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WorkFlowyで「メタ・ノート」

公開日: : 最終更新日:2016/05/05 WorkFlowy, 知的生産

目次

1.『思考の整理学』の「メタ・ノート」

外山滋比古さんの『思考の整理学』に、「メタ・ノート」という手法が紹介されています。

『思考の整理学 (ちくま文庫)』

次の3種類のノートを使った、頭に浮かんだ着想をとらえ、寝かし、育てるための手法です。

  • 手帖
  • 1冊めのノート
  • 2冊めのノート(メタ・ノート)

同書から引用しながら、「メタ・ノート」という手法のポイントをまとめます。

(0) 基本的な考え方

「メタ・ノート」という手法の基本的な考え方は、次の3点です。

  • しばらく忘れて、時間をかけて、育つに任せる
  • 頭の中にたくさんの着想を仕込み、同時並行で育てる
  • 低次の思考を、抽象のハシゴを登り、メタ化する

a.しばらく忘れて、時間をかけて、育つに任せる

「メタ・ノート」は、着想を育てる手法です。この手法の特徴は、「忘れる」ことを大切にする点にあります。

頭の中の醸造所で、時間をかける。あまり騒ぎ立ててはいけない。しばらく忘れるのである。〝見つめるナベは煮えない〟。

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思いついた着想を育てるためには、いったんその着想を「忘れる」ことによって、頭のなかでその着想を「寝かせる」ことが大切だ、というのです。

寝させておく、忘れる時間をつくる、というのも、主観や個性を抑えて、頭の中で自由な化合がおこる状態を準備することにほかならない。

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b.たくさんの着想を同時並行で育てる

これと関連して、「メタ・ノート」という手法は、同時並行でたくさんの着想を育てることを重視します。

というのも、ひとつの着想しか持っていないと、つねにその着想に意識が行ってしまい、その着想を「忘れ」て「寝かす」ことができないためです。

同書は、これを、「ひとつだけでは、多すぎる」と表現します。

着想、思考についても、ほぼ、同じことが言える。「ひとつだけでは、多すぎる。ひとつでは、すべてを奪ってしまう」。

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同時並行でたくさんの着想を持つことは、また、ひとつがだめなら代りがある、という余裕を生み出します。この余裕は、頭の動きを自由にするためにも大切です。

ひとつだけだと、見つめたナベのようになる。これがうまく行かないと、あとがない。こだわりができる。妙に力む。頭の働きものびのびしない。ところが、もし、これがいけなくとも、代りがあるさ、と思っていると、気が楽だ。テーマ同士を競争させる。いちばん伸びそうなものにする。さて、どれがいいか、そんな風に考えると、テーマの方から近づいてくる。「ひとつだけでは、多すぎる」のである。

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c.抽象のハシゴを登り、メタ化する

ところで、着想を育てるとは、どういうことでしょうか。

ポイントは、抽象化です。個別具体的な着想はたんなる思いつきですが、その思いつきを少しずつ抽象化していけば、着想を思考にまで育てることができます。

思考の整理というのは、低次の思考を、抽象のハシゴを登って、メタ化して行くことにほかならない。第一次的思考を、その次元にとどめておいたのでは、いつまでたっても、たんなる思い付きでしかないことになる。

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着想を育てるとは、ふと浮かんだ具体的な思いつきを、抽象のハシゴを登って、抽象的な思考へとメタ化していくプロセスです。

「メタ・ノート」は、こんな抽象的なプロセスを、具体的なツールによって実現する手法である、とも言えます。

(1) 手帖(着想を記録することで、とらえて、忘れる)

それでは、「メタ・ノート」の具体的な手順を説明します。

スタートは、着想を手帖に記録することです。

a.着想を記録するための道具とその使い方

『思考の整理学』は、着想を記録するための道具として、手帖を勧めます。普通の手帖に、日付は無視して、順番に着想を書きつける、という使い方です。

いちばん簡便なのは、手帖をもち歩くことだ。普通の手帖でいい。ただ、一日ごとの欄をすべて、着想、ヒントの記入に使うのである。

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思い浮かんだ着想を、いつでもすぐにこの手帖に書き留めるため、常にこの手帖を手放さずに持ち歩きます。

いかなるときも、この手帖を手放さない。何か気付いたり、おもしろいことを聞いたり、読んだりしたら、あとでと思わずにその場で書き留める。それがメモの鉄則である。

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着想は、欄を決めたり間を空けたりせず、順番に連続して書きます。

