Evernote×思考。Evernoteで、考えを捕まえ、育て、寝かせる。
目次
1.Evernoteは、思考の場所
Evernoteのキャッチフレーズは、「すべてを記憶する」です。確かに、いろんな情報を容量無制限に(月間アップロード制限はありますが)保存できることは、Evernoteの大きな特徴です。
しかし、私からすると、Evernoteの特徴を「すべてを記憶する」と表現することは、その強みを表現し切れていない気がします。「すべてを記憶する」という表現は、すでにあるなにかをそのままの形で維持しておく、というようなイメージがあります。しかし、Evernoteは、Evernoteの中で、価値を増やすことができます。
特に、「思考する」という知的活動との関係では、Evernoteは、思考の結果を記憶しておくだけでなく(もちろん、この点においてEvernoteはほぼ完璧です)、思考の結果に至るまでのすべてのプロセスをカバーできます。
Evernoteは、考えを捕まるためにも、考えを育てるためにも、考えを寝かせて熟成させるためにも、大活躍してくれます。私にとって、Evernoteは、思考の結果を記憶しておく場所ではなくて、考えを捕まえ、育て、寝かせる場所です。
以下、Evernoteをどのように使えば、考えを捕まえ、考えを育て、考えを寝かせ熟成させることができるのか、考察します。
2.Evernoteで、考えを捕まえ、育て、寝かせる。
(1) Evernoteで、考えを捕まえる
a.考えを捕まえる、とは?
ふと思い浮かんだアイデアや思いを捕まえることから、考えることが始まります。
どんなことをしているときも、頭の中には、いろんな思いやアイデアや思考の断片が流れています。しかし、何もしなければ、それらの思いやアイデアや思考の断片は、どこかに流れていってしまいます。
これに対して、それらのうちのどれかを意図的に捕まえて、問い直したり、具体例を考えたり、抽象化して理論にしてみたりすると、最初はふと浮かんだ思いやアイデアだったそれは、考えへと育っていきます。
これが、考える、ということだと、私は思っています。
b.考えを捕まえるために大切なこと
考えを捕まえるためには、
- ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片に気づくこと
- ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片をメモすること
- ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片のメモを見返しやすいひとつの場所に集めること
の3つが大切です。
(a) 気づくこと
考えを捕まえるには、何はともあれ、捕まえるべき対象の存在に気づかなければいけません。ここで捕まえるべき対象である「ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片」は、いつのまにか現れて、いつの間にか消えます。注意していないと、現れたことにすら気づかないうちに、消えてしまいます。
何かが思い浮かんだことに気づくことが、まず大切です。
(b) メモすること
思い浮かんだものの存在に気づいたとしても、そのままにしていては、すぐに消えてしまいます。そのため、考えを捕まえるためには、消える前にメモする必要があります。
たいしたメモでなくてもかまいません。ここで思い浮かんだ考えは、ちょっとした思い、アイデアの萌芽、思考の断片です。メモも、断片でかまいません。単語の羅列、ちょっとした表、おおざっぱな図、簡単なイラストなどなど。
ごくごく簡単なメモであっても、そのメモが存在するだけで、ふと浮かんだ考えを捕まえることは可能です。
(c) メモを見返しやすいひとつの場所に集めること
考えをメモに捕まえても、そのメモがどこかに行ってしまえば、考えは逃げてしまいます。考えを捕まえたメモをなくさない工夫が必要です。
いちばんシンプルで確実な対策は、メモを一箇所に集中させることです。
そして、考えを捕まえることは思考の出発点に過ぎず、考えを捕まえることそれ自体には意味がないことからすれば、考えを捕まえたメモは、見返しやすい場所に置いておくことが大切です。
そのため、メモを見返しやすいひとつの場所に集める必要があります。
c.Evernoteで、考えを捕まえる
この3点は、Evernoteで、どのように実現できるでしょうか。
(a) 気づくために、Evernoteに何ができるか
ふと浮かんだ考えの存在に気づくことについては、Evernoteにできることはありません。
しかし、存在に気づいた考えをメモする、という行動を繰り返すことによって、存在に気づく感度が高まります。ですから、(b)で書くEvernoteで考えをメモすることを繰り返すことが、結果として、考えの存在に気づくことの助けになります。
(b) メモするために、Evernoteに何ができるか
ふと浮かんだ考えをメモするために、Evernoteは、大きな力を発揮します。Evernoteは、これが大得意です。
Windowsパソコンで作業をしているときは、Evernote for Windowsに切り替えてノートを作成したり、新しいノートを作るグローバルホットキー(Ctrl+ALT+n)を押して新しいノートを作ります。
外出中なら、スマートフォンからいろんなノートを作ることができます。PostEverなどのアプリを使えば、Evernote公式アプリからメモをするよりも、素早く快適にメモできます。
パソコンもスマートフォンも手元になければ、何かにメモして、それを写真撮影すればよいです。多少面倒ですが、音声やビデオも可能です。
このときのコツは、ひとつの考えをひとつのノートにすることです。ひとつのメモや写真に複数の考えが含まれているなら、複数のノートに分ける方がよいです。
(c) メモを見返しやすいひとつの場所に集めるために、Evernoteに何ができるか
メモを見返しやすいひとつの場所に集めることは、「すべてを記憶する」Evernoteの大得意とするところです。全部Evernoteに集めればよいのです。
Evernoteの中にどのように入れるかについて、私は、
- 捕まえたひとつの考えをひとつのノートにして、全部ひとつのノートブックに入れる
- そのノートブックをショートカットに登録する
という形にしています。そして、Evernoteを開いたらこのノートブックを見る、ということを習慣にすれば、考えを捕まえたメモを見返す機会が増えます。
(2) Evernoteで、考えを育てる
a.考えを育てる、とは?
