なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?
公開日:
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WorkFlowy
目次
1.はじめに
MemoFlowyは、WorkFlowyにテキストメモを書き込むことに特化したアプリです。「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」という問いに対して、私は、次の3つの答えを示しました。
- MemoFlowyなら、アプリを立ち上げてすぐにメモを書き出せるから
- MemoFlowyなら、直感的な操作でテキストメモを書くことができるから
- MemoFlowyなら、書いたメモを、WorkFlowyのアウトラインの中の好きな場所へ簡単に放り込めるから
これら3つの理由には、ひとつの共通した前提があります。それは、「WorkFlowyにメモをする」です。
- WorkFlowyにメモをしなくてもよいなら、立ち上げてすぐにメモを書き出せるアプリは、たくさん存在します。でも、WorkFlowyにメモをするなら、立ち上げてすぐにメモを書き出せるアプリは、MemoFlowyだけです。
- WorkFlowyにメモをしなくてもよいなら、直感的な操作でテキストメモを書くことのできるアプリは、たくさん存在します(直感的な操作で書けないアプリのほうが少数派でしょう)。でも、WorkFlowyにメモをするなら、直感的な操作でメモを書くための選択肢は、MemoFlowyくらいしかありません。
- WorkFlowyにメモをしなくてもよいなら、WorkFlowyのアウトラインの中の好きな場所へ簡単に放り込めることは、何の意味も持ちません。でも、WorkFlowyのアウトラインの中にメモを放り込みたいのであれば、好きな場所へ簡単に放り込めることは、大きな意味を持ちます。
ということは、「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」という問いが、「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」という問いに先立ちます。「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」という問いに答えずに、「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」という問いに答えても、仕方ありません。
そこで、今度は、この「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」という問いを考えてみます。
2.「なぜ、Evernoteではなく、WorkFlowyに、メモをするのか?」
まず、「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」という問いを、もうすこしはっきりさせてみましょう。この問いの主眼は、どこにあるのでしょうか。
まず、この問いは、次の2つに分解することができます。
- (1) なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?
- (2) なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?
(1)は、「なぜ、(他の場所ではなく、)WorkFlowyにメモをするのか?」であり、(2)は、「なぜ、WorkFlowyに(他の用途ではなく)メモをするのか?」です。
この2つに分解したとき、ここで考えているのは、(1)の、「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」です。というのも、メモをすることは所与の前提として、メモのための場所にWorkFlowyを使う理由を問うものだからです。
次に、(他の場所ではなく、)WorkFlowyにメモをする理由を考える必要がありますので、比較の対象である「他の場所」として何を検討するのかを決めなければいけません。ここで考えているのは、iPhoneなどのスマートフォンからメモをする場面ですから、iPhoneなどのスマートフォンからメモをするときに使えるツールで、WorkFlowyと何らかの点で共通点があるツールを比較対象として選択するべきです。
結論からいえば、いちばんよい比較対象は、Evernoteではないかと思います。Evernoteは、2015年現在、個人が気楽にiPhoneなどから使えるメモサービスの筆頭だからです。
そこで、上の問いは、「なぜ、(Evernoteではなく、)WorkFlowyにメモをするのか?」と変換できます。これが、ここで考えるべき問いです。