コツは、参照の便宜のため、頭に通し番号を打っておくことと、着想のタイミングをふり返ることができるように日付を入れておくこと、さらに、余裕があれば欄外に見出しのようなものを書いておくこと、くらいです。

ついでに頭のところへ通し番号を打っておくと、あとで参照に便利である。ついでに、日付も入れておくと、いつ考えたことかがはっきりする。たとえば図1のようになる。

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心覚えに、欄外に見出しのようなものをつけておくと、あとでさがすときに助かる。

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b.手帖が果たす機能

この手帖は、どのような機能を果たしているのでしょうか。それは、「忘れる」と「とらえる」です。

(a) 忘れる

『思考の整理学』は、「忘れる」ことを重視します。着想を育てるには、「寝かす」必要があるのですが、「寝かす」ためには「忘れる」必要があるためです。

何か考えが浮んだら、これを寝させておかなくてはならない。

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しかし、「忘れる」のは「寝かす」ためで、「寝かす」のは「考える」ためです。最終的には、その考えを育てなくてはいけません。完全に忘れてしまっては困ります。

これでよし、と安心できないと、寝させたことにならない。しばらくは、忘れる。しかし、まったく忘れてしまってもこまる。忘れて、しかも、忘れないようにするにはどうしたらいいのか。それが問題である。

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では、どうしたらよいでしょうか。その答えが、「記録」です。

記録しておく。これが解決法である。

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「メタ・ノート」の最初の記録場所である「手帖」は、着想を記録し、「忘れる」ための場所です。

この手帖の中で、アイディアは小休止をする。しばらく寝させておくのである。

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(b) とらえる

記録には、「忘れる」のほかに、もうひとつ別の意義があります。それは、「とらえる」です。

もうひとつ、記録する必要があるのは、寝させるのではなく、とりあえずとらえる必要のあることだ。

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着想は、あるとき脈絡なく自分の頭を訪れ、そしてあっという間に去っていきます。自分の頭を訪れた短い時間に、なんらかの形でとらえなければ、どこかに行ってしまい、戻ってきません。

記録することは、自分の頭に訪れた着想を「とらえる」ための手段です。何かを思いついたら、その場ですぐに手帖に書き留める。これによって、着想をとらえることができると、『思考の整理学』は説きます。

これが、手帖のもうひとつの機能です。

(2) 1冊めのノート(脈のある着想だけを、もうすこし寝心地のよいところに移して、寝かす)

a.手帖の中の脈のありそうな着想を、どうするか

手帖に着想を記録するのは、着想を「寝かす」ためです。でも、「寝かす」ことは、それ自体に意義があるわけではありません。大切なのは、「寝かす」ことによって、脈がありそうな着想を選別することです。

このためには、手帖に書いた着想を、時間をおいて見返します。時間をおけば、脈のありそうな着想は、自然と選別できます。

この手帖の中で、アイディアは小休止をする。しばらく寝させておくのである。ある程度時間のたったところで、これを見返してやる。すると、あれほど気負って名案だと思って書いたものが、朝陽を浴びたホタルの光のように見えることがある。

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見返して、やはり、これはおもしろいというものは脈がある。そのままにしておかないで、別のところでもうすこし寝心地をよくしてやる。

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では、脈のありそうな着想は、どうしたらよいでしょうか。

もうすこし寝かせます。それも、もうすこし寝心地のよいところで、寝かせます。

この寝心地のよい場所が、別のノート、1冊めのノートです。

別のノートを準備する。手帖の中でひと眠りしたアイディアで、まだ脈のあるものをこのノートへ移してやる。

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このノートは、着想にとって寝心地のよいノートでなければいけませんので、ものとしても、それなりによいものを用意することが推奨されています。

著者の外山滋比古氏は、ある英文日記を利用されているとのことです。

このノートはあまりいい加減な安ものでない方がいい。わたくしは、ある英文日記を利用している。

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では、この「1冊めのノート」を、どのように使うとよいでしょうか。

ひとつのテーマに1ページを割り当てて、次の5つを記載します。

  • (A) 見出しを書く
  • (B) 手帖に書いたことを書き写し、膨らます
  • (C) 手帖から1冊めのノートに移した日付
  • (D) 手帖に付けた通し番号
  • (E) 関連資料

