『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第9回「接続詞をうまく使いましょう」
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書き方・考え方
この文章は、結城浩先生の『文章教室』に取り組んだ記録です。
→文章教室
第1回~第8回の記録は、こちらです。
- 『文章教室』を『数学文章作法 練習問題編』として使う。
- 『文章教室』練習問題実践記録・第2回「適切な単語を選びましょう」
- 『文章教室』練習問題実践記録・第3回「パラレリズムを使いましょう」
- 『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第4回「自然な順序で書きましょう」
- 『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第5回「語順を変えてみましょう」
- 『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録第6回「重要点は2回書きましょう」
- 『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第7回「よい比喩を使いましょう」
- 『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第8回「まずはどんどん書きましょう」
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結城浩先生の『数学文章作法 基礎編』を読んでから、『文章教室』2014期生のクラスメイトができるまで(あるいは、『文章教室』2014期生へのお誘い)
目次
1.第9回「接続詞をうまく使いましょう」
(1) ポイント
『文章教室』の第9回は、「接続詞をうまく使いましょう」がテーマです。
接続詞は、文と文の関係を表す言葉です。 接続詞をうまく使うと、読者に「次に文章はこっちの方向に展開するのだな」というヒントを与えます。 このヒントは、読者がスムーズに文章を読む助けとなります
(文章教室 第9回 問題編より)
接続詞をうまく使うには、読者に、どんなヒントを与えたいかを考えればよいわけです。
これに対して、接続詞のまずい使い方の例は、次の2つです。
a.誤った接続詞
誤った接続詞とは、接続詞が本来意味する繋ぎ方ではない繋ぎ方で接続詞を使うことです。たとえば、例を挙げるわけではないのに「たとえば」を使ったり、理由を記載するわけではないのに「なぜなら」を使うなどが、これにあたります。
誤った接続詞を使うと、読者に誤ったヒントを与えてしまいます。その結果、読者に「石につまずいたような気分」を味わわせてしまいます。
そこで、接続詞は、正しく使う必要があります。
b.多重の逆接
多重の逆接とは、「しかし」「けれども」「だが」などの、逆接の接続詞を重ねて使うことです。多重の逆接をしてしまうと、読者は、文章がどちらの方向に向かっているのか、わからなくなってしまいます。
そこで、多重の逆接は、できる限り避ける必要があります。
(多重の逆接が、どれほどひどい悪文を生み出すかは、今回の練習問題で実感してください。)
(2) 練習問題
さて、練習問題です。
メールを書くのは難しい。 しかし、気心の知れた人に出すメールを書くのは難しくない。 しかし、短すぎるメールは誤解を生むことがある。 しかし、メールを長くすればいいというものではない。 しかし、どちらかと言えば言葉を多めにするのがよい。 しかし、長いメールは最後まで読んでもらえない。 しかし、構成を工夫すれば読んでもらえる。 しかし、結論を最後に持ってくるのはよくない。
(文章教室 第9回 問題編より)
2.私の解答
(1) 解答
——–
メールを書くのは難しい。気心の知れた人に出す場合は難しくないけれど、そうでない場合は難しい。
何が難しいかのか。メールの長さである。短かすぎると誤解を生むが、長すぎると最後まで読んでもらえない。
誤解を生むのはよくないから、どちらかと言えば長い方がましである。しかし、最後まで読んでもらえないのも困る。何とかしなければいけない。
長いメールを最後まで読んでもらうには、構成を工夫するとよい。たとえば、結論は、最後に持ってくるよりも、最初に持ってくる方がよい。
——–
(2) 考えたこと
a.この文章のいいたいことは何?
