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「作文を書くための雲の描き方」(彩Draw@クラウド郎)

公開日: : 子育て, 知的生産

1.作文が苦手で嫌いだった小学生の私に、母が教えてくれたこと

小学生のころ、私は、作文を書くことが苦手で、嫌いでした。

なぜ苦手で嫌いだったのかといえば、何をどのように書いたらいいのかがよくわからなかったからです。何を書いていいのかがわからず、何を書いてはいけないのかもわからず、どんな順番で書けばいいのかも、どんな言葉で書けばいいのかも、全然わかりませんでした。

白紙の原稿用紙を前に、1行目に書き出す言葉を見つけられずに固まったり、なんとか半分まで埋めた原稿用紙を前に、この先どうやって作文をまとめていけばいいのか途方に暮れたり、ということが、しょっちゅうでした。

小学生の私にとって、作文を書くことは、ぜんぜん楽しくない厄介事でした。「夏休みの思い出を作文にしましょう」という宿題が出た夏休みには、8月31日に、原稿用紙をにらみつけながら、ぶーぶー文句を言っていました。

あるとき、そんな小学生だった私に、母が、「作文を書くための雲の描き方」を伝授してくれました。

2.「作文を書くための雲の描き方」

母に教わった「作文を書くための雲の描き方」は、こんな手順です。

(1) 準備・用意するもの

  • 大きな紙(A3サイズくらい)を数枚
  • ペン
    • 最低限、黒と赤の2色。
    • もっとたくさんの色を用意してもOK。

a.原稿用紙を片付ける

まず、原稿用紙を片付けます。原稿用紙を使うのは、雲を描いた後です。

いきなり原稿用紙に書くのは、どんなに文章を書き慣れている人でも、無謀です。ましてや、小学生にはハードルが高すぎます。諦めましょう。

b.大きな紙とペンを用意する

原稿用紙を片付けたら、大きな紙とペンを用意します。

大きな紙を1枚広げて、「これは空だ」と思いましょう。

(2) 空に雲を描いて、雲の中に言葉を書く【黒ペン】

まずは、1枚の大きな紙(空)に、黒ペンで、雲を描き、雲の中に言葉を書きます。

a.空に雲を描く

大きな紙の空に、雲を描きます。最初に、空の真ん中に、ひとつの雲を描きます。

大きな紙の真ん中に、雲を描く。

次に、真ん中の雲の回りに、6個の雲を描きます。

回りに6個の雲を描く。

そして、真ん中の雲と、回りの6個の雲を、線でつなぎます。

中心の雲と、回りの雲を、線でつなぐ。

これで雲ができました。

b.雲の中に言葉を書く

この雲の中に、言葉を書いていきます。

真ん中の雲の中に書くのは、作文のテーマです。

真ん中の雲に、作文のテーマを書く。

まわりの雲の中には、そのテーマについての5W1Hを書きます。5W1Hとは、

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(だれが)
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • How(どのように)

です。

回りの雲に、5W1Hを書く。

5W1Hは、事実を言葉で説明するための、もっとも基本となる枠組みです。作文のテーマについての5W1Hを書けば、そのテーマを文章で説明するための素材が手にはいります。

(3) 空と雲を眺めて、思いついたことを書き加える【赤ペンなど、黒以外のペン】

次に、空と雲を眺めて、思いついたことを、赤ペンなど、黒以外のペンで、書き加えます。

a.空と雲を眺める

中心の雲に作文のテーマを、まわりの雲に5W1Hを書いたら、その空と雲を眺めます。

回りの雲に、5W1Hを書く。

b.思いついたことを書き加える

空と雲を眺めていると、いろんなことを思いつくはずです。

それを、赤ペンなど、黒以外のペンで、書き加えます。

赤ペンで、書き込む。

どこに書いても大丈夫です。何を書いても大丈夫です。どのように書いても大丈夫です。

好きなように書き加えます。

c.作文の材料が、ぜんぶ集まっている

ここまでの作業をすると、空と雲の中には、作文のテーマに関係するいろんなことが書き込まれています。ここに集まったたくさんのことが、今から書く作文の材料です。

目の前の1枚の紙の上にある空と雲の中には、作文を書くための材料が、ぜんぶ集まっています。

(4) 作文を書くための空と雲にする

(3)でできた空と雲があれば、作文を書くのは、そんなにむずかしくありません。「もう書ける」と思ったら、片付けてあった原稿用紙を取り出して、作文を書き始めても大丈夫です。

でも、空と雲のままでもう少し作業を進めると、さらにぐっと作文を書くのが楽になります。

それは、空と雲を、作文を書くための空と雲にする、という作業です。

作文を書くための空と雲にするには、2つの方法があります。

a.もともとの空と雲に、順番と大事なところを書き込む方法

まず、もともとの空と雲に書き込む方法があります。

作文は、原稿用紙に書きます。原稿用紙と空と雲には、2つの大きなちがいがあります。

ひとつは、原稿用紙には順番がある、ということです。空と雲は、中心の雲から周辺の雲に広がっているので、決まった順番はありません。でも、原稿用紙は、1行目の1マス目からの順番があります。

もうひとつは、原稿用紙は字数が決まっている、ということです。学年によっていろんな大きさがありますが、いずれにせよ、1枚の原稿用紙に書ける文字数は、最初から決まっています。でも、空と雲は字数が決まっていません。