ケイと日付と欄外に英語のことわざが印刷してあるだけで、手帖と同じように、いっさいを無視して、考えの温存の場とする。

図2参照。

まず(A)には、見出しを書く。何のことか。あと手帖にあったことを箇条書きにして書き入れる。これが(B)の部分である。手帖には三つくらいの要点しかなかったものが、こうして整理しようとすると、五つにも六つにもなるというのが寝させている間に考えがふくらんだ証拠である。

(C)は、ノートへ移した日付である。(D)は、手帖のときの番号である。(E)は関連のある新聞や雑誌の切り抜きなどがあれば、ここへ貼っておく。

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b.「1冊めのノート」を、どう使うか

1冊めのノートも、手帖と同じく、着想を「寝かす」ためのものです。そのため、時間をおいて、見返します。

1冊めのノートの中で着想が醗酵すれば、見返したときに、それとわかるそうです。機会があれば、その段階で文章にします。

醱酵して、考えが向うからやってくるようになれば、それについて、考えをまとめる。機会があるなら、文章にする。

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見出しを見て、向うから動いてくるようなのがあったら、そのページに目をとめる。これならなにか書けそうだという気がしてきたら、それを題材にする。

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1冊めのノートに書かれているテーマは、いずれも、手帖から1冊めのノートへの移動を経ています。一度は自分のフィルタを超えているわけです。その分、自分以外の人にとっても、何らか価値のある考えへと結実する可能性が高いといえます。

すでに、一度はふるいにかかっている。自分の頭の関所を通っているのだから、他人の頭の関所をなんとかパスする可能性もそれだけ大きい

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(3) メタ・ノート(脈のある着想を、さらに別のコンテクストに移植する)

a.もう一段階、メタ化する

手帖に記録した着想が、時の経過によって、脈のあるものとそうでないものとに選別されたように、1冊めのノートに転記した着想も、時の経過によって、さらに脈のあるものとそうでないものとに選別されます。

そこで、1冊めのノートに転記したものの中で、時がたつにつれてだんだんおもしろくなってくるようなものを、さらに別の場所に移します。

ところで、その記入したことの中には早く腐ってしまうものもあれば、時がたつにつれて、だんだんおもしろくなってくるものもある。

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それらをいっしょにしておくのはよろしくない。脈のありそうなものはほかへ移してやる。

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つまり、1冊めのノートにもとづいて、その上に、別のノートを作るわけです。ノートを抽出したものなので、『思考の整理学』は「メタ・ノート」と呼んでいます。

ノートにもとづいて、その上にさらにノートをつくる。あとの方をメタ・ノートと呼ぶことにする。

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メタ・ノートに移した着想は、手帖→1冊めのノートというフィルタと、1冊目のノート→メタ・ノートというフィルタの2つを超えたものです。しかも、一時の関心事に基づいたフィルタではなく、時の経過を超えたフィルタを超えたのです。自分にとってかなり重要なテーマであることが強く推測されます。

メタ・ノートへ入れたものは、自分にとってかなり重要なもので、相当長期にわたって関心事となるだろうと想像されるものばかりのはずである。

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ところで、なぜ、脈のありそうなものを、別の場所に移す必要があるのでしょうか。1冊めのノートの中で着想を育てるのではダメなのでしょうか。

この理由のひとつは、着想を育てるためのスペースです。1ページだけでなく、もう少し広いスペースを使って考えるためには、別の場所に書き写す必要があります。

でも、もうひとつ理由があります。それは、その着想を、ノートのコンテクストから開放する、ということです。

ノートの中では、もとの前後関係、コンテクストができる。ひとつひとつのテーマの卵はそのコンテクストに包まれて、おのずからその影響を受ける。新しい展開を妨げられていることもある。

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コンテクストが変われば、意味は多少とも変化する。手帖の中にあったアイディアをノートに移してやると、それだけで新しい意味をおびるようになる。もとのまわりのものから切り離されると、それまでとは違った色に見えるかもしれない。

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b.どんなノートを、どのように使うか

メタ・ノートには、どんな道具を使うとよいでしょうか。

著者は、1冊めのノートと同じ英文日記を使っているそうです。

ノートには、前に、ある英文日記を使っていると書いた。メタ・ノートも、同じ英文日記を使っている。大きさが違うと、棚に収めるとき不揃でおもしろくない。

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しかし、1冊めのノートとメタ・ノートは、区別する必要があります。そこで、筆者は、色別しています。

