Kindleを使うと、なぜ、読書量が増えるのか?→Kindleが3つのボトルネックを解消するから。
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Kindle
1.Kindleを使うことと、読書量が増えたことの間の、関連性分析
(1) 事実、KindleとKindle Paperwhiteを使ったら、読書量が増えた
昔から、本を読むのが好きでした。
大学生のころは、(北村薫の『空飛ぶ馬』の主人公のように、)1日1冊読むという目標を立てて、毎日せっせとジャンルを問わずに乱読していました。
しかし、1日1冊の目標を達成した大学生3年生をピークに、私の読書量は年々減少しました。2012年には、『図書館戦争』などの軽い小説や育児本をけっこう読んだにもかかわらず、年間50冊に届かないほどに落ち込みました。
Amazon.co.jpが日本向け「Kindleストア」をオープンし、日本でのKindleという電子書籍サービスの本格展開を開始したのは、ちょうどその2012年の、10月25日のころでした。読書からずいぶん離れていた私は、すぐには飛びつかず、2ヶ月ほど経った2012年の年末に、Kindleを使い始めました。
私がKindleという電子書籍サービスの凄さを実感したのは、2013年1月に、Kindleの専用端末であるKindle Paperwhiteを使い始めたときです。それまで、私は、「読書は紙の本じゃなくちゃね」派でした。しかし、Kindle Paperwhiteによる読書は、紙の本の読書にも負けないくらい快適で、それどころか、紙の本の読書にはない革命的な特長を持っていました。
Kindle Paperwhiteによる読書は、あっという間に私の日常の一部となりました。Kindle Paperwhiteを使って、2013年の私は、150冊ほどのKindle本を読みました。また、2014年の1月から6月までに、100冊ほどのKindle本を読みました。
半年100冊なので、1日1冊ペースにはまだ及びません。でも、かなり回復したことだけはまちがいありません。劇的な回復です。
KindleとKindle Paperwhiteを使ったら、私の読書量は、劇的に回復しました。これは、事実です。
Kindle Paperwhite(Wi-Fiのみ・2013)
Kindle Paperwhite 3G(Wi-Fi&3G・2013)
(2) なぜ、Kindleを使ったら、私の読書量が増えたのか?
KindleとKindle Paperwhiteを使ったこと。読書量が劇的に増えたこと。この2つの間には、明確な関連性があります。Kindle Paperwhiteを使ったから、読書量が劇的に増えた、という、原因と結果の関係です。
そこで、この因果関係を分析すると、ここには3つの要因があります。
- Kindle本は保管スペースを気にしなくてよいので、買える本が増えたこと
- Kindle本は片手で読めるため、通勤電車でも読めるので、読書時間が増えたこと
- Kindle本は、同時に膨大な冊数を持ち運べるので、読みたい気持ちに合う本を読めること
a.Kindle本は保管スペースを気にしなくてよいので、買える本が増えたこと
まず、保管スペースです。
2012年の私の読書量が激減した理由のひとつは、物理的に本を保管するスペースがなくなった、ということです。「そんなこと」と思われるかもしれません。でも、これは深刻で大きな理由でした。
大学生の頃から、私は、本は買って読むものだと考えていました。たくさんの本を読むためには、たくさんの本を買う必要がありました。
大学生の私は、ひとり暮らしのワンルームマンションの壁一面に本棚を並べることで、たくさんの本を保管できるスペースを確保していました。そのため、大学生の私は、少なくとも本を保管するスペースの点では、ほとんど限度なく本を買うことができました。
大学生のころの私が、1日1冊のペースで本を読めていたのは、1日1冊に近いペースで本を買えていたからでした。
これに対して、2012年の私は、結婚してひとり暮らしではなくなっていた上に、子どもが生まれたために自分専用の個人スペースが減っていました。かろうじて本棚は残されていましたが、その本棚はすでに持っている本で満たされており、買った本を収納する場所は残されていませんでした。
