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「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」というWorkFlowyの思想を肯定する。

公開日: : WorkFlowy

1.WorkFlowyの思想は、「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」

(1) WorkFlowyは、なぜ、ひとりのユーザーにひとつのアウトラインしか認めないのか?

WorkFlowyは、クラウドで利用できるアウトライナーです。WorkFlowyのアカウントを作ったユーザーは、ブラウザからもスマートフォンからも利用できる強力なアウトラインを使えるようになります。

クラウドアウトライナーWorkFlowyの説明

しかし、WorkFlowyがひとりのユーザーに認めるアウトラインの個数は、ひとつだけです。WorkFlowyのユーザーは、たったひとつだけのアウトラインしか使うことができません。

アウトラインは、様々な用途で活躍します。論文を組み立てることやブログ原稿を書くことにも使えますし、買い物リストやタスクマネジメントにも使えます。日記にも、読書メモにも、さらには本やブログなどの文章を読むためにも使えます。

アウトラインはこんなにも幅広い用途に使えるのに、使えるアウトラインの個数がたったひとつでは、困ってしまうのではないでしょうか。

なぜ、WorkFlowyは、ひとりのユーザーに、ひとつのアウトラインしか認めないのでしょうか。

(2) WorkFlowyが、「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」という思想を持っているから

私は単なるいちユーザーですので、WorkFlowy開発陣がこんな制約を設けているほんとうの理由は、もちろん、知りません。でも、ここ1ヶ月弱、毎日のようにWorkFlowyをいろんな用途に使っていたら、上の疑問に対する私なりの回答が浮かんできました。

私が感じた回答は、WorkFlowyが「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」という思想を持っているから、です。

「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつの方がむしろよい」というのは、抽象的な思想ではあるももの、WorkFlowyというツールの使い方を左右する、かなり重要なポイントではないかとも感じています。そこで、現段階で私がこの思想について感じることを、文章にしてみます。

2.アウトラインはひとつあれば十分

(1) アウトラインはひとつでは不十分?

ひとりのユーザーがひとつのアウトラインしか使えない、というWorkFlowyの制約を知ったとき、多くのユーザーは、びっくりして、「そんなのは困る」と感じるのではないかと思います。私もそう感じました。

なぜ、ひとつのアウトラインしか使えないことに対して、「そんなのは困る」と感じるのでしょうか。「(i) アウトラインをいろんな用途に使いたい」と「(ii) 用途ごとにアウトラインを分けたい」という2つの要請が合わさってのことだと思います。

まず、「(i) アウトラインをいろんな用途に使いたい」は、アウトラインを、論文執筆メモにも買い物リストにも使いたい、という要請です。アウトラインは幅広い範囲で活躍します。いろんな用途にアウトラインを使いたいというひとつめの要請はもっともです。

次に、「(ii) 用途ごとにアウトラインを分けたい」は、たとえば、論文執筆メモと買い物リストを別物として区別したい、そのために、これらのアウトラインを別々のアウトラインに保存しておきたい、という要請です。この要請は、感覚的に、もっともです。論理を詰めていって厳密な検討が要求される論文執筆メモと、今日マックスバリュに行ったときにブロッコリーを買い忘れないためだけに存在する買い物メモとが隣に並んでいるのは、居心地が悪いです。分けたくなるのは自然です。

でも、この2つの要請は矛盾します。どちらももっともな2つの要請が矛盾してしまうために、私を含む多くのユーザーは、びっくりして「そんなのは困る」と感じるのではないかというのが、私の考えです。

(2) アウトラインはひとつあれば十分

でも、WorkFlowyは、アウトラインはひとつあれば十分、と答えます。「アウトラインがひとつだけでも、そんなのぜんぜん困らないよ」と答えます。なぜでしょうか。

3段階に分けて考えてみます。

a.トピックを無限に階層化

まず、WorkFlowyはアウトライナーです。アウトライナーなので、アウトラインを操作することができます。

アウトライナーは、トピックを階層構造にすることができます。それも、無限に階層化できます。

そこで、大きなトピックレベルで区別をして、その親トピックの下にトピックをぶら下げていくことによって、ひとつのアウトラインの中で、トピックをきれいに区別することができます。

論文執筆メモと買い物リストの両方をひとつのアウトラインの中に入れるとしても、「研究」と「生活」という2つのトピックを作り、論文執筆メモを「研究」トピックの子トピックに、買い物リストを「生活」トピックの子トピックにすれば、両者はきれいに区別されます。

b.Zoom機能で、深い階層でも問題ない

しかし、トピックの階層化によってトピックを区別すると、実際に使うトピックの階層が深くなってしまいます。階層が深くなると、当該トピックがどの階層に属しているのかがよくわからなくなる上に、画面のレイアウト上も左側にたくさんのインデントが設定されてしまって、使い勝手がよくありません。であれば、無限に階層化できるとしても、問題の解決にはならないようにも思えます。

