"その瞬間"が有るか、無いか(ハイキュー!第89話「理由」のネタバレあり)
目次
1.ハイキュー!第89話「理由」にゾクッとした
(1) ハイキュー!
週刊少年ジャンプで連載中の「ハイキュー!」は、私の一押しマンガです。
烏野高校バレー部を舞台にして、チビで下手だけど、運動能力は高く反射神経抜群で身体センスもあって勝利への執着も持っているという日向翔陽と、天賦の才を持つセッターだけれど、独裁的な考え方ゆえに中学時代はチームメイトと上手くいかなかった影山飛雄の2人を軸に、高校生がバレーで青春するマンガです。
「ハイキュー!」は、特に序盤、単行本でいうと1、2巻が、圧倒的におもしろいです。影山のトスと日向のジャンプがはじめてかみ合った瞬間など、何回読んでもゾクッとします。
そんな圧倒的な1,2巻と比較すると、その後は、若干落ち着いているなと、私は感じていました。普通におもしろいのだけれど、何というか、ゾクッとくるものはあんまりないな、と。
が、しかし、今週の第89話「理由」は、久々に、ゾクッとしました。おもしろかったし、自分の中の何かに響きました。何がどんな風に響いたのか、そして、この響いたものを今後自分の中でどう活かしていきたいか、文章としてまとめてみます。
なお、ネタバレ含みます。かなり含みます。ご容赦ください。
(2) 第89話ハイライトに至るまでのあらすじ
第89話のハイライトは、主人公のチームメイトである月島くん(高校1年生)と、烏野高校と現在いっしょに合宿している強豪校の主将木兎くん(高校3年生)との会話です。この会話の中で、木兎くんが月島くんに話したことに、私はすごく納得し、共感しました。また、マンガとしての見せ方が上手いためか、2回、ゾクッとしました。
このハイライトに至るまでのあらすじは、こんな感じです。
月島くんは、主人公のチームメイトで同級生です。身長も高いし運動神経もいいしクレバーだし、バレーをする条件に恵まれているのですが、部活に対して必死で頑張ることに対して及び腰です。
この理由は、兄のトラウマで、月島くんは、高校のバレー部で必死に頑張る兄にあこがれていて、兄のことを高校のバレー部でエースのように活躍していると信じていたのですが、実は、兄は必死にやってもベンチ入りすらできませんでした。そのことを知った月島くんは、部活に対して必死になることを避けるようになります。
月島くんの幼なじみの山口くんは、月島くんにあこがれているのですが、部活に対して必死になることに自分で線を引いている月島くんに、もやもやした気持ちを持っています。山口くんが、勇気を出して、月島くんに「最近のツッキー(月島くんのこと)はかっこわるいよ」とぶつけると、月島くんは、なんでそんなに部活に必死になるのか、その理由は何なのかと山口くんに返します。そこで山口くんが「そんなモン、プライド以外に何が要るんだ!!」と叫ぶところまでが先週の第88話でした。
今週の第89話は、月島くんが、山口くんに対して、「お前カッコいいよ。でも納得はできない。」と返し、「ちょっと聞いてくる」と、強豪校の主将である木兎くんのところに行くところからスタートです。
(3) 第89話「理由」のハイライト
第89話「理由」のハイライトは、要約しないで、セリフを引用します(改行いじって、句読点補ってます)。月島くんと木兎くんの会話です。
月島「僕は純粋に疑問なんですが、どうしてそんなに必死にやるんですか? バレーはたかが部活で将来履歴書に「学生時代部活を頑張りました」って書けるくらいの価値しかないんじゃないですか?」
(略)
木兎「月島君さ!バレーボール楽しい?」
月島「いや、特には……」
木兎「それはさ へたくそだからじゃない?」
月島「……」
木兎「俺は3年で全国にも行ってるしお前よりも上手い。断然上手い。」
月島「言われなくてもわかってます。」
木兎「でもバレーが”楽しい”と思う様になったのは最近だ」
月島「?」
木兎「”ストレート”打ちが試合で使い物になる様になってから。元々得意だったクロス打ちをブロックにガンガン止められて、クソ悔しくてストレート練習しまくった。んで、次の大会で同じブロック相手に全く触らせずストレート打ち抜いたった。」
木兎「その一本で「俺の時代キタ!」くらいの気分だったね!」
