WorkFlowyと自分のブログによる知的生産システムと、ハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」が果たす役割
目次
1.WorkFlowyと自分のブログによる知的生産システム
(1) ブログを続けるコツは、「ブログ原稿を書く場所」を用意すること
『終末のフール』の感想文から始まった「単純作業に心を込めて」は、もうすぐ3歳になります。文章の数は700を超えました。まだ『千夜一夜物語』には届きませんが、ちょっとずつ近づいてきています。
もし、私が、「ブログを続けるためのコツは何か?」という質問を受けたら、私の答えは決まっています。ブログそのものの他に、「ブログ原稿を書く場所」を用意すること、です。
ブログを始めるとき、多くの人は、ブログサービスを選んだり、デザインを考えたり、ブログ名を考えたりといった、ブログそのものの準備に手間暇をかけると思います。それと同じくらいの手間暇をかけて、「ブログ原稿を書く場所」を用意するとよいです、というのが、私が考えるブログを書き続けるためのコツ、です。
ほとんどのブログサービスには、下書き機能がありますので、ここでブログ原稿を書けばいいじゃないか、と考える方もいるかもしれません。WorkPressも、バージョンアップのたびに、ダッシュボードからの原稿執筆に力を入れています。
また、WindowsのWindow Live WriterやMacのMarsEdit、iPhoneのするぷろなどのブログエディタにも、ブログ原稿を書く機能が備わっています。
そのため、ブログそのものの他に、「ブログ原稿を書く場所」を用意する意味は、あんまりないようにも思えます。
しかし、ブログサービスが用意する下書き機能やブログエディタの原稿管理機能では、不十分です。なぜなら、これらの機能は、書きかけの原稿の数が100や200、1000や2000になることをまったく想定していませんので、大量の書きかけのブログ原稿をうまく管理することができません。でも、ブログを書き続けていくためには、100や200、1000や2000レベルの「大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理する仕組み」が必要です。
こんなわけで、私は、ブログを続けるためには、ブログそのものを用意するのと同じくらいの手間暇をかけて、大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理することができるような、「ブログ原稿を書く場所」を用意することが、とてもとても大切だと考えています。
(2) 「暫定的な作品群を公開する場所」と「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」によって知的生産システムを組み立てる
さて、この「ブログそのもの」と「ブログ原稿を書く場所」を、私は、「暫定的な作品群を公開する場所」と「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」というコンセプトで捉えています。
「ブログ原稿を書く場所」で大量の書きかけのブログ原稿群を管理すると、個々のブログ原稿それぞれが育つことだけでなく、大量の書きかけのブログ原稿群全体がまるでひとつの有機体のように育っていく感覚を覚えます。この有機体は、永遠に、大量の書きかけの原稿群を含んだまま、変化し続けるので、完成することはありません。大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理する「ブログ原稿を書く場所」は、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」です。
「ブログそのもの」は、自分だけの判断で、どんな文章も公開できる場所です。個数の制限もなければ、長さや形式、テーマの制限もありません。そのため、「ブログそのもの」は、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」の一部を、暫定的な作品群として切り取って、とりあえず公開する、というための使えます。「ブログそのもの」は、「暫定的な作品群を公開する場所」です。
この「ブログそのもの」=「暫定的な作品群を公開する場所」と「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」は、お互いがお互いを刺激し合いながら、育ち続けます。ブログに暫定的な作品群を公開すると、そこからの刺激で思考が広がったり深まったりして、有機体が育ちます。有機体が育てば、そこから暫定的な作品群がまた生まれて、次の公開につながります。ひとりどこかにこもって孤独な研究を続けることで考察を深めるのではなく、「暫定的な作品群を公開する場所」を持つことによって、自分の知的生産の流れをプル型に転換する力が、「暫定的な作品群を公開する場所」と「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」の組み合わせからなる知的生産システムには、存在します。
私が考える「ブログを続けるコツ」は「「ブログそのもの」と「ブログ原稿を書く場所」の両方を用意する」なのですが、これはすなわち、「「暫定的な作品群を公開する場所」と「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」をセットで用意する」ということです。
この「暫定的な作品群を公開する場所」と「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」の両方を組み合わせることが、このウェブ社会における普通の個人による知的生産システムのかたちなのかもしれない、と感じています。
(3) 「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」としてのEvernoteとWorkFlowy
「単純作業に心を込めて」を始めたときから、私は、Evernoteでブログ原稿を書いてきました。
Evernoteは、大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理するための、優れた機能をたくさん持っています。私にとって、Evernoteは、たくさんのブログ原稿を同時並行で少しずつ書きすすめるために、とてもうまく機能してくれました。私が「単純作業に心を込めて」を続けてくることができた理由のかなりの部分は、Evernoteを「ブログ原稿を育てる畑」として活用していたことにあると思っています。
私は、Evernoteを「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」として活用してきました。
