段差ラ部で桝目を学ぶ 〜マンダラートに抱いていたネガティブな先入観がひっくり返った話〜
公開日:
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Mandal-art
目次
1.段差ラ部で桝目を学ぶ
(1) マンダラート沼の入り口にて
最近の私はWorkFlowyに魅了されっぱなしなのですが、私がここまでWorkFlowyをしっくり使えているのは、「段差ラ部」のおかげです。
「段差ラ部」とは、「アウトライナー友の会」という勉強会の愛称です。Twitterで「#段差ラ部」というハッシュタグをつけて呟いている方々が、段差ラ部員だと思われます。正式な入部方法は私にはよくわからず、私も、自分では段差ラ部員のつもりですが、正確なところは確信がありません。
ともあれ、私の認識では、「段差ラ部」は、現在の日本におけるアウトライナーコミュニティの重要な一部を占める存在です。「WorkFlowy専用Firefox」も「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」というWorkFlowyの思想も「noteはトピックの注である」という考え方も、すべて「段差ラ部」というコミュニティに参加できたからこそ、たどり着くことができました。
さて、その段差ラ部の中心メンバーに、Tak.さんとマロ。さんという2人の方がいらっしゃいます。お二人のアウトライナーに対する知識や考察はとても深く、私は、これまでWorkFlowyについて試行錯誤するにあたって、お二人から、抽象的にも、具体的にも、いろんな影響と刺激をいただいてきました。
たとえば、「「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」というWorkFlowyの思想を肯定する。」という考察は、Tak.さんが書かれた「アウトライナーを使うとファイルの概念が消えていく:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ」に触発されて書いたものです(し、Tak.さんの文章よりもずいぶんと長いにも関わらず、Tak.さんの文章以上のことを考察しているわけではありません)。
また、私は、今、WorkFlowyでブログ原稿を書いているのですが、それは、マロ。さんによるハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」のおかげです。
そのため、私は、Tak.さんとマロ。さんの思考や実践にいつも興味しんしんですし、また、お二人からアドバイスをいただいたときはそれを大切に受け止めることに決めています。
そんなTak.さんとマロ。さんは、アウトライナーのほかに、もうひとつの共通する手法を愛用されています。今泉浩晃さんが提唱されるメモの理論と技法「マンダラート」です。
MandalArt マンダラート – タイムライン | Facebook
たとえばTak.さんは、Twitterの自己紹介欄に「マンダラート」と書かれていますし、ブログにも「マンダラート」カテゴリを作られています。
マンダラート:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ
また、マロ。さんは、マンダラートに関するエクセルベースのアプリケーションを公開されています。
MWE 〜マンダラートとアウトライナーをExcelとWordで〜|マロ。|note
そして、特にマロ。さんは、前々から、私に、マンダラートをおすすめしてくださっていました。
| 壁 |д・).。oO(彩郎さんに会う機会があったら、マンダラート沼を垣間見せたい… Tak.さんと一緒に
— マロ。 (@maro_draft) 2015, 3月 4
そんなわけで、お二人の誘いに引き寄せられ、私は、マンダラート沼をのぞき込んでみることにしました。
沼の入り口に佇んでいます。 pic.twitter.com/hnj6XW4j6D
— 彩郎 (@irodraw) 2015, 3月 9
今、私は、段差ラ部で枡目を学んでいます。
@satsuki_ka 段差ラ部は桝目ラ部に一時的に占拠されておりますww
— るう@ブログ引っ越し中 (@ruu_embo) 2015, 3月 12
(2) マンダラートに抱いていた先入観がひっくり返った
段差ラ部で枡目を学び始めて、約1週間経ちました。結論からいえば、私は今、マンダラート沼の魅力にはまっています。
段差ラ部と出会う前から、マンダラートという手法が存在することは知っていましたし、その仕組みややり方など、マンダラートの基本的なことは理解していたつもりでした。そして、それと同時に、私は、マンダラートに、どちらかと言えば、ネガティブな先入観を抱いていました。
でも、段差ラ部で枡目を学んだこの1週間で、マンダラートに抱いていた先入観は、ひっくり返りました。
私の先入観をひっくり返してくれたのは、1冊の本とひとつのツールです。
1冊の本は、『[超メモ学入門]マンダラートの技法』です。
ひとつのツールは、マロ。さんによるMWEというアプリケーションです。
MWE 〜マンダラートとアウトライナーをExcelとWordで〜|マロ。|note
