「何度も読み返す本たち」の育て方
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目次
1.「何度も読み返す本」は、見つけるものではなくて、育てるもの
少し前に、「何度も読んできた本たち #8Books」というエントリを書きました。
このエントリを書いたのは、倉下忠憲さんによる「R-style » 何度も読んできた本たち #8Books」というエントリを、るうさんによる「るうの何度も読んできた本たち #8Books | るうマニア」で知ったためです。
倉下さんのおっしゃる、「何度も読める本は自分にとって良い本だ」というのは、真理だと思います。
「良い本」の一般的な定義は難しいかもしれませんが、何度も読める本は自分にとって良い本だ、ということは言えそうです。
「何度も読み返す本」が何冊かあると、人生は、豊かになります。「何度も読み返す本たち」の存在は、読書の大きな報酬だと、私は思います。
では、「何度も読み返す本たち」は、どのようにすれば得られるのでしょうか。
私が大切だと思うのは、育てることです。自分にとっての「何度も読み返す本」は、あらかじめ決まっているわけではありません。そのため、どこかに存在する「何度も読み返す本」を探し求めるという姿勢よりも、巡り会ったこの本を「何度も読み返す本」へと育てるという姿勢の方が、「何度も読み返す本」を得られる可能性が高まります。
「何度も読み返す本」は、見つけるものではなくて、育てるものです。
2.「何度も読み返す本」の育て方
「何度も読み返す本」を育てるために、私が意識しているのは、次の3つです。
- 途中でやめることを前提に、たくさんの本を読み始める
- 三色ボールペン方式で、客観と主観の両方を書き込む
- ピンときた本に出会ったら、すぐに動く
(1) 途中でやめることを前提に、たくさんの本を読み始める
「何度も読み返す本」は育てるものだというのが、私の考えです。でも、どんな本でも育てれば「何度も読み返す本」に育つかといえば、そういうわけではありません。育てれば「何度も読み返す本」に育ちうる本と、育てても「何度も読み返す本」には育ちようのない本があります。素材も大切です。
では、育てれば「何度も読み返す本」に育ちうる本を見つけるには、どうすればよいでしょうか。
王道は、たくさんの本を読むことです。たくさんの本を読めば、その分、たくさんの「何度も読み返す本」に育ちうる本と出会えます。
しかし、本を読むには時間がかかりますし、かつ、読書に費やせる時間は有限です。本を読む冊数を増やすといっても、限界があります。
そこで、私は、すべての本を最後まで読もうとしないで、興味を持てなかったら無理して読み続けない、ということを大切にしています。極端な話、途中で読むのをやめるのが原則で、最後まで通読するのはむしろ例外、というくらいに考えています。
途中でやめることを前提にすれば、たくさんの本を読み始めるのは、そんなに大変なことではありません。まずは間口を広げて、「何度も読み返す本」に育ちうる本と出会うチャンスを増やすことを心がけています。
(2) 三色ボールペン方式で、客観と主観の両方を書き込む
読んだ本に線を引いたり書き込みを加えたりすることは、その本を「何度も読み返す本」に育てる上で、とても大切な作業です。少なくとも私の場合、本に線を引いたり書き込んだりしなければ、その本を「何度も読み返す本」に育てることはできません。
では、どのように線を引いたり書き込みをするとよいのでしょうか。私が使っているのは、齋藤孝先生が提唱する三色ボールペン方式です。
三色ボールペン方式とは、赤・青・緑の三色を使って本を読む方法です。それぞれの意味は、
- 赤:客観的にすごく大事
- 青:客観的にまあ大事
- 緑:主観的におもしろい
です。
三色ボールペン方式の肝は、すごく重要・まあ重要という重要度の程度問題の色分け(赤と青)に加えて、主観的におもしろい(緑)という、客観的な重要度とは別の軸の色を設定している点です。
客観と主観の2つの軸を持っていることによって、三色ボールペンで書き込みをすれば、その本の道筋を客観的に把握しながら、同時に、客観的な道筋からは外れているけれど、個人的に興味深い部分をつかまえることができます。また、たくさんの書き込みをした本と出会ったとき、その本が、客観的に重要な部分が多かった本なのか、主観的におもしろかった部分が多かった本なのか、その両方を兼ね備えた本なのかを、おのずと明らかにしてくれます。
また、主観的におもしろい(緑)という軸を持っていることによって、小説を読みながら書き込みをすることへの抵抗も減ります。私は、三色ボールペン方式を使って小説を読むようになってから、おもしろいと思える小説の範囲が、確実に増えました。
「何度も読み返す本」を育てるため、私は、三色ボールペン方式で客観と主観の両方を書き込むことを、心がけています。