その後、2014年12月、私は、アウトライナーを使ってブログ原稿を育てることを試行錯誤し始めました。当初はOmniOutlinerを使っていたのですが、OmniOutlinerではiPhoneやWindowsパソコンからブログ原稿を育てることができず、そのためにテキストデータのポケットひとつ原則を実現しづらいことから、2015年1月、クラウドサービスであるWorkFlowyを使うことにしました。
WorkFlowyは、大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理するために、とてもうまく機能してくれました。2015年2月現在、WorkFlowyは、私の「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」として、うまく機能しています。
(4) WorkFlowyとブログによる知的生産システム
いったんまとめます。
- ブログを書き続けるコツは、次の2つを用意すること
- 「ブログ原稿を書く場所」:大量の書きかけのブログ原稿群全体を管理するために、必要
- 「自分のブログそのもの」:公開する文章の個数も、テーマも、形式も、自由に決めることができる
- このウェブ社会における個人の知的生産システムは、次の2つから構成される
- 「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」
- 「暫定的な作品群を公開する場所」
- ブログを書き続けるコツと、このウェブ社会における個人の知的生産システムは、こんな感じで対応する
- 「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」
- 「自分のブログそのもの」=「暫定的な作品群を公開する場所」
- 私の場合、「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」としてうまく機能したツールは、次の2つだった
- Evernote
- WorkFlowy
- そのため、私の知的生産システムは、WorkFlowyと自分のブログによって構成されている
- 「ブログ原稿を書く場所」=「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」=WorkFlowy
- 「自分のブログそのもの」=「暫定的な作品群を公開する場所」=WordPress
2.AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」の機能と役割
(1) 「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」としてのWorkFlowyと「暫定的な作品群を公開する場所」としての自分のブログをスムーズにつなぐ、ハサミスクリプト
WorkFlowyと自分のブログをつなぐには、WorkFlowyで書いた原稿を、ブログに投稿できる形式に整える必要があります。
具体的には、
- WorkFlowyからExport機能で原稿データをクリップボードにコピーし、
- ブログエディタなどに貼り付け、
- 余計な記号を取り除き、
- HTMLやMarkdown記法を使って、見出しやリストを整える
という作業です。
通常であれば、この作業は全部手作業です。でも、今の私は、この作業のために、マロさんの手による「WFtoHTML_irodrawEdition」というAppleScriptを使っています。
WF2HTMLのirodrawさん専用バージョンWFtoHTML irodrawEdithion|マロ。|note
「WFtoHTML_irodrawEdition」を使えば、何度かキーを叩くだけで、WorkFlowyのトピックが、一瞬にして、そのまま公開できるHTMLに変換されます。
AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」は、WorkFlowyという「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」から暫定的な作品群を切り出すことを支援することで、WorkFlowyという「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」とブログという「暫定的な作品群を公開する場所」とをスムーズにつないでくれます。切り出すことをすばらしく支援してくれるツールなので、私は、ハサミスクリプトと呼んでいます。
「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」と「暫定的な作品群を公開する場所」とを組み合わせることで、このウェブ社会において、普通の個人は、知的生産システムを組み立てることができるのですが、私の場合、AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」が、両者をつないでくれています。
(2) AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」は彩郎仕様
実は、AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」は、その名に「irodrawEdition」と入っていることからもわかるように、わたくし彩郎仕様です。1ヶ月ほど標準版の「WFtoHTML」を愛用する中で感じた要望をマロさんにお伝えしたところ、なんとマロさんが、私の要望をすべて盛り込んだ彩郎仕様のWFtoHTMLを作ってくださいました。これが「WFtoHTML_irodrawEdition」です。
私の要望を盛り込んだ彩郎仕様なので当たり前なのですが、AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」は、私にとって、切れ味抜群です。AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」を使えば、私の「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」としてのWorkFlowyからHTMLを切り出すのは、本当に楽々です。
(3) AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」の機能
AppleScript「WFtoHTML_irodrawEdition」の機能は、次のとおりです。
a.通常版「WFtoHTML」と共通の基本機能
通常版と共通の基本機能は、トピックをhタグとpタグで囲む機能です。
- WorkFlowyのトピックを、以下のルールでhタグとpタグで囲む
- 最上位のトピックから順に、h1、h2、…の順に囲む
- ただし、最下位のトピック(子要素を持たないトピック)は、pタグで囲む
- 参考:WorkFlowyの有機体から、暫定的な作品群を切り出す。AppleScript「WF2html_p3.scpt」による魔法を公開します。
