスクと過去のタスクも、対象にする」という考え方のポイントではないかと感じています。
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