3.メモする場所としてのEvernoteとWorkFlowyの比較
問いを検討する前提として、メモする場所という視点から、EvernoteとWorkFlowyを比較してみましょう。EvernoteとWorkFlowyは、多くの点で共通しますが、いくつかの根本的な点で異なります。
(1) 共通点
まず、共通点から。
EvernoteとWorkFlowyは、いずれも、マルチプラットフォーム対応のクラウドサービスです。スマートフォンからも、Windowsからも、Macからも、ひとつの共通したデータを扱えます。
EvernoteとWorkFlowyは、いずれも、「ファイル」という単位を持っていません。アカウントでひとつのデータを管理する、という枠組みです。
EvernoteとWorkFlowyは、いずれも、2015年現在、個人が使える知的生産ツールの代表です。とりわけ、個人が気楽に使えるメモツールという観点では、EvernoteとWorkFlowyが双璧ではないかと思います。
(2) 相違点
でも、EvernoteとWorkFlowyには、ちがうところもあります。
a.メモできるデータの種類
まず、メモできるデータの種類がちがいます。
Evernoteは何でもいけます。画像・音声・動画はもちろん、PDFでもWordなどのファイルでも、なんでも来い、です。データ形式問わず、すべてのメモをEvernoteに蓄積できます。これに対して、WorkFlowyがメモできるデータの種類は、テキストだけです。PDFやWordファイルはもちろん、画像や音声もメモできません。
b.情報の構造
次に、情報の構造がちがいます。EvernoteとWorkFlowyは、両方とも、アカウントでひとつのデータ、という点で共通するのですが、アカウントの中に存在するデータをどのような枠組みで管理するかは、大きくちがいます。
Evernoteが情報を管理する構造は、基本はノート単位で、ノートをノートブック・ノートブックスタックやタグで管理する、という枠組みです。アカウントの中に存在する情報をノート単位で区切り、ノートという単位を管理するために、ノートブック・ノートブックスタック、タグという機能がある、という構造になっています。
これに対して、WorkFlowyが情報を管理する単位は、トピックのみです。アカウントの中に存在する大量の情報を、トピックとその階層構造というただひとつの基準で、管理します。この情報の構造が、WorkFlowyの特徴のひとつです。
c.入口と出口
それから、入口と出口も、ずいぶんとちがいます。
Evernoteは、入口も出口も、柔軟で、たくさんの選択肢が用意されています。入口でいえば、公式アプリからだけでなく、メール投稿、連携アプリ、iftttなど、非常に多彩です。同じように、出口も、iftttにも対応していますし、(今はちょっと微妙な感じですが、)Postach.ioというサービスもありました。
これに対して、WorkFlowyは、入口と出口がけっこう閉鎖的です。WorkFlowyにデータを放り込むのは、WorkFlowy公式の画面からしかできません。公式の入口しか用意されていないのです。また、出口に関しても、公式で用意されているのはExport、差分メール、Dropboxへのバックアップだけで、そのいずれもが、それほど柔軟なオプションを持っているわけではありません。
技術的な話では、これはおそらく、WorkFlowyがAPIを公開していない、ということとつながるのだろうと思います。
このように、EvernoteとWorkFlowyは、入口と出口の開放度合いで、小さくないちがいを持っています。
4.WorkFlowyに書き込んだメモは、死なない
(1) メモをとるところまでは、Evernoteに分がある
EvernoteとWorkFlowyを比較すれば、ひとまず、次のひとつのことが明らかです。すなわち、メモをとるところまでだけを考えるなら、Evernoteに分があります。
というのも、Evernoteの入口は、とても広く、とても柔軟だからです。公式アプリでも、パソコン、スマートフォンなど、端末を問わず、どこからでもメモをすることができます。また、サードパーティ製アプリも充実しており、テキストメモに特化したアプリ、音声メモに特化したアプリなど、たくさんの使いやすいアプリが存在しています。その上、メール転送やiftttを使えば、メモをとることを自動化することだってできるところが圧巻です。このように、いったん仕組みを作ってしまえば、特別な努力をすることなく、何も考えずに普通の毎日を送っているだけで、自然とメモが蓄積されていくことが、Evernoteの強みです。
Evernoteなら、こんな夢のようなメモ環境を組み立てることができます。メモの入口という点では、WorkFlowyは、全然かないません。
