大学受験勉強にのぞむ4つの基本戦略
目次
1.はじめに
高校生の子どもを持つ知人から、その子に大学受験の受験勉強のコツを教えてくれと頼まれました。私が受験勉強をしたのはずいぶん前なので、具体的な教材や受験テクニックを教えることはできなかったため、受験勉強にのぞむ考え方、受験勉強の基本戦略をお話ししました。
私の考える受験勉強の基本戦略は、以下の4つです。
- 最初に、勉強法を勉強する
- 目的を見定め、目標を設定し、計画を立てる
- 毎日、記録し、振り返る
- 真似と暗記とトレーニングが中心
2.受験勉強の4つの基本戦略
(1)最初に、勉強法を勉強する
どんな分野でも、方法論は大切です。受験勉強も、勉強法が大切です。
したがって、受験勉強を始めるにあたっては、まず、勉強法を勉強するというのが、私の第一の基本戦略です。
できれば、高校1、2年生の間に、いろいろな勉強法を調べて、自分なりに試行錯誤しておくとよいです。高校3年生の最初の段階で、自分なりの勉強法を確立できれば、1年間の受験勉強が楽に進みます。
勉強法についてなにも考えずに高校3年生を迎えた場合、受験勉強をはじめる最初に、少し時間をとって勉強法を模索するとよいです。残された期間の1%くらいであれば、時間を費やす価値があります。300日残っているなら、3日間です。
勉強法を勉強するための本としては、たとえば、以下のようなものがあります。
Amazon.co.jp: 赤本の使い方 (大学受験合格請負シリーズ): 和田 秀樹: 本
和田秀樹氏は、受験勉強の勉強法の大家です。合理的で合目的的な勉強法なので、強力です。和田秀樹氏の一連の著作の中でも、この本は、かなり実践的な部類に属するため、おすすめです。
Amazon.co.jp: 「超」勉強法 (講談社文庫): 野口 悠紀雄: 本
私が高校生のときにベストセラーになったため、読みました。この本に限らず、野口教授の本は、方法論の底にある理論的な分析が鋭いため、参考になります。勉強や勉強法に対する考え方や姿勢を得るために有益です。
他方、『「超」勉強法』に記載されている方法は、あまり実践的ではありません。具体的な方法を求めて読むのではなく、あくまでも、姿勢や考え方を身につけるために読む本です。
Amazon.co.jp: 頭がよくなる本: トニー ブザン, Tony Buzan, 佐藤 哲, 田中 美樹: 本
この本は、マインドマップで有名なトニー・ブザンの本です。後半はマインドマップの解説ですが、前半に、記憶や脳の仕組みの解説があります。
マインドマップを受験勉強に活用するのは、誰にでもできることではありません。(私には無理でした。)しかし、記憶や脳の仕組みを理解した上で勉強することは、大変有効です。
基礎理論を学ぶための教科書として読んで、マインドマップが合う人は、さらにマインドマップも活用すればよいと思います。
Amazon.co.jp: 受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫): 池谷 裕二: 本
これも脳科学からの基礎理論です。
(2)目的を見定め、目標を設定し、計画を立てる
受験勉強は、長丁場です。長丁場を乗り切るために必要なものが、ふたつあります。ひとつは、モチベーションの維持です。もうひとつは、計画的に勉強を進めることです。
このふたつ、モチベーションの維持と計画的勉強のためには、目的を見定め、目標を設定し、計画を立てる、という考え方が大きな力を発揮します。
a.目的
(a)抽象的な目的
人間は、目的を達成するためなら、ある程度つまらないことや大変なことにも耐えられます。受験勉強を行う目的をはっきりと意識できていれば、その目的は、受験勉強を乗り切るモチベーションの源泉となります。
大学に入ることそれ自体が目的となる場合もあります。大学に入った後、具体的な誰かの講義を受けたりゼミに参加することが目的となる場合もあります。大学で何かの研究をした後でその研究を活かして何かの成果を達成することが目的となる場合もあります。
どこまで大きく目的を考えるかは人それぞれですが、最初に自分のモチベーションが沸いてくる目的を設定できると、受験勉強を乗り切るための支えとなります。