しかし、メタ・ノートとノートがまったく区別がつかないとこまる。一見してわかるようにしておきたい。それで色で分ける。

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メタ・ノートは、どのように書き入れればよいでしょうか。

まず、ひとつのテーマに見開き2ページを割り当てます。1冊めのノートよりも広いスペースを使うことが、メタ・ノートに書き写す理由のひとつです。

が、このメタ・ノートは、ひとつのテーマに二ページずつあてる。見開き二ページが一つのテーマということになる。

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見開き2ページに、1冊めのノートの記載を整理して並べます。余白をゆったりと残すことがポイントです。

また、「メタ・ノート」という手法のポイントである「時間の経過」を意識するため、メタ・ノートへ書き写した日付を記録します。

タイトルの右にある日付は、メタ・ノートへ移記した日である。これはいよいよ醱酵してきたときに、どれくらい日時が経過しているかを知るためである。さらに、ノートからメタ・ノートへ移したのがどれくらいたってからであるかを承知するためである。

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2.WorkFlowyで「メタ・ノート」を実現する

さて、ここまでの「メタ・ノート」の紹介だけでかなり長くなったのですが、この記事で私が書きたいことは、実は、ここから始まります。

「メタ・ノート」という手法は、WorkFlowyで実現できる。

これが、この記事で書きたいことです。

手帖→1冊目のノート→メタ・ノートという「メタ・ノート」の3段階に分けて、WorkFlowyで「メタ・ノート」を実現することについて考えてみます。

(1) 第1段階:手帖

手帖は、「メタ・ノート」の第1段階です。手帖は、

  • 着想をとらえる
  • 着想を寝かす
  • 着想を選別し、1冊めのノートに移す

という3つの役割を担っています。

では、これら3つの役割を、WorkFlowyでどのように実現するとよいでしょうか。

a.WorkFlowyで着想をとらえる

WorkFlowyで着想をとらえるとは、頭に浮かんだ着想をWorkFlowyに文字で書くことです。

とてもシンプルです。でも、考えるべき点がいくつかあります。「いつ?」と「どこに?」です。

(a) いつ、着想をWorkFlowyに書くか?

「いつ?」とは、WorkFlowyに着想を書くタイミングです。

着想をとらえるには、思いついたらすぐに、メモしなければいけません。すなわち、「いつ?」に対する答えは、「思いついたらすぐに」です。

では、WorkFlowyで「思いついたらすぐに」書くには、どうしたらよいでしょうか。

まず、着想が浮かんだのがWorkFlowyを使っているときなら、とても簡単です。どこかに新しいトピックをたてて、新しいトピックに浮かんだ着想を書きます。この速さは、WorkFlowyの大きな特長です。

これに対して、着想が浮かんだのがWorkFlowyを使っていないときだったら、どうでしょうか。

率直にいって、WorkFlowyは、この点が少し弱いです。Evernoteなどと異なり、投稿に特化した立ち上げ爆速のアプリが存在しないためです(FastEver、PostEver、WriteNoteなど)。

私自身は、次の2つを対策にしています。が、もうちょっとよいアイデアがないかなあ、と試行錯誤中です。

(b) どこに、着想をとらえるか?

「どこに?」は、WorkFlowyのどこに着想を書くか、です。着想を書くトピックを作る場所、ともいえます。

「どこに?」で大切なことは、とらえる場所と寝かす場所の区別です。WorkFlowyは、使いやすくて柔軟なトピック移動機能を備えています。そのため、着想をとらえる場所と着想を寝かす場所は、最初は別々でもかまいません。とらえた後でトピックを移動すればよいためです。

  • とらえる
  • 寝かす場所に移動する

という2ステップを意識すると、WorkFlowyで着想をとらえることがうまくいきます。

これに対して、「着想を寝かす場所を開いて、そこに着想をとらえる」だと、あまりうまくいきません。着想を寝かす場所までたどり着くまでに、着想が逃げてしまうためです。

ただ、WorkFlowy専用Firefoxをアドオン「Tile Tabs」で2画面化していて、別タブ(別Tile)に着想を寝かすためのトピックがすでに表示されているなら、最初から着想を寝かすためのトピックに着想をとらえるのでも問題ありません。