(2) しかし、メモをとることそれ自体に意味があるわけではない
ただ、ちょっと立ち止まり、ひとつの問いを考える必要があります。「何のためにメモをとるのか?」です。さて、私は、いったい何のためにメモをとるのでしょうか。
メモをとることそれ自体には、大した意味はありません。どれだけたくさんのメモを蓄積しても、どれだけ質の高いメモを集めても、メモはメモです。素材に過ぎず、作品ではありません。メモそれ自体に何らかの価値が生まれることは、原則として、ありません。
では、メモをとることの価値は、どんなところから測ればよいのでしょうか。それは、知的生産のフロー全体です。あるとき書いたメモの価値は、そのメモがその後どのようなフローをだどり、どんなアウトプットに結実するかによって、判断されます。
であれば、あるメモをとる方法について、メモをとるまでが多少やりづらいとしても、その後のフローがスムーズに流れるのであれば、その方法でメモをとることには、一定の意義がある、と言えます。また、あるメモをとる方法について、メモをとるまでがとてもやりやすいとしても、その後のフローが滞るのであれば、その方法でメモをとることには、それほど大きな意義はない、とも言えます。
大切なのは、知的生産のフロー全体です。
(3) 書いたメモが流れに乗るところに、WorkFlowyの意義がある
メモをとることの価値は、捕らえられたメモそのものの質や量によってではなく、そのメモを含む知的財産のフロー全体から生み出される価値によって測られるべきである。これが、私の立場です。
この立場からすれば、WorkFlowyにメモをとることの意義が明らかになります。WorkFlowyに書いたメモは、Evernoteに書いたメモよりも、知的生産のフローをスムーズに流れていく傾向にあります。Evernoteに書いたメモはノートに格納され、ノートごとに分断されがちであるのに対して、WorkFlowyに書いたメモはトピックに格納され、トピックに乗って、WorkFlowyのアウトライン全体の中を、自由自在に動き回るからです。
抽象的に説明しても、わかりづらいと思います。だから、具体例を示します。
私は、読んだ本の抜き書きを、WorkFlowyにメモしています。WorkFlowyのトピックに格納された抜き書きは、WorkFlowyの中を、すいすいと流れます。WorkFlowyで文章を書いているときに、WorkFlowyの中にメモした抜き書きを引用するのは、本当に一瞬です。
たとえば、昨日、私は、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読み終え、本からの抜き書きをWorkFlowyにメモしました。そこで、その中から、「個人の継続的な知的生産」に関係しそうな箇所を、引用してみます。
ひとつは、この一節です。
エリはゆっくり首を振った。「駅をこしらえるのと同じことよ。もしそれが仮にも大事な意味や目的を持つものごとであるなら、ちょっとした過ちで全然駄目になったり、そっくり宙に消えたりすることはない。たとえ完全なものではなくても、駅はまず作られなくてはならない。
location 4009
もしそこに何か不具合が見つかれば、必要に応じてあとで手直ししていけばいいのよ。まず駅をこしらえなさい。彼女のための特別な駅を。用事がなくても電車が思わず停まりたくなるような駅を。そういう駅を頭に想い浮かべ、そこに具体的な色と形を与えるのよ。そして君の名前を釘で土台に刻み、命を吹き込むの。君にはそれだけの力が具わっている。だって夜の冷たい海を一人で泳ぎ切れたんだから」
location 4013
「たとえ完全なものでなくても、駅はまずつくられなくてはならない。」「もしそこに何か不具合が見つかれば、必要に応じてあとで手直ししていけばいい」というのは、個人が行う知的生産にも通じるところがあります。
また、多崎つくるの仕事に対する姿勢を記した、この一節。
図面と現況の間には意外にずれや誤差が生じているものだ。そういうものが生じた理由はいくつかあげられるが、とにかく作業にとりかかる前に、細部まで信頼できる図面を用意することが不可欠になる。工事にとりかかったあとで大きなずれや誤差が発見されたら、取り返しのつかないことになる。戦闘部隊が間違いだらけの地図を頼りに、どこかの島に上陸するようなものだ。
location 2595
準備、特に、基礎とする事実関係を細部まで正確に認識することの大切さを述べています。
このように、WorkFlowyにメモした内容は、WorkFlowyで文章を書いているときに、すぐに自由自在に引き出すことができます。すなわち、WorkFlowyに書いたメモは、その後、スムーズに、知的生産のフローに乗って流れていくわけです。
[具体例]本からの引用を格納した「トピック」は、WorkFlowyの中を、どのように流れていくのか?
