【連載】iOSからWorkFlowyを快適に使う(1) iOS版公式アプリの課題を整理し、解消の道筋を描く。
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WorkFlowy
WorkFlowyは、パソコンから使うと、実に快適です。でも、スマートフォンから使うWorkFlowyは、少なくとも現時点では、少なくとも私にとって、あまり快適ではありません。スマートフォン用のWorkFlowy公式アプリが問題の原因です。
この課題を解消するため、現在、とあるところで、WorkFlowyの新しいスマートフォン用アプリを開発するプロジェクトが進んでいます。
開発中のアプリは、2種類です。
ひとつは、メモ投稿に特化したシンプルなアプリ。ぱっとアプリを立ち上げ、さっとテキストをメモし、WorkFlowyの特定の場所にぽんと放り込むことが、このアプリが担う役割です。
もうひとつは、モバイル版「WorkFlowy専用ブラウザ」のようなアプリ。巨大な「アウトライン」の中を自由自在に動き回るための機能を備えている上、カスタマイズの幅が広いので、WorkFlowyを「自分の道具」に育てることもできます。
実は私もそのプロジェクトに関わらせていただいており、このブログでも、それほど遠くない時期に、具体的な報告をすることができるはずです。乞うご期待。
とはいえ、新しいアプリを待つ今の段階で、できることがまだあります。
ひとつは、現状の公式アプリのことを、もう少し丁寧に掘り下げておくことです。何ができて、何ができないのか。使いづらさを感じる原因がどこにあって、それらを解消することは、本当に不可能なのか。公式アプリを見限るのは、公式アプリの力を限界まで引き出してからでも、遅くありません。
もうひとつは、現段階で利用できるアプリなどを組み合わせて、課題を解消する手段の考察です。実際、公式アプリが抱える課題を解消するための対策は、現に存在しています。公式アプリではなく、ブラウザアプリからWorkFlowyを使う、という方法です。iOS用のブラウザアプリにはいろいろなものがありますので、WorkFlowyと最も相性のよいブラウザアプリを使えば、かなりの程度、iPhoneから使うWorkFlowyを快適にすることができます。新しいアプリを検討する前に、現時点でできる選択肢を具体的かつ十分に検討しておくことが大切です。
そこで、何度かに分けて、主にiPhoneを念頭に置き、iPhoneからWorkFlowyを快適に使う方法を考察します。
連載の第1回は、課題編です。iOS版WorkFlowy公式アプリの課題を整理し、課題を解消する道筋をラフに描きます。
1.iOS版WorkFlowy公式アプリの課題
iOS版WorkFlowy公式アプリは、それほど評判がよくありません。私自身、iOS版WorkFlowy公式アプリには、あまり満足していません。
では、これらの不満は、具体的に、どんなところから来るのでしょうか。iOS版WorkFlowy公式アプリが抱える課題を考えてみます。
(1) テキスト入力のやりづらさ
ひとつめは、テキスト入力のやりづらさです。iOS版WorkFlowy公式アプリからテキストを入力することは、快適ではありません。
WorkFlowyは、テキストを管理するシステムですので、テキスト入力は、生命線のひとつです。テキスト入力がやりにくいことは、iOS版WorkFlowyの使い勝手を、大幅に下げています。
では、テキスト入力のやりづらさとは、具体的に、どんなことでしょうか。
ひとつは、キーボードの挙動がよくわからないことです。iOS版WorkFlowyを使っている方は共感してくださるんじゃないかと思うのですが、出てほしくないときにキーボードが出てきて、出たままでいてほしいときにキーボードが隠れてしまうことが、頻発します。
カーソルを目的の場所に置くことも、やりづらいです。虫眼鏡を出そうとしてもなかなか出てこなかったり、カーソルを移動させようとしているときにキーボードが隠れてしまったりで、なかなか思い通りに行きません。
また、「コピー」「ペースト」「文字選択」などのメニューを出すのも、苦労します。この文字列を選択したい、ここにペーストしたい、と思っても、メニューがなかなか出てこないので、不自由を感じます。
このように、キーボードの挙動が不明なこと、カーソル移動がやりづらいこと、「ペースト」などのメニューを出しづらいことなどから、テキスト入力が快適ではない点が、私にとって最大の問題です。
(2) トピック移動のやりづらさ
ふたつめは、トピック移動のやりづらさです。
WorkFlowyは、テキストをトピックに格納することによって、テキストを管理します。そして、WorkFlowyのトピックは、自由に動かし、階層構造に組み立てることができることにこそ、強みがあります。そのため、トピック移動も、WorkFlowyにとっての生命線です。