今回の課題文は、一筋縄ではいかない悪文ですねえ。一読しただけでは、この文章が何を言いたいのか、ぜんぜんわかりませんでした。多重の逆接と誤った接続詞のためではないかと思います。
まず、多重の逆接です。課題文は、8つすべての文章が「しかし」でつながっています。仮に、すべての「しかし」が正しく逆接の意味でつながっているとすれば、1,3,5,7がひとつの方向を向き、2,4,6,8が逆方向に向いています。1文1文向きが真逆になるので、どちらに向かっているのかが謎です。
その上、その「しかし」の中には、逆接ではないつながり方をしている「しかし」がありそうです。たとえば、「構成を工夫すれば読んでもらえる。 しかし、結論を最後に持ってくるのはよくない。」という2つの文は、逆接ではないような気がします。
多重の逆接と誤った接続詞の合わせ技によって、課題文は、何が言いたいのか、さっぱりわかりません。たとえば、
- メールを書くのは難しいのか、難しくないのか
- 短いメールの方がいいのか、長いメールの方がいいのか
- 結論を最後に持ってくるのはよくないというのは、いったい何の話なのか
などの点が、わかりません。
b.分解して、整理する
そこで、分解して、整理します。接続詞がぐだぐだなので、接続詞を外して並べます。
- (1) メールを書くのは難しい
- (2) 気心の知れた人に出すメールを書くのは難しくない
- (3) 短すぎるメールは誤解を生むことがある
- (4) メールを長くすればいいというものではない
- (5) どちらかと言えば言葉を多めにするのがよい
- (6) 長いメールは最後まで読んでもらえない
- (7) 構成を工夫すれば読んでもらえる
- (8) 結論を最後に持ってくるのはよくない
大きく分けると、(1)(2)がメールを書くことの難しさについて、(3)~(6)がメールの長さについて、(7)(8)がメールの構成について、述べています。
(1)と(2)は、逆接の関係です。このうち、文章全体の趣旨からすると、メインは(1)の「メールを書くのは難しい」で、(2)は例外的な限定を述べたものだと思われます。
(3)~(6)は、メールの長さについての悩みが書かれています。とすれば、この文章は、メールを書く難しさとして、メールの長さを想定しているのでしょう。これで、(1)(2)のまとまりと、(3)~(6)のまとまりの関係がわかりました。
(3)~(6)の内部構造は、短いメールと長いメールのデメリットを述べる部分と、どちらかと言えば長い方がよいと述べる部分から成り立っているような気がします。
(7)(8)は、「長いメールは最後まで読んでもらえない」という(6)を受けて、(長いメールでも)構成を工夫すれば読んでもらえる、ということを述べているんだろうと、私は理解しました。さらに、(8)は、構成を工夫する例だと考えました。
以上から、上の解答になりました。
3.解答編を見て
(1) 解答編を見て
さて、解答編を見ます。
結城先生の解答は、(2)の「気心の知れた人に出すメールを書くのは難しくない」を最後に持ってきています。確かに、(2)を外すと、残りの7文は、比較的うまくつながります。なるほど。
nagさんの解答は、「気心の知れた人に出すメール」に対して「ビジネスメール」という概念を導入して、このふたつを対比させています。(2)を全体の中にどう位置づけるかについての、nagさんなりの工夫なのかなと思います。
きはらさんの解答は、見事でした。今回の解答の中で、私はこの解答がいちばん好きです。引用させていただきます。
きはらさんの解答
読みやすいメールを書くことは、そんなに難しいことではありません。 ちょっとした心がけを忘れなければ、たとえ相手が気心の知れない人で あっても、誤解の余地の少ないメールを書くことが出来ます。
どちらかと言えば、文章を短かくして簡潔にまとめようとするよりも、 冗長になることをおそれずに、言葉を多めにする方が良いでしょう。
ただし、あんまり長い文章になってしまって、途中で読み進むのが 苦痛になるようではいけません。 どうしても長い文章になる場合は、構成を工夫して、話の骨格を把握しやすいようにしましょう。 結論や用件などの重要なことを最初に述べてしまうのも効果的な方法です。
(第9回 解答編より)
私は、課題文の言いたいことを「メールを書くのは難しい」と捉えました。これに対して、きはらさんは「読みやすいメールを書くことは、そんなに難しいことではありません。」と捉えています。
確かに、課題文は、読みやすいメールを書くための心得を説く文章です(とも理解できます)。であれば、「読みやすいメールを書くことは、そんなに難しいことではありません。」とする方がよいですね。
(2) 修正
修正してみました。
——–
【読みやすいメールの書き方】
一般に、気心の知れた人ではない人に出すメールを書くのは、難しいと思われています。でも、ちょっとしたことに気をつければ、そんなに難しいことではありません。
まず、短すぎるメールは誤解を生むことがあります。そこで、多少丁寧に言葉を重ねることを意識するとよいでしょう。
他方で、長すぎるメールは最後まで読んでもらえないかもしれません。そこで、メールが長くなるときは、構成を工夫するとよいでしょう。たとえば、結論を最後に持ってくる構成よりも、結論を最初に持ってくる構成の方がよいでしょう。
——–
4.おわりに
文章を書く上で、接続詞はかなり強力なツールです。上手に接続詞を使うには、練習も大切ですが、接続詞の知識も役に立ちます。
接続詞の知識を学ぶには、次の3冊がおすすめです。
『数学文章作法 基礎編』(結城浩・ちくま学芸文庫)
『新版 論理トレーニング』(野矢茂樹・産業図書)
『文章は接続詞で決まる』(石黒圭・光文社新書)
【参考】
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