【2015年の思考】WorkFlowy/情報の構造/Twitterで知的生産プロセスを共有/ブログで考察を深める/本を書いて「プル型知的生産」
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知的生産
12月になったのを機に、自分にとっての個人的な2015年をふり返っています。これまでに、読書と文章という観点のふり返りを書きました。
「知的生産のフロー」でいえば、情報のインプットが読書、情報のアウトプットが文章なので、残りは情報の操作、つまり思考です。そこで、思考という観点から、2015年をふり返ります。
結論ありきな感もありますが、もちろんここでも、肝はWorkFlowyです。ただ、WorkFlowy一辺倒ではありません。Twitter、マンダラート、ブログ、あたりもがんばってます。
目次
1.WorkFlowyで考える=「フリーライティング」と「シェイク」
2015年12月現在、私が使っている考えるための道具は、主にWorkFlowyです。
私にとって、考えることは、言葉を操作することと、ほとんど重なります。言葉で問いを立て、言葉で理由を組み立て、言葉で結論を導くことが、私にとっての、考えるということです。
WorkFlowyは、テキストデータを操作することが、めちゃくちゃ得意です。ですから、WorkFlowyは、言葉を操作することに関しては、ほとんど非の打ち所がありません。
そう考えると、私がWorkFlowyを考えるための道具として愛用するようになったのは、わりと自然な流れなんだろうと思います。
言葉を操作することの典型例は、読むことと書くことです。読むことと書くことにWorkFlowyをどう使っているかについては、以下の2つのふり返りでまとめました。
これら2つの記事でまとめたことが、WorkFlowyを使ってどのように考えているのかの、だいたいの答えです。これ以上追加すべきことは特に見当たらないのですが、あえて書くなら、「フリーライティング」と「シェイク」という2つかなと思います。
2015年、私は、この2つの技法を知りました。(というか、この2つの技法を、技法として認識し、技法として自覚的に実践するようになりました。)これによって、WorkFlowyのことを、より「考えるための道具」として使いこなせるようになったような気がします。
そこで、以下、「フリーライティング」と「シェイク」という2つの技法を、簡単に紹介します。
(1) フリーライティング
「フリーライティング」とは、要するに、「自由に文章を書くこと」です。10分とか20分とか時間を決めて、そのとき頭や心に浮かんだいろいろなことを、かたっぱしから、文章の形に書き起こしていきます。ワクワクすることも、楽しいことも、嫌なことも、引っかかっていることも、不安なことも、悲しいことも、自分の中に存在するありとあらゆるものを取り出して、そのひとつひとつに言葉を与えます。このフリーライティングをすると、(具体的な状況は何も変わっていないにもかかわらず、)しばしば、なんとなくすっきりしてきて、いろんなものが落ち着くべきところに落ち着き、次の行動が浮かび上がってくることがあります。
WorkFlowyをはじめとするプロセス型アウトライナーは、「フリーライティング」を実践するための、もっともふさわしい道具です。プロセス型アウトライナーで「フリーライティング」を実践する具体的な方法については、Tak.さんの『アウトライン・プロセッシング入門』と、gofujitaさんによる次の一連の文章が参考になります。
- フリーライティング
- フリーライティングで生活のアウトラインを育てる
- はじまりのフリーライティング(第1回)
- はじまりのフリーライティング(第2回)
- はじまりのフリーライティング(第3回)
- はじまりのフリーライティング(第4回)
(2) シェイク
思考には、トップダウンとボトムアップがある、とされます。
トップダウン型の思考は、理念や目的や枠組みなど、抽象度が高く本質に近いところをまず押さえて、そこから具体例や細部を導きます。演繹は、トップダウンの典型例です。
これに対して、ボトムアップ型は、具体例や細部をたくさん集め、そこから徐々に抽象度を上げ、本質に近づいていきます。帰納は、ボトムアップの典型例です。
トップダウンとボトムアップは、どちらか一方だけを使うものではありません。大切なのは、両者の往復です。トップダウンとボトムアップをうまく循環させると、厚みのある説得的な思考を展開することができます。
とはいえ、トップダウンとボトムアップを往復することは、必ずしも簡単なことではありません。理由のひとつは、知的生産を担うツールの制約です。ワードプロセッサに文章を書いたり、情報カードに着想を集積したりといった個々のツールは、それぞれ、トップダウンかボトムアップのどちらかと相性がよく、ひとつのツールで両者をうまく循環させるには、それなりに高度なノウハウを要求します。
