瞬時レビューと実行中メモで、タスク実行中の感情&脱線を処理する。感情と脱線からも価値を汲み取るタスクマネジメントシステム
目次
1.「タスクの実行」を助けるタスクリストの条件(2)「タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリスト」を掘り下げる
先日、こんな文章を書きました。
概要、
- 『クラウド時代のハイブリッド手帳術』は、「タスクマネジメントシステムの役割は、単にタスクを保管することだけでなく、「タスクの実行」を助けることである」と言う。たしかに、「タスクの実行」は、タスクを保管することに負けないくらい重要である。
- では、どんな条件を満たすタスクリストであれば、「タスクの実行」を助けてくれるのか。
- 次の5つの条件である。
- (1) 今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれるタスクリスト
- (2) タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリスト
- (3) 「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」と確信できるタスクリスト
- (4) 個別具体的なタスクがつながる先を「見える化」してくれるタスクリスト
- (5) やったことを残してくれるタスクリスト
というものです。
このうち、「(2) タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリスト」という条件について、もう少し掘り下げてみます。
(なお、「(5) やったことを残してくれるタスクリスト」が「タスクの実行」を助けてくれるのはなぜかについては、「「やれば残る」から、やる気になる。(ToodledoとEvernoteによる「タスクの実行」のやる気を出すシステム)」で掘り下げてみました。)
2.「タスクの実行」を邪魔する感情と脱線に、どう対処するか
(1) 「タスクの実行」を邪魔する、感情と脱線
よいタスクリストは、よいプログラムに似ています。よいプログラムを用意すれば、コンピュータは粛々と計算を実行し、役割を果たします。同じように、よいタスクリストを用意すれば、人間は粛々と個々のタスクを実行し、物事を前に進めます。
しかし、どんなによいタスクリストを用意しても、タスクリストのとおりに「タスクの実行」が進むとは限りません。人間には、感情と脱線という、「タスクの実行」の難敵がいるからです。
a.感情という難敵
プログラムに従うコンピュータとは異なり、タスクリストを与えられた人間は、「タスクの実行」に取り組んでいるときに、タスクリストに指示されたことそのもの以外のいろんなことを考えます。そして、多くの場合、タスクリストに指示されたことから連想して、いろんな感情を抱きます。
無害な感情や役に立つ感情もあります。でも、「タスクの実行」を邪魔する感情もたくさんあります。たとえば、「面倒だなあ。」とか、「今やらなくてもいいんじゃないか?」とか、「失敗したらどうしよう。。。」とかは、「タスクの実行」を邪魔する感情です。
b.脱線という難敵
プログラムに従うコンピュータは、プログラムが敷いた本線から勝手に外れることはありません。しかし、タスクリストを与えられた人間は、タスクリストが敷いた本線から、自分で脇道に外れます。脱線です。
脱線は、「タスクの実行」を邪魔します。
まず、当然ですが、脱線した途端、「タスクの実行」が止まります。
次に、脱線の時間はあらかじめ決まっていません。下手をすると、やたらと長くなります。
そして、脱線から本線に戻ってきても、本線での「タスクの実行」が脱線前のペースに戻るまでには、通常、一定の時間がかかります。何をしていたのかを思い出し、本線のタスクに取り組む道具を整え、集中を高めるための時間が、それなりに必要です。
(2) 感情と脱線に、どう対処するか(抽象的な方針)
では、「タスクの実行」を邪魔する難敵、感情と脱線に、どのように対処するとよいのでしょうか。
まず、抽象的な方針を考えてみます。
a.感情への対処=感情を受け止める
感情へ対処するには、感情を受け止めるのがよいように思います。
感情を打ち消すことは、なかなか大変です。いったん面倒だと思ってしまったら、いくら鋼の意志力で「面倒ではない。」と言い聞かせても、面倒だという感情は消えません。「大丈夫かなあ。」という不安や「今やる必要があるのか?」という疑念も同じです。