まとめると、WorkFlowyで着想をとらえるときの「どこに?」は、どこでもいいからとにかく着想をとらえ、その後、落ち着いてから、着想をとらえたトピックをしかるべき場所に移動する、という2ステップで考えることが大切だ、ということです。

b.WorkFlowyで着想を寝かす

WorkFlowyで着想を寝かすとは、着想を記録したトピックをWorkFlowy内に保持し続けるということです。

でも、寝かすことの意義はそれ自体にあるのではなく、寝かすことで熟成させた着想を育てることにあるのですから、寝かすだけでなく、見返してうまく醗酵した着想を拾い出す必要があります。

そこで、WorkFlowyで着想を寝かす際は、同時に、寝かした着想を時をおいて見返すための仕掛けを仕込んでおきます。

ここで大切なのも、「どこに?」と「いつ?」です。

「どこに?」は、着想を寝かす場所です。適切なタイミングで見返すことを促すような寝場所は、どこでしょうか。

「いつ?」は、着想を見返すタイミングです。着想を熟成させるには、それなりの時間をおく必要があります。他方で、時間が経過するほど、着想がWorkFlowyの中で埋没し、死蔵リスクが高まります。これを避ける仕組みが求められます。

(a) どこに、寝かすか?

着想を寝かす場所は、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 着想をその場所へ移動するのが簡単
  • たまに見返そうと思ったときに、見返すのが簡単

結論から言えば、WorkFlowyなら、どのトピックでも、この2つの条件を満たします。パソコンからWorkFlowyを使うなら、そのトピックのURLをブックマークやShortcutKey2URLに登録すればよいですし、スマートフォンアプリからWorkFlowyを使うなら、Home画面にURLを貼ったり、スマートフォン用のサブアカウントにそのトピックを共有すればよいからです。

そのため、大切なのは、寝かす場所をひとつに決めることです。どこのトピックでもよいので、ひとつに固定することが肝心です。

以下では、着想を寝かす第1段階のトピックを、「手帖」トピックと呼びます。

(b) いつ見返し、いつまで寝かすか?

「どこに?」と比べると、「いつ?」は、もう少し考えることがあります。

まず、「いつ見返すか?」です。

「メタ・ノート」は、時間をおいて着想が育つに任せ、時間に着想を選別してもらうことを大切にします。毎日見返していては、着想が育ちませんし、選別もできません。なので、ある程度間隔を開ける必要があります。

かといって、あまり間隔を開けすぎると、その着想の存在を忘れ、着想が埋没するかもしれません。

思いついたときに、「手帖」トピックを開き、ざーっと目で見るだけでもよいとは思うのですが、ここになんらかの仕組みを導入するなら、検索オプション「last-changed:」を活用できます。

検索オプション「last-changed:」は、トピックの更新日情報を検索キーにするWorkFlowyの検索オプションです。

この「last-changed:」は、組み合わせることによって、「●日前〜●日前の間に更新したトピック」だけを表示することができます。

検索条件は、この「WorkFlowyで、『「超」整理法』の時間軸検索原則を実現するため、検索条件「last-changed:」のURLをブックマーク」の、特に「完成イメージ」に書いた検索条件をご覧ください。

「手帖」トピックにZoomした状態で、これらの「last-changed:」検索条件で検索したときのURLを、ブックマークなどに登録すれば、一瞬で、見返すべき着想だけを表示することができます。

次に、「いつまで寝かすか?」、つまり、古い着想をいつまで寝かせたまま残しておくか、です?

トピック数制限を気にしなくてもいいのであれば、「いつまでも」でよいと思います。

WorkFlowyは、トピックを折りたたんでおきさえすれば、寝かすトピックの子トピックが100や200になっても、動作はほとんど重たくなりません(ただし、展開して一度に表示されるトピック数が1000や10000を超えると、かなり時間がかかります)。

WorkFlowyの中に、つまらないものから輝きを秘めたものまで、すべての着想を寝かし続けておけば、WorkFlowyの「ただひとつの巨大なアウトライン」は、豊かな土壌へと育ちます。