もっとも、大学入学後に何をしたいかという目的は、あんまり考えすぎない方がよい場合もあります。大学入学前に思い描く大学生活よりも、実際の大学生活は豊かです。目指す大学に入学することそれ自体を目的としてモチベーションが沸いてくるなら、それで十分です。
(b)どこの大学のどの学部に入るか
大学に入学して何をしたいかまで決められなくても、どこの大学のどの学部に入るか、という目的は、できるだけ初期段階で定めるべきです。
モチベーションという点でも、どこの大学のどの学部に入るかを決めるのは大切です。また、それ以上に、受験勉強計画を立てるために、どこの大学のどの学部を目指すのかを早期に決める必要があります。
b.目標
(a)目標を、具体的な数字で表現する
受験勉強をする上で、目標は大切です。目標とは、目的を達成するために自ら主体的に設定する指標です。
受験勉強をする上で必ず定める目的は、●●大学●●学部に合格する、というものです。この目的を達成するために設定する目標は、センター試験と二次試験で獲得する点数という具体的な数字で表すことができます。入試の成績は数字で点数という数字で評価され、合否を分けるための合格最低点というものが存在するからです。
(b)最終評価点の決め方と合格最低点を把握する
獲得する点数の目標を定めるには、まず、受験する学部の最終評価点の決め方と合格最低点を知る必要があります。
多くの大学は、学部ごとに、最終評価点数を決めるための配点を公表しています。センター試験をどのように計算して何点と換算するのか、二次試験の各科目はそれぞれ何点か、それぞれの最低基準点(この点数を下回った科目があれば即不合格となる点数)が存在するか・存在するとして何点か、などです。
また、多くの大学は、学部ごとに、各年度の合格最低点を公表しています。
これらの情報を得るには、赤本・青本・緑本という過去問集を読めば大丈夫です。これらの過去問集には、通常最初の方に、傾向と対策などとあわせて、最終評価点数の算出方法と合格最低点を掲載しています。
(c)センター試験と二次試験でそれぞれ何点とるかを決める
合格最低点を把握したら、センター試験と二次試験の合計で、合格最低点を上回る点数をとるため、具体的な数字を設定します。
大切なのは、満点や合格最高点を目指す必要はない、ということです。受験においては、合格・不合格の差は雲泥の差ですが、最低点での合格と最高点での合格は、たいした差ではありません。
他方、合格最低点ギリギリを目指すと、ちょっとしたことで合否が分かれてしまうため、ある程度余裕をもって目標を設定する必要があります。
センター試験の最低基準点もにらみながら、センター試験で何点、二次試験で何点とるかを、具体的な目標として決めます。
(d)各科目で何点とるかを決める
センター試験で何点とるか、二次試験で何点とるかを決めたら、各試験の配点に応じて、それぞれの科目で何点とるかを決めます。
得意なところで稼ぎ、苦手なところで差をつけられないようにする、という戦略が王道です。
各科目で何点とるかは、得手不得手や試験傾向によって異なるところなので、受験勉強が進に応じて、適宜修正し続けます。
c.計画
各試験の各科目で何点とるかを決めたら、その点数をとるための勉強をします。
しかし、闇雲に勉強していては、効果的に点数を伸ばすことは困難です。ゴールからさかのぼって考えて、合理的に勉強する必要があります。合理的に勉強するために、計画を立てます。
計画を立てるポイントは、2つです。
(a)ゴールからさかのぼって計画を立てる
ひとつは、ゴールからさかのぼって計画を立てる、ということです。
受験勉強は、合格するために行われます。合格するには、センター試験と二次試験で目標点を獲得すれば大丈夫です。目標点を獲得するために何をする必要があるかを考え、そのための勉強計画を立てます。
具体的な計画策定プロセスとしては、試験直前期に行うことからさかのぼって計画を立てます。1月にセンター試験がある。その直前2週間は何をしたい。そのためには、その前までに何を片付けておく必要がある。すると、その前1ヶ月で何をする必要がある。……
(b)大きなところから計画をする