(木兎、無言で月島の方を見る。月島、ちょっとたじろぐ。)
木兎「-”その瞬間”が有るか、無いかだ。」
木兎「将来がどうだとか、次の試合で勝てるかどうかとか、一先ずどうでもいい。目の前の敵ブッ潰すことと、自分の力が120%発揮された時の快感が全て。」
月島「……」
木兎「……まぁそれはあくまで俺の話だし、誰にだってそれが当て嵌まるワケじゃねぇだろうよ。お前の言う「たかが部活」ってのも、俺はわかんねえけど、間違ってはないと思う。」
木兎「-ただ、もしも、その瞬間が来たら、」
(間)
木兎「それが、お前がバレーにハマる瞬間だ。」
文字にすると、こんな感じのやりとりです。
ここに、月島の表情や木兎にとっての”その瞬間”の描写が入ってきます。さらに、ページごとのコマ割りがかっこよくて、ページをめくった瞬間にグワっと迫ってくる感じがあります。ぜひぜひ、そのものをご覧ください。
私がゾクッとしたのは、2回です。ひとつは、
(木兎、無言で月島の方を見る。月島、ちょっとたじろぐ。)
木兎「-”その瞬間”が有るか、無いかだ。」
のところ。
もうひとつは、
木兎「-ただ、もしも、その瞬間が来たら、」
(間)
木兎「それが、お前がバレーにハマる瞬間だ。」
のところ。
2回とも、ページをめくった瞬間にこのやりとりが迫ってきて、圧倒されました。(「ハイキュー!」は、ホントに、ページをまたいだコマ割りが上手いと感じます。)
2.”その瞬間”を生み出す
(1) 理由=”その瞬間”に、私は納得&共感
月島くんの問いは、「たかが部活に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」です。
これに対して、先週の第88話における山口くんの答えは、「プライド」です。でも、正直、この山口の答えに、私は、全然ぴんときませんでした。描写はかっこよかったし、山口くんも成長したなあ、というおもしろさはあったけれど、それだけ。そして、これが答えなのかなあと思って、
「ハイキュー!」というマンガそのものに対して、少しがっかりしていました。
でも、今週の第89話は、月島くんの「でも納得はできない。」、そして、「ちょっと聞いてくる。」から始まりました。「おお、これは期待を上回る展開だ」と思ってワクワクして読み進めると、そこに繰り広げられたのが、先ほど引用した月島くんと木兎くんとの会話です。
私としては、この会話、内容にすごく納得できたし、共感しました。
自分の力が120%発揮されて、俺の時代キタ!という高揚感を、腹の底から感じられる瞬間。部活に打ち込んでいると、そんな瞬間がやってくることがたまにあって、その瞬間のために必死になれる、というのは、自分の経験をふり返っても、ほんとそうだよなと思います。
(ただし、「目の前の敵ブッ潰すこと」というのは、あんまりぴんときません。私自身が、目の前の敵を気持ちよくブッ潰せた経験があんまりないからかもしれません。。。)
「ハイキュー!」、やっぱりすごいマンガだ、と思いました。
(2) 他のいろんなことにあてはまる
月島くんの問いは、「たかが部活に対して」ですが、この「部活」に、他のいろんなことをはめ込むことができます。
たとえば、「たかが仕事に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」とか、「たかが試験に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」とか。
あるいは、「たかがブログに対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」とか、「たかが友だちとの旅行に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」とか。
それから、「たかが家族に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」、果ては、「たかが人生に対して、どうしてそんなに必死になるのか?なれるのか?」とか。
全部一見もっともらしい質問ですし、正面から聞かれるとなんて答えたらいいか難しい質問です。
でも、これらの問い全部に対して、”その瞬間”は、理由になります。私にとっては、”この瞬間”は、これ以上ない理由です。