これに対して、打ち消すのではなく、受け止めると、案外、その感情はおとなしくなります。「面倒だ」と思ったら、「そだね、面倒だね。」と受け止める。「大丈夫かなあ」という不安がやってきたら、「不安になってるね。」と受け止める。
感情を否定したり、無視したりするのではなく、感情が湧いてきたことを認めて、受け止める。これが、感情に対処する王道です。(と、子育ての本に書いてありました。)
b.脱線への対処=脱線と本線を自覚して、脱線を予防し、本線復帰までのロスを最小化する
脱線に対処するためにできることは、3つあります。
- まず、脱線を予防すること。
- 次に、脱線したら速やかに本線に復帰すること。
- 最後に、本線に復帰してから本線のタスクにとりかかるまでのロスを減らすこと。
この3つのために大切なのは、次の2つです。
第1に、脱線を自覚すること。これは、脱線の予防と、脱線後速やかな本線への復帰のために、役立ちます。
「脱線を自覚する」とは、「私は今から脱線する」ということを自覚してから脱線し、脱線している間ずっと「私は今脱線している」と自覚し続けることです。
「私は今から脱線する」と自覚してから脱線するようにすれば、その段階で「いや、やっぱり脱線するのはやめよう」と思いとどまることができるかもしれませんので、脱線の予防になります。また、脱線している間ずっと「脱線している」と自覚し続けていれば、「そろそろ本線に戻るか」と思えるタイミングが早くやってくるように思いますので、脱線後速やかな本線復帰に役立ちます。
第2に、本線を明確にすること。これは、3番目の本線復帰後のロスを減らすことに役立ちます。
「本線を明確にする」とは、本来、自分は今、どのタスクに取り組んでいるべきか(=本線はなにか)を明確にすることです。
本線が明確になっていれば、脱線後、本線に復帰したときに、何をするべきかが、明確になります。本線を思い出すための時間のロスも、本線に取り組むための集中力をかき集めるための時間も、減ります。
これらの脱線対策の基本思想は、
- 脱線だってありうるんだから、全面的に脱線を否定しても仕方ない
- でも、無意識にだらだらと脱線するのはやめようね
ということです。
3.瞬時レビューと実行中メモで、感情と脱線に対処する
(1) 瞬時レビューと実行中メモ
感情に対処するには、感情を受け止めることが有効です。脱線に対処するには、脱線と本線を自覚して、脱線を予防し、本線復帰までのロスを最小化することが有効です。
これが、抽象的な方針でした。
では、どんな具体策があるでしょうか。
私が実際にやっていて、かなり有効だと感じているのは、瞬時レビューと実行中メモです。瞬時レビューと実行中メモは、「タスクの実行」を邪魔する感情と脱線に対する、効果的な具体策になります。
a.瞬時レビューとは
瞬時レビューとは、タスク完了直後に、その感想を20字から50字程度で、簡単に記録する、というものです。ライフハック心理学の佐々木正悟さん提唱のアイデアです。
参考
・「レビュー」は聞こえがいいが面倒くさい | ライフハック心理学
・瞬時レビューは生活リズムをつくるのに良い | jMatsuzaki
b.実行中メモとは
実行中メモとは、タスクを実行中に考えたこととか感じたこととかを、適当にメモするものです。瞬時レビューは実行直後に行うのに対して、実行中に行います。
cubeさんがこの記事(task flow – LawDesiGn)で実例を紹介されているものが、近いです。(ただし、私はこんなにもたくさんは書いてません。もっといい加減です。)
(2) 瞬時レビューと実行中メモで、感情と脱線に対処する
さて、順次レビューと実行中メモは、感情と脱線に、どのように対処するのでしょうか。
a.瞬時レビューと実行中メモで、感情を受け止める
(a) 感情に文章という言葉を与える
まず、感情です。抽象的な方針は、「感情を受け止める」なのですが、このためには、どうしたらよいでしょうか。
信頼している人や大切な人に自分の感情を受け止めてもらうことができれば、自分の感情は、しっかりと受け止めてもらえたと満足して、落ち着くかもしれません。でも、自分以外の他者に感情を受け止めてもらうのは、時と場合を選びます。いつでもどこでもできることではありません。自分自身で自分の感情を受け止める具体策が必要です。