そのため、2012年の私は、保管スペースの心配をすることなしに本を買うことができませんでした。そして、2012年に私が買った本の冊数は、大きく減りました。
買った本の冊数が減った結果、読んだ本の冊数も減りました。
これに対して、Kindle本は、質量を持たない電子データなので、保管スペースを必要としません。Kindle本なら、保管スペースを気にすることなく、どんどん購入することができます。
そのため、私がKindle本を買うペースは、大学生の頃に近い水準まで回復し、それにともなって、読書量も劇的に回復しました。
b.Kindle本は片手で読めるため、通勤電車でも読めるので、読書時間が増えたこと
次に、読書時間が増えたことです。Kindle Paperwhiteなら、片手で読書ができるので、多くの状況で読書をすることができます。私の場合は、とくに、毎日の通勤電車を読書時間にすることができたのが、大きな変化でした。
電車で読書をする方は、多いと思います。私も、Kindle Paperwhiteを使う前から、しばしば電車で読書をしていました。
しかし、混雑した電車で立っている場合、紙の本を読むには、なかなか困難です。
まず、紙の本を読むには、両手が使えないと不便です。とくにページをめくる動作をするには、片一方の手で本を固定し、もう片方の手でページをめくる、というように、両手を使いたいところです。でも、混雑した電車で立っているとき、本のために両手を使うことはできません。片方の手は通勤カバンを持っていますので。
次に、両手を使って紙の本を読むと、それなりのスペースを必要とします。混雑した電車の中で両手を使って紙の本を読んでいると、ほかの人の迷惑になります。
これに対して、Kindle Paperwhiteなら、片手だけで余裕です。親指以外の4本指で本体を固定し、親指で画面をタップしてページめくりをする、という動作をすれば、右手でも左手でも、大変快適に、ページめくりをすることができます(正確さを気にしなければ、ハイライトだってできます)。
Kindle Paperwhiteなら、混雑した通勤電車の中でも、すこぶる快適に読書をすることができます。Kindle Paperwhiteのおかげで、私の通勤時間は、読書時間になりました。
c.Kindle本は、本棚をまるごと持ち運べるので、そのときに本当に読みたい本を読めること
最後に、Kindleなら、本棚をまるごと持ち歩いているようなものなので、そのときに本当に読みたい本を読むことができます。そのため、読む本に対して、より深くのめり込むことができます。
2012年の私が、読書のために使えそうな時間は、主に、通勤電車、外での仕事の移動時間、外での仕事の待ち時間、昼休み、の4つでした。当時の私は、これらの時間をできる限り読書に活用すべく、毎日、複数冊の紙の本をかばんに入れていました。
複数冊の本をかばんに入れていたのは、そのときどきで、どんな本を読みたいかの気分が変わるためです。ガッツリ長編小説を読みたいときもあれば、IT企業の成長のドキュメンタリーを読みたいときもあります。理屈っぽい学問的な本をかじってみたいときもあれば、手軽で即効性のあるノウハウ本を読みたくなることもあります。
読書に使える時間が目の前に現れたとき、そのときの気分に合った本を読むために、複数冊の本をかばんに入れていました。
でも、紙の本は重さがあります。そのため、かばんに入れられる冊数には、限度があります。また、文庫本や新書なら気楽に持ち歩けますが、ハードカバーや大型本は躊躇します。かばんに入っていたのは、文庫本や新書数冊だけでした。
それゆえ、読書に使える時間が目の前に現れたとき、私の前に開かれている選択肢は、かばんの中の数冊の文庫や新書のどれを読むか、だけでした。ピッタリと合うものが入っていることもありましたが、読みたい本が見つからずに、読書を諦め、TwitterやRSSに流れたこともありました。
これに対して、Kindleなら、数千冊単位で、Kindle本を持ち歩けます。あたかも、自分の本棚をまるごと持ち歩いているようなものです。本棚をまるごと持ち歩けば、本当に読みたい本を選択できる可能性は、かなり高まります。実際、私のKindleにあるのは、数百冊に過ぎませんが、それでも、そのときの気分に合った本が、かなりの確率で見つかります。