ところが、WorkFlowyなどのプロセス型アウトライナーはちがいます。ただ使っているだけで、自然と、トップダウンとボトムアップが循環します。
Tak.さんは、このトップダウンとボトムアップの循環プロセスを、「シェイク」と呼んでいます。
トップダウンとボトムアップを「シェイク」する(1):Word Piece >>by Tak.:So-netブログ
トップダウンとボトムアップを「シェイク」する(2):Word Piece >>by Tak.:So-netブログ
WorkFlowyはすぐれたプロセス型アウトライナーでもあるので、WorkFlowyを使っていると、特に何かを意識しなくても、自然と、「シェイク」を実践できます。でも、少し意識すると、もっとうまくトップダウンとボトムアップを循環させることができます。WorkFlowyを考えるために使いたい方は、「シェイク」を意識してみることをおすすめします。
2.情報の構造で考える=Evernote、WorkFlowy、マンダラートが持つ情報の構造
(1) 情報の構造と思考
2015年は、これまで以上に、情報の構造というものを考えた1年でした。
もともと、私は、文章を書くことによって、ものを考えることを好んでいました。たとえば、この記事では、「考えること=文章を書くこと」だとはっきり断言しています。
Evernote×思考。Evernoteで、考えを捕まえ、育て、寝かせる。
当時、文章を書く=ものを考えるために使っていた道具は、Evernoteでした。これに対して、2015年になって、WorkFlowyとマンダラートを使い始めました。
EvernoteとWorkFlowyとマンダラートは、いずれも、言葉を操作するための道具です。でも、EvernoteとWorkFlowyとマンダラートが言葉を扱う枠組みは、それぞれかなりちがいます。
そのため、同じような情報を持つ言葉を入れても、EvernoteなのかWorkFlowyなのかマンダラートなのかによって、情報の構造が変わります。そして、情報の構造が変わることによって、そこで展開される思考のあり方自体が、変わります。
(2) 3つの道具が持つ情報の構造
a.Evernote=文章の構造
Evernoteの中に入れた言葉は、ノートごとに区切られます。そして、ひとつのノートで区切られた一群の言葉は、ひとつの文章に相当します。Evernoteという道具が扱える意味の構造は、基本的に、文章と同じ構造です。
文章の構造は、基本的には、1次元です。
もちろん、文・段落・節などによって、概念の上限関係を表現できますし、項目番号・項目名・接続詞などを駆使すれば、複雑な構造を表現することも可能です。実際、私は、項目番号によって、Evernote(テキストエディタ)をアウトライナーのように使っていました。
項目番号はアウトライナーになる(項目番号によって文章の構造を組み立てる)
しかし、文章が持つ本来の構造は1次元ですので、Evernoteの構造は、ひとつひとつのノートの内部では、基本的に、1次元です。
(Evernoteはリスト機能を持っていますので、これを使えばひとつのノートの中で簡単なアウトラインを操ることができます。が、トピック移動やZoom機能などがないので、深くは触れません。)
b.WorkFlowy=階層構造
WorkFlowyに入れた言葉は、トピックに格納された上で、トピックの階層構造で管理されます。トピックの階層構造は、階層関係と順序関係から構成されます。
WorkFlowyのトピック階層構造は、文章と共通する順序の次元に加えて、深さの次元を持っています。この点で、WorkFlowyの構造は、文章とはちがいます。
ただし、WorkFlowyの構造は、2次元構造とはちがいます。順序と深さの構造を持つといっても、順序・深さ双方に、次のような制約があるためです。
- 順序の次元の制約
- 連続していなければいけない
- ダブリが許されない
- 深さの次元の制約
- 連続していなければいけない
順序の次元の、ダブリが許されない、という制約は、時間軸と似ています。これを0.5次元と捉えれば、WorkFlowyの階層構造は、1.5次元です。
c.マンダラート=3×3の9マスの中に存在する構造と、周辺マンダラ展開によるマンダラが多階層に重なる構造
私が2015年に使い始めた道具のひとつは、マンダラートです。私はこれを、主に『[超メモ学入門]マンダラートの技法』という本で学びました。
以前、私は、マンダラートのことを誤解していました。「マンダラート? 3×3の9マスを使った発想法のことかな。」という感じです。
しかし、マンダラートの本質は、3×3の9マスを使った発想法ではなく、思考の技法です。情報の構造に対する深い洞察や、言葉を丁寧に扱う態度などが、マンダラートのとても大切なところです。
今、この節で私は、情報の構造が思考のあり方に与えた影響を考えているのですが、この考え方はマンダラートから学んだものです。