「考えを捕まえる」で捕まえた考えは、「ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片」です。これをいくら集めても、思考にはなりません。
思考であるための条件については、いろんな考え方があると思いますが、私は、「あるテーマについての問いを設定し、問いに対する結論を出す。結論には理由がなければいけない。」と考えています。
つまり、
- 思考のテーマ・問い
- 思考の結論
- 思考の理由
の3つを、思考の構成要素だと考えています。
考えを育てるというのは、この捕まえた「ふと浮かんだアイデアや思いや思考の断片」を出発点として、これに、思考のテーマ・問い、思考の結論、思考の理由という形を与えることです。
そして、私は、日本語で考えることしかできません。したがって、私にとっては、日本語で、思考のテーマ・問い、結論、理由を表現する、ということが、思考する、ということとほぼイコールです。
つまり、私にとっては、「考えを育てる」とは、捕まえた考えを、テーマ・問いと、結論と、理由を持った文章の形にする、という行為です。
b.考えを育てるために大切なこと
考えを育てるためには、
- 考えを育てるための場所を持つ
- 考えを育てるツールの力を借りる
という2つが大切ではないかと思います。
(a) 考えを育てるための場所を持つ
私にとって、考えを育てるというのは、考えを、テーマ・問い、結論、理由を持った文章の形にする、ということとほぼイコールです。
考えに文章という形を与えるには、ある程度時間がかかります。いっぺんに文章を完成させることができればよいのですが、そうではないなら、何度かに分けて、少しずつ書いていくことになります。
さらに、一度に考える内容は、ひとつとは限りません。同じときに同時並行でいくつものことを考えることもあります。
このような中で、考えに文章という形を与えることを完了させるためには、取りかかっている書きかけの文章を置いておく場所があるとよいです。その場所に、考え中の事柄を、書きかけの文章という形で並べておけば、考える対象が目に見えてわかりますし、時間をかけて少しずつ考えを前に進めることができます。
(b) 思考ツールの力を借りる
世の中には、考えるためのツールがたくさんあります。これら思考ツールの力を借りると、考えは、すくすくと育っていきます。
まず、思考の枠組みに沿って作業をする、という方法があります。たとえば、ある選択肢のメリットを考える場合、メリットの3条件に沿ってひとつひとつのメリットを検証する作業をすると、ある選択肢についてのメリットに関する考えは、着実に育ちます。
また、縦軸と横軸からなるマトリクスで考える、という方法もあります。マトリクスで考えるのは、簡単な作業のわりに効果が高いため、私はとても好きです。マトリクスで考えることも、考えを育てるための有効な方法です。
また、図を作ったり、マインドマップを作ったりすることも、考えることの役に立ちます。
その他、抽象化や具体化、論理的思考も、思考ツールの一種です。
知っている思考ツールを実際に使ってみることによって、考えは育ちます。
c.Evernoteで、考えを育てる
(a) Evernoteは、考えを育てる場所
考えを育てるための場所として、Evernoteは理想的な場所です。
ふと浮かんだ考えを捕まえたメモの全部をEvernoteのあるノートブックに集めていれば、そのノートブックを開けば、そこに育てるべき考えが集まっています。あとは、そのときに考えたいテーマをメモしたノートを開いて、少しずつ文章の形に育てていくだけです。
Evernoteは、ひとつのノートを何回もに分けて少しずつ編集することも得意です。同時にいくつものノートを保存して、ノート間を移動して編集するのも得意です。
ですから、Evernoteなら、ひとつの考えを何回かに分けて少しずつ育てることも、同時並行でたくさんの考えを育てていくことも、うまくやれます。
(b) Evernoteで思考ツールを使う
Evernoteを使って考えを文章にするまでの過程で、マトリクスやリストを使うことができます。マトリクスを使うなら、Evernoteの表機能を使えばよいです。リストを使うなら、Evernoteのリスト機能を使えばよいです。どちらも、見た目を制御する機能としてはあまり強くありませんが、考えを育てるための機能としては、必要十分なものを持っています。
また、Evernoteを使えば、図やイラストやマインドマップを思考に活用することも可能です。マインドマップなら、MindjetなどのEvernoteと連携するマインドマップアプリも使えます。
(3) Evernoteで、考えを寝かせる
a.考えを寝かせる、とは?