目の前に読書に使える時間が現れて、読書したいなという気分になったとき、その気分に本当に合う本を読めることによって、読書が加速します。これも、Kindleによって読書量が増えた理由のひとつです。
2.Kindleは、3つのボトルネックを解消する
(1) ボトルネックという考え方からの一般化
以上が、KindleとKindle Paperwhiteを使うようになったことと、読書量が激増したこととの間の、因果関係の分析です。
これは、私個人の体験を分析したものに過ぎません。でも、この因果の関係は、ある程度一般化できるように思います。なぜなら、この因果の関係の背後に、「Kindleが、読書量を制約していたボトルネックを解消した」という共通要素を見ることができるからです。
ボトルネックは、『ザ・ゴール』が解説する「制約条件の理論」のキー概念です。システム全体の成果物の量(スループット)は、システムの中の制約プロセスによって規定される、というのが、『ザ・ゴール』の「制約条件の理論」ですが、この制約プロセスが、ボトルネックです。
制約条件の理論は、収入の割合がひとつ以上の制約プロセス、すなわちボトルネックにより制限されているという前提を基礎にしている。ボトルネックプロセスにおけるスループット (生産率) の増大によってのみ、全体的なスループットの増大が可能になる。
『ザ・ゴール』では、生産管理の分野でボトルネックを説明していました。このボトルネックの考え方は、(厳密さは欠きますが、)個人の生き方や仕事の進め方にも応用できます。たとえば、次の本は、そのよい例です。
このボトルネックという概念を使うと、私がKindleとKIndle Paperwhiteを使うことで読書量が増えたという因果の関係は、「KindleとKindle Paperwhiteは、私の読書量を制約していたボトルネックを解消した。その結果、私の読書量は増えた。」と説明できます。
そこで、上にあげたの3つの要素について、ボトルネックという概念を使って、一般化できるのか、考察してみます。
(2) Kindleが解消する3つのボトルネック
a.本を保管するための空間というボトルネック
(a) ボトルネックとその解消
紙の本を読むためには、紙の本を手元に置く必要がある。紙の本を手元に置くためには、紙の本を保管する空間を確保する必要がある。
ところが、確保できる紙の本を保管するための空間には、限度がある。
そのため、紙の本を保管するための空間は、読める紙の本の総量を制約する、ボトルネックになる。
Kindle本は、保管するための空間を必要としない。
そのため、Kindle本を読める総量は、空間に制約されない。
空間というボトルネックは、解消される。
(b) 一般化できるか?
本を保管するための空間というボトルネックが解消されるという理屈は、以上のとおりです。私にとっては、この理屈は成り立ちます。この理屈は、どの範囲で一般化できるでしょうか。
突っ込みどころは、「紙の本を手元に置くためには、紙の本を保管する空間を確保する必要がある。」のところです。
「読むときだけ手元におき、読まないときは手放す」という方針なら、この命題は成り立ちません。たとえば、図書館で借りて読む、という読み方や、読み終わった本はブックオフに売り払う、という読み方です。
そこで、このような読み方をする人を除外する必要があります。
つまり、本を保管する空間というボトルネックは、「本を買って読むものだし、買った本は手元に保管しておきたい。」という人にあてはまります。
b.読書時間というボトルネック
(a) ボトルネックとその解消
本を読むためには、本を読む時間が必要である。本を読む時間は、本を読むために必要な動作をするのに支障のない状態でいられる時間である必要がある。紙の本を読む時間は、両手が自由になる時間でなければならない。
混雑した通勤電車では、両手が自由にならない。
そのため、混雑した通勤電車は、読書の時間にはならない。
これに対して、Kindle PaperwhiteでKindle本を読むなら、片手だけで快適な読書をすることができる。
そのため、Kindle Paperwhiteで読書をすれば、混雑した電車に乗っている通勤時間が読書時間になるため、読書時間という制約条件が増える。その結果、読書量が増える。
(b) 一般化できるか?
