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「しまう」と「響く」を、勉強に活用する

公開日: : 最終更新日:2013/12/22 Evernote, 勉強 ,

1.勉強のやる気を上げるために役に立つ、「しまう」と「響く」

(1) 勉強のやる気を上げるために、イメージを活用する

どのような勉強であれ、いやいややるよりも、やる気まんまんで取り組む方が、楽しいですし、効果も高まります。そのため、何かを勉強するときのコツのひとつは、やる気を上げるために工夫をすることです。

勉強のやる気を上げる方法には、いくつかのものがありますが、私が好きなのは、イメージを活用することです。勉強を構成する作業のいくつかを何らかのイメージで捉えて、その勉強を構成する作業に対するやる気を上げる方法です。

(2) 「しまう」と「響く」を勉強に活用する

どんなイメージを使うと勉強のやる気が上がるのか、いろいろと試行錯誤してきました。私にとって、いちばん役に立ったのは、「しまう」と「響く」というイメージです。

「しまう」と「響く」は、恩田陸さんの『光の帝国』という連作短編集に収録された「大きな引き出し」という物語に出てくるフィクションです。でも、私は、程度の差こそあれ、この「しまう」と「響く」は、多くの人が普通に体験していることなのではないかなと思っています。

「しまう」と「響く」

この「しまう」と「響く」というイメージは、勉強との相性がすこぶるよいです。私は、この「しまう」と「響く」というイメージを使うようになってから、勉強することに対するやる気がかなり安定しました。

以下、「しまう」と「響く」というイメージを、どのように、勉強のやる気を高めることに活用しているか、私のやり方をまとめます。

2.勉強のコツは、退屈な「しまう」を、あふれるやる気でこなすこと

(1) 勉強には、退屈な「しまう」が伴う

「しまう」というのは、丸暗記です。意味を理解したり批判的な検討をしたり評価をしたりすることはともかくとして、対象を、そのまま丸ごと受け入れて、自分の中に入れてしまう、ということです。

勉強には、「しまう」作業が必要不可欠です。どんなことを勉強するにしても、いったんは、その分野の基本的な概念や共通の方法を、そのまま丸ごと自分の中に取り入れる必要があります。勉強はここから始まります。

この「しまう」作業は、多くの場合、退屈です。意味もわからず丸暗記するのは、通常、あんまりおもしろくありません。退屈です。

退屈でおもしろくないから、「何の役に立つのか?」という疑念が生じます。こんな疑念が生じると、「しまう」ことに没頭できません。自分で自分の「しまう」作業を邪魔してしまいます。

そうすると、「しまう」ことがスムーズに進まないので、「しまう」ことがますます苦痛になって、ますます退屈になります。

負のスパイラルです。

(2) 退屈な「しまう」を、あふれるやる気でこなす

この負のスパイラルを断ち切るには、「しまう」に対して「何の役に立つのか?」なんていう疑念を持つことをきっぱりとやめて、自分で自分の「しまう」作業を邪魔しないことが大切です。

すなわち、退屈な「しまう」を、あふれるやる気でこなすのです。

自分の疑念で自分の「しまう」作業を邪魔することなく、あふれるやる気で「しまう」をこなせば、「しまう」ことは、そんなに難しいことではありません。人間の記憶力はけっこう偉大です。「春は曙」だって、日本国憲法前文だって、水平リーベだって、丸ごとしまえちゃいます。

そうはいっても、何の助けも借りずに、退屈な「しまう」に対してあふれるほどのやる気を持てる人は、そんなに多くないかもしれません。少なくとも、私は、無理です。退屈な「しまう」をあふれるやる気でこなすには、どうしたらよいのでしょうか。

私の場合、イメージの助けを借りることが、とても役に立ちました。このイメージが、「しまう」と「響く」です。

3.「しまう」と「響く」で、「しまう」に対するやる気があふれ出す

(1) いつか「響く」ことを信じて待つことができる

「大きな引き出し」を持つ春田家の長男小学校4年生の光紀くんは、毎日ひたすら「しまう」ことを続けます。小学校4年生の光紀くんは、小学校4年生にして、日本の古典のほとんどを丸暗記しています。

光紀くんのお父さんお母さんは、光紀くんの「しまう」を支援します。光紀くんがあふれるやる気で「しまう」をこなせるように、環境を整えます。

なぜ春田家の皆さんは、「しまう」をひたすら続けられるのか。それは、春田家の皆さんは、「しまわれた」ものたちが、いつか「響く」ことを知っているからです。いつか「響く」ことを知っているから、いつか「響く」ことを信じて待つことができます。信じて待って、ひたすら「しまう」ことを続けられます。

勉強することは、「しまう」ことです。それは退屈かもしれませんが、勉強して自分の中にそのまま取り込んだものたちは、いつか「響く」ときが来ます。「響く」のは今日かもしれないし、来週の試験中かもしれないし、再来年の受験ときかもしれないし、10年20年後かもしれません。でも、いつかは何らかの形で「響く」ときがきます。

いつか「響く」ことを信じれば、待つことができます。「響く」ことを信じて待つことができれば、「しまう」ことへの疑念は消えて、「しまう」ことに没頭できます。

(2) 「しまう」ことで、「大きな引き出し」が豊かになる

いつか「響く」ときのために「しまう」ということは、いつか役に立つときのために今丸暗記、ということなので、まあ、よく言われていることです。

でも、実際は、丸暗記したことの全部が価値を生み出すわけではありません。いつか「響く」ことを信じて待つというのは、一種の信仰で、フィクションです。このイメージだけでは「しまう」ことへのやる気があふれてこないこともあるかと思います。

これに対して、「しまう」と「響く」は、もっと別のイメージも与えてくれます。

「しまう」というのは、自分の中の「大きな引き出し」に丸ごと取り込む、ということです。これによって、「大きな引き出し」の中に、いろんなものが増えていきます。増えていくと、自分の「大きな引き出し」は、それだけ、豊かになります。

役に立たないし、価値を生まないかもしれないけれど、「しまう」作業をこなせばこなすだけ、自分の「大きな引き出し」が豊かになる。少なくとも私の場合、このようなイメージを持つことで、「しまう」ことに対するやる気がじわじわとあふれてきます。

4.フィクションだけれど、勉強の本質を捉えていると思う

「しまう」と「響く」は、「大きな引き出し」という物語の中で出てきたフィクションです。この物語はファンタジーです。人間の脳に現実の「大きな引き出し」があるわけではなく、体験を記憶することは引き出しにものを「しまう」こととは異なったプロセスですし、記憶された体験が勝手に「響く」こともありません。

でも、「しまう」と「響く」というイメージは、勉強の本質を捉えているのではないかなと思います。

「しまう」ことが、いつか「響く」ことにつながるということ。公式を覚えたり、退屈な教科書を読むことで、いつか別の何かと結びついて、何らかの価値を生み出すことがあります。

それから、「しまう」ことは、自分の「大きな引き出し」を豊かにするということ。すごい論文を読むと、それが何かの役に立たなくても、感動できたり、知的好奇心を刺激されたりして、自分の考え方や感じ方を豊かにしてくれます。

少なくとも、私は、「しまう」と「響く」というイメージに出会って、勉強することが好きになりました。勉強に対するやる気が出なくて困っている方は、よろしければ、お試しください。

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