ところが、iOS版WorkFlowyアプリは、トピック移動がそれほど使いやすくありません。
特に問題なのは、トピックを長押しすることによるトピック移動です。
どうやら長押しによってトピック移動モードになるのですが、長押ししてもトピック移動にならないこともあります。また、反対に、トピック移動モードにしたくないのにトピック移動モードになってしまうこともあります。要するに、どんなときにこのトピック移動モードに入れるかが、よくわかりません。
また、トピック移動モードになっても、思い通りの場所にトピックを移動できないこともあります。
このように、特にトピック長押しによるトピック移動が使いにくいことが、iOS版WorkFlowy公式アプリの問題点です。
(3) 使えないWorkFlowyの機能がある
みっつめの問題点は、WorkFlowyに備わっているにもかかわらず、使えない機能がある、ということです。
たとえば、iOS版WorkFlowyからは、Export機能が使えません。WorkFlowyの力を引き出すコツは、「全体から一部分を切り出す」というあり方であるところ、このあり方を可能にするためのキーとなる機能が、Exportです。にもかかわらず、iOS版WorkFlowyからは、Exportが使えません。
また、iOS版WorkFlowyでは、共有機能が使えません。WorkFlowyの共有機能は、とても手軽です。使い捨て感覚でアウトラインを作成し、気楽にそのアウトラインを共有すると、WorkFlowyは、とたんに強力なコラボレーションツールになります。それにも関わらず、WorkFlowyの共有機能は、iOS版WorkFlowyアプリからは利用できないのです。
さらに、iOS版WorkFlowyアプリでは、Starページを表示することができません。WorkFlowyの「アウトライン」は、自分のすべてが同居した巨大な「アウトライン」なので、その中からひとつのトピックを表示するために、Star機能が助けになります。ところが、このStar機能を利用することができません。
もうひとつ利用できないのは、WorkFlowyのURLです。WorkFlowyは、Zoomしているトピックや検索条件ごとに、固有のURLを持っています。このURLは、WorkFlowyの力を大きく引き出すことができる可能性を持っているのですが、iOS版WorkFlowyからは、WorkFlowyのURLを取得することができません。
このように、iOS版WorkFlowyからでは、WorkFlowy自身がせっかく備えているいくつもの特徴的な機能を、十分に利用することができません。
(4) アウトライン全体の再読み込みに時間がかかる
よっつめの問題点は、しばしば「アウトライン」全体の再読み込みになってしまうことです。
WorkFlowyは、最初に「アウトライン」の全体をローカルに読み込みます。これによって、いちどローカルに読み込んだ後は、とても軽快な動きを実現するのですが、反面、最初に「アウトライン」全体を読み込むには、多少の時間がかかります。(「アウトライン」の大きさにもよりますが、10万トピックを超えると、30秒ほどかかることもざらです。)
パソコンからの利用なら、大した問題ではありません。ブラウザのキャッシュに「アウトライン」を保持し続けるためか、パソコンを開いた瞬間から、「アウトライン」全体はすでに表示されているためです。
しかし、iOS版WorkFlowyアプリは、しばしば「アウトライン」全体を再読み込みしているようです。どんな条件なのかはよくわかりませんが、何度かに一度、「アウトライン」全体が再読み込みされます。
こうなると、「アウトライン」が表示されるまでに数十秒待たされますし、また、通信量も消費します。
しばしば「アウトライン」全体を再読み込みする状態になること。これも、iOS版WorkFlowyアプリの問題点です。
(5) WorkFlowyのURLをブックマークすることによるZoom(Jump)が使えない
いつつめの問題は、WorkFlowyのURLをブックマークすることによるZoom(Jump)が使えないことです。
WorkFlowyの「アウトライン」は巨大です。その中からひとつのトピックを探しだし、そのトピックにZoomするのは、WorkFlowyの操作にかなり習熟していても、それなりに手間がかかります。
この方法を解決するために、WorkFlowy自身が用意している公式機能はStarなのですが、正直なところ、Star機能だけでは、10万を超えるトピックを管理するには、全然十分ではありません。
では、どうしたらよいでしょうか。
解決策は、WorkFlowyのURLです。WorkFlowyは、Zoomしたトピックや検索条件ごとに、固有のURLを持っています。これをWorkFlowyのURLと呼ぶのですが、このWorkFlowyのURLにアクセスすれば、いつでも、特定のトピックの、特定の検索状態を表示することができます。つまり、WorkFlowyのURLにアクセスしさえすれば、いつでもすぐに、目的とするひとつのトピックにZoomするなどができるわけです。