そのため、空と雲に書いたことを原稿用紙の作文にするには、

  • 原稿用紙に書く順番
  • どんなことにどれくらいの字数を使うか

という2つを決めなくてはいけません。

これをするためのひとつの方法が、ここまでに作った空と雲に、順番と大事なところを書き込む、という方法です。

順番と大事なところを書き込む

たとえば、雲に1番から順に番号をふったり、大事なところに星マークを描く、などが考えられます。

b.新しい紙に、作文用の空と雲を、改めて描く方法

もうひとつの方法は、別の空と雲を描く、というものです。新しい紙をもう1枚用意して、その紙に、作文を書くための作文用の空と雲を、改めて描きます。

ここで新しく描く空と雲は、作文用の空と雲です。なので、原稿用紙に書くことを意識して、描きます。

つまり、

  • 原稿用紙に書く順番
  • どんなことにどれくらいの字数を使うか

の2つを意識する、ということです。

また、エピソードごとに雲を分けるのも有効です。

最初に描いた空と雲は、5W1Hで整理してあるため、ひとつの雲に複数のエピソードが混じっていることがあります。そこで、新しい作文用の空と雲を描くときに、エピソードごとに分けるわけです。

改めて雲を描く。

たとえば、この空と雲は、ひとつの雲にひとつのエピソードをまとめています。

また、この空と雲は、原稿用紙に書く文書の順番と原稿用紙の文字数を表現しています。順番は、上の雲から時計回りで、文字数は、ひとつの雲が全体の6分の1程度、です。

(5) 「もう書ける」と思えたら、原稿用紙を広げて、作文を書く

最後は、原稿用紙を広げて、作文を書きます。空と雲をそのまま宿題として提出することはできません。

このときに大切なことは、描いた空と雲を眺め、「もう書ける」と思うことです。

a.描いた空と雲を眺める

まず、ここまでに描いた空と雲を眺めます。

空と雲には、作文の材料がぜんぶ集まっています。原稿用紙に書く順番も、どんなことにどれくらいの字数を使うかも、書いてあります。

そんな空と雲を眺めていると、これをそのまま原稿用紙に書いていけば、作文ができあがるんじゃないか、と思えることがあります。

この「もう書ける」と思えることが、大切です。

b.「もう書ける」と思えたら、原稿用紙を広げて、作文を書く

「もう書ける」と思えたら、片付けてあった原稿用紙を取り出して、広げます。

そして、空と雲を見ながら、原稿用紙の1行目から、1行1行、文章を書き進めます。

c.原稿用紙に書き始めた後も、つまったら、空と雲に戻る

原稿用紙に書き始めた後も、空と雲は役に立ちます。

困ったときは空と雲を眺めます。にっちもさっちもいかないほどにつまってしまった場合は、もう一度、空と雲に戻って、書き加えたり、新しい空と雲を描いたりするのもありです。

3.「作文を書くための雲の描き方」は、私の「知的生産の方法論」の原点

母にこの方法を教わったとき、最初に私が感じたのは、「こんな面倒なこと、やりたくない。」でした。

当時の私にとって、作文は、嫌で嫌いでさっさと片付けたいことでした。それなのに、母の方法は、原稿用紙に作文を書くことに加えて、白い紙に空と雲を描かなければいけません。宿題として提出できるわけでもない空と雲を描いているくらいなら、さっさと原稿用紙に作文を書いてしまい、嫌で嫌いな作文を片付ける方が、まだましだと、小学生だった私は、考えました。

でも、しぶしぶやってみたら、母の方が正しかったことを知りました。いきなり原稿用紙に書き始めるよりも、その前に白い紙に空と雲を書く方が、うんと早く、うんと楽に、作文を書くことができました。

もっと驚いたことに、「作文を書くための雲の描き方」を使って作文を書くと、作文を書くことは、楽しかったのです。何を書いていいかわからずに嫌々書いていた私は、楽しんで作文を書いていました。

私は、「この方法を知っているのと知らないのとでは、作文を書くことのむずかしさや楽しさがすごく変わる!」と感じて、この方法を気に入りました。

「作文を書くための雲の描き方」は、私が、生まれてはじめて使った、「知的生産の方法論」です。今、私が「知的生産」に惹かれている原点は、ここにあるのかもしれません。

4.おわりに

先日、こんな文章を書きました。

「知的生産」に惹かれるようになったきっかけ

この文章は、これから書く予定の「WorkFlowyで文章を書く方法」というエントリのための実例として、書いたものです。1時間くらいで書けそうなテーマをTwitterで募集したところ、@satsuki_kaさんからこんなTweetをいただいて、

制限時間若干オーバーで何とか書き切ったのが、この文章でした。

こんなふうに一気に書いた文章だったのですが、予想していたよりもずっと多くの方に読んでいただいています。ありがとうございます。

多くの方に届いたのは、母の方法論自体に魅力があるからなのかもしれません。何人かの方にもご指摘いただいたとおり、母の「作文を書くための雲の描き方」は、マンダラートやマインドマップにも通じる、立派な知的生産の方法論です。

そこで、この文章では、「作文を書くための雲の描き方」そのものを、制限時間を気にすることなく、丁寧に説明してみました。

説明の過程で、マンダラートの技法などを取り入れて、いくぶん、私なりにアレンジしてあります(たとえば、「眺める」プロセスを明示的に入れているところとか、作文用の新しい空と雲を描くところ)。この意味では、母に教わった方法そのものではないのですが、基本的な考え方や発想は、小学生の私が母に教わった方法そのままだと思います。

この「作文を書くための雲の描き方」が、(当時の私と同じような)作文を書くのが苦手で嫌いな小学生(とそのお父様お母様)に届くとよいな、と願っています。

(ちなみに、このエントリのタイトルにも書いた「彩Draw@クラウド郎」は、しごたの(@shigotano)さんにいただいた愛称です。

ありがとうございます!)

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