これによって、WorkFlowyのアウトラン構造を、見出しのhタグによって、HTMLの構造に反映させることができます。
また、「情報を区切る単位はトピックだけでいい」というWorkFlowyの思想により、WorkFlowyのトピックは、見出しと本文を兼ねる唯一の単位なので、最下位のトピック(子要素を持たないトピック)については、HTMLでは本文としてpタグで囲みます。
b.「WFtoHTML_irodrawEdition」だけの特別仕様
通常版に、以下の変更を加えたのが、「WFtoHTML_irodrawEdition」です。
- WorkFlowyのnoteを無視する
- HTMLに変換するときに、WorkFlowyのトピックにnoteがついていても、これを無視します。
- (通常版は、noteはpタグで囲まれます。)
- 私は、WorkFlowyのnoteを「トピックの注だと考えています。トピックの注なので、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」の方に記録されていれば十分で、公開される「暫定的な作品群」に反映される必要はなく、むしろ反映されないほうが好都合です。
- そのため、noteを無視する仕様を要望しました。
- リスト機能
- 「ulリスト」または「olリスト」というトピックの子要素のトピックを、WorkFlowyのアウトライン構造そのままに、HTMLのulリストまたはolリストに変換する、という機能です。
- 通常版では、WorkFlowyのアウトライン構造はすべて見出しのhタグで反映されます。しかし、中にはリストで構造を反映したい場合もあるため、この分岐を可能にするために、要望しました。
- まさにこの部分も、「ulリスト」機能を使って、ulリストのHTMLを書き出しています。
- HTML特殊文字「<」「>」をそのままにする
- 通常版では、HTML特殊文字は、リンクタグなどいくつかのタグの場合を除き、文字コードに変換されます。
- しかし、私は、WorkFlowyの段階から、リンクや引用、出典など、いろんなHTMLを書いています。そのため、HTML特殊文字の変換はしないで、HTML特殊文字「<」「>」をそのまま出力してもらうように要望しました。
- なお、このために、HTML特殊文字「<」「>」を、HTMLのタグとしてではなく、文字として表示したい場合には、WorkFlowyの段階から、特殊文字のコードで入力する必要があります。
- 「<blockquote」から始まるトピックは、pタグで囲わない
- 「<blockquote」から始まるトピックをpタグで囲わない機能です。
- Twitterのツイート埋め込みやウェブサイトからの引用、本の一節の引用などの際に「<blockquote」を使います。私は比較的引用を多用し、WorkFlowyに「<blockquote」付きでHTMLをそのまま書いています。
- でも、通常版だと、「<blockquote」から始まるトピックも、pタグで囲まれてしまい、そのままではエラーとなります。
- そのため、「<blockquote」で始まるトピックは、pタグで囲まない仕様を要望しました。
- おかげさまで、引用のblockquoteタグを使う際にブログエディタで修正する手間がなくなり、引用タグを使う心理的なハードルが下がりました。
3.ハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」が果たす役割
「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」で原稿を書いたあと、「暫定的な作品群を公開する場所」としてのブログに投稿できるHTMLへと整える作業は、私のボトルネックでした。
ハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」は、この作業の手間を劇的に低下させることによって、私のボトルネックを解消しました。
ハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」は、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」と「暫定的な作品群を公開する場所」とをスムーズにつなぐことによって、私の知的生産システム全体からのアウトプットを大きく増やす役割を果たしてくれています。
ハサミスクリプト「WFtoHTML_irodrawEdition」は、私の要望を盛り込んだ彩郎仕様ではありますが、次の4つの条件を満たす方には、わりとうまく機能するように思います。
- WorkFlowyのProアカウントを使用している
- WorkFlowyでブログ原稿を書いている
- Macを使っている
- 見出しとリストのHTMLをよく使う
使えば感動を覚えるツールであることは保証します。よろしければ、ぜひお試しください。
WF2HTMLのirodrawさん専用バージョンWFtoHTML irodrawEdithion|マロ。|note
(p.s. おいおい、具体的な使い方の説明を書く予定です。キーボードショートカットに登録する方法なども含めて。)
WorkFlowyに興味をお持ちの方は
WorkFlowyは、基本機能を使うだけなら、無料です。1ヶ月間に作成できるトピック数に制限がありますが、それ以外は、さしたる制限なく使うことができます。
WorkFlowyに興味をお持ちの方は、お気軽に試していただけるとうれしいです。
無料プランの場合、1ヶ月間に作成できるトピック数は、標準だと250トピックに制限されています。しかし、以下の紹介リンクからご登録いただくと、250増えて、500トピックになります。
Get 2x the free WorkFlowy space.
紹介リンクからご登録いただくと、同時に、紹介主の1ヶ月あたりの制限数も、250トピック増えます。
この紹介リンクは、知的生産の治具工房のマロ。(@maro_draft)さんのものです。マロ。さんは、WorkFlowyと他のツールとをつなぐ知的生産の治具を精力的に開発されています。
- Workflowyで選択したアウトラインにhタグを付けて書き出すAppleScript|マロ。|note
- WF2HTMLのirodrawさん専用バージョンWFtoHTML irodrawEdithion|マロ。|note
- WorkflowyとWordの相互変換ツール|マロ。|note
お知らせ
このエントリは、その後、加筆修正などを経て、書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の一部分となりました。
書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元エントリは、次のとおりです。
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