Gmailの癖を理解して、Gmailの力を引き出す
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目次
1.Gmailを薦めたいけれど、Gmailには癖がある
私はGmailが大好きです。Gmailは、とても便利でパワフルなメールシステムだと思っています。そのため、今も昔も、私は多くの人にGmailをおすすめしてきました。
しかし、Gmailを使い始めた人のうち、一定割合の人は、Gmailを、使いづらく感じるようです。
その理由を聞いてみると、ある人はGmailにフォルダがないことを指摘し、ある人はメールがスレッド形式で表示されることを挙げます。Gmailは、一般的なメールソフトやウェブメールとちょっと違う特徴を持っています。はじめてGmailを使う人にとっては、Gmailのこれらの特徴が癖のように感じられて、使いづらいようです。
ただ、この癖は、Gmailの欠点ではありません。私がGmailをパワフルで便利なメールシステムだと考えている理由は、Gmailが普通のメールソフトや他のウェブメールとはちょっと違う特徴を持っているからです。
Gmailの力を十分に引き出すためには、Gmailの癖を理解することが必要です。そこで、以下、Gmailの癖を理解して、Gmailの力を引き出すための考え方を、私なりに5つ選んで、ご紹介します。
2.Gmailの癖を理解して、Gmailの力を引き出すための、5つの考え方
(1) 削除じゃなくて、アーカイブ
a.無限のような容量が用意されている
Gmailは、Google版ウェブメールです。
Gmailが登場する前、一般的なウェブメールは、ひとりひとりのユーザーが利用可能な保存容量を、あまり大きくしていませんでした。そのため、ウェブメールのユーザーは、いつも容量オーバーを心配して、不要なメールを削除し続けなければいけませんでした。
しかし、Gmailは、たくさんの保存容量を用意しています。現時点では、いちユーザーあたり、15GBです(ただし、Google DriveやGoogle+の写真・動画と共通)。メールはテキスト中心なので、メールだけで15GBを使い切ることは、そうそうできません。そのため、特殊な使い方をしないかぎり、Gmailは、無限の保存容量が用意されている、という感覚で使うことができます。
たくさんの保存容量を持つGmailだからこその荒技は、送受信したメールを削除しない、ということです。無限のような保存容量を持つGmailなら、受信したメールも送信したメールも、すべてを保存しておくことが可能です。
b.削除しないでアーカイブすることで、整理する
とはいえ、すべてのメールを削除しないで残しておくと、整理が大変になりそうです。
これに対するGmailの解法の第1が、アーカイブ、という概念です。
Gmailのアーカイブは、あるメールを、Gmail内に格納しつつ、受信トレイからは見えなくする、ということです。アーカイブされたメールは、受信トレイからは消えてしまいますが、Gmail内には存在しているため、後から探せば出てきます。目の前から消えてすっきりすることと、後々必要になったときに取り出すことができること。この二律背反を満たすのが、Gmailのアーカイブという機能です。
メールは、削除しないでアーカイブする。これが、Gmailを使うための考え方のひとつめです。
(2) フォルダーじゃなくて、ラベル
a.フォルダーがなくて、ラベルがある
Gmailが登場する前、メールを整理するための機能といえば、フォルダーでした。でも、Gmailは、フォルダー機能を持っていません。
Gmailが持っているのは、ラベルという機能です。このラベル機能は、フォルダーと同じように使うこともできますが、しかし、フォルダーとは別物です。
Gmailの力を引き出すためのポイントのひとつは、フォルダーとラベルの思想や機能の違いを理解することです。
b.フォルダーとラベルの大きな違い
イメージとしては、フォルダーとラベルの違いは、物理的なフォルダーとラベルの違いと同じです。
フォルダーは、入れ物です。メールというデータが所属する場所です。あるメールを「A」という名前のフォルダーによって整理することは、そのメールが「A」という名前のフォルダーという場所に所属しているようなものです。
これに対して、ラベルは、目印です。あるメールを「B」という名前のラベルによって整理することは、そのメールに「B」という名前のラベルという目印がつけられたようなものです。
フォルダーは、メールの所属先なので、ひとつのメールの所属先をひとつに決める必要があります。ひとつのメールが同時にふたつ以上のフォルダーに所属することはできません。
これに対して、ラベルは、メールにつけた目印です。メールにつける目印をひとつに限定する必要はありません。ひとつのメールに対して、同時にふたつ以上の目印をつけることが可能です。
ラベルの特徴は、ひとつのメールに対して、同時にふたつ以上のラベルをつけることができる、ということです。これは、フォルダーに比べて格段に優れた特徴なので、Gmailのラベルを使うときは、この特徴を活かす使い方をする方がよいです。
c.ラベルは、体系的じゃなくてもよい
ひとつのメールに対して同時にふたつ以上のラベルをつけることができる、という特徴を活かす道はいろいろあり得ます。
でも、その中でわりと大切だと思うことは、ラベルは、フォルダーと違って、体系的に使う必要がない、ということです。
フォルダーでメールを整理するには、フォルダーの使い方を、ある程度体系的にする必要があります。ひとつのメールはひとつのフォルダーにしか所属できないので、どんな基準でフォルダーを作るかをきちんと体系的に考えて、MECE(漏れなくダブりなく)にする必要があります。そうしないと、あるメールをどのフォルダーに整理したらいいのかが分からなくなってしまうためです。
