『「Chikirinの日記」の育て方』を読んで、「単純作業に心を込めて」というブログをどんな場所に育てたいのか、考え始めた。
公開日:
:
ブログ, 本 『「Chikirinの日記」の育て方』
目次
1.本の概要
『「Chikirinの日記」の育て方』は、ブログ「Chikirinの日記」の舞台裏を、ちきりん氏が自ら綴った電子書籍です(キンドル・ダイレクト出版)。
皆様にご愛読いただいている当ブログも、2005年3月にスタートしてから早 9年。その間、“ちきりん”はどんな方針をもって、何を考えながらブログを運営してきたのか。
炎上したり罵倒されたりしながらも、個人ブログとしては破格の月間 200万PVを達成するまでに至った苦難の(?)道のりを、ゆるく赤裸々に綴ったノンフィクション。
日記を書き始めたきっかけや“ちきりん”の名前の由来など、ファンの方にとっては常識(?)のイントロ部分から、これまで、ほとんど開示してこなかった様々なブログ運営の方針に、気になる広告収入額まで。
最後には、自身が考える“ちきりんブログ成功の要因分析”など、その舞台裏の詳細を初めて公開しています。
「Chikirinの日記」愛読者の方はもちろん、自分もブログを書いている、という方にもお楽しみいただけるでしょう。
とのことです。
タイトルの通り、ちきりん氏が「Chikirinの日記」をどのように育ててきたか、が、いろんな角度から書かれています。
2.ブログに対する考え方の幅を広げられる本
(1) ちきりん氏がブログについて考えた軌跡をたどれる本
『「Chikirinの日記」の育て方』は、上に引用したちきりん氏自身の紹介文にも書かれているように、ちきりん氏が、「どんな方針をもって、何を考えながらブログを運営してきたか」が書かれている本です。
ちきりん氏は、『自分のアタマで考えよう』という本を出している方です。この本は、いろんな例を挙げて考え方を具体的に説明している好著なのですが、『「Chikirinの日記」の育て方』は、ちきりん氏にとっておそらくとても重要で愛着のある、「Chikirinの日記」という対象に対して、ちきりん氏が考えた軌跡をたどることができます。大切で、愛着ある対象だからこそ、ここで現れた思考は、とても参考になりますし、なにより、おもしろいです。
とりわけ、自分でブログを運営している方であれば、いろいろとぴんとくるポイントがあります。この本は、ブログ運営にも、まちがいなく、役立ちます。
この本を読んで、私が得た大きな収穫は、次の2点です。
(2) ブログを、なにかおもしろいことができる場所に育てる、という発想
ちきりん氏は、ブログを、場所と捉えて、そこを特定の価値を持つ場所に育てる、という明確なゴールを設定しています。
その上で設定したゴールは、「Chikirinの日記」というサイトを、価値あるメディアに育てたい、ということでした。location 535
価値あるメディアとは、共通点をもつ人がたくさん集まる場所、ということだそうです。
「Chikirinの日記」を、そういった共通点をもつ人がたくさん集まるサイトに育てたい。そういう人に、できるだけたくさん私のブログを読んでほしい。これが、ブログ運営を行う上で私が目指そうと考えたゴールでした。location 565
ブログを場所と捉えるということ自体、大切にしなきゃいけない考え方だと思います。そして、自分はこのブログという場所をどんな場所にしたいのか、という問いは、ブログを運営する上で、常に意識しておくべき問いです。
さらにはっとさせられたのはこの箇所。
「なにかおもしろいことができる、自分の場所を持ちたい」と考えていたのです。location 750
ブログをどんな場所にしたいのかという問いに対するちきりん氏の答えは、「なにかおもしろいことができる」場所です。ブログ自体のPVとかユーザー数とかではなくて、ブログという場所で、いろんなおもしろいことをする、という発想です。
現に、ちきりん氏は、ブログという場所を利用して、いろんな分野のおもしろい方と対談したり、いろんな企業に訪問したりされています。これも、自分のブログを場所と捉えて、この場所を価値あるメディアに育てる、なにかおもしろいことができる場所に育てる、という意識を持っているからこその達成ではないかと思います。
自分のサイトを育てることは、将来何か新しいことをやるためのインフラを整備し、維持しておくようなものです。location 772
「Chikirinの日記」という場所の運営者として、その場所の価値をできるだけ上げていくこと、それを目標として設定したことは、ちきりん活動の指針の大方を規定する、重要な決断だったと思います。location 773
(3) いろんな媒体との関係で、自分のブログをどう位置づけるか
ブログを育てるということについて、もうひとつびっくりしたのは、書籍や他のニュースサイトとの関係です。
書籍との関係について、ちきりん氏はちきりん名義で本を出すことを、ブログを育てるための手段と捉えています。ブログで有名になって本を出版する、という方向ではなく、本を出版することによって、本丸である「Chikirinの日記」というブログサイトの価値を高める、という方向です。
私にとっての“本丸”(=活動の中心)は、書籍ではなく「Chikirinの日記」というブログサイトです。Read more at location 473
また、他のメジャーなニュースサイトに自分の記事を掲載することについても、しっかりとした考えを持っています。
