*

粘土のようなアウトライナー、ブロックのようなEvernote。

公開日: : 書き方・考え方

1.ずっと完成しないで変化し続ける有機体から暫定的な作品群を切り取ること

先日、こんなことを書きました。

ずっと完成しないで変化し続ける有機体から、暫定的な作品群を切り取るためのハサミ

概要、以下のとおりです。

  • 1.個人の知的生産システムは、次の2つの要素で構成される
    • (1) ずっと完成しないで変化し続ける有機体
    • (2) そこから切り取った暫定的な作品群を公開する場所
  • 2.ずっと完成しないで変化し続ける有機体から、暫定的な作品群を切り取るためには、次の2つの方針がある
    • (1) 有機体を、切り取りやすいものにする
    • (2) 切り取りを助けてくれるハサミを用意する
  • 3.OmniOutlinerによる有機体から、HTMLによるブログエントリという作品群を切り取るなら、マロ。さん作のAppleScriptが便利(2(2)の一例)。

「ずっと完成しないで変化し続ける有機体から、暫定的な作品群を切り取るためのハサミ」というタイトルからもわかるとおり、上のエントリでフォーカスを当てたのは、「2(2) 切り取りを助けてくれるハサミを用意する」の部分です。

そこで、次に、もうひとつの方針である「2(1) 有機体を、切り取りやすいものにする」の部分にフォーカスを当て、検討してみます。

2.有機体を切り取りやすくするための2つの作戦

「有機体を、切り取りやすいものにする」の方針をとるためには、次の2つの作戦がありえます。

(1) 有機体のかたちを変え続けて、切り取りやすいかたちになった瞬間に、切り取る

ひとつは、有機体のかたちを自由に変え続けることです。自由に変え続ければ、しばしば、切り取りやすいかたちが見える瞬間がやってきます。その瞬間を逃さずに、その切り取りやすい部分を切り取れば、有機体は、切り取りやすいものになります。

イメージは、粘土です。粘土のかたちを変え続けているうちに、ひとつの作品になりそうな部分が見つかったら、その部分を切り取ってひとつの作品にする、という感じです。

(2) あらかじめ、有機体を、部品の組み合わせによって作っておいて、あとから、その部品単位で切り取る

もうひとつは、あらかじめ有機体を部品の組み合わせで作っておくという作品です。複数の部品の組み合わせで作られた有機体の中には、切り取り線がたくさん仕込まれています。あとから切り取り線で部品を取り分けることは、そんなにむずかしいことではありません。

イメージは、ブロックです。ブロックを組み合わせてひとつの有機体を育てていくのですが、あくまでもブロックの組み合わせなので、あとから任意の単位でブロックを取り外すことは簡単です。大きな構築物をブロックで作りながら、その一部が独立した作品になりそうだったら、その部分だけを取り外して、暫定的な作品とする、という感じです。

3.アウトライナーとEvernote

「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」を具体化するためのツールとして私が知っているのは、アウトライナーとEvernoteです。そして、アウトライナーとEvernoteは、それぞれが、2で説明した「有機体を切り取りやすくするための2つの作戦」に対応しています。

(1) 粘土のようなアウトライナー

アウトライナーは、粘土です。

アウトライナーによるひとつのアウトラインは、全体がひとつの流動的な有機体です。アウトライナーによるアウトラインには、Evernoteのノートのような区切りがありません。

全体としてひとつの流動的な有機体であるか否か(Evernoteとプロセス型アウトライナーの思想のちがい)

アウトライナーによるひとつの流動的な有機体は、その全体が自由に変化し続けます。粘土のように自由に変わり続ける中で、その一部がだんだんとまとまってきて、切り取りやすいかたちが現れてきます。

(2) ブロックのようなEvernote

Evernoteは、ブロックです。

Evernoteは、ノートという情報を格納する単位を持っています。ひとつのノートの中にある情報(テキストとか画像とか)は、そのノートの外には出ていきません。

ひとつのEvernoteアカウントの全体は、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」です。でも、この有機体は、全体として流動的な有機体ではなくて、ノートというブロックの組み合わせで成り立っています。

Evernoteは、ノートの杭を打つからこそ、思考のツールとして現にうまく機能している。

Evernoteの有機体は、ノートというブロックの組み合わせなので、ノート単位での切り取りが簡単です。

4.おわりに

すこし前まで、私の「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」は、Evernoteでした。しかし、今、私は、アウトライナーを自分にとっての「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」として育てることに取り組んでいます。

この試行錯誤の中で、Evernoteとアウトライナーとでは、有機体から切り取るための勘所がかなりちがうという印象を持ちました。そこで、この文章で、ここを検討してみました。

いずれにせよ、個人が「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」を持つことは、個人が知的生産を続けていくための、とてもすばらしい方法ではないかと感じています。Evernoteなのかアウトライナーなのかそれ以外の第三の選択肢なのかは別として、自分にとっての「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」ってなんだろうか、と考えてみることは、たぶん、ムダではありません。

参考

スポンサードリンク

関連記事

no image

「文章群を書き続ける」という積極的な社会参加のあり方

1.積極的な社会参加へのあこがれと、その実現 大学生の頃から、知的生産にあこがれていました。本を読み

記事を読む

no image

煽らず、脅さず、地に足の着いた希望を示し、行動を生み出す本『ゼロから始めるセルパブ戦略』(倉下忠憲)

1.はじめに 読みました。 『ゼロから始めるセルパブ戦略: ニッチ・ロングセール・オルタナティブ (

記事を読む

no image

行動&結果が同じヒーローの価値をどんな基準で、どのように順位付けするか?

1.倉下さんからの追加質問 先日から、R-styleの倉下忠憲さんが発行しているメールマガジンを購

記事を読む

no image

文章を二次元で書くための道具(グループ分け、接続詞、項目名・項目番号)

1.文章を二次元で書くためには、どんな道具があるか (1) 文章を二次元で書く、ということ 文章

記事を読む

no image

「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えたくなった理由

1.「わかりやすい文章を書けるようになりたい」の「なぜ」を考える 「わかりやすい文章を書けるように

記事を読む

no image

『アリスの物語』+監修PDFに、「読み手のためにとびっきり親切になる」ということを学ぶ(超優良文章教材のご紹介)

1.『アリスの物語』と監修PDF 昨日(2014/05/15)、『アリスの物語』を読みました。

記事を読む

no image

本を買って読むことにしている理由と、一回勝負で読んで、どんどん捨てる、という解決法

1.紙の本を整理する仕組みが必要な理由 (1) 本を買って読むことの費用対効果 私は本が好きです

記事を読む

no image

「文章を書き上げる理由」の獲得

1.自分のブログを持つ効用を、自分の価値観や考え方に引きつけて、探しだす こんなエントリを書きまし

記事を読む

no image

Evernote×ブログ記事。すき間時間を活用してブログ記事を栽培する方法

1.「単純作業に心を込めて」の記事は、Evernoteで栽培 私は、この「単純作業に心を込めて」に

記事を読む

no image

「枠の外に混沌さを排出する」という文章の書き方に関連する2つのメタファー

1.「文章群を書き続ける」によって、自然と身についた、文章の書き方 大学生の頃から、「文章を書く」こ

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

  • 2014年12月
    « 11月   1月 »
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