ある考えに、テーマ・問い、結論、理由からなる文章という形を与えたら、とりあえず、その考えに関する思考は一区切りです。その考えをさらに育てることは、いったんストップ、そのことを考えることをやめます。
しかし、そのことを考えることをやめるとしても、考えたことを捨てる必要はありません。考えたことをどこかにしまっておいて、その考えを寝かせるとよいです。
考えは、寝かせれば、熟成して、進化します。そこから別の考えが生まれたり、その考えがさら深まったりします。
b.考えを寝かせるために大切なこと
考えを寝かせるためには、次の3点が大切ではないかと思います。
- すべての考えを一箇所にまとめる
- ときどき見返す
- アウトプットする
(a) すべての考えを一箇所にまとめる
まず、すべての考えを、一箇所にまとめることです。一区切りついた考えは、文章という形になっていますので、その文章を一箇所にまとめることです。
一箇所にまとめることによって、どんなことを考えてきたのかの全体像を把握することができます。このことは、新しい考えを生むために、有効なことです。
(b) ときどき見返す
次に、ときどき見返すことです。
自分の考えを自分で表現した文章を読み直すと、そこからいろんな発想が生まれます。複数の文章を連続して読むと、共通することを考えたり、ひとつの考えを別の領域に適用したり、いろんな形で思考が進みます。
文章という形をとった考えが一箇所にまとめられていれば、自分の考えを見返すのも簡単です。連続して複数の考えを見返すのも簡単です。
(c) アウトプットする
そして、考えに形を与えたものを、何らかの媒体にアウトプットすることです。
アウトプットすることには、少なくとも2つのメリットがあります。
アウトプットを前提にすると、他者にも理解できるように考えを育てよう、というモチベーションが得られます。アウトプットを前提としない考えと比べて、独りよがりな考えを予防できます。
アウトプットをすると、他者からの反応が得られます。自分以外の誰かにも妥当する考えなのか、自分以外の誰かにとって意味のある考えなのか、を判断する参考になります。
c.Evernoteで、考えを寝かせる
(a) すべての考えをEvernoteにまとめる
Evernoteは、考えを寝かせるには、うってつけのサービスです。考えを表現した文章全部を、「すべてを記憶する」Evernoteに放り込めば、Evernoteに自分の思考の結果が全部蓄積されることになります。
(b) Evernoteの機能を使って、見返す
自分が考えたことを表現した文章が、Evernoteの中に大量にあるなら、見返すのも簡単です。
まず、ノート一覧でざーっと見返すことができます。サマリービューやカードビューなら、文章の書き出しを読むこともできます。
次に、検索で見返すことができます。対象ノートブックを特定すれば、考えを表現した文章だけを検索することもできます。また、特定の検索条件を保存することで、「1年前に考えたこと」「Toodledoについて考えたこと」「ブログについて考えたこと」などを検索することができます。
さらに、「関連するノートを表示」機能を使えば、そのときに編集しているノートと関連する考えを記載した文章が、自動的に3つ、表示されます。ここで出会う文章が、自分の思考を深めてくれることも、多々あります。まさに、Evernote発想法。
(c) Evernoteを使って、アウトプットする
Evernoteは、アウトプットのためにも使えます。
Evernoteのノートを共有してURLを公開すれば、ブログのようにも使えます。また、Postach.ioというサービスを使えば、もっと簡単に、Evernoteの中の任意のノートを、ブログのように公開できます。
もっとシンプルに、Evernoteで書いたブログを外部のブログに投稿する場合も、
- Evernoteで原稿を完成させる
- テキストをコピーしてブログに投稿する
- ブログのRSSをEvernoteに取り込む(たとえば、iftttで、feedly→Evernoteのレシピ)
という仕組みを作れば、Evernoteからブログにアウトプットし、ブログにアウトプットした内容を自動的にEvernoteに保存する、ということができます。
3.Evernoteは、思考が得意
このように、Evernoteは、単になにかを記憶するだけでなく、思考するという生産的な活動にも力を発揮するサービスです。
Evernoteを思考するための場所として捉えることによって、Evernoteの力を、より多く引き出すことができるのではないかと思います。
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