「起点」「目盛り」「焦点」(Re:発想法と「中心」)
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知的生産
問1:マインドマップとマンダラートには「中心」がある。アウトライナーとKJ法(あるいはこざね法)にはそれがない。その違いについて、自由に検討しなさい。
問2:「中心」と対になる概念、ないしは並列する概念があるとすれば、それはどのようなものになるか。自由に検討しなさい。
目次
問1について
(1) 「中心」とは何か?
マインドマップ、マンダラート、アウトライナー、KJ法、こざね法は、いずれも、2次元のフィールドに情報を表現する方法である。本問は、これらの方法における「中心」を問うものである。では、ここでいう「中心」とは何か。
結論からいえば、
「起点」のうち、フィールド中央に位置するもの
が「中心」であると考える。
順に考える。
まず、「起点」とは何か。
フィールド上に表現されるすべての情報がつながる源となる一点である。「起点」が存在する方法では、フィールド上に表現されるすべての情報は、「起点」からのつながりを持つことになる。
たとえば、マインドマップは、すべての情報が、中央に置かれたキーワードやイメージとつながっている。また、マンダラートは、周囲の8つのセルは、中心のセルとつながり、関係を持っている。これらが「起点」である。いずれも、最初に「起点」があり、その「起点」とのつながりで、フィールド上に情報が表現される。
これに対して、KJ法には、「起点」がない。KJ法でフィールド上に情報を表現するときに、フィールド上の一点とのつながりを前提とする必要はない。
次に、「中心」は、フィールド中央に存在する「起点」である。「中心」は、「起点」の特殊な一種であるといえる。
「起点」は、フィールド上のどこに存在してもよい。たとえば、アウトライナーの「起点」はフィールド左上であり、マインドマップやマンダラートの「起点」はフィールド中央である。
どこに存在してもよい「起点」のうち、中央に位置するものを「中心」と呼ぶ。マインドマップやマンダラートの「起点」は「中心」だが、アウトライナーの「起点」は「中心」ではない。
(2) 「目盛り」(マンダラートとマインドマップの違いについて)
「中心」の有無の違いを検討する前に、マンダラートとマインドマップの違いを検討する。
大きな違いは、「目盛り」の有無である。マンダラートには「目盛り」があるが、マインドマップには「目盛り」がない。
マインドマップには「目盛り」がないので、フィールドに情報を表現する際、「中心」との関係を、距離や方向で無限に表現できる。これに対して、マンダラートには「目盛り」があるので、「中心」との関係は、前後左右斜めの周辺セル8個か、周辺セルの周辺マンダラ展開によってしか、表現できない。
この違いは、デジタルとアナログといってもよいかもしれない。
(3) マインドマップ、マンダラート、アウトライナー、KJ法、こざね法、そしてマトリクス
このように、2次元のフィールド上に情報を表現する方法は、
- 「起点」の有無
- 「起点」がある場合、「中心」か否か
- 「目盛り」の有無
によって、次の6種類に分類できる。
- 「起点」が有る
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「目盛り」が有る
- 「目盛り」が無い
- 「起点」がフィールド中央ではない場所にある
- 「目盛り」が有る
- 「目盛り」が無い
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「起点」が無い
- 「目盛り」が有る
- 「目盛り」が無い
本問で例示されている5つの方法(マインドマップ、マンダラート、アウトライナー、KJ法、こざね法)に位置づけると、こうなる。
- 「起点」が有る
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「目盛り」が有る→マンダラート
- 「目盛り」が無い→マインドマップ
- 「起点」がフィールド中央ではない場所にある
- 「目盛り」が有る→アウトライナー
- 「目盛り」が無い→こざね法
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「起点」が無い
- 「目盛り」が有る
- 「目盛り」が無い→KJ法
該当がない残りの区画(「起点」が無い・「目盛り」が有る)には、マトリクスが該当する。
以上から、「起点」と「目盛り」を軸にして、2次元のフィールド上に情報を表現する方法を、次のように分類できる。
- 「起点」が有る
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「目盛り」が有る→マンダラート
- 「目盛り」が無い→マインドマップ
- 「起点」がフィールド中央ではない場所にある
- 「目盛り」が有る→アウトライナー
- 「目盛り」が無い→こざね法
- 「起点」がフィールド中央にある=「中心」が有る
- 「起点」が無い
- 「目盛り」が有る→マトリクス
- 「目盛り」が無い→KJ法
(4) 問1について
「中心」の有無による違いは、
- 「起点」の有無による違い
- (「起点」有りのうち、)「起点」の場所による違い
の2つに分けて考えるべきである。
「起点」の有無による違いは、フィールド上に情報を表現する際に、ある一点とのつながりを要求するか否か、である。要求するほうが制約度合いは強まるが、その制約が発想を促す場合もある。
「起点」の場所による違いは、「起点」との関係を表現するための選択肢の広さに影響を与える。「起点」がフィールド中央に位置づけられれば(すなわち、「中心」であれば、)「起点」(「中心」)との位置関係は、360度で表現できる。2次元のフィールドを前提とする限り、360度は、最も広い選択肢である。これに対して、「起点」がフィールド中央ではなく、フィールドの端に位置づけられれば、その分、表現できる関係の選択肢は狭まる。特に、四隅を「起点」とする場合は、表現できる「起点」との関係は90度に限定されるので、大幅に制約される。
●
「中心」(及びその上位概念である「起点」)とは別の軸に属するものとして、「目盛り」がある。
「中心」の有無と「目盛り」の有無は独立であるが、「目盛り」の有無と「中心」の有無が組み合わさることによって、発想法の特性が生まれる。
問2について
(1) 「起点」
「起点」は、「中心」の上位概念である。
2次元のフィールド上に表現される情報の源となる一点。フィールド上に表現されるすべての情報は、「起点」とのつながりを要求される。
「中心」は、フィールド中央に存在するときの「起点」の呼称。
(2) 「焦点」
「起点」を持たない方法で表現された場合でも、フィールド上に何らかの点が生まれることがある。たとえば、KJ法は「起点」を持たないが、KJ法を進めていくと、フィールド上に情報のまとまりが生まれ、情報が点を結ぶ場合がある。
このようにして生まれた点は、最初から存在するわけではない点で、「起点」とは異なる。表現された情報が事後的に点を結ぶので、「焦点」と呼ぶことにする。
すると、「焦点」は、「起点」の有無とは独立の存在だということがわかる。つまり、「起点」の有る方法でも、「焦点」は事後的に生じる。たとえば、アウトライナーは、左上に「起点」があるが、アウトライナー上に情報を表現していくと、情報のまとまりが少しずつ生じて、アウトラインの中にいくつかの「焦点」が事後的に生まれることがある。
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