(4) WorkFlowyに書き込んだメモは、死なない
スマートフォンとクラウドサービスの進化によって、個人が着想をメモの形で捕まえるための環境は、ぐっと整備されました。また、メモを保管するための環境も、かなり進歩しました。その代表例がEvernoteです。ほんの5年前のことを思い返してみれば、個人がメモを書き、メモを蓄えるために使える道具のレベルは、別次元の進化を遂げています。
ですが、捕まえ、蓄えたメモは、活用しなければ意味がありません。メモを活用しなければ、捕まえ、蓄えたメモを起点とする知的生産のフローは始まりません。
これは要するに、ボトルネックが移動した、ということです。スマートフォンやクラウドサービスやEvernoteが登場する前、メモに関するボトルネックは、メモを捕まえ、メモを蓄積する部分でした。スマートフォンやクラウドサービスやEvernoteは、このボトルネックを解消しました。その結果、ボトルネックは、捕まえ、蓄積したメモの活用に移りました。メモの活用というボトルネックをどうにかしなければ、捕まえたメモが死んでしまいます。メモを蓄積する場所は、遅かれ早かれ、メモの死体が累々と積み重なる死体置き場になってしまうのです。
WorkFlowyは、このボトルネックを解消します。WorkFlowyに蓄積したメモは、WorkFlowyのアウトラインの中を動きまわり、流れることによって、活用されるからです。
WorkFlowyに書き込んだメモは、死にません。
5.再び、「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」
以上が、「なぜ、WorkFlowyにメモをするのか?」、より具体的には、「なぜ、EvernoteではなくWorkFlowyに、メモをするのか?」という問いに対する、私なりの答えです。
ポイントをまとめると、
- (1) 確かに、メモの入口の点では、WorkFlowyはEvernoteに全然かなわない。
- メモできるデータの種類
- 入口の多彩さ・柔軟さ・自動化
- (2) しかし、メモをとることの価値は、メモを起点とする知的生産のフロー全体で判断されるべきである。
- (3) そして、メモを起点とする知的生産のフロー全体から見ると、EvernoteよりもWorkFlowyの方に分がある。
- Evernoteは、メモを捕まえ、メモを蓄積することは強いけれど、メモを活用する点が少し弱い。下手をすると、Evernoteは、メモの墓場になる。
- WorkFlowyに書いたメモは、トピックという入れ物に乗って、WorkFlowyのアウトラインの中を、自由に動き回る。WorkFlowyの中に入れたメモは、WorkFlowyを用いたすべての知的生産のフローに合流しうる。
- (4) つまり、WorkFlowyに書いたメモは、死なない。だから、WorkFlowyにメモをする。
となります。
●
ここで、「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」という問いに戻ります。
WorkFlowyにメモをとるのは、知的生産のフローのためです。この知的生産のフローのボトルネックは、フローの入口であるWorkFlowyにメモをとる行為にあります。そのため、ボトルネックを広げれば、その分、知的生産のフロー全体が生み出す価値が増えます。
MemoFlowyの役割は、ここにあります。「メモ入力画面」でテキストメモを書くことをサポートし、「WorkFlowy画面」でWorkFlowyへのペーストをサポートすることで、WorkFlowyへメモを放り込む入口を、少しでもスムーズにすることが、MemoFlowyが担う役割です。
WorkFlowyのAPIが公開されていないこともあり、MemoFlowyでは、ペースト操作が必要です。そのこともあり、MemoFlowyが改善できる度合いは、ささやかなものです。
しかし、WorkFlowyへの入口は、知的生産のフローのボトルネックなのですから、MemoFlowyによる改善は、そっくりそのまま、知的生産のフローの改善につながります。であれば、WorkFlowyにメモをとるための入口としてMemoFlowyを使うことには、確かな意義があります。
これが、「なぜ、MemoFlowyを使うのか?」という問いに対する、もうひとつの答えです。
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