この1冊の本とひとつのツールにより、マンダラートに抱いていた先入観がひっくり返ったことは、私にとって、大きな意味を持つような気がします。ひょっとしたら、WorkFlowyを使い始めたことと同じくらいのインパクトをもたらすかもしれません。
そこで、マンダラート沼への潜水を始めたばかりのこの段階で、一旦、この話をふり返ります。
以下では、まず、私がマンダラートに抱いていた先入観を説明し、その後、この先入観がどのようにひっくり返ったのかをまとめ、最後に、この話がどんな意味を持ちうるのかを、2,3回に分けて、書きます。
2.マンダラートに抱いていた先入観
(1) 私が持っていたマンダラートに対する認識
段差ラ部で枡目を学ぶ以前、私が持っていたマンダラートに対する認識は、今から考えると、不十分でした。また、今感じているマンダラートの本質を、うまく捉えていないような気がします。
なぜ、私の認識が不十分で本質を外していたのかといえば、理由のひとつは、提唱者である今泉浩晃氏の著書によってではなく、発想法を総花的に解説した書籍でマンダラートを知ったからではないかと思います。
ともあれ、私が持っていたマンダラートに対する認識は、こんなものでした。
- マンダラートは、発想法である。
- マンダラートのやり方は、以下のとおり。
- 3×3の9マスを作る
- 中心のマスに、考えたいテーマを書く
- 中心に書いたテーマから連想した言葉を周辺の8マス全部に書く
- 周辺の8マスに書いた8つの言葉からさらに深めたいものを選び、その言葉を、新しい3×3の9マスの中心に書いて、同じことを繰り返す
- 以下、このプロセスを好きなだけ繰り返す
- マンダラートの特徴は、次の2点である。
- マンダラートの肝は、中心セルと関連することを何でも自由に書けるという自由さと、中心セルと関連することを8個書かなければいけない、という強制の要素にある
- マンダラートの強みは、気になる言葉について新しいマンダラを作ることを繰り返すことによって、アイデアを無限に深めていけることにある
(2) マンダラートに抱いていた先入観
この認識を前提に、以前の私は、マンダラートをあまり高く評価していませんでした。
マンダラートに対する評価が高くなかった理由は、マンダラートよりも別の思考ツールのほうがふさわしいと考えていたためです。3×3の9マスを使えば、一定の効果が期待できるのはわかるけれど、なんというか、中途半端ではないか、と感じました。
具体的には、次の3つの思考ツールを使い分ける方が、マンダラートだけを使うよりもよい、というのが、私の考えでした。
- 論理の枠組みを活用したいときは、マトリクス
- 自由に発想したいときは、マインドマップ
- 階層を重ねることによって発想を深めたいときは、アウトライナー
a.論理的な発想は、マトリクスの方がいい
第一に、論理的な発想をするなら、マンダラートよりもマトリクスのほうがいいと考えていました。特に、シンプルな2×2のマトリクスです。
2×2マトリクスには項目を書く欄がありますので、マスの形としては、3×3です。
そのため、マンダラと2×2マトリクスは、マスの形は共通します。
でも、2×2マトリクスが縦軸と横軸という2つの軸を持っているのにたいして、マンダラにはそれがありません。
そのため、2×2のマトリクスは、2つの軸によって作られる4つの象限がそれぞれ明確な意味を持つのに対して、マンダラの9マスは、明確な意味を持ちません。
論理的に発想をするなら、4つの象限それぞれが明確な意味を与えられている2×2マトリクスのほうが、とにかく8つ関連するものをリストアップせよ、というマンダラよりも、うまく思考を導いてくれるんじゃないか、と感じていました。
b.自由な発想は、マインドマップの方がいい
第二に、自由な発想をするなら、マインドマップのほうがいいと考えていました。
自由な発想をするなら、マンダラートよりもマインドマップの方がいい、と考えていた理由は、次の3つです。
(a) 8個という制約があること
まず、マンダラートは、発想に使えるマスの個数が8個に決まっています。この8個に窮屈さを感じました。
一方で、マンダラートは、中心セルから8個の発想をひねり出さなければいけません(というのが、私の認識でした)。でも、中心テーマと関連することをむりやり8個挙げても、最後の1,2個は、なんというか、こじつけであり、それによっていいアイデアが出てくることは少ないのではないかと考えていました。
他方で、マンダラートは、たくさん関連することを思いついても、8個しか書けません。場合によっては10個も20個も枝を伸ばせるマインドマップの方が自由なのではないか、と感じました。
このように、中心テーマから放射状に発想を広げることを重視するとしても、マインドマップの方が、しっくり来る個数の発想を扱える点で、優れているように考えていました。
(b) 言葉であること
次に、マンダラートでは、マスの中に書き込むのは、基本的には、絵ではなくて言葉です。これに対して、マインドマップは、絵や図形を書くことを推奨します。
言葉だけで考えるよりも、図形や絵を使って考えるほうが、発想が広がるんじゃないかと感じました。
(c) 配置が決まっていること
さらに、マンダラートは、9マスのかたちが決まっています。9マスのかたちが決まっているので、マンダラートで使える配置は、中心のマスに対して、上下左右と斜めの四隅だけです。