c.WorkFlowyで着想を選別し、1冊めのノートに移す

「手帖」トピックの着想たちは、適宜選別し、次の段階へ移す必要があります。

選別の鍵は、時間です。時間をかけて浮かび上がってきたトピックだけを、次の段階である「1冊めのノート」トピックへと移動します。

理想は、時間が経つに連れて、選別が自然と少しずつ進む仕組みです。この仕組みを作るには、『「超」整理法』の押出ファイリングの考え方が参考になります。

概要、こんな感じです。

  • 新しい着想は、「手帖」トピックの冒頭に追加する。
  • たまに「手帖」トピックを見返す。
    • 「手帖」トピックの上から順にざーっと見返す。
    • 検索オプション「last-changed:」を使って、一定期間経過したトピックだけを抜き出して見返す。
  • 見返したときの脈の有り無しの感覚に応じて、次のルールで、着想トピックを移動する。
    • 絶対に脈があると思ったら、すぐに、次の段階である「1冊めのノート」トピックへ移す。
      • 最近の着想は、慎重に判断する。
      • 昔の着想は、甘めに判断する。
    • 脈がありそうだけれど確信が持てなければ、「手帖」トピックの冒頭に移す。
    • 脈を感じられなかったら、そのまま。動かさない。
  • これをくり返すと、脈のない着想が、次第に下に押し下げられる。

以前に書いた「WorkFlowy押下げトピック法」と同じような感じです。

「WorkFlowy押下げトピック法」の導入手順と効能

【WorkFlowyで実現する手帖段階】

まとめると、第1段階である手帖に対応するWorkFlowyの使い方は、次の3つがポイントです。

  • とらえるコツは、どこでもいいのですぐにとらえて、その後、「手帖」トピックに移動する、という2ステップに分けること。
  • 寝かすコツは、すべての着想をひとつの「手帖」トピックに集めて寝かし、定期的に見返すこと。
  • 選別するコツは、時間が経つに連れて自然と選別が進む仕組みを作ること。「WorkFlowy押下げトピック法」がひとつの解。

(2) 1冊めのノート

1冊めのノートは、「メタ・ノート」の第2段階です。1冊めのノートは、

  • 寝心地のよい場所で着想を寝かす
  • 着想を選別し、メタ・ノートに移す

という2つの役割を担っています。

では、これら2つの役割を、WorkFlowyでどのように実現するとよいでしょうか。

a.WorkFlowyの寝心地のよい場所で、着想を寝かす

まず、WorkFlowyの中に、「着想にとって寝心地のよい場所」を用意する必要があります。

本家の「メタ・ノート」は、「あまりいい加減な安ものでない方がいい」として、ある英文日誌を使っています。でも、WorkFlowyのトピックは、すべて同じです。寝心地のよいトピックもなにもありません。

となると、トピックの「寝心地のよさ」とは、次のようなことかもしれません。

  • トピックの階層の深さ
    • 階層の浅い場所の方が寝心地がよい?
  • Starページ
    • Starページの最初の方が寝心地がよい?
  • トピックのURLの登録場所
    • ブックマークの目立つところに登録する
    • ShortcutKey2URLで押しやすいキーを割り当てる

ただ、いずれも本質的なことではありません。

  • 階層の深さは、深層からスタートしてもZoomによって何も不自由ないところが、WorkFlowyのよいところ。
  • Star機能は、あまり使いやすくない。
  • ブックマークの目立つところやShortcutKey2URLの押しやすいキーは限られているので、これを割り当てることには一定の意義があるけれど、それほど希少でもない。

結局、「1冊めのノート」トピックも、「手帖」トピックと同じく、ひとつに固定することが肝心であって、決まったノートに固定しさえすれば、どのトピックでも問題ないように思います。

b.WorkFlowyで着想を選別し、メタ・ノートに移す

着想を選別し、次の段階である「メタ・ノート」トピックに移すのは、「手帖」トピックから「1冊めのノート」トピックへの移動と、基本的に、同じです。

ただ、少しだけ違うのは、「手帖」トピックから移動してきたアイデアを、「1冊めのノート」トピックの末尾に追加することと、見返したときに輝きを失ったように感じられた着想を下に移動することです。

つまり、「1冊めのノート」段階の着想を選別する仕組みは、

  • 「手帖」トピックから新しく移動してきた着想を、「1冊めのノート」トピックの末尾に加える。
  • たまに「1冊めのノート」トピックを見返す。
  • 見返したときの脈の有り無しの感覚に応じて、次のルールで、着想トピックを移動する。
    • 絶対に脈があると思ったら、すぐに、次の段階である「メタ・ノート」トピックへ移す。
      • 下の方にある着想は、慎重に判断する。
      • 上の方にある着想は、甘めに判断する。
    • 脈がありそうだけれど確信が持てなければ、「1冊めのノート」トピックの冒頭に移す。
    • 脈を感じられなかったら、「1冊めのノート」トピックの下の方に移す。
  • これをくり返すと、脈のありそうな着想が、次第に下から上に上がってくる。

