GTDの基本的な思想は、結局、この3点に集約される。
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仕事の方法論 GTD, タスク管理・スケジュール管理
目次
0.はじめに
GTDと出会ってから、GTDに従ったタスク管理システムを作ろうと模索してきました。
具体的なやり方の点では、なかなか面倒くさくて、忠実に従うことが全然できていません。状況別リストや43フォルダシステムなどは、何度試そうとしても、からっきしです。しかし、GTDの基本的な思想は、何となく体感できてきました。
タスク管理システムを作ろうとする試行錯誤の中、GTDの基本的な思想は何だろうかと、いろいろ考えました。結局、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』で監訳者の田口元氏がまとめている以下の3点に集約されるのではないかと思います(『ストレスフリーの整理術』「日本語版解説 ストレスフリーとは何か?」p.4)。
1. 頭の中の「気になること」を"すべて"頭の外に追い出そう。
2. それらすべての「気になること」について、求めるべき結果と次にとるべき行動を決めよう。
3. そうして決めた、とるべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう。
以下、GTDの基本的な思想3点それぞれにつき、タスク管理システムを作る試行錯誤の中で感じてきたことを、記載します。
1.頭の中の「気になること」を"すべて"頭の外に追い出そう。
(1)GTDの肝は何か? 頭の中の気になることを、頭の外に追い出す。
GTDの肝は、頭の中の気になることを、頭の外に追い出すところにあります。GTDは、頭に十分な力を発揮させる環境を整えることを重視します。GTDの考えでは、頭に十分な力を発揮させるためには、頭の中にたまった気になることのすべてを、頭の外に追い出すことが肝心です。頭の中にたまった「気になること」がすべて頭の外に追い出されれば、頭はすっきりして、頭が得意な活動、すなわち、創造的な活動に対して、十分な力を発揮します。これがGTDの考え方です。
(2)「気になること」の"すべて"を頭の外に追い出すとは?
頭をすっきりさせるには、頭の中の「気になること」の"すべて"を頭の外に追い出す必要があります。
a.「気になること」を頭の外に追い出すとは?
まず、「気になること」を頭の外に追い出すとは、どういうことでしょうか。「気になること」を頭の外にメモするなどして、頭でそれを覚えておかなくても問題がない状態にする、という程度の意味です。
「気になること」というのは、文字通り、気になることです。やらなければいけないこと、忘れてはいけないこと、締切りのある宿題、少し先に予定されているイベント、会いたい人、やりたいこと、取りたい資格、ほしい物。これら全部が「気になること」です。
頭の外に追い出すとは、頭の中の「気になること」を、頭の外にある何かにメモして、頭では忘れてもよい状態にする、という意味です。完全に忘れる必要はありません。忘れても問題ない状態にすることです(たぶん)。たとえば裏紙だったりたとえばモレスキンだったりたとえばEvernoteだったり、そういった、文字をメモできる何かに、文字でメモするとよいと思います。
b."すべて"を追い出すとは?
次に、"すべて"を追い出すとはどういうことでしょうか。基本的には、文字通りの意味です。頭の中にある「気になること」すべてを、頭の外にある何かにメモするなどして、頭の中にある「気になること」すべてを、忘れても問題ない状態にする、ということです。
"すべて"を頭の外に追い出す必要があるのでしょうか。理想を言えば、"すべて"を追い出した方がよいです。やるべきことや忘れてはいけないことなどの「気になること」を頭の中で管理しないことが、GTDの肝です。そのためには、"すべて"を頭の外に追い出す必要があります。"すべて"を頭の外に追い出してこそ、つまり、"すべて"について頭で覚えておかなくてもよいんだぞという安心感を得てこそ、頭は完全にリラックスして、創造性を発揮する、ということのようです。
そうはいっても、厳密に"すべて"を追い出すことは不可能に近いです。できる限りの"すべて"を頭の外に追い出そうとすれば、それでよいと思います。
(3)頭の外に追い出し続けるには? すぐに頭の外に追い出す仕組みを整える。
「気になること」"すべて"を頭の外に追い出すことも、決して簡単なことではありません。しかし、それ以上に難しいのは、頭の外に追い出し続けることです。
頭の外に追い出し続けるためには、何らかの「気になること」が発生したら、すぐにその「気になること」を頭の外に追い出せる仕組みを作ることが大切です。
この仕組みは、ひとりひとりのライフスタイルによって異なります。万能の仕組みは、たぶん、ありません。いろんな本やブログに書いてある例として、以下のような方法があります。
- アナログ方式
- メモ用紙を持ち歩く
- 収集用ノートとしてモレスキンを活用する
- デジタル方式(特に、スマートフォンの活用)
- Evernoteに放り込む
- 自分宛にメールを送る
- 写真、録音、動画で保存する
大きく分ければ、アナログとデジタルがあります。アナログは、柔軟に「気になること」を捕まえることができる反面、捕まえた後のデータの使い回しは、少し弱いです。デジタルは、若干融通が利きませんが、いったん「気になること」を捕まえれば、その後の使い回しが柔軟に可能です。デジタルの場合は、文字だけで「気になること」を捕まえようとせず、絵や写真、音声、動画などを活用するとよいと感じます。
2.それらすべての「気になること」について、求めるべき結果と次にとるべき行動を決めよう。