この問題に対して、WorkFlowyを含む多くのアウトライナーが提示するすばらしい解法が、フォーカス機能、ホイスト機能と呼ばれる機能です。WorkFlowyは、Zoom機能と呼んでいます。

Zoom機能があれば、どんなに深い階層のトピックも、そのトピックがもっとも上位階層のトピックであるかのように表示できます。Zoom機能があるからこそ、実際に使うトピックがどんなに深い階層でも、不自由がありません。

c.特定のトピックへの移動を支援する機能

とはいえ、すべてをひとつのアウトラインに入れると、そのアウトラインが巨大になります。アウトラインが巨大になると、その巨大なアウトラインから特定のトピックに移動することがやりにくくなってしまいそうです。

これに対して、WorkFlowyは、特定のトピックへの移動を支援するいくつかの機能を持っています。私が便利だと感じるのは、次の3つです。

(a) スター

ひとつめは、スター機能です。

これは、特定のトピックにスターを付ける機能です。WorkFlowy内のブックマーク機能のようなものです。

このスター機能によって、よく使うトピックへすばやくアクセスすることができます。

(b) ハッシュタグ

ふたつめは、ハッシュタグ機能です。

ハッシュタグ機能とは、「#」または「@」で始まる文字列が自動的にクリックできるリンクになる機能です。WorkFlowy上で、任意のハッシュタグをクリックすると、そのハッシュタグと同じハッシュタグを含むトピックのみが表示されます。

このハッシュタグ機能によって、一群のよく使うトピックへのアクセスを確保することができます。

(c) URL

みっつめは、WorkFlowyのURLです。

WorkFlowyは、便利なURLを持っています。このURLをうまく使うと、WorkFlowyの巨大なアウトラインの中を動き回るのが、かなり楽になります。

WorkFlowyのURLの基本と「保存された検索」のような活用例

WorkFlowyのURLを活用するアイデアを妄想する(その1・ブックマークに登録)

なお、WorkFlowyのURLを最大限活かすために、私は、FirefoxをWorkFlowy専用にするという、「WorkFlowy専用Firefox」というTipsを採用しています。自分ではかなり気に入っています。WorkFlowyをよく使っていて、普段Firefoxは使っていない人には、強くお勧めします。

「WorkFlowy専用Firefox」によって、パソコンからのWorkFlowyを、さらに強力なツールに育て上げる(Windows&Mac)

なお、「捗りあん」さんが紹介してくださったこの記事のほうが、わかりやすい気がします。

[捗]これは便利なアイデア!~FirefoxをWorkFlowy専用ブラウザにしてしまう | 捗りあん

3.アウトラインはひとつだけの方がむしろよい

(1) アウトラインは複数ある方がもっといい?

このように、WorkFlowyは、「アウトラインはひとつあれば十分だよ」と答えます。この答えは、トピックの階層化、Zoom機能、移動を支援するいろんな機能によって、きちんと裏付けられています。

でも、こんな意見も考えられます。

「たしかに、ひとつあれば十分だということは、理解した。でも、複数あればもっといいのではないか? ひとつあれば十分なアウトラインが複数あれば、もっともっと大きな価値を発揮するのではないか?」

ひとつだけでも十分かもしれないけれど、複数の方がもっといいんじゃないか、ということです。ところが、WorkFlowyは、この意見を、否定します。WorkFlowyは、「ひとつあれば十分」を超えて、「ひとつだけの方がむしろよい」と主張しています。アウトラインは、ひとつだけがベスト。これが、WorkFlowyの思想です。

(2) アウトラインはひとつだけの方がむしろよい

「ひとつあれば十分」を超えて、「ひとつだけの方がむしろよい」とまでWorkFlowyが考えているのは、なぜなのでしょうか。

現時点で私が感じる理由は、「ポケット一つ原則」と「全体としてひとつの流動体であること」の2つです。

a.ポケット一つ原則

ポケット一つ原則は、かの『「超」整理法』で野口悠紀雄先生が提唱された原則です。私は、ポケット一つ原則の有効性を信じて、自分自身の知的生産のいろんな場面に、ポケット一つ原則を適用しています。

クラウドと「ポケット一つ原則」は、相性抜群。文章とメールとタスク、3つの「ポケット一つ原則」

WorkFlowyは、ひとつのアウトラインしか認めません。これによって、WorkFlowyでは、半強制的に、ポケット一つ原則が実現されます。WorkFlowyで書いたことは、すべてが、そのひとつのアウトラインの中に存在します。そのひとつのアウトラインを検索すれば、存在するなら見つかりますし、存在しなければ見つかりません。

ポケット一つ原則は、「アウトラインはひとつだけの方がむしろよい」を支えるひとつめの理由です。

b.すべてのトピックの流動性を確保すること(全体としてひとつの流動体であること)