これが一般化できるかどうかを決めるのは、次の3つです。
まず、電車による通勤であること。たとえば自転車通勤や車通勤の場合、Kindleを使っても、読書時間は増えません。
次に、通勤電車で両手を自由に使うことができないこと。両手を自由に使えるなら、もともと紙の本でも読めますので、Kindleを使っても、読書時間は増えません。
最後に、Kindle Paperwhiteを片手で操作できること。Kindle Paperwhiteを片手で操作することは、私にとっては簡単なことです。でも、私よりも手の小さな方にとっては、ひょっとしたら簡単ではないかもしれません。Kindle Paperwhiteを片手で操作するのが快適じゃないなら、Kindleを使っても、読書時間は増えません。
c.読みたい気持ちと手元に存在する本のミスマッチというボトルネック
(a) ボトルネックとその解消
どんな本を読みたいと感じるかは、そのときどきによって異なる。読みたい気持ちと合わない本を読んでも、読書ははかどらない。
読書に使える時間が目の前に現れたとき、自分がどんな本を読みたいと感じるかは、事前に予測できない。
手元に用意しておける紙の本の冊数は、限られている。
そのため、読書に使える時間が目の前に現れても、たまたまそのときの読みたい気持ちと合致する紙の本を持ち歩いていない限り、読書ははかどらない。
これに対して、Kindle本なら、同時に数百冊の本を持ち歩くことができる。そのため、Kindle本なら、そのときの読みたい気持ちがどんなものでも、その気持と合う本を見つけることができる。
そのため、Kindleを使うと、読書が捗る。
(b) 一般化できるか?
この理屈が一般化できるかについては、以下の3つの突っ込みができそうです。
ひとつめは、その日にどんな本を読みたくなるかは、かなりの程度、事前に予測できる、という突っ込みです。典型的には、読みかけの本です。前日の夜に、おもしろい推理小説を途中まで読んでいたなら、その日のどこかで読書に使える時間が目の前に現れとき、自分が読みたくなるのは、そのおもしろい推理小説です。
ふたつめは、読みたい気持ちと合うか合わないかは、読書のはかどり具合にとって、大した影響を持たない、という突っ込みです。おもしろい本はどんな気持ちのときに読んでものめり込めるし、おもしろくない本はいつ読んでもはかどらない、という意見です。
みっつめは、Kindle本を数百冊揃えても、読みたくなる可能性がある本のすべてをカバーするのはできない、という突っ込みです。Kindle本の品揃えは、紙の本と比べるとまだまだ劣ります。村上春樹は一冊もありません。Kindle本を数百冊持ち歩いても、村上春樹が読みたい気持ちになったら、どうしようもありません。
3つとも妥当な突っ込みです。
でも、気分を変えて別の本を読みたくなるときもあります。やっぱり読みたい本を読みたいです。また、今のKindleストアの品揃えなら、大雑把な傾向としては、幅広い性格の本を揃えることができます。
なので、Kindleなら本当に読みたい本を読めるから、読書が捗る、というのは、ある程度一般化できるのではないかと思います。
3.激減した自分の読書量に、なんとなく寂しさを感じている、かつての読書家へ
私は、KindleとKindle Paperwhiteを使うことで、読書量が劇的に回復しました。Kindleによって読書量が回復したという私のケースは、私の読書量を制約していたボトルネックをKindleが解消してくれたからです。
この記事をお読みの方で、かつてはたくさん本を読んでいたんだけれど、今は読書量が激減してしまい、なんとなく寂しさを感じている、という方がいたら、読書量が減ってしまった原因を考えてみてください。その原因が、本を保管する空間か、読書時間か、読みたい本とのミスマッチにあるのなら、KindleとKindle Paperwhiteは、よい解決策になるかもしれません。
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