もうひとつは、大きなところから計画するということです。
1日単位で何をするかを決めるより先に、どの時期に何をするかの計画を立てます。
どの時期に何をするかの計画とは、たとえば、以下のようなものです。
- 最初の2ヶ月(4,5月)で二次試験とセンター試験の過去問をとりあえず解き、傾向を把握する。
- 次の3ヶ月間(6~8月)は時間のかかる英語と数学の基礎をとことん固める。
- 次の3ヶ月(9~11月)で二次試験の過去問を再度回すとともに英語・数学以外の勉強に取りかかる。
- 12月はセンター対策に費やす。
- センター後は基礎の確認と二次試験過去問に明け暮れる。
(適当なので、これが有効という趣旨ではありません。)
なお、このときも、ゴールからさかのぼって考える方がよいと思います。
大きなところを計画した後、各時期に具体的に何をするのかを決め、それを1週間単位、1日単位の計画に落とし込みます。
d.目的・目標・計画の教科書
目的・目標・計画の考え方を知るには、書籍を読むのが効果的です。王道は、この本ではないかと思います。
Amazon.co.jp: 7つの習慣―成功には原則があった!: スティーブン・R. コヴィー, Stephen R. Covey, ジェームス スキナー, 川西 茂: 本
(3)毎日、記録し、振り返る
受験勉強は、長距離走です。遠くにあるゴールに向かって、受験勉強期間トータルでどれだけの距離を稼げるか勝負です。
ゴールが遠い上に、中間的なチェックポイントはありませんので、進んでいる実感が持ちづらいのが問題です。そこで、自分が行った勉強の成果を日々記録することが大切です。
私がいいと思うのは、ビジネス用の大きな手帳を用意し、そこに勉強したことを記録することです。2010年の数学の過去問を解いたとか、英語のセンター試験問題集p.22~p.30までやったとか、ある程度具体的に記録します。
毎日、就寝前に一定の時間をとって、その日に勉強したことを振り返り、手帳に記入する、という習慣を付けると、復習にもなる上、寝る前に頭を就寝モードにリセットすることができるので、よいと思います。
受験勉強のツールとして手帳を活用することは、ドラゴン桜にも出てきたアイデアです。大学生や社会人になってからも、手帳は大切なツールになりますので、受験勉強をきっかけに手帳を使い始めることは、一生役に立つのではないかと思います。
Amazon.co.jp: ドラゴン桜(15) (モーニングKC (1548)): 三田 紀房: 本
(4)真似と暗記とトレーニングが中心
受験勉強は、真似と暗記とトレーニングが中心です。真似ること、暗記すること、トレーニングすることに、存分に時間とエネルギーを費やすべきです。自分の頭で考えることよりも、この3つが大切です。
a.真似
受験勉強で身につける必要があるのは、試験問題を解くことです。問題の解き方には、一定のこつがあります。このこつを手っ取り早く身につけるには、誰か別の人の解き方のこつを真似ることが早道です。
真似るための方法は、たくさんあります。問題集の解説を読む、授業での先生の解説を聞く、友人に教えてもらう、などなど。問題を解くときも、授業を受けるときも、友人に教えてもらうときも、解き方のこつを真似て自分のものにするため、積極的・主体的な姿勢を持つとよいと思います。
b.暗記
受験勉強において、暗記の占める割合は高いです。地理や生物といった暗記の割合が高い科目はもちろん、数学でも、公式や定理、ひいては解法を暗記する必要があります。英語でも、単語を暗記するか、頻出英文を暗記するかはともかくとして、たくさんの暗記が必要です。暗記が大切と腹をくくって、一生懸命暗記をしましょう。
c.トレーニング
受験勉強で身につける必要があるのは、試験問題を解くことです。問題を解くためには、トレーニングが必要です。たくさんの計算をする、たくさんの英作文をする、たくさんの穴埋め問題をする、とにかくたくさんトレーニングを積むことで、少しずつ問題を解く力が上がります。
何度も同じ問題を解くことも、有効な基礎トレーニングになります。
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