論理の枠組みで思考を導くマンダラートの創り方と読み方(マトリクスと比較する視点から)
(3) 3つの構造でひとつのことを考える
このように、2015年、私は、Evernote、WorkFlowy、マンダラートという3つの道具を使って、いろんなテーマを考えました。
これら3つの道具は、別々の情報を持っています(Evernoteがふつうの文章のリニア構造、WorkFlowyが深さという0.5次元を持つ1.5次元の段差構造、マンダラートが中心vs周辺や周辺マンダラ展開というノンリニア構造)。これら3つの道具を使って考えると、自然と、3つの構造でものを考えることができます。「WorkFlowy」とか「個人の知的生産」などといった共通のテーマを、3つの道具による3つの構造で考えることによって、自然と、多面的に物事を考えることができたのではないか、と期待しています。
3.Twitterで考える=思考の断片が漂う空間で知的生産のプロセスを共有する
(1) Twitterで考える
2015年の思考をふり返る上で欠かせない存在は、Twitterです。2013年からぼちぼち使いはじめ、2014年にはかなり使うようになったTwitterですが、2015年には、思考ツールとしてうまく機能してくれました。
とはいえ、「2015年はTwitterを思考ツールとして活用しよう!」などと狙ったわけではありません。2014年までと同じようにTwitterを使い続けていたら、あるときから、Twitterがすばらしい思考ツールとして機能し始めていました。このことに気づいて、私はとても驚いたものです。
(2) Twitterという思考の断片が漂う空間
では、Twitterは、どのような意味で、思考ツールとして機能していたのでしょうか。
まず、思考の断片を収穫するための空間として、機能してくれました。たとえば、私は、2014年の大晦日、Twitterを「WorkFlowy」で検索することで、WorkFlowyに関する日本語のウェブ情報がどんなものなのか、おおまかに掴みました。バラバラのツイートなので、断片に過ぎません。でも、ここで収穫した断片が、2015年に入ってからのWorkFlowyに関する一連の思考に、よい影響を与えてくれました。
次に、思考の断片を放流するための空間として、機能してくれました。ふと思いついたことをTwitterの流すと、ときどき、リツイートされたり、ファボ(現・いいね)をもらったり、リプライをいただいたりします。あたかも、Twitterに放流した思考の断片が、大きく成長して戻ってくるような感じでした。たとえば、このブログ記事は、
このTwitterへの放流から生まれました。
ふと気づけば、WorkFlowyカテゴリのエントリだけを書いているうちに1ヶ月以上の時が過ぎちゃったのだが、WorkFlowyのことだけを書いているわけではないつもり。
— 彩郎 () 2015, 2月 8
このように、Twitterは、思考の断片が漂う空間です。Twitterという空間の中で時間を過ごしていると、そこを漂う思考の断片を触媒や材料として、自然と、いろんな思考を生み出すことができます。
これが、Twitterが思考ツールであるということの意味です。
(3) 知的生産のプロセスを共有する
さらに、Twitterそのものではないのですが、Twitterを起点として、知的生産のプロセスを共有するという体験をすることができました。
そのひとつが、段差ラ部のWorkFlowy共有トピックです。
段差ラ部は、2014年にTwitterで誕生した「#段差ラ部」というハッシュタグを中心とするゆるやかな集まりです。2015年、段差ラ部は、WorkFlowyの共有トピックを手にしました。現時点では落ち着いていますが、この段差ラ部共有トピックでは、日々、アウトライナーや知的生産に関するいろいろなやり取りが交換されていました。まさに知的生産プロセスの共有と言ってよいと思います。
野口悠紀雄氏は、『「超」整理法』などで思考を支援するシステムを検討するとき、「他者と一緒に思考を進めるために大切なことは、ブレストのルールや仕組みなどではなく、誰と一緒に考えるか、というメンバー選定に尽きる。」という、ある意味、身もふたもないことを述べています。
私としては、この話に100%同意するわけではないのですが、ともあれ、知的生産のプロセスをしかるべき方々と誰と共有すれば、知的生産は大きく拡張するんだということを、段差ラ部のWorkFlowy共有トピックを通じて、私は実感しました。とても幸運なことだと思います。
4.ブログで考える=個人が試行錯誤を繰り返す仕組み
(1) ブログは、個人が持ちうる、理想的な、考えるための道具である
今年も、ブログが、考えるための道具として、うまく機能してくれました。
ブログが考えるための道具になることを深く実感したのは、2014年10月ころのことでした。次の4つの記事を書くことを通じて、「ブログは、個人が持ちうる、理想的な、考えるための道具だ」と確信したのでした。
