「知的生産」に惹かれるようになったきっかけ
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知的生産
1.はじめに
(1) 「知的生産」に惹かれるようになったきっかけは?
今、私は、「知的生産」というものに惹かれています。「知的生産」のためにどんなことを身につけるとよいだろうか、とか、このツールは「知的生産」のためにどんなふうに活用できるだろうか、なんてことを、日々考えて過ごしています。
私が、こんなふうに「知的生産」に惹かれるようになったきっかけは、なんだったのでしょうか。
「知的生産」は、私にとって、大切なテーマです。ですから、一度じっくりとこれを考えておくことは、きっと大事です。
(2) 「これ」と示せるきっかけは、『知的生産の技術』を読んだことだが……
「知的生産」にひかれるようになったきっかけを考えると、「これ」と示せるものがひとつあります。『知的生産の技術』を読んだことです。
この答えは、悪くありません。
『知的生産の技術』は、古典で名著です。なので、どこに出しても恥ずかしくない回答です。
また、実際に、私は、『知的生産の技術』を読んで、「発見の手帳」を始めました。これが私の知的生産の入り口であることは、まちがいありません。
でも、もうちょっと考えてみます。
『知的生産の技術』を読んだとき、私は大学生でした。大学生の私は、『知的生産の技術』を読んで、たいへん面白く感じ、すぐに「発見の手帳」を始めることにしました。大学生の私に、『知的生産の技術』は、とても響いたわけです。
ですが、こんなふうに『知的生産の技術』が響いたことには、何らかの前提があったのではないかという気がします。この前提をさかのぼってみたいなと思います。
そこで、もう少し昔のことを考えてみます。
(3) 「ひょっとしたら、これかも」程度の、もうちょっと深いところのきっかけ
大学生の頃から昔にさかのぼっていたら、ひとつのエピソードを思い出しました。
ずいぶんとさかのぼって、小学生の頃です。さっきまですっかり忘れていたエピソードですし、それがきっかけで何かが大きく変わった、というエピソードではありません。
でも、今考えてみると、このエピソードは、『知的生産の技術』が響くための、重要な前提のうちのひとつのような気がします。
そこで、「ひょっとしたら、これかも」程度のきっかけではありますが、「私が「知的生産」に惹かれるようになったきっかけ」として、「当時は作文を書くのが嫌いで仕方なかった小学生の私に、母が、「作文を書くための雲の描き方」を教えてくれた」というエピソードを紹介します。
2.母に教わった「作文を書くための雲の描き方」
(1) 作文が苦手で嫌いな私に、母が教えてくれたこと
小学生の頃、私は、作文が苦手で嫌いでした。
なぜ苦手で嫌いだったかと言えば、何を書いたらいいかわからないし、何を書いちゃいけないかもわからないし、どんな順番で書いたらいいかもわからないし、どんな言葉を書いたらいいかもわからないし、要するに書き方がぜんぜんわからなかったからです。
そんなわけで、夏休みの宿題で、いつも最後まで残るのが、作文や読書感想文でした。8月31日が近づく中、問題集やら自由研究やらはちゃっちゃと終わらせることができても、作文や読書感想文だけはぜんぜん終わらず、いつもブーブー文句を言っていました。
そんな私に、母が伝授してくれたのが、「作文を書くための雲の描き方」でした。
(2) 「作文を書くための雲の描き方」
「作文を書くための雲の描き方」は、こんな感じです。(ただ、当時、母が教えてくれたのは、ここまで体系だった方法論ではなかったと思います。今、記憶をたどりながら再構成すると、こんな感じになる、という程度です。)
【1】用意するもの
【1-1】最初に、原稿用紙を片付けて、かわりに大きな紙を用意する。
いきなり原稿用紙に書き始めるのは、大人でも無理だから、諦める。
まずは大きな紙を用意して、ここに作文の材料を集める。
大きな紙を広げて、「この大きな紙は空だ」と思う。
【1-2】黒色のペンと赤色のペンを用意する。
【2】空に雲を描いて、雲の中に言葉を書く。(黒色のペン)
【2-1】雲を描く。
空の真ん中に、モクモクした雲を描く。
真ん中の雲の回りに、6個の雲を描いて、6個の雲と真ん中の雲を線でつなぐ。
【2-2】雲の中に、言葉を書く。
真ん中の雲の中に、作文のテーマを書く。
お題が与えられていたら、それを書く。
自由だったら、書きたいことを書く。
周辺の6個の雲の中に、5W1Hを書く。
つまり、「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」「何を」「どうした」に対する答え。
【2-3】雲以外の空の部分に、書きたいこと(描きたいこと)を書く(描く)。
雲を追加したければ追加してもいい。
雲じゃない空に文字を書いてもいい。
絵でもいい。
【2-4】作文の材料が全部集まる。
ここまで描いて書いたら、この空の中に、作文の材料が全部集まる。
【3】空に散らばってる作文の材料の中から、作文に使うものを選ぶ。(赤色のペン)
【3-1】使わない材料にバツをつけて、使う材料に丸をつける。
【3-2】使う材料に、作文に書く順番で、番号を付ける。
【4】原稿用紙を広げて、作文を書く。
ここまでできてから、片付けてあった原稿用紙を広げて、作文を書き始める。
(3) 「作文を書くための雲の描き方」に、私は何を感じたか
母にこの方法を教わったとき、私は、「こんな面倒なこと、とてもやっていられない!」と感じました。
だって、宿題の作文を書くのすら面倒なのに、それに加えて、提出もしない雲をわざわざ描かなければいけないのです。雲を描くくらいなら、さっさと作文を書いてしまった方が、まだましだと思いました。
でも、実際にやってみると、なんと、いきなり原稿用紙に作文を書き始めるよりも、早く作文を書き上げることができることに気づきました。雲は提出できないけれど、提出するわけではない雲を最初に作ってから作文を作ったほうが、最初から作文だけを作るよりも早い、ということに気づきました。
当時の私は、このことをとてもびっくりしました。そして、「この方法を知っているのと知らないのとでは、作文を書くことの難しさがすごく変わる」を感じ、「作文を書くための雲の描き方」を気に入ったものです。
3.おわりに
今から考えると、「作文を書くための雲の描き方」は、私が最初に知った、「知的生産の方法論」なのかもしれません。
世の中には、その方法を知っているのと知らないのとでは、「知的生産」の生産性を大きく変えるような、方法論が、たくさん存在します。
「知的生産」は、私にとって大切なテーマなのですが、その中でも特に私が惹かれているのは、「知的生産」の生産性を大きくしてくれる、「知的生産の方法論」なんだろうと思います。
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