これに対して、ラベルなら、体系的である必要はありません。漏れがあっても、ダブりがあっても、いっこうにかまいません。いろんな基準でラベルを作っても、全然不都合はありません。
フォルダーじゃなくてラベルが用意されていることと、ラベルはフォルダーよりも豊富な機能を持っていることを理解すること。これが、Gmailの力を引き出すためのポイントのふたつめです。
(3) 整理じゃなくて、検索
Gmailが登場する前、メールは、整理するものでした。でも、Gmailなら、メールの整理は、必要ありません。なぜなら、Gmailなら、整理しなくても、検索すれば、目的のメールを見つけることができるからです。
メールを整理することの価値は、整理することそのものにあるわけではなく、メールを整理しておくことによって、後から必要になったときにそのメールを探せるようにすることにあります。
逆に言えば、整理しなくても確実に探せるなら、最初から整理する必要はありません。
Gmailは、優秀な検索機能を持っています。Gmailの検索機能を使えば、Gmailの中に保存されている膨大な数のメールの中から、自分が求めるメールを、それほど苦労することなく、発見することができます。
そのため、Gmailなら、メールを整理する必要はありません。メールを整理することよりも、メールを検索することの方が大切です。
メールは、整理しないで、検索する。これが、Gmailの力を引き出すためのポイントの3つめです。
(4) メール振り分け機能じゃなくて、フィルタ
メールは電子データなので、メールを受信したときに、そのメールの条件に応じて、プログラムによって自動的にメールをフォルダーに振り分ける、ということが可能です。
Becky!やOutlookにも、メール振り分け機能があります。このメール振り分け機能を使うことで、あらかじめいくつかのフォルダーに振り分けた状態でメールを受信することができます。
Gmailにも、メール振り分け機能に相当する機能が用意されています。フィルタです。
でも、Gmailののフィルタは、メール振り分け機能よりも相当高度なことを実現することができます。
ひとつの典型例が、メールの転送です。Gmailのフィルタを使えば、ある条件に該当したメールを受信したときに、そのメールを指定するメールアドレス宛に転送することが可能です。
これと、EvernoteやToodledoのメール投稿用のメールアドレスを組み合わせれば、特定の条件に合致するメールを受信したときに、自動的に、そのメールをEvernoteに蓄積したり、Toodledoの新規タスクにする、ということが可能になります。
フィルタを単なるメール振り分け機能と捉えるのではなく、フィルタによってメールの仕組みを整える、という意識でフィルタを使うことによって、Gmailの力をさらに引き出すことができます。これが、私が考える4つめのポイントです。
(5) 「@gmail.com」を利用するためのサービスじゃなくて、クラウド上のメーラー
Gmailは、Googleが提供するウェブメールです。Gmailを利用しはじめると、「@gmail.com」というかたちのメールアドレスがもらえます。
でも、Gmailは、単に、この「@gmail.com」というかたちのメールアドレスのメールを利用するためだけのサービスではありません。
Gmailは、一般的なメール送受信の方式に対応しています。そのため、Gmailを使えば、Gmailの上から、Gmail以外のメールアドレスのメールを送受信することができます。
プロバイダからもらったメールアドレスも、レンタルサーバーのメールアドレスも、他のフリーのメールアドレスも、そのメールアドレスがPOP/SMTPやIMAPというメール送受信の方式に対応しているのであれば、Gmailからそのメールアドレスのメールを送受信できます。
Gmailから送受信すれば、Gmail以外の他のメールアドレスであっても、Gmail内にそのメールアドレスの送受信メールが蓄積されます。また、Gmailから送受信するようにすれば、どのコンピュータ(パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット)からメールを送っても、Gmailを介して、すべての環境が統一されます。
Gmailを、「@gmail.com」のメールアドレスを利用できるウェブメールとして使うのは、もったいないです。そうではなくて、Gmailは、クラウド上のメーラーです。Gmailに、自分が使っているメールアドレスを全部登録し、Gmailをクラウド上のメーラーとして利用することによって、Gmailの力を存分に発揮させることができます。
3.癖の背後にあるGmailの思想
Gmailには、癖があります。でも、Gmailの思想を理解すれば、Gmailの癖を理解することができます。
Gmailは、検索エンジンの会社であるGoogleが提供するウェブメールです。Gmailの思想も、Googleと同じく、検索です。
Gmailは、メールの管理を、整理ではなく検索によって成し遂げようとしています。
Gmailの思想はシンプルです。「すべてのメールをひとつの場所に放り込んでおいて、必要になったら検索して探す。それがいちばん効率的。」
この思想を理解すれば、Gmailの癖は、Gmailの使いづらさではなくなるのではないかと思います。
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