*

思考の筋道をたどることのできる文章を書くための日本語文章力

公開日: : 書き方・考え方

1.どんな文章を目指すか

私は、日本語文章力を鍛えたいと考えています。仕事においても、普段の暮らしにおいても、文章を書く機会は多いため、日本語文章力は、応用範囲の広い武器になると感じているからです。

しかし、私は、読み手に情景を呼び起こす小説のような文章を書きたいわけではなく、読み手の心に火を付ける熱い文章を書きたいわけでもありません。

私が目指す文章は、思考の筋道をたどることのできる文章です。より正確に言えば、簡単に思考の道筋をたどることのできる文章、誤解をしないで思考の道筋をたどることのできる文章です。

2.思考の道筋をたどることのできる文章とは何か

思考の道筋をたどることのできる文章とは、どのような文章でしょうか。

文章の書き手が、どのような思考をたどって、どのような結論にたどり着いたかを、正確に伝える文章です。思考の道筋をたどることのできる文章は、以下の条件を満たす必要があります。

まず、その文章が対象とする(1)問題、(2)結論、(3)理由を誤解なく伝える文章であることです。

次に、(1)文章のどの部分に問題が書いてあって、(2)文章のどの部分に結論が書いてあって、(3)文章のどの部分に理由が書いてあるのかがわかる文章であることです。

そして、(3)理由について、理由を構成する各部分がどのような論証の構造をとっているのかが明確である文章であることですです。

最後に、論証の構造が明確であるために、「文章を構成する各要素(段落、文、文節、単語)が、他の要素とどのような関係を持つのか」がはっきりしている文章であることです。

3.なぜ、思考の道筋をたどることのできる文章を目指すか

なぜ、私は、思考の道筋をたどることのできる文章を目指すのでしょうか。

思考の筋道をたどることのできる文章であれば、その文章は、読み手にとって、思考のたたき台として機能しやすいからです。

まず、文章が扱う(1)問題を明らかにすることによって、読み手は、その文章を読むか否かの判断を容易に下すことができます。読み手は、何らかの目的を持って、文章を読み始めます。文章が扱う問題を把握して文章を読むとの判断を下した読み手の方が、その文章を思考のたたき台としてくれる可能性が高いと思われます。

次に、文章の(2)結論が明らかなので、読み手は、その文章の結論に対するの賛否の判断を容易に下すことができます。結論に同意するのか、反対するのかをはっきりと自覚することによって、文章は、読み手にとって、思考の補助または思考の仮想論的として機能します。思考のたたき台として機能します。

そして、文章の(3)理由が明らかなので、読み手が文章の結論に同意する場合も、反対する場合も、読み手は、文章の理由を検証することができます。このとき、(3)理由を構成する論証の構造が明らかになっているので、読み手は、理由の中でも、ここまでは納得できる、この点はおかしいのではないかと、問題点を区別して特定しながら、検証できます。これにより、文章が、読み手にとっての思考のたたき台として機能します。

4.おわりに

文章を書くときに、私が目指すのは、自分の思考を誤解なく伝えることです。結論に同意してもらえたらうれしく思います。しかし、結論に同意してもらうことよりも大切なのは、私がその文章で扱った(1)問題、(2)結論、(3)理由は何であるかと、特に(3)理由における論証の構造を正しく伝えることです。

これらを誤解なく正しく伝えるための力こそが、私が求める日本語文章力です。この日本語文章力を鍛えるために言葉を鍛えることは、私の影響の輪の範囲内にあることなので、一日一日、少しずつ努力していきます。

スポンサードリンク

関連記事

no image

『文章教室』を『数学文章作法 練習問題編』として使う。

1.『数学文章作法 基礎編』(結城浩著・ちくま学芸文庫)で学んだその後に、何をすべきか? (1)

記事を読む

no image

「文章を書くツール」の変遷

1.はじめに 私にとって、「文章を書く」ことは、特別で大切な行動です。 仕事の上でも、「文章を書

記事を読む

no image

うまくいったときは、おかげさま。失敗したときは、自分が責任者。

1.自分の人生を納得して生きるための人生観 (1) 自分の人生を納得して生きるためには、人生観が大

記事を読む

no image

仮説としての「問い・答え・理由」によって、思考の範囲を区切る(私のトップダウン型思考)

1.はじめに (1) 私のトップダウン思考と、Tak.さんのボトムアップ思考 杭を打てば垣根がで

記事を読む

no image

彩郎流二毛作。知的生産の治具マクロ「WFtoMSWD.dot」で、Word文書作成プロセスから得る収穫を倍にする。

1.マロ。さんの知的生産の治具工房による新作Wordマクロ「WFtoMSWD.dot」 マロ。さんの

記事を読む

no image

500番目の記事に、「単純作業に心を込めて」でやりたいことを見つける(ブログで考え合う)

1.500番目の記事は、「単純作業に心を込めて」を続けてきたことの成果だった (1) 500番目の

記事を読む

no image

『文章教室』(結城浩)と『アリスの物語』監修PDF(倉下忠憲・藤井太洋)に、ウェブによる教育の可能性を見る

1.よい校正の具体例を、ウェブ上で無料で入手するチャンス (1) ウェブ上に無料で公開された2つの

記事を読む

no image

向上心と自己肯定感を育てやすい人生観・世界観との関係

1.人生観・世界観を書き換えることは、向上心を殺すか? (1) 自己肯定感を育てやすいように、人生観

記事を読む

no image

自分の考えを正確にわかりやすく伝える文章を書けるようになるために役立つ本のリスト

この記事は、大学の講義で使うために作成したメモを、若干整えたものです。 私がこのメモの初版を作った

記事を読む

no image

結城浩先生の『数学文章作法 基礎編』を読んでから、『文章教室』2014期生のクラスメイトができるまで(あるいは、『文章教室』2014期生へのお誘い)

1.はじめに ここ1ヶ月くらい、自分の中で、「文章を書く」ということへの関心が高まっています。

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

PAGE TOP ↑