(3) ピンときた本に出会ったら、すぐに動く
大切にしていることの3つめは、「ピンときた本に出会ったら、すぐに動く」ということです。どんなにすばらしい本であっても、その本を1回読み終えただけで「何度も読み返す本」になることは、ありえません。すばらしい本に出会ったら、読み終えたそのときに、すぐに動くことが大切です。
具体的な行動として大切なのは、次の3つです。
a.まず、1回目の読み返しをする
ピンときた本は、読み終えたそのときに、間髪入れず、読み返すようにしています。「何度も読み返す本」は何回も読み返しをすることになりますが、とりあえず1回目の読み返しを始めてしまうわけです。
読み終えたばかりなので、本の内容の大部分は覚えています。なので、この読み返しのときに、知的好奇心を刺激されたり、謎解きのわくわく感を感じたり、ということは、あまりありません。
しかし、大部分を覚えている間に読み返すからこそ、本の内容をより深く理解できたり、記憶に定着させることができます。
また、一度だけ通読した本と比べれば、たとえ1回であっても読み返しをした本は、格段に特別な本になります。すばらしい本を読み終えて、「この本を「何度も読み返す本」にしたい」と感じたら、その興奮が冷めないうちに、間髪入れず、1回目の読み返しをするのがよいと思います。
b.簡単なメモをEvernoteに作る
ある本を「何度も読み返す本」に育てるために、その本についての文章をまとめることは、効果があります。たとえば、ブログに書評記事を書いた本は、書いていない本と比べて、自分にとって特別な本になります。
でも、書評記事の文章を完成させるのは、なかなか大変です。読み終えてすぐに書評記事を書ききるのは、あまり現実的ではありません。
そこで、ぐっとハードルを下げ、ピンときた本を読み終えたら、読み終えてすぐに、ごくごく簡単なメモをEvernoteに作る、ということにしています。
具体的には、
- Amazonの該当ページをウェブクリップする
- Kindle本の場合、Kindleの個人ページのハイライト一覧をウェブクリップする
- たくさん線を引いたページを写真に撮る
- 書評記事の目次のようなメモを書く
といったことを心がけています。
これらは全部、書評記事の種になりえるノートたちです。ピンときた本を読んだら、とりあえず、Evernoteの中に、その本に関する種を、たくさんまくことにしています。
c.ささやかなことでもいいから、行動に移す
具体的な行動の3つめは、本から得た何かを、とりあえず行動に移す、ということです。
ピンときた本を読んだということは、それが小説であれ、ビジネス書であれ、ノウハウ本であれ、エッセイ集であれ、私はそこから何らかのものを得ているはずです。その何らかのことは、自分の頭の中に閉じ込めておくよりも、現実世界における自分の行動に移す方が、確実に定着します。
たとえば、村上春樹のインタビュー集を読んで、村上春樹は何度も何度も書き直すことによって読みやすい文章を書いているんだな、ということを得たのなら、次に書くブログ記事を何度か書き直し、少しでも読みやすい文章になるように心がけてみる、などです。
このとき大切なのは、「自分は今、この本から得たこれを試しているんだ」と意識することです。これを意識することによって、その本が、自分にとって、少し特別な存在になります。
3.「何度も読み返す本たち」のリストを育てる
(1) 「何度も読み返す本たち」というリストを作る
「何度も読み返す本」を何冊か育てることができたら、「何度も読み返す本たち」というリストを作るとよいです。私は、(冒頭のブログエントリを書いた機会に、)Evernoteにこのリストを作りました。
自分にとっての「何度も読み返す本たち」のリストは、弱っているときの助けにもなりますし、元気なときにもっと楽しくなるためのヒントも与えてくれます。
また、なによりも、「何度も読み返す本たち」のリストを作って、そのリストを定期的に見返すのは、それ自体が、この上なく楽しいことです。
(2) 「何度も読み返す本たち」リストを育てる
「何度も読み返す本」を育て続けていけば、「何度も読み返す本たち」のリストは、成長します。
単純に考えれば、「何度も読み返す本」が増えるので、リストの冊数が増えます。また、冒頭の倉下さんの記事にならって、リストの冊数をたとえば8冊に限定すれば、そこに入れ替え戦が生じますので、少しずつ面子が変わります。いずれにしても、時間の経過や自分の変化に伴って、「何度も読み返す本たち」のリストは、育ちます。
本を読むことによる自分の成長は、なかなか目に見えません。でも、この「何度も読み返す本たち」リストの成長は、ある程度目で見ることができます。「何度も読み返す本たち」リストは、自分の成長や変化のバロメーターになるような気もします。
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