*

行動&結果が同じヒーローの価値をどんな基準で、どのように順位付けするか?

公開日: : ブログ, 書き方・考え方

1.倉下さんからの追加質問

先日から、R-styleの倉下忠憲さんが発行しているメールマガジンを購読しています。有料メルマガを購読するのははじめてなのですが、これは、毎号充実した内容の、非常におもしろいメルマガです。これで月額330円なら、安いです。Kindle本1冊分くらいですもんね。

さて、先日、このメルマガで、たいへんうれしいことに、このブログの記事を取り上げていただきました。(この関係で、倉下さんに、献本ならぬ献配信もしていただきました。ありがとうございます。)

以下、関連部分を引用させていただきます。

私が運営しているブログ「R-style」では、ときどき突飛な記事を書きます。

「ヒーローの動機付け」 
http://rashita.net/blog/?p=12597

<中略>

さて、上の記事ですが、普段はこうしたテーマは問題提起風の文章や物語で記事にするのですが、今回は直接”問題”にしてみました。

<中略>

とりあえず書いたものの、これもはてブ0、ツイート数5ぐらいで終わるかな、と思っていました。R-styleへの反応って、だいたいそんな感じです。

が、以下のような「反応」を頂いて、大変驚きました。

『「ヒーローの動機付け」に対するレポート(問いの設定の一例) 』(単純作業に心を込めて) 
http://www.tjsg-kokoro.com/2014/02/04/toi-hero/

<中略>

ちなみに、上の「解答」では、 
<< 
いずれのヒーローも、「ヒーローの価値」は異ならない。同一である。 
>>

となっています。行為&結果が一緒なので、価値も一緒、ということですね。

その答えを受け入れた上で、ひねくれ者の私は、さらなる追加質問を加えてみたくなります。

「もし、あなたがヒーローを管轄する行政省庁の長で、それぞれのヒーローを<査定>するために順位を付けなければならないとする。どのような査定基準を用いて、どのように順位付けするか答えよ」

ヒーローの価値は同一でありながらも、そこに順位付けを発生させなければならないとしたら__現実世界にもありそうな話です__、どのような手段を用いるのがよいか。これも、面白そうな課題です。

調子に乗りやすい私は、さらなる追加質問に対して、もう少し考えてみました。うーむ、これもおもしろい。

ただ、今回は、レポートというかたちにするまでの考えは、今のところ、まとまっていません。そこで、考えてみたい方向を2つ提示する、ということをしたいと思います。

  • 「行動&結果は完全に同一」だけれど、「動機付けが異なる」というのは、何を意味するんだろうか
  • 「行動&結果が同一」を、「ヒーローに変身した後の行動&結果が同一」という意味だとした場合に、ヒーローに変身する前の動機の違いを理由に、順位付けすることは妥当なのか

以下、ひとつずつ、つれづれと書いてみます。

2.「行動&結果が同一」だけれど、「動機付けが異なる」というのは、何を意味するのか?

ヒーローを順位付けするには、それぞれのヒーローにどんな違いがあるのかを、きちんと考える必要があります。

このことに関連して、前回のレポートで、私が立てた前提は、「行為&結果は同一」です。倉下さんの問いは、動機付けが異なるヒーローたちが設定されているのですが、これに対して、私は、動機付けは異なっても、「行為&結果は同一」という前提を置きました。

ですが、ここで疑問が出てきました。「行為&結果が同一」というのが、「行為&結果が完全に同一」だとすると、「行為&結果が完全に同一」だけれど「動機付けは異なる」ということが、何を意味するのだろうか、ということです。

ちょっとわかりにくいので、順番に考えていきます。

まず、それぞれのヒーローは、動機付けが異なります。そして、動機付けの違いによってヒーローの価値が異なるのか、というのが、前回の問いで検討した内容でした。これに対して、行為&結果が同一で、動機付けだけが異なる、ということを前提として、それぞれのヒーローに順位付けをせよ、というのが、今回の課題です。

そして、ここでいう「行為&結果が同一」を、文字通り、「行為&結果が完全に同一」だと理解すると、この問いは、「行為&結果が完全に同一」でありながら、「動機付けが異なる」ヒーローについて、ヒーローの順位付けをせよ、ということを求める問いです。