(1)どうなったらすっきりするか? 求めるべき結果と次にとるべき行動が決まれば、すっきりする。
「気になること」の"すべて"を頭の外に追い出しただけでは、すっきりすることができません。すっきりするために決めるべきことが、ふたつあります。「気になること」についての、(i)求めるべき結果と(ii)とるべき行動です。
(2)コントロールできる対象は何なのか? 自分の対応である。
いくら頭の外に追い出したとしても、「気になること」はそこに存在しますので、すっきりできません。すっきりするためには、「気になること」を何らかの方法でコントロールする必要があります。
とはいえ、「気になること」それ自体をコントロールすることはできません。コントロールできるのは、「気になること」に対する自分の対応です。この自分の対応が、上であげたふたつ、すなわち、(i)「気になること」にどんな結果を求めるか、と、(ii)「気になること」について、次にとる具体的な行動は何か、です。
a.求めるべき結果
まず、「気になること」についての求めるべき結果を明らかにする必要があります。
頭の中に何らかの「気になること」があってもやもやしているとき、私たちは、その「気になること」がどうなってほしいのかをはっきりと自覚できていないことが多いです。その「気になること」は、どんな意味で気になっていて、どんな結果となれば、自分としてうれしいのか。これをまず自分で定義することが大切です。
そのために、「気になること」のひとつひとつについて、求めるべき結果を考え、決めることが必要になります。
b.とるべき行動
「気になること」の求めるべき結果がわかったら、あとは、その求めるべき結果に近づいていくだけです。自分がなにもしなくても自然と求めるべき結果が実現するのであれば、あとは待てばよいのですが、そんなうまい話はあまりありません。基本的には、求めるべき結果に向けて、自分の体を動かして、具体的な行動をとる必要があります。したがって、「気になること」のひとつひとつについて、自分は次にどんな行動をとるのかを、具体的に考えて、決める必要があります。
ここで決めるとるべき行動は、何をしたらいいかが明確でなければいけません。たとえば、「グアム旅行の計画を立てる」では何をしたらいいかわからないので、好ましくありません。「HISでグアム旅行のパンフレットをもらってくる」とします。
3.そうして決めた、とるべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう。
(1)次にとるべき行動を、どうやって管理するか? 頭の外の信頼できるシステムで管理する。
ここまでのプロセスによって、頭の中の「気になること」"すべて"は頭の外に追い出され、これらの「気になること」のひとつひとつについて、求めるべき結果と次にとるべき行動が定義されました。残るは、次にとるべき行動を実行するだけです。
とはいえ、こうして洗い出された次にとるべき行動の中には、今、この場で、すぐに、行うことができる行動もあれば、特定の時期、場所でないとできない行動、誰かや何かと一緒でなければできない行動、何らかの返事を待ってからしかできない行動など、いろいろな行動があります。
したがって、次にとるべき行動を、何らかのシステムで管理する必要があります。当然、このシステムは、頭の外に構築するべきです。
(2)信頼できるシステムとは何か? すべてを管理し、適切なリマインダを与えてくれるシステム。
信頼できるシステムとは、次にとるべき行動のすべてを管理し、適切なリマインダを与えてくれるシステムです。
まず、次にとるべき行動のすべてをきちんと覚えてもらう必要があります。いつ、どこで、どのような状況で行う行動なのか、まで覚えてもらう必要があります。
次に、その行動を起こすタイミングで、適切にリマインダを与えてくれる必要があります。その行動を起こすべき時期が来たら、その行動をとるように指示してくれる必要があります。その行動を行うことができる場所に来たら、その行動をとるように指示してくれる必要があります。その行動を行うべき状況(人、道具など)がそろったら、今こそその行動を起こすべきタイミングであると教えてくれる必要があります。
とるべき行動のすべてをきちんと管理し、適切なリマインダを与えてくれるシステムに、とるべき行動のすべてを預けることができれば、自分の頭で次にとるべき行動を管理する必要はなくなります。頭はすっきりし、リラックスできます。
(3)システムの信頼性を維持するには? 定期的に見直す。
次にとるべき行動を管理するのが、システムの役割です。システムが信頼できなければ、頭でシステムを補う必要があります。これではGTDの本領を発揮することができませんん。そこで、システムの信頼性を維持することが大切です。
システムの信頼性を維持するためのポイントは、システムを定期的に見直すことです。
システムを定期的に見直すとは、おおざっぱに言えば、以下の2つです。
まず、定期的に、ここまでのプロセスを繰り返すことです。頭の中にある「気になること」を頭の外に追い出し、「気になること」ひとつひとつについて求めるべき結果ととるべき行動を定義して、とるべき行動をシステムに預けます。この作業は、週に1回程度行えばよいと思われます。
次に、システムに預けたとるべき行動の一覧を、ざーっと見返えすことです。一覧を眺めて、抜け・漏れがないかを確認したり、とるべき行動が具体的に定義されているかをチェックします。この作業は、すき間時間に行うのがよいと思います。電車の中や順番待ちの時間など、すき間時間はたくさんあります。とるべき行動を預けたシステムを持ち歩いていれば、すき間時間にさっとシステムを取り出して、一覧を確認することができます。
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