- 2014-10-23
- 2014-10-26
- 2014-10-28
- 2014-10-29
(2) WorkFlowyというテーマの研究と、ブログ
さて、2015年は、まさにこれら4つの記事で書いたとおりのことが実現しました。
2015年1月に「WorkFlowy」という研究テーマを得て、「WorkFlowy」についての考察を継続的にアウトプットし、フィードバックをいただくことを繰り返す過程で、私は、少しずつ、自分の「WorkFlowy」に対する考察を深めることができたのです。
簡単に時系列でふり返ってみます。
- 2015年1月、WorkFlowyを本格的に使い始めました。WorkFlowyのURLを面白いと感じ、試行錯誤をする過程で、「WorkFlowy専用Firefox」というノウハウにたどり着きました。
- 2015年2月、WorkFlowyの肝は「アウトラインはひとつだけで十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」という思想にあるのかもしれない、と感じました。また、Stylishというアドオンを知りました。
- 2015年3月、WorkFlowyを文章エディタとして使うことを追究しました。WorkFlowyで読書ノートを作り始めたのも、この時期です。
- 2015年4月、WorkFlowyの基本機能を淡々と確かめることを始めました。共有機能、検索&タグ、トピック移動やテキスト入力の仕組みなど、細かな仕様をひとつひとつ抑えていきました。
- 2015年5月、ハサミスクリプトファミリーの拡充にともない、ハサミスクリプトの思想を考えました。また、Tak.さんの『アウトライン・プロセッシング入門』の影響で、WorkFlowyを利用したフリーライティングをする時間が増えました。
- 2015年6月、メインアカウントのトピック数が随分と増えてしまい、読み込み時間がばかにならなくなったこともあり、サブアカウント運用を考えました。WorkFlowyの共有機能がとても柔軟であることに、改めて驚嘆しました。
- 2015年7月、WorkFlowyを使ってプレゼンすることを模索しました。WorkFlowyは、プレゼンツールのひとつの理想形なんじゃないかと思います。また、Stylishによって、WorkFlowyをデジタル三色ボールペンへと育てることができました。
- 2015年8月、TileTabsでWorkFlowyを2画面にしました。また、ShortcutKey2URLで、キーボードからアウトラインの中を自由に動き回ることができるようになりました。
- 2015年9月、読書ノートの運用が安定し、「WorkFlowy抜き書き読書ノート」という手法に結実しました。また、『知的生産の技術』の各章をWorkFlowyから実現する方法を考察しました。さらに、HandyFlowyというアプリの制作を始めました。
- 2015年10月、WorkFlowyの本を書く機会をいただきました。執筆の過程で、WorkFlowy基本5原則というものを考えたり、WorkFlowyの用語集を整えたりしました。また、HandyFlowy制作の過程で、MemoFlowy制作が始まりました。
- 2015年11月、WorkFlowyをiPhoneから使うことを掘り下げました。特に、iPhoneから使うWorkFlowyのテキスト入力ルールを丁寧に検証したところ、iPhoneから使うWorkFlowyの快適度が、ぐっと上がりました。
- 2015年12月、MemoFlowyが完成し、公開されました。
●
こうしてふり返ってみると、実に楽しい考察を重ねることができた1年間だったように感じます。
自分で言うのもなんですが、私は、何かを深く考察して新しい知見を生み出していくことが、それほど得意ではありません。でも、自分で言うのもなんですが、私が書いてきたWorkFlowyについての考察は、ちょっとしたもんなんじゃないかと自負しています。私がここまで考察を深めることができたのは、すべてブログへのアウトプットを繰り返し、いろんな方々からのフィードバックをいただいたからこそです。
自分の経験を踏まえて、私は、自信を持って断言できます。ブログは、個人が持ちうる、理想的な、考えるための道具です。自分がワクワクするテーマを自分で設定し、そのテーマについての考察をアウトプットし続けていけば、プロの研究者でも何でもないひとりの個人であっても、少しずつ着実に、考察を深めていくことができます。
5.本(の原稿)を書いて考える=大規模なプル型知的生産
(1) WorkFlowyの本を書くことで、WorkFlowyを考える
2015年、私は、WorkFlowyの本(の原稿)を書きました。
【ご報告とお礼】WorkFlowyで、WorkFlowyの本(の原稿)を書きました。