感情を言葉で表現することは、自分で自分の感情を受け止めるための、よい具体策です。「●●がうまくいかない気がして、心配だ。」とか、「△△をしても、結局□□になるから、虚しい。」とかいうように、感情を言葉で表現すると、言葉という形を与えられて、感情は、ある程度落ち着きます。
ここで大切なのは、感情に言葉を与えることで、その感情を客観的に眺めることです。ですから、頭のなかで言葉を流すだけでは不十分ですし、口に出すだけでも十分ではありません。やはり、文章を書き、文章という形を感情に与えることが大切です。
このために、瞬時レビューと実行中メモが活躍します。タスクを実行しながら、タスクの実行を邪魔するような感情が湧いてきたら、その感情をメモします。これが、実行中メモです。あるいは、タスクが終わったらすぐに、その環状をどこかに表現します。これが、瞬時レビューです。
(b) タスクリストに文章を書く=瞬時レビュー・実行中メモ
では、瞬時レビューや実行中メモは、どこに書いたらよいでしょうか。紙に書くかデジタルに書くか、という観点もありますが、それよりも大切なのは、タスクリストにそのまま書き込む、ということではないかと思います。
瞬時レビューと実行中メモをするタイミングは、タスク実行の直後かタスクの実行中、つまり、タスク実行に近接したタイミングです。
タスクを実行するときは、タスクリストを手元に置いていますので、瞬時レビューや実行中メモは、そのままそのタスクリストに書き込むのが、いちばん手軽です。
さらに、タスクリストにそのまま書き込めば、個々のタスクと、瞬時レビュー・実行中メモで受け止めた感情との結びつきが、はっきりします。
そこで、タスクリストは、瞬時レビューと実行中メモを、そこに直接書き込めるものがよいと、私は考えています。瞬時レビューと実行中メモを書き込めるタスクリストは、「タスク実行中の感情を処理する」ことによって、「タスクの実行」を助けてくれます。
(c) Toodledoのノート欄からEvernoteのノートへ
私が使っているタスクリストは、具体的には、Toodledoです。
Toodledoには、個々のタスクに、ノート欄が用意されています。このノート欄には、3万2000字のテキストを保存できます。そこで、タスクのノート欄に文章を書くことで、Toodledoに直接、瞬時レビューと実行中メモを書き込むことができます。
Toodledoのタスクのノート欄に瞬時レビューと実行中メモを書き込むことには、もっと別のメリットもあります。
IFTTTを使えば、Toodledoの完了タスク情報をEvernoteに蓄積できます。この仕組によって、Toodledoのノート欄に書き込んだ内容もEvernoteに蓄積されるので、瞬時レビューと実行中メモは、自動的にEvernoteに蓄積されます。
Toodledoに書き込まれた感情は、Evernoteに残るという形でも、受け止められます。これによって、タスク実行中の感情を、よりスムーズに処理できるような気がします。
このように、Toodledoのタスクのノート欄に瞬時レビューと実行中メモを書き込むことは、タスク実行中に湧いてきた感情に対処する、優れた具体策です。
b.瞬時レビューと実行中メモで、脱線と本線を自覚して、脱線を予防し、本線復帰までのロスを最小化する
(a) 瞬時レビューと実行中メモで、脱線を自覚し、本線を明確にする
脱線へ対処する抽象的な方針は、
- 脱線を自覚すること
- 本線を明確にすること
でした。
瞬時レビューと実行中メモは、脱線を自覚し、本線を明確にするのに、とても役立ちます。
瞬時レビューと実行中メモは、タスクの実行直後や実行中に、そのタスクについてのもろもろを文章で書く、という作業です。これをすれば、今、自分が何をしているか、何をしていたかが、よくわかります。
加えて、
- 「何かをするときはタスクリストにその何をタスクとして加え、実行中メモを書きながら」
- 「新しいことを始めるときは、それまでしていたことの瞬時レビューをしてから」
というルールを設定すれば、脱線前に脱線を意識することも、脱線中に脱線を意識し続けることもできます。脱線の予防にも役立ちますし、脱線から速やかに抜け出すことにも役立ちます。
瞬時レビューと実行中メモは、本線を明確にもしてくれます。