たとえば、仕事で自分が仕掛けたことが上手く働いて、自分の望みが全て叶ったお客さんからはすごく感謝されて、悪くない売り上げを得た会社の上司からは十分評価されて、自分自身もいい経験をして成長できたとします。こんなとき、私は、自分の力を発揮できたことや、自分が価値を作り出せたことを思って、と思って、達成感や納得感や満足感を、腹の底から感じて、高揚します。まさに「俺の時代キタ!」的な感じです。
これが、私にとっての仕事に関する”その瞬間”です。大小含めれば、こんな”その瞬間”が、毎日ではないにせよ、月に1,2回はあるように思います。そして、こんな”その瞬間”が有るからこそ、私は仕事に対して、前向きに一生懸命になれているんだろうなと思います。
仕事以外も同じです。子育てにしても、ブログにしても、読書にしても、ひいては人生全体についても、たまに、自分の持ち味を十分に発揮できた、と感じられる”その瞬間”が有ります。この”その瞬間”が有るからこそ、私は、これらのことに没頭できているのではないかと思います。
(3) ”その瞬間”を、自分で生み出す
“その瞬間”が有るか、無いか。何かに没頭できるか否かは、これに、大きく依存します。
こんな大事な”その瞬間”が、自分以外の何かによって、たまたま与えられることもあります。誰かに助けてもらったり、ビギナーズラックに恵まれたりして、自分はたいしてがんばってもいないのに、ポンと”その瞬間”がやってくることもあります。
それはそれで運がいいことなのですが、こんな幸運が誰にでも起きるわけでもありません。そこで、漫然と”その瞬間”を待つのではなく、自分で”その瞬間”を生み出すことが大切ではないかと思います。
このために、自分にできることは、どんなことなんだろう、と考えてみました。
a.自分にとっての”その瞬間”を具体的にイメージする
まず大切なのは、自分にとっての”その瞬間”がどんな瞬間なのかを、具体的にイメージすることです。
“その瞬間”がどんな瞬間なのかは、人によって違います。ある人にとっては”その瞬間”になることが、別の人にとっては全然”その瞬間”になりません。そのため、自分にとっての”その瞬間”を具体的にイメージできないと、自分で”その瞬間”を生み出すことは難しいのではないかと思います。
b.いろんな場面で”その瞬間”を生み出そうとする
次に、”その瞬間”をいろんな場面で生み出そうとすることです。
退屈な会議に望むときも、試験勉強をするときも、大変な資料を分析するときも、いつも、ここから”その瞬間”を生み出すことはできるだろうか、と意識することは可能です。
“この瞬間”を生み出すことができないかと意識して何かに望めば、”その瞬間”を生み出せる可能性が上がるのではないかと思います。
c.小さな”その瞬間”を見逃さない
最後に、小さな”その瞬間”を見逃さないことです。
“その瞬間”の中には、小さな”その瞬間”もあります。小さな”その瞬間”は、小さい分、頻繁に存在しますが、小さい分、見逃しやすいです。
小さな”その瞬間”の全部を見逃さず、それぞれの小さい”その瞬間”を大切にすれば、大切にした”その瞬間”の分だけ没頭できて、その分、より大きな”その瞬間”を生み出せるようになるのではないかと思います。
この好循環を回すためにも、最初の方は、小さな”その瞬間”を見逃さずに、意図的に、小さな”その瞬間”を大切にするのが代と思います。
3.おわりに
今週の「ハイキュー!」第89話を読んで、こんなふうに、何かに没頭することと”その瞬間”との関係をいろいろ考えさせられました。ただ、こんな風に私が書いた文章を読むよりも、マンガそのものを読むほうが、私が言わんとしていることが、よく伝わると思います。
まだ「ハイキュー!」を読んだことがない方は、とりあえず1巻と2巻を読んでみてください。そして、そこでゾクッときたら、しばらくは多少落ち着いたおもしろさではありますが、気長に読み続けてみてください。第89話までたどり着けば、きっとまたゾクッとできます。
「ハイキュー!」は、ほんとうに一押しマンガです。
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