本を書くことは、知的生産のフローでいえば、もちろん、情報のアウトプットです。しかし、実際に本1冊分の原稿を書いてみた現時点で感じることは、少なくとも今の自分にとっては、この行為はアウトプットの行為ではなく、むしろ、主に、インプットや思考など、アウトプットよりも前の行為としての意味を持っています。
どういうことでしょうか。
私が本の原稿を書き始めたのは、2015年9月頃です。その時点で私は、約8ヶ月の間、WorkFlowyについて書き続けてきました。それだけの期間、WorkFlowyについて書き続け、書きたいことはまあだいたい書き尽くしたかなと思ったので、本の原稿を書き始めたのでした。
ところが、本の原稿を書き始めると、それまで書いてきたことをもう少し進めるような内容が、どんどん生まれました。私は、それらを一旦ブログに書くことにしました。そんなわけで、9月、10月に書いたブログ記事の大半は、本の原稿を書こうとする中で生まれたものです。
これら、本の原稿を書こうとする中で生まれた記事の中には、たとえば、こんなものがあります。
- WorkFlowy基本5原則
- WorkFlowy抜き書き読書ノート
- 知的生産のフローとWorkFlowy
これらの記事は、WorkFlowyの本を書こうとしたからこそ書けたブログ記事です。WorkFlowyについて1冊の本を書くことに取り組んだから、それまでの考えを少し前に進めることができ、その結果、これらの記事をまとめることができました。
(2) 本を書くことは、大規模なプル型知的生産
昨年9月ころ、私は、「プル型知的生産」ということを書きました。
知的生産のフローは、情報のインプット→情報の操作→情報のアウトプットという流れです。これを時系列に並べれば、まずインプットし、次に操作し、最後にアウトプットする、という順序が、普通のイメージです。
しかし、情報の流れがインプット→操作→アウトプットだとしても、時系列の順序では、必ずしも、この順序でなくてもかまいません。最初にアウトプット、次に操作、そしてインプット、という順序もありえます。
このように、最初にあたらしい情報のアウトプットが来て、あたらしい情報のアウトプットに引っ張られて、情報の操作や情報のインプットが後に続く、という順序の知的生産を、「プル型知的生産」と名づけました。「プル型知的生産」は、アウトプットからインプットをプルする知的生産です。
プル型知的生産を活用する。個人的な知的生産がプッシュ型からプル型に転換した話。
「プル型知的生産」を考えたとき、私が想定していたのは、ブログです。ブログに文章を書き続けるというアウトプットをすることで、そこから情報の操作や情報のインプットが引っ張られる、という循環に、大きな可能性を感じたのでした。
ブログが「プル型知的生産」と相性がよいのは、そのとおりだと思います。でも、本1冊分の原稿を書いた今、強く実感することは、本1冊分の原稿を書くことは、ブログよりも大規模なプル型知的生産を引き起こすんだ、ということです。
本1冊分の原稿を書くことからのプル型知的生産は、より大規模なプル型知的生産なので、その分、より遠くまで、より深くまで、より広い範囲を、考えることができます。その分大変ではあるのですが、その分楽しいですし、楽しめる時間もその分長いです。
実際、WorkFlowyの本を書くことは、ずっと続けていてもいいかも、と思うほど、楽しい経験でした。条件を整えて、2016年も、本1冊分の原稿を書いてみたいと思っています。
【まとめ・2015年の思考】
1.WorkFlowyで考えました。WorkFlowyで読み、WorkFlowyで書くことに加えて、「フリーライティング」と「シェイク」という2つの技法を自覚的に取り入れたことが大きかった気がします。
2.Evernote、WorkFlowy、マンダラートという3つの道具を使って、考えました。3つの道具が持つ情報の構造はそれぞれちがうので、3つの道具を使って考えることで、自然と、ひとつのテーマを3つの異なった構造で考えることができました。
3.Twitterが思考ツールとして活躍してくれました。思考の断片が漂うTwitter空間で時間を過ごすことは、いろんな思考を刺激してくれます。また、Twitterを起点として、知的生産のプロセスを共有できる方々と出会うことができました。
4.ブログでは、1年間をとおして、「WorkFlowy」というひとつのテーマに取り組んできました。その時点までの考察をとりあえずアウトプットして、フィードバックを得る、ということを繰り返す中で、少しずつ考察を深めることができました。
5.生まれてはじめての経験として、本1冊分の原稿を書きました。本1冊分の原稿を書くことは、ブログ記事を書くことよりも、もっと大規模な「プル型知的生産」を引き起こします。この「プル型知的生産」は、大規模なだけあって、その分楽しくて、その分広く深いです。
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