問題はここです。「行為&結果が完全に同一」でありながら、「動機付けが異なる」ということは、いったい何を意味するのでしょうか。

倉下さんの問いには、いろんな動機付けのヒーローが出てきます。怪獣を倒すのが好きだから、お給料をもらうため、たまたま倒しちゃったなどなど、動機付けは様々です。様々だとされているのですが、でも、仮に、これらのヒーローが、完全に同じ行為をして、完全に同じ結果をもたらしていたのなら、そうでありながら、「動機が異なる」というのは、何らかの意味あることを言っているのでしょうか。

動機は、目に見えません。動機は、たぶん、実体ではありません。特に、自分以外の存在の動機は、直接目で見ることはできません。

となると、動機というのは、その人の行為や結果を解釈することで理解されるものなのではないか、ということになります。だとすれば、行為&結果が完全に同一のヒーローが何人かいたら、それらのヒーローは、動機付けの点でも完全に同じ、ということなんじゃないだろうか、ということになりそうです。

そうなると、「行為&結果が完全に同一」でありながら「動機付けが異なる」ということは、言葉の意味としてあり得ない、ということになります。「行為&結果が完全に同一」でありながら「動機付けが異なる」ということが、どういうことを意味しているのかは、理解不能なんだ、ということになります。

(なお、ここで書いた考え方は、『翔太と猫のインサイトの夏休み』を真似したつもりです。むずかしい本なので、完全に誤解している可能性もありますが……。『翔太と猫のインサイトの夏休み』は、すごくおもしろい本です。実益のない思考が好きな方は、よろしければ、ご一読を。)

3.ヒーローに変身した後の行動&結果が完全に同一なのに、ヒーローに変身する前の動機の違いを理由に、順位付けすることを、どう考えるか

(1) 「行為&結果が同一」の意味を、少し限定してみる

次に、「行為&結果が同一」という前提の意味を、少し限定してみます。完全にすべての行為&結果が同一というのは、パラレルワールドでもない限りあり得ないので、もう少し現実的な前提にしてみる、ということです。

私が考えた限定は、「ヒーローに変身した後の行為&結果が完全に同一」というものです。

ヒーローなので、変身します。変身してから、怪獣を倒して、地球を守ります。でも、ヒーローというのは、普段はそこら辺にいるお兄ちゃん、お姉ちゃん、おじちゃん、おばちゃんなので、変身する前の日常生活もあるわけです。ということで、ヒーローにとっての「行為&結果が同一」を、「ヒーローに変身した後の行為&結果が(完全に)同一」という意味に、限定して考えます。

すると、倉下さんの追加質問が提起する問題は、こういうことになります。

「ヒーローに変身した後の行為&結果が完全に同一なのに、ヒーローに変身する前の動機付けの違いを理由に、ヒーローを順位付けすることはできるのか。そんなことをしてもいいのか。」

この問いに対する考え方は、分かれそうな気がします。

ひとつは、ヒーローたるもの、全人格的な存在なんだから、ヒーローに変身する前の一般人でいるときから、ヒーローにふさわしい立ち振る舞いをしているべきである、したがって、ヒーローに変身する前の一般人でいるときの行為は、当然、ヒーローの順位付けを決めるための基礎資料になる、というものです。

もうひとつは、ヒーローの価値は、ヒーローに変身した後の行為&結果によって測られるべきなので、順位付けや査定も、ヒーローに変身した後の行為&結果でやるべき、ヒーローに変身する前にどんな行為をしていようが、それは不問、というものです。

私は、後者の方、ヒーローの価値は、ヒーローに変身した後の行為&結果のみで評価されるべきであって、ヒーローに変身する前の行為&結果を持ってくるべきではない、と考えています。ヒーローがヒーローなのは、変身して、怪獣を倒して地球を守ったからなので、ヒーローに変身する前がどんなにだめだめでも、逆にめちゃくちゃいい人でも、それを評価に入れるのは、ヒーローの本質から外れているのではないか、という気がするからです。

でも、どうしても査定しなければいけない行政省庁の担当になったとして、ヒーローに変身した後の行為&結果が同一のヒーローが何人もいたら、ヒーローがヒーローに変身する前の行いをほじくり返して、そこを理由に査定したくなりそうです。