これに対して、マインドマップなら、中心イメージと周辺に書き込む絵や文字との関係は、何も決まっていません。中心イメージとの距離や、中心イメージとの位置関係、また、中心イメージとつなぐ線の太さや形状などで、中心テーマとの関係のために、多彩な表現を活用できます。
そのため、マインドマップの方が、マンダラートよりも、自由でいろんな関係を表現できるのではないか、と考えていました。
c.階層を重ねることによって発想を深めるなら、アウトライナーの方がいい
第三に、マンダラートの特徴とされる、マンダラを繰り返し作ることによって、発想を深める方法にしても、マンダラートよりもアウトライナーのほうが優れている、と考えていました。理由は、次の3つです。
(a) マンダラートでは、階層関係を把握するのがむずかしい
まず、マンダラートでは、(特に紙のマンダラを使う場合は、)ひとつのマンダラから別の新しいマンダラを作ったときに、もともとのマンダラと新しいマンダラの関係性を整理しておくのがのが面倒です。
最初に作ったマンダラの周辺セルのどれかを展開したのが新しいマンダラのはずですが、この2つのマンダラが別々の紙になるために、少し時間が経つと、両者の関係がよくわからなくなってしまいます。
これに対して、アウトライナーなら、階層が何層になっても、入れ子構造を把握するのはお手のものです。
(b) 複数のレベルを同時に見て、階層構造全体を俯瞰するのがむずかしい
また、マンダラートでは、(特にデジタルのソフトウェアの場合、)複数のマンダラの階層構造をひとめで俯瞰する、ということが難しいです。マンダラートは、基本的に、1枚1枚のマンダラを扱う発想法なので、階層構造全体を一度に俯瞰する、ということを想定していないのではないか、と考えていました。
(c) 階層構造をまたいだ移動(階層の入れ替えなど)がむずかしい
それから、マンダラートの場合、最初に作ったマンダラと、次に作ったマンダラとを、あとでひっくり返す、というような操作がしにくいように感じていました。私のイメージでは、マンダラートの思考の方向性は、最初のマンダラの中心テーマをスタートに、一定方向に深めていく、という流れでした。
具体的には、マンダラートで作った構造は、階層をまたいだ移動がむずかしいです。
これに対して、アウトライナーなら、階層の上げ下げも簡単ですし、入れ子構造をひっくり返すことも可能です。
●
このように、階層を重ねることによる発想なら、マンダラートよりもアウトライナーの方がいいんじゃないかと考えていました。
3.先入観は、どうひっくり返ったか?
まとめると、私がマンダラートに抱いていた、いくぶんネガティブな先入観は、次の3つで、要するに、マンダラートよりももっとふさわしい思考ツールがあるので、マンダラートの存在意義がよくわからない、と要約できます。
- 論理の枠組みを活用したいときは、マトリクス
- 自由に発想したいときは、マインドマップ
- 階層を重ねることによって発想を深めたいときは、アウトライナー
しかし、先に書いたとおり、この先入観は、1冊の本とひとつのツールによって、ひっくり返りました。
どのようにひっくり返ったかの詳しいところは、明日以降に別途書いていこうと思うのですが、概要だけ書くと、こんなところです。
- マンダラートには、マトリクスにはない意義がある
- マンダラートでも、論理の枠組みを活用できる。
- 2×2マトリクスのように考えることもできるし、他の論理的な枠組みを活用することもできる。
- しかも、論理の枠組みを活用した上に、想定していた論理の枠組みを超える発想が生まれる可能性もある。
- マンダラートでも、論理の枠組みを活用できる。
- マンダラートには、マインドマップにはない意義がある
- マンダラートが言葉を使うことにはすごく大切な理由がある。主に言葉を使うことは、むしろマンダラートの強みである。
- マンダラの9マスがたった9マスであることも、マンダラートの強みである。
- たった9マスではあるけれど、この9マスは、かなり豊富な関係性を表現することができる。
- でありながら、固定された9マスなので、複数のマスの間の関係性は、むしろマインドマップよりも強い。
- そのため、この9マスの関係性から、新しい意味の構造が生まれることも多々ある。
- マンダラートとアウトライナーは、今や、繋がっている
- マンダラートの階層構造とアウトライナーの階層構造は、思想的には共通するものを持っているので、ふさわしいツールがあれば行き来可能である。
- そして、マンダラートとアウトライナーをつなぐツールが、現に存在している。
- こんなツールが存在しているのだから、マンダラートかアウトライナーか、という二者択一で考える必要はない。
ここに書いた3つのことは、私にとって、どれも衝撃的なことでした。これらの衝撃に言葉を与えるのは、なかなか大変そうな気もしますが、自分にとって大切なことだと確信するので、ひとつひとつ丁寧に書いていこうと思います。
これから少しの間、マンダラート沼の探索に、どうぞお付き合いください。
【参考】
1冊の本
『[超メモ学入門]マンダラートの技法』
ひとつのツール
MWE
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