本線から脱線するタイミングで瞬時レビューをして、本線が何で、どこからどのように再開するかをメモすれば、本線を見失いません。また、本線にいる間に書いた実行中メモは、脱線から本線に戻った際に、本線のポイントを教えてくれます。
(b) Toodledoで脱線を処理する
Toodledoを使うなら、脱線処理は、こんな感じになります。
まず、本線のタスクは、あらかじめToodledoに登録しておきます。Toodledoに沿ってタスクを処理している限り、脱線することはありません。プログラムに従って粛々と働くコンピュータのようなものです。
でも、人間なので、あらかじめToodledoに登録してあったタスクではないことをしたくなることもあります。脱線です。このときは、自分に、「脱線してもいいけれど、Toodledoにその行動をタスクとして登録してからだよ。」と言います。
こうすれば、半分くらいは、「わざわざToodledoに登録してからするほどのことでもないな。」と、脱線が予防されます。
「Toodledoに登録してから、脱線しよう。」となるのは、残り半分です。この場合、
- Toodledoに脱線先の行動をタスクとして登録する
- 脱線前の本線のタスクのノート欄に、瞬時レビューや実行中メモを書き入れる
ということをしてから、脱線します。
脱線に満足し、本線に戻る気になったら、Toodledoのリストを見て、本線に戻ります。タスクのノート欄を見れば、本線に関する雑多なメモが残っていますので、本線復帰が容易です。
(c) Evernoteに完了タスク情報が蓄積されることとの関係
Toodledoの完了タスク情報は、IFTTT経由でEvernoteに蓄積されます。Evernoteに蓄積される完了タスク情報の価値を高めるためにも、脱線に関するもろもろをToodledoに登録しておくことには、価値があります。
まず、脱線をToodledoに登録すれば、何に脱線したのかが、蓄積されます。(IFTTTのタイムラグがあるので、何をしていたときに脱線したかは、必ずしも明確にはなりません。が、自分が見返せば、それなりにわかるはずです。)
また、本線復帰のために、本線タスクの瞬時レビューや実行中メモを充実させれば、その分、Evernoteに蓄積される完了タスク情報は豊かになります。
私としては、これらがEvernoteに蓄積されることに、けっこう大きな価値を感じます。
参考:「やれば残る」から、やる気になる。(ToodledoとEvernoteによる「タスクの実行」のやる気を出すシステム)
4.感情と脱線が邪魔することを、タスクマネジメントシステムに、組み込んでおく
今回は、「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの5条件のうち、(2)「タスク実行中の感情と脱線を処理できる」を掘り下げてみました。
タスクリストが、タスク実行中の感情と脱線を処理してくれると、私は、「タスクの実行」に集中することができます。タスクリストに感情と脱線を処理してもらうための具体策は、瞬時レビューと実行中メモです。タスクリストに瞬時レビューと実行中メモを直接書き込めば、タスク実行中の感情と脱線を、わりと上手に処理できます。
Toodledoをタスクリストに使っているなら、タスクのノート欄に瞬時レビューと実行中メモを書き込むことができます(Toodledoで瞬時レビュー)。
Toodledoのタスクのノート欄に書き込んだことは、IFTTT経由でEvernoteに蓄積することができるので(【Toodledo×IFTTT×Evernote】電子業務日誌を自動的に作成する)、瞬時レビューと実行中メモでタスク実行中の感情と脱線に対処すれば、Evernoteには、感情や脱線も含んだ、豊かな記録が残ります(「やれば残る」から、やる気になる。(ToodledoとEvernoteによる「タスクの実行」のやる気を出すシステム))
「タスクの実行」は、感情と脱線で邪魔されます。にんげんだもの、仕方ありません。
でも、感情と脱線を処理する仕組みを、タスクマネジメントシステムに組み込んでおけば、結果として、感情と脱線から、それなりの価値を汲み取ることができます。
タスクマネジメントシステムを作るときは、感情と脱線が「タスクの実行」を邪魔することを、所与の事実として、あらかじめ組み込んでおくことをおすすめします。
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