このように、WorkFlowyのURLにアクセスすることによって特定のリストを表示させることも、リストの表示変更なので、Zoomの一種です。私は、このZoomを、Jumpと呼んでいます。パソコンからWorkFlowyを使うときに、WorkFlowy専用ブラウザを使うことのメリットが、ここにあります。
ところが、iOS版WorkFlowyアプリには、ブックマークがありません。そのため、WorkFlowyのURLをブックマークに登録することによるJumpが利用できません。
これは、iOS版WorkFlowyの大きなデメリットです。
(6) 複数タブが使えない
むっつめの問題は、複数タブが使えないことです。
WorkFlowyは、クラウドサービスなので、データの実体は、ただひとつ、WorkFlowyのサーバーに保存されています。ブラウザを使えば、そのただひとつのデータを、複数タブから、複数同時に、開くことができます。これによって、たとえば、ひとつの文書の離れた場所を同時に操って文章を書く、といったことが可能になります。
ところが、iOS版WorkFlowyでは、複数タブが使えません。そのため、iOS版WorkFlowyからでは、ただひとつの「アウトライン」を、ただひとつの画面からしか、使えません。
(7) ブックマークレットやアドオンによるカスタマイズが使えない
ななつめの問題は、カスタマイズの幅が狭いことです。
WorkFlowy自身は、カスタマイズの余地をほとんど残さないツールです。しかし、WorkFlowyはブラウザから使うウェブアプリなので、ブラウザをカスタマイズすることで、かなり自由に、WorkFlowyをカスタマイズできます。
具体的には、ブックマークレットとアドオン(機能拡張)です。
たとえば、ブックマークレットを使えば、文字数カウント機能を追加することができます。また、アドオンを使えば、WorkFlowyの見た目をガラリと変えたり、WorkFlowyをデジタル三色ボールペンとして使うことができます。
このように、ブラウザをカスタマイズすることで、WorkFlowyの使い勝手を挙げることができます。WorkFlowyのカスタマイズは、WorkFlowyを「自分の道具」に育てる道を開くのです。
しかし、iOS版WorkFlowyは、ブラウザではありませんので、カスタマイズの余地が、ほとんど残されていません。そのため、もうちょっとこんな機能があればいいのになと思っても、どうしようもありません。
2.課題を解消する道筋をラフに描く
まとめます。iOS版WorkFlowyアプリの課題は、以下のとおりです。
- 【課題1】テキスト入力がやりづらい
- 【課題2】トピック移動がやりづらい。
- 【課題3】WorkFlowyが備える機能のいくつかが使えない。
- 【課題4】「アウトライン」全体の再読み込みに時間がかかることが多い。
- 【課題5】WorkFlowyのURLブックマークによるZoom(Jump)が使えない。
- 【課題6】複数タブが使えない。
- 【課題7】カスタマイズして「自分の道具」に育てることができない。
これらの課題を解消すれば、iPhoneなど、スマートフォンからでも、WorkFlowyを快適に使うことができます。今後、これらの課題を解消するための試行錯誤を順次書いていくつもりですが、現段階で私が描いている道筋を、ラフに描いておきます。
(1) iOS版WorkFlowyアプリの力をひきだす
【課題1】(テキスト入力がやりづらい)と【課題2】(トピック移動がやりづらい)は、iOS版WorkFlowyの挙動を理解すれば、かなりの程度、解消されます。ひとつひとつ試行錯誤して、気づきました。
ポイントは、キーボード出入りやテキスト選択の細かいルールです。そこで、iOS版WorkFlowyのキーボード出入りなどの挙動を理解することが、最初の方策になります。
概要だけを示せば、以下のとおりです。
- キーボードが出ていないときの動作
- トピック内をタップで、キーボードが出る
- ブレットをタップで、そのトピックへZoomする
- +・-をタップで、トピックを展開・折りたたみする
- それ以外の場所をタップしても、反応しない
- トピック内を長押しすると、そのトピックのトピック移動モードになる(ただし、これで移動できるのは、順序のみ)
- キーボードが出ているときの動作
- カーソルのあるトピック内のカーソルがない場所をタップすると、タップした場所にカーソルが移動する
- カーソルのあるトピック内のカーソルがある場所をタップすると、ペーストなどのメニューが出る
- ブレットをタップすると、そのトピックにZoomし、キーボードが隠れる
- +・-をタップすると、トピックが展開・折りたたみとなり、キーボードが隠れる
- それ以外の場所をタップすると、キーボードが隠れる