とはいえ、ポケット一つ原則だけでは、理由のすべてを説明しきれません。というのは、アウトラインが複数存在しても、ポケット一つ原則を実現することは可能だからです。

どういうことでしょうか。

これを説明するには、Evernoteを考えるとわかりやすいかと思います。

Evernoteは、複数のノートを持つことができます。でも、Evernoteは、ポケット一つ原則を実現できます。Evernoteには、ひとつのEvernoteアカウントの中にあるすべての情報を管理する機能があるからです。別々のノートに書かれていても、別々のノートブックに所属していても、Evernoteの管理画面からは、すべてのノートを対象にした検索機能や、複数のノート同時のタグ付けやノートブック移動機能を利用できます。

これと同じように、WorkFlowyも、たとえ複数のアウトラインを認めたとしても、ひとつのアカウント内に存在する複数のアウトラインを管理する機能を設けて、複数のアウトラインを串刺しで検索したり編集したりする機能を設ければ、ポケット一つ原則を実現することは可能です。

しかし、WorkFlowyは、これを採用しません。複数のアウトラインを認めて、アウトライン単位で管理する機能は不要だと考えています。

なぜかといえば、WorkFlowyが情報を区切る単位として必要なのは、トピックだけだからです。トピックという単位で情報を区切って、これを無限に階層化すれば、すべての情報はきちんと整理できる、というのが、WorkFlowyの考え方だからです。

これに対して、仮に複数のアウトラインを認めてしまうと、仮に複数のアウトラインを串刺しで管理できる機能を設けたとしても、アウトラインが、情報を区切る単位になってしまいます。トピックのほかに情報を区切る単位を認めたくないWorkFlowyにとって、これは不都合です。

以前、私は、Evernoteとアウトライナーの思想のちがいを、全体としてひとつの流動的な有機体であるか否か、に求めました。WorkFlowyは、ひとりのユーザーにひとつのアウトラインしか認めないことによって、トピックのみを情報を区切る単位にすることで、WorkFlowyのアウトラインを、全体としてひとつの流動体にしようとしてます。

全体としてひとつの流動的な有機体であるか否か(Evernoteとプロセス型アウトライナーの思想のちがい)

4.ファイル概念から自由になって、WorkFlowyの力を引き出す

(1) WorkFlowyは、ファイル概念を超える

このエントリでは、「アウトラインはひとつあれば十分だし、ひとつだけの方がむしろよい」というWorkFlowyの思想について、私が現時点で考えていることを、文章にしてみました。

このWorkFlowyの思想を、私は、Tak.さんによる次のエントリとツイートから学びました。

アウトライナーを使うとファイルの概念が消えていく:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ

まさにここで指摘されているとおり、WorkFlowyを使うと、ファイルの概念が消えていきます。

WorkFlowyは、情報を管理する単位をトピックというただひとつの要素に限定することによって、トピックに、本文の機能も、見出しの機能も、ファイル名の機能も、フォルダ名の機能も与えています。WorkFlowyの思想は、ある意味、ファイル概念という従来のデータ管理概念を超える、恐ろしい思想なのかもしれません。

(2) WorkFlowyの力を引き出すコツは、ファイル概念から自由になること 

ここまで大げさな話なのかはともかくとして、ファイル概念から自由になって、すべてをトピックで管理する、ということは、WorkFlowyの力を引き出すための、もっとも根本的なコツです。

論文執筆メモと今夜のマックスバリュでの買い物メモを同居させることに、最初は大きな気持ち悪さを感じるかもしれません。同居を避けて区別するために、WorkFlowyの用途を絞ったり、複数のアカウントを作成したりすることを検討したくなるかもしれません。

でも、ファイル概念から自由になって、どんな用途も全部WorkFlowyに突っ込んでみてください。日記も、ブログエントリの原稿も、読書メモも、買い物メモも、持ち物チェックリストも、全部をWorkFlowyに突っ込んでみてください。

そうすれば、WorkFlowyのひとつの巨大なアウトラインが、ひとつの流動的な有機体に育ちます。この流動的な有機体は、それ自体はずっと完成せずに、暫定的な作品群を生み出し続けてくれるはずです。

WorkFlowyで「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」を育てる

これが、WorkFlowy歴1ヶ月の私が感じるWorkFlowyの力を引き出すコツです。

【関連】

WorkFlowyの全体的な説明

クラウドアウトライナーWorkFlowyの説明

どんな考え方で、WorkFlowyを使うか

WorkFlowyで「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」を育てる

おすすめのTips

WorkFlowyのURLの基本と「保存された検索」のような活用例

WorkFlowyのURLを活用するアイデアを妄想する(その1・ブックマークに登録)

「WorkFlowy専用Firefox」によって、パソコンからのWorkFlowyを、さらに強力なツールに育て上げる(Windows&Mac)

WorkFlowyに書き込んだ内容を自動的にEvernoteに蓄積し続ける仕組み(差分メール転送とRSS&IFTTT)

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