イメージとしては、着想が「1冊めのノート」の滝を登っていく感じです。一気に「メタ・ノート」までワープすることもたまにはありますが、できるだけ、時間をかけて評価・判断を何段階かに分けることを心がけています。

【WorkFlowyで実現する1冊めのノート段階】

まとめると、第2段階である1冊めのノートに対応するWorkFlowyの使い方は、次の2つがポイントです。

  • 「1冊めのノート」トピックを、「手帖」トピックとは別に用意する。ひとつのトピックを決めて固定することが肝心。自分が特別なトピックだと自覚できればなおよし。
  • 選別して「メタ・ノート」トピックへ移動する際は、時間の経過にしたがって自然と選別が進む仕組みを作る点は同じだが、下から上へと脈のある着想がのし上がっていくイメージの方がしっくり来る。

(3) メタ・ノート

メタ・ノートは、「メタ・ノート」の第3段階です。メタ・ノートは、

  • もっと寝心地のよい場所で着想を寝かす
  • 醗酵した着想を形にする

という2つの役割を担っています。

では、これら2つの役割を、WorkFlowyでどのように実現するとよいでしょうか。

a.WorkFlowyのもっと寝心地のよい場所で、着想を寝かす

トピックの寝心地のよさは、うえで検討したことと同じです。

肝心なのは、「手帖」トピックや「1冊めのノート」トピックとは別に、「メタ・ノート」トピックを作ることです。

「メタ・ノート」トピックは、どこに作っても構いません。ただ、階層を浅くする、Starページに登録する、トピックのURLをブックマークやShortcutKey2URLのいい場所に登録する、など、アクセスをよくするための手当はしたほうがよいです。

b.醗酵した着想を形にする

「メタ・ノート」トピックまでたどり着いた着想は、どれも自分にとって大切な意味を持つテーマです。気になった着想を育てていけば問題ありません。

私の場合、着想の(とりあえずの)ゴールは、まとまった文章の形を与え、然るべき場所(たいていはこのブログです)に公開することです。この際、私は、「WorkFlowy押下げトピック法」という仕組みを使っています。

「WorkFlowy押下げトピック法」の導入手順と効能

ブログに文章として公開できた着想は、文章という形を獲得して日の目を見たので、とりあえずは一区切りです。公開済みの暫定的な作品群を集めるトピックに移動します。

【WorkFlowyで実現するメタ・ノート段階】

まとめると、第3段階であるメタ・ノートに対応するWorkFlowyの使い方は、次の2つがポイントです。

  • 「メタ・ノート」トピックを、「手帖」トピックや「1冊めのノート」トピックとは別に、作る。「1冊めのノート」トピックをくぐり抜けた着想を、全部ここに集める。
  • 「メタ・ノート」トピック内の文章は、どれも大切なテーマなので、ちょくちょく見返して、気になったものを育てる。まとまった文章の形を与え、ブログなど公開の場所へ発表できたら、暫定的な作品群を集めるトピックに移動する。

3.おわりに

『思考の整理学』の「メタ・ノート」は、考えるための手法です。

考えるとは、着想をとらえ、寝かし、育て、形にする、という一連のプロセスです。このプロセスは、通常、目には見えません。

これに対して、「メタ・ノート」は、「手帖」「1冊めのノート」「メタ・ノート」という3種類の紙を使い、紙に書いた着想を「手帖」→「1冊めのノート」→「メタ・ノート」という順番で移動させます。つまり、目に見えない抽象的な思考プロセスを、目に見える具体的なメモの移動にした点が、「メタ・ノート」という手法の強みです。

このように、「メタ・ノート」の特長は、着想を具体的に移動させることにあります。

ところで、WorkFlowyの特長のひとつは、トピックの移動です。プロセス型アウトライナーでもあるWorkFlowyは、あるひとつのトピックを移動させることが、とても得意です。あるひとつのトピックは、WorkFlowyの「ただひとつの巨大なアウトライン」の上を、自由自在にすいすいと動きます。

トピック移動というWorkFlowyの特長は、「メタ・ノート」とうまくはまります。「メタ・ノート」という手法は、WorkFlowyを考えるための道具として使うことを考える上で、大きなヒントを与えてくれます。

『思考の整理学 (ちくま文庫)』

お知らせ

このエントリは、その後、加筆修正などを経て、書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の一部分となりました。

書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元エントリは、次のとおりです。

『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元記事の紹介

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    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
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