最もおもしろい、最も新しい文章は、常に自分のサイトで発表する、これが原則です。location 785
私の今までの認識では、活動の中心にブログを置いている方の戦略は、ブログという基地から外へ外へと、個人の活動領域を広げていく、というものでした。ブログは、いちばん自由がきく自分の基地で、そこから外に出て書籍を出版したり、有名なニュースサイトで記事を書いたり、セミナーを開催したり、というように、活動の幅を広げていくことが、ブログという基地を持つ意義なのかなと感じていました。
しかし、ちきりん氏は、この戦略とは逆方向です。ちきりん氏にとって、「Chikirinのブログ」というブログは、活動の拠点ではなくて、活動の中心。まさに本丸です。本を出版するのも、他のサイトに記事を書くのも、インタビューに応じるのも、「Chikirinの日記」という場所の価値を高めるという目的のための手段です。
書き手個人の活動を広げるためのブログがあるのではなく、ブログという場所の価値を高めるためにその他の活動がある、という方向性は、こんな方向性があったんだと、目から鱗でした。
3.自分の中に取り入れる具体的なこと
(1) ブログと自分の方向をしっかり意識する
この本を読んで、自分とこのブログとの方向関係を見直しました。
上の整理では、ブログと個人の関係には、ふたつの方向があります。ひとつは、この「単純作業に心を込めて」を活動拠点として、そこから私個人の活動を広げていく、という方向。もうひとつが、この「単純作業に心を込めて」を価値ある場所に育てること自体を本丸とする方向。私は、どちらの方向を望むのかを、自分に確認しました。
私が求めるのは、後者、この「単純作業に心を込めて」を価値ある場所に育てることです。あらためて確認すれば、最初からこういう発想でやっていたのですが、この2つの方向があるんだということを自覚できたことは、大きな収穫です。
(2) どんな場所に育てたいのか、明確に表現できるようになる
ただし、現段階では、自分が「単純作業に心を込めて」をどんな場所に育てたいのか、自分でも明確にはわかりません。そのため、当面の課題は、これを明確に表現できるようになることです。
検討の出発地点は、本書の中で、激しく共感した、「自分のサイトを育てることは、将来何か新しいことをやるためのインフラを整備し、維持しておくようなもの」「なにかおもしろいことができる、自分の場所」という言葉。ここからスタートして、このブログをどんな場所に育てたいのか、じっくりと考えてみます。
(3) 焦らず、じっくりと、育てる
また、この観点でブログを運営するなら、ブログを育てることを、そんなに焦らなくてもいいのかな、とも感じます。じっくり育てていくうちに、自分がどんな場所を求めるのかが、少しずつわかってくるかもしれませんし。
PVを上げることやはてなブックマークで共有されることなどを意識することなく、自分の考える価値あるブログを念頭に置いて、ひとつひとつ具体的な作業を積み重ねていこうと思います。
4.まとめ
この本は、私にとっては、ブログに対してどの方向で考えるのか、という点で、大きな気づきを与えてくれた本でした。ブログを運営している人にとっては、参考になることが盛りだくさんの本ではないかと思います。(なお、ブログを運営していない人にとっても、ちきりん氏の思考を辿れる点で、いろいろとおもしろく、また、役に立つ本です。)
スポンサードリンク
関連記事
-
-
紙の本の読書ノートを、Evernoteに蓄積する
1.紙の本の読書ノートをEvernoteにとる 次の記事を読みました。 で、思いついた読
-
-
【企画】WorkFlowy読書会『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』
ここ最近、WorkFlowyで「読書ノート」を作ることについて、いくつかの文章を書きました。 紙の
-
-
ブログの成長のモノサシは、何だろうか。
1.ブログを育てるには、モノサシがあるとよい 私がブログをする目的のひとつは、ブログ「単純作業に心を
-
-
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?
『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指摘します。 [『サピエンス全史
-
-
三色ボールペン方式で読書会を運営する方法を構想する
1.はじめに 『三色ボールペンで読む日本語』が提唱する三色ボールペン方式は、読書からの収穫を高めるた
-
-
WorkFlowyで、Kindle本の「読書ノート」を作る
実例をまとめました。→WorkFlowyで作るKindle本の「読書ノート」の実例:『三色ボール
-
-
ブログは、ひとつの記事をひとりの読者に届けるための限界費用が、おそろしく低い
1.ブログによる情報発信と紙による情報発信は、属する世界が違う WordPressによるブログを1年
-
-
Kindleが紙の本から異次元の進化を遂げた3つのポイント
1.Kindleの読書は、紙の本の読書とは、異次元の営み Kindleの読書は、紙の本にも負けていま
-
-
よき聞き手としてのブログ
1.『神様からのギフト − ザ・コーチ2』の「よき聞き手」論 (1) 『ザ・コーチ』の続編『神様か
-
-
2012年に始めた習慣のうち、いちばん効果の高い習慣は、ブログを書く習慣
1.はじめに 「2012年に始めた習慣のうち、いちばん効果が高い習慣は何ですか?」と自分に問えば、