これらの細かいルールを理解するだけで、iOS版WorkFlowyアプリのテキスト入力は、格段に快適になります。これらの細かいルールを理解すると、iOS版WorkFlowyアプリの力を引き出すことができます。公式アプリを見限るのは、その後でも遅くありません。
連載第2回で取り上げる予定です。
(2) ブラウザからWorkFlowyを利用する
【課題3】(WorkFlowyが備える機能のいくつかが使えない)、【課題5】(ブックマークによるJump)、【課題6】(複数タブ)、【課題7】(カスタマイズ)は、iOS版WorkFlowy公式アプリではなく、ブラウザアプリからWorkFlowyを利用することで、ある程度、解消できます。とりわけ、Ohajikiというブラウザアプリを使えば、かなりのところまでいけます。パソコンから使う「WorkFlowy専用Firefox」のモバイル版のようなものです。
概要を記します。
【課題3】は、ブラウザからWorkFlowyにアクセスし、モバイル版ではなくデスクトップ版を表示させれば、ある程度、利用できます。ただし、一応利用できる、程度です。
【課題5】【課題6】は、ブックマークや複数タブに対応したブラウザを使えば、ほぼ解決です。ただし、キャッシュの問題があり、ブックマークからのアクセスやタブ切り替えのタイミングで「アウトライン」全体が再読み込みになることが多いため、課題が残ります。
【課題7】は、ブックマークレットを使えば、かなり自由にカスタマイズすることができます。また、立ち上げ時に自動的にブックマークレットを読み込む機能を備えているブラウザであれば、ほぼアドオンと同じようなカスタマイズをすることも可能です。
とりわけ注目されるのが、OhajikiというブラウザをWorkFlowy専用にする、というTipsです。次の2つのページが参考になります。
連載第3回で取り上げる予定です。
(3) iOSからWorkFlowyを利用する場面を捉え直す
【課題3】(利用できない機能がある)と【課題4】(「アウトライン」全体の再読み込みに時間がかかる)は、ブラウザを使っても、完全には解消されません。また、【課題1】(テキスト入力)や【課題2】(トピック移動)にしても、iOS版WorkFlowyアプリの挙動を完全に理解しても、パソコンと比較すると、使いやすくはありません。
そこで、iOSからWorkFlowyを利用する場面を捉え直すことが、より根本的な対策になります。WorkFlowyを使用する場面全体を構想し、その中に適切な形でiOSからの利用を位置づけるわけです。
具体的には、サブアカウントの利用を提案します。便利で応用範囲の広いTipsです。
WorkFlowy Proの共有機能で、スマーフォン用サブアカウントに「flow」トピックを共有する
連載第4回で取り上げる予定です。
(4) 新しい2つのアプリ
以上の3つの対策を行っても、なお、いくつかの課題が残ります。とりわけ、【課題1】(テキスト入力のやりづらさ)、【課題3】(WorkFlowyの機能)のうちのWorkFlowyのURLの活用、【課題4】(「アウトライン」全体の再読み込み)、【課題5(WorkFlowyのURLによるJump)、【課題7】(カスタマイズして「自分の道具」へ育てる)などは、もうすこしなんとかなりそうです。
そこで、新しいアプリです。現在進行中の新しいモバイルアプリ開発プロジェクトは、これらの課題を解消することを目指しています。
プロジェクトの詳細は連載第5回で紹介する予定ですが、用意しているアプリは、次の2つです。
ひとつは、さっとメモを書いてWorkFlowyの特定トピックに放り込むことに特化したアプリ。主に、【課題1】(テキスト入力のやりづらさ)、【課題4】(「アウトライン」全体の再読み込み)、【課題5】(WorkFlowyのURLによるJump)を解消することを目指します。イメージとしては、Evernoteに数多く存在する、テキスト入力に特化した軽量アプリです。
もうひとつは、イメージとしては、モバイル版WorkFlowy専用Firefoxのようなアプリです。主に、【課題3】のうちWorkFlowyのURL取得、【課題5】(WorkFlowyのURLによるJump)、【課題6】(複数タブ)、【課題7】(カスタマイズして「自分の道具」へ育てる)あたりを解消することを目指します。
プロジェクトが開始したのは9月下旬で、その後1ヶ月半程度で、十分実用的なアルファ版が生まれました。私は、今、この2つのアプリのアルファ版を使っていますが、自分が要望を出していることもあり、実に快適で、気に入っています。
私以外にも、このアプリを快適に感じ、このアプリを気に入ってくださる方は、きっといらっしゃるはずと思っています。楽しみに待っていていただけると、とてもうれしいです。
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