能力の相互干渉がある:ドラクエのレベル上げと現実世界との重要な違い(4)
公開日:
:
最終更新日:2014/03/28
書き方・考え方
目次
1.もうちょっと続けます
先日、ふと思いついて、ドラクエのレベル上げと現実世界の自分育成の違いを考え始めました。軽い気持ちで考え始めたこのテーマですが、考えてみると、想像以上に、いろんな考えが浮かんでいます。もう少し掘れそうな気がするので、もうちょっと続けます。
さて、これまでに考えた3つは、以下のとおりです。
- ドラクエでは、経験値が対象だけで決まるのに対して、現実世界では、対象だけでなく、経験の仕方や経験した後の行動によっても経験値が変動する(ドラクエのレベル上げと現実世界の自分育成との重要な違い)
- ドラクエでは、レベル上げに費やせる時間に制限がないのに対して、現実世界では、自分を育成するために費やせる時間に制限がある(制限時間がある:ドラクエのレベル上げと現実世界の重要な違い(2))
- ドラクエでは、主人公たちが自然に退化しないけれど、現実世界では、自分は自然と退化する(自然な退化がある:ドラクエのレベル上げと現実世界との重要な違い(3))
次に考えるのは、これです。
- ドラクエでは、強さの能力は基本的には独立なので、能力が相互干渉することはないけれど、現実世界では、能力は独立じゃないから、相互干渉がしばしば生じる
2.ドラクエでは、能力は独立だから、相互干渉がない
(1) ドラクエでは、能力は独立
ドラクエでは、レベルが上がったとき、こんな感じのメッセージが出ます。
ちからが 2ポイント あがった!
すばやさが 1ポイント あがった!
さいだいHPが 10ポイント ふえた!
さいだいMPが 7ポイント ふえた!
メラミのじゅもんを おぼえた!
つまり、ドラクエの強さは、ちから、すばやさ、さいだいHP、さいだいMPなど、いくつかの能力に分かれています。ドラクエでレベルを上げるということは、各能力の値をそれぞれ増やしていく、ということです。
(2) 相互干渉がない
ドラクエでは、これらの各能力は、独立しています。ひとつの能力の増減は、他の能力の増減とは、連動しません。
そのため、ある能力と別の能力が相互に干渉して、マイナスになってしまうことがありません。たとえば、ちからが上がるとすばやさが下がる、とか、ギラを覚えるとメラを忘れる、とか、こういったことは起こりません。
(3) ドラクエのレベル上げは、それぞれの能力を、上げれば上げるほどよい
能力の相互干渉がないので、ドラクエのレベル上げは、シンプルです。どの能力も、上げれば上げるほどよいからです。
たとえば、「ちから」なら、力が上がることには、メリットしかなく、デメリットはありません。なので、ドラクエのレベル上げは、「ちからを上げるべきか?」という悩みとは無縁です。上げられるなら、上げたらよいのです。
ひとつの能力を上げることで、他の能力との相互干渉が起きてしまい、全体としてマイナスになるのではないか、と心配する必要は、ドラクエでは、ありません。
3.現実世界では、能力は独立じゃないから、相互干渉が生じる
(1) 現実世界では、各能力は、独立じゃない
これに対して、現実世界では、各能力は、独立ではありません。「ちから」と「すばやさ」は、独立した能力ではありません。メラとバギも、たぶん独立していません。
たとえば「ちから」に着目すると、現実世界の「ちから」は、それ自体として存在するパラメータではなく、筋肉や体の使い方の結果として決まる何かです。ですから、現実世界では、「ちから」を直接上げることはできません。現実世界で「ちから」を上げるには、筋肉をつけたり、体の使い方を練習したりする必要があります。
そして、筋肉をつけたり体の使い方を練習したりすると、同じく筋肉や体の使い方によって決まる「すばやさ」も、影響を受けます。
このように、現実世界では、各能力は独立ではありません。
(2) 相互干渉がある
現実世界では、各能力が独立ではないため、同時に複数の能力を伸ばすこともできますが、反面、能力間の相互干渉のおそれが存在します。
たとえば、「ちから」を増やすために筋トレをして、体重を増やした結果、体のコントロールがうまくいかなくなって、「すばやさ」が落ちる、ということがあります。また、「メラ」を覚えたことによって、それまで得意だった「ギラ」の勘が鈍るかもしれません。
能力間の相互干渉は、スポーツに顕著です。バッターが、打球の飛距離を伸ばすために筋トレをしたら、ミートが下手になって打率が下がった、とか、ピッチャーが、新しい変化球を覚えたらストレートのスピードが落ちた、とか、そういうことは、しばしば生じるようです。
スポーツほど顕著ではありませんが、能力間の相互干渉は、スポーツ以外の一般的な仕事力にも、たぶん、妥当します。ブログ記事をたくさん書いて、ブログの記事を書く力がついてきたなあと思ったら、いつの間にか仕事で書く報告書を書くのが下手になってしまう、ということも、あるかもしれません。
(3) 全体としてのスタイルを意識した自分育成が大切
このように、現実世界では、能力間の相互干渉がありえます。そのため、現実世界では、能力値は高ければ高い方がよい、とは言えません。現実世界で自分を育成するときは、「ちからを上げるべきか?」という悩みを抱える必要があります。
このとき大切なのは、自分のスタイルです。自分のスタイルがどんなものなのかを考えて、そのスタイルとの関係で、ある能力をどの程度まで伸ばせばよいのかを見定める、という姿勢が有効です。
現実世界で自分を育成するのは、ドラクエのレベル上げよりも、複雑な営みです。
スポンサードリンク
関連記事
-
整った論理構造を持つ文章を書くための、自分のブログの強みと落とし穴
1.ブログのために書くほうが、ブログ以外のために書くよりも、整った論理構造を持つ文章を書くのが、うん
-
WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?
1.はじめに(Amazonの「文書作成ソフト」ランキング) 2016年1月29日、『クラウド時代の思
-
『7つの習慣』が誇るパワフルな考え方:P/PCバランス
1.『7つの習慣』の魅力は、パワフルな基本となる考え方にある 私は、『7つの習慣』を、すばらしい本だ
-
まさに『数学文章作法 練習問題編』!結城浩先生の『文章教室』がすごい。
1.最短バージョン 結城浩先生のウェブサイトのコンテンツである『文章教室』は、読みやすい文章を書く
-
Evernoteでブログ原稿を書く理由
1.なぜ、Evernoteでブログ記事を書くのか 私は、このブログに投稿した記事を、すべてEver
-
なぜ、WorkFlowyは、文章の推敲に向いているのか? (WorkFlowy×『数学文章作法 推敲編』その1)
1.問い「なぜ、WorkFlowyは、文章の推敲に向いているのか?」と検討の指針 (1) Work
-
当事者意識を活用する
1.当事者意識とはなにか 「当事者意識」は、私にとって大切なものです。自分にとって大切な領域において
-
粘土のようなアウトライナー、ブロックのようなEvernote。
1.ずっと完成しないで変化し続ける有機体から暫定的な作品群を切り取ること 先日、こんなことを書きまし
-
『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第7回「よい比喩を使いましょう」
この文章は、『文章教室』の練習問題に取り組んだ記録です。 『文章教室』は、結城浩先生がご自身のウェ
-
項目番号はアウトライナーになる(項目番号によって文章の構造を組み立てる)
1.なぜ、こんなに項目番号を推すのか (1) 項目番号がすき 私が好きなものは、Evernote
スポンサードリンク
- PREV
- ブログに文章を書くのは大好きだけれど、プロブロガーには、なりたくない。
- NEXT
- 趣味と仕事の関係