ヒーローに変身する前の行為を理由に、ヒーローとしての価値を順位付けすることについてどう考えるのか、というのは、おもしろいテーマではないかという気がします。

(2) オリンピックのメダリストや世紀の大発見をした若手研究者のニュースを見ていて……

余談ですが、こんなことを思ったのは、現実世界のヒーローに対しても、「ヒーローに変身する前」の行為などを理由に、査定をするようなことが起きているんじゃないかなあ、と感じるからです。

オリンピックでメダルを取ったり、世紀の大発見をしたりすると、その人は、ヒーローになります。ヒーローになったのは、メダルを取ったり、大発見をしたからなのだから、ヒーローを査定するなら、ヒーローに変身した後の、その競技どうこうだとか、発見どうこうですればいいんじゃないかなと、私は思います。でも、ニュースなんかを見ていると、ヒーローに変身する前のいろんなことを捉えて、そのヒーローのよしあしを査定しているような気がしてなりません。

ヒーローに、ヒーローとしての活躍を存分にしてもらうためには、ヒーローに変身する前のどうこうをほじくり返すことは、しない方がいいんじゃないかなあ、という気がします。そうじゃないと、ばかばかしくて、だれもヒーローになりたがらなくなるのではないか、と。

4.おわりに~ブログで考え合うこと~

冒頭に引用したメルマガで、倉下さんは、こんなこともおっしゃっています。

自分のアウトプットが、誰かのアウトプットのトリガーを引くというのは心地よいものです。ブログの面白さは、こういうところにもありますね。 

思わず膝を打ちました。まったく同感です。自分のアウトプットが、誰かのアウトプットのトリガーを引くこと。誰かのアウトプットによって、自分のアウトプットのトリガーが引かれること。ブログをしていると、こういうことが、日常的に発生します。

ブログのおもしろさと可能性は、こういうところにもあるんじゃないかなあと、強く思います。きっと、これも、ブログで考え合うことのひとつのかたちです。

スポンサードリンク

関連記事

no image

EvernoteからWindows Live Writerへ画像入りデータを貼り付けるなら、Evernoteでいったん別のノートに切り替える

1.Evernote→Windows Live Writerでブログ記事作成 私は、Evernote

記事を読む

no image

「着想」→「連想」→「整想」という発想の3プロセスと、「いきなり「整想」発想法」

1.『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』の肝は、「整想」をカバーしていること

記事を読む

no image

「文章群を書き続ける」というあり方が、「考える」を促す

1.「考えたい。でも、そのために何をしていいか、わからない。」 『知的生産の技術』や『思考の整理学』

記事を読む

no image

ブログのGoogle+ページを作り、ブログ投稿をGoogle+に流し、ブログにGoogle+バッジを設置する

1.Google+ページを作って、やったこと 先日、「単純作業に心を込めて」のGoogle+ページ

記事を読む

no image

仮説としての「問い・答え・理由」によって、思考の範囲を区切る(私のトップダウン型思考)

1.はじめに (1) 私のトップダウン思考と、Tak.さんのボトムアップ思考 杭を打てば垣根がで

記事を読む

no image

Androidをどう使うかの転換~情報を消費するツールから思考と生産を補助するツールへ~

1.いちばん身近にある道具の使い方 先日ふと気づいたのですが、私にとって、いちばん身近にある道具は

記事を読む

no image

「文章を書くツール」の変遷

1.はじめに 私にとって、「文章を書く」ことは、特別で大切な行動です。 仕事の上でも、「文章を書

記事を読む

no image

『アリスの物語』+監修PDFに、「読み手のためにとびっきり親切になる」ということを学ぶ(超優良文章教材のご紹介)

1.『アリスの物語』と監修PDF 昨日(2014/05/15)、『アリスの物語』を読みました。

記事を読む

no image

うまくいったときは、おかげさま。失敗したときは、自分が責任者。

1.自分の人生を納得して生きるための人生観 (1) 自分の人生を納得して生きるためには、人生観が大

記事を読む

no image

さくらのレンタルサーバでは、ライトプランからスタンダードプランへのプラン変更ができないそうです。

1.はじめに さくらのレンタルサーバスタンダードプランを利用して、Wordpressを使